やっと・・・やっと4連勤終わる・・・。
げんなりげんげんどころじゃないくらい、もはやげんなりだよ・・・おっふ。
おかしいな・・・前の店長の時は3連続4勤とかザラだったのにな。
今の店長に変わってから多少、シフトが甘くなったせいもあってか、もはや4勤自体がしんどい。
げんなりだわ。げんげんする気力も、もはや残ってないわ。
本題です。
秋アニメ予習記事、本日はお休みです。休憩休憩。
てなことで21日、1が付く日なので読書感想文をお送りいたします。
本日、感想をお送りするのは伊吹亜門さんの『焔と雪』です。
伊吹さんは2015年、23歳の時でいらっしゃるのかな?その時に短編『監獄舎の殺人』で第12回ミステリーズ!新人賞を、当時の史上最年少で受賞されデビュー。
その後、同作品をおさめた『刀と傘』を2019年に上梓。本作品は第19回本格ミステリ大賞小説部門受賞、『このミステリーがすごい!』でも5位にランクインするなど、高い評価を得て一躍、注目を集めることになった作家さんでございます。
わたしも『刀と傘』、それからアンソロジーに収録されている短編集を、伊吹さんの作品では読んだことがあるのですが。
とにかく文章が美しい。日本語が綺麗。『いや、プロの作家さん相手にそれは失礼だろ』と言う声も聞こえてきそうなのですが、ほんとね。たくさん本を読んでいると、これがとんでもないことになっている作家さんも0ではないんですよ。ええ。
私が読んだ作品、そして今回、感想をお送りする『焔と雪』も時代設定が現代ではないのです。だからこその、その時代、時代の雰囲気をいかに言葉選びで、それを使った描写で作り出せるか、と言うのがひとつの肝だと思うのですが、伊吹さんの作品は、本当にこの辺りが完璧の一言なのです。
だからこそ、ページを開いて物語を読み始めた瞬間、物語の世界、その時代に引き込まれる。その当時の光景、空気みたいなものがまざまざと頭の中で再生されるような、そんな作品なのです。
そしてその中で繰り広げられる物語、ミステリーも非常に読みごたえがあります。なんだろ。『刀と傘』であったり、アンソロジーに収録されていた短編であったり。あるいは『焔と雪』にしてもそうなんですけど、印象としては『ホワイダニット』に重きを置かれているような。そしてそこから先、事件にかかわった人たちの心情を描くことに重きを置かれているような。そんな印象が私としてはあります。
で、前置きが少し長くなりましたが。
『焔と雪』です。
ネタバレはしないつもりです。
が、若干の匂わせ的記述はしてしまうと思うので、その辺りはご了承いただければと思います。はい。
そんな具合で早速、まずは作品のあらすじです。
今作の舞台は大正の京都。伯爵の血筋でありながら、その出自故、一族に忌み嫌われ、隠遁生活を余儀なくされていた露木。生まれた時から病弱の彼の体は、その日、その日を生き抜くのがやっとの有様だった。生きる希望など到底、見出すことができない露木は、ある時、自分と同世代の少年に出会う。
鯉城と名乗ったその少年との出会い、交流を通して、露木は少しずつ外の世界と言うものを知っていく。そしていつしか露木には、そのことが、あるいは鯉城の存在そのものが唯一の救いであり、生きる希望となっていた。
その交流を通して、ある出来事の謎を露木が解明したことをきっかけに、露木は警察から探偵へと転身を遂げた鯉城のために謎解きをすることになる、と言うのがあらすじです。
で、構成としては鯉城と露木が挑むことになる5つの事件の物語『うわん』『火中の蓮華』『西陣の暗い夜』『いとしい人へ』『青空の行方』が収録されています。
『いとしい人へ』が露木視点の一人称で、残りの4作品が鯉城視点の一人称でつづられています。
えー、発売前。このあらすじを知った時から私は『こんなんBLやん!BLやん!』と1人で大騒ぎしていたのですが(すいません)
結論から言うと、あながち間違っていなかったように感じます。はい。
だってもう『恋をしていた』って言っちゃってるもの。ある人物が、ある人物に対して抱いている気持ちのことを。『恋』って言っちゃってるもの。自分で。
だからもうBLでいいんだと思います。
思えば『刀と傘』も鹿野師光と江藤新平、2人の男の友情と絆。それを描いた作品でした。そしてこの作品に限って言うと、最後の最後にはあまりにも胸を穿つような結末が待ち受けていたからこそ、よりブロマンス的な雰囲気も感じさせる作品だったように、私は思います。
『焔と雪』も鯉城と露木のその関係性にブロマンスと言う言葉を当てはめても、間違いはないと思います。
ただブロマンスが『恋愛以外の幅広い関係をさす言葉』である以上、やっぱり『焔と雪』はBLと言った方が的確なんだと思います。
語尾『思います』3連発!
はい。まぁ、誰が誰に対して恋しているのか。自らのその気持ちを恋だと認知しているのかは作品読んでのお楽しみ、と言うか、あらすじからある程度、察せられるかとは思いますが。
でも私としては、その気持ちが描かれている、明かされている物語を読んでいる間は、ひたすら胸がぎゅっ、と締め付けられるような思いでした。
あまりに切なくて。もうその『恋をしていた』と言った、その人物の心情。それがあまりにもあまりにも切なくて、そしてあまりにもあまりにも手に取るように理解できて仕方なかった。だからただひたすらに切なかったのです。
恋焦がれる。
そんな言葉がありますが、彼にとってはまさしく、それだったんだと思う。
彼と出会って、救われた。
生きることに希望を見出せた。
生きることに、自分自身に価値を見出せた。
そのすべては、彼が自分にくれたもの。
だから彼は、彼に恋焦がれた。
で、です。
この作品の凄いと言うか面白いところはですね。
その『恋』と言う感情。あるいは『恋焦がれる』と言う感情。
誰かのことが好きで好きでたまらなくて、その人のためにどうにかして役立ちたくて、その人のことをどうにか守りたくて、その人のために何かしたいと言う気持ち。
切実な気持ち。
それが謎解き、その過程において大きな役割を果たしている、と言う点なんです。
ここが凄い。
それは『うわん』『火中の蓮華』『西陣の暗い夜』と来て4話目にあたる『いとしい人』で明かされるのですが。
先程も書きましたが、『いとしい人』は唯一の露木視点で語られている物語です。
その露木によって明かされる、これまでの事件の『真相』
それを知った時には『はっはー。成程。そうきたか』と、それまでの切ない、あまりに切ない思いが薄れることなく、しかし『やられた』と言う、騙された快感のようなものも私は存分に味わったのでした。
本作品の帯には『ときに熱く ときに冷たく きみと謎解く いとしさよ』と言う言葉が書かれているのですが。
最初、本作品を読む前にこの言葉を見た時には『ほら!やっぱりBLじゃんか!』とやはり喚き散らかしたのですが(本当にすまない)
でも読了した今なら、この言葉がまた違った意味合い、重み、切実さを伴って見えてくる、胸に響いてくるのが面白い。
そしてまた『いとしい人』までの3つの物語、3つの事件。そこで鯉城から話を聞いて、実質的な探偵としてその謎を解いてみせた露木の推理。
そこに、その奇想天外ながらも確かに筋道の通っている推理の展開に『成程なぁ。うーーん、確かに。反論したい気はするけど、どう反論すればいいのかわかんないから、私の負け!』とお手上げしたくなるような気持ちを味わった私は、こうも思ったのです。
『自分で作り上げた、推理と言う名の砂の城。それを自らぶち壊すような作品を作り上げるって、おいおい、伊吹さん、凄くないか』と(笑)
うっかりネタバレしているような気もするのですが、そう言うことです。
そう言うことです。
そう言うことなので、私としては『探偵』、その存在意義であったり役割であったり。あるいはそもそもとして『何故、謎を解くのか』と言う理由であったり。
そう言うものに対してもいろいろ思いを馳せたくなる作品でもあったなぁ、と。
この作品における『探偵』、その存在意義、役割。そして『何故、謎を解くのか』と言うその答えは、ただのひとつしかないのです。
だからこそ、真実こそが絶対である、あらなければならないはずの『探偵』である彼は、最後の物語『青空の行方』、そのラストでこんな言葉を口にするんです。
『真実が人を救うとは限らないじゃないか』と。
なんて身勝手な探偵で。
なんて傲慢な探偵で。
それでもなんて痛切な、自らの身を傷つけるような在り方を選んでしまった探偵なんだろう。
私には、とてもじゃないけれど彼を責めることなんてできません。
で、です(二度目)
これで終わっていても、私としては大満足だったと思うんです。
ところがどっこい(古)
『いとしい人』に続く物語。『青空の行方』ですね。こちらは再び、その語り手が鯉城に戻るのですが。
この物語では鯉城は露木の手を借りずに、自らの力で謎を解くことを選択します。
その理由はただひとつ。渦中にある女性に対して、鯉城は複雑な思いを抱いていたからです。
ここがまた地獄なんですけどね(悦)
鯉城には奥さんがいたんです。でもその奥さんは病気で亡くなってしまったんです。それで『青空の行方』に登場したある女性、その顔に、鯉城は亡き妻の雰囲気を感じたんです。
あぁ、地獄(悦)
だから鯉城は、露木の手を借りずに自力で謎を解くことにした。
そしてその女性の前で、事件の謎を解いたのです。
解いたのです。
解いたのですけれど・・・ここで『いとしい人』で明かされた真実。感情。それが再度、効いてくるんですね。ずさっ、と言う感じで胸に差し込んでくる。
この構成が実にお見事。
早い話が露木と鯉城の探偵としての姿が、ぴたりと重なり合うんです。
重なり合うんですけど、その中でそれぞれが思っている人は当然、別人。
だけど『その人のために』と思いながら、本当のところは『自分のために』に事件の謎を解いてみせたと言う、そこのところは同じである。
それがまた、どうしようもなくやるせないし、切ない。
何だろ。一見すると両想いなのに、圧倒的に片思いみたいな(どんなたとえ)
でもこの『青空の行方』の最後で、鯉城の話を聞いてすべてを察したのであろう露木が見せた涙は、なんてか、映像としてまざまざと想像できるようだったなぁ。
とても、とても美しい涙だったことだろうなぁ。
でも露木の、その心中を察すると・・・あぁ、切ない。悶えるわ。
目の前の鯉城は、自分と同じ。
だけどその心にある人物は、自分とは異なる人。
あぁ、地獄(悦)
伊吹さんらしいミステリとしての切れ味の鋭さ、そこに登場人物たちの繊細な心情。それが見事に絡められていて、とても読み応えのある、胸を締め付けられる作品なのでありました。
個人的には大満足!なのですが・・・一点だけ、難癖をつけるとするならば。
帯には『驚愕必至』や『驚愕の火種は』と言った惹句が書かれていて、まぁ、それはその通りなんです。その通りだとは思うんです。
思うんですけど、何だろ。この作品の驚きのポイント。驚かされるポイント。そこに絡められている露木、そして最後の物語での鯉城の心情を思うと、この手の惹句はむしろ合わない気が個人的にはしてならないと言うか。
表現は難しいのですが、この作品の驚きのポイント。その裏側にあるトリック?みたいなものって『驚愕必至だぜ!そら、驚け!』と言う感じで宣伝する類のものではないような気がするのです。なんかむしろ、そうやって宣伝してしまったら興ざめしてしまう危うさもあると言うか。
陳腐な言葉ですが『胸打つ』とか。そう言う感情に訴える系の惹句の方が、この作品の魅力が正しく伝わるような気もしたのですが・・・まぁ、あの、はい。
ただのいちゃもんです(どーん)
ちなみに。露木に関しては表紙のイラストを見た時からなんとなく、そして作中で彼が言葉を発した瞬間『CV田丸篤志さん!』と私は閃きました。
鯉城は・・・鈴木崚汰さんとか。山下誠一郎さんとか。ちょっと太めのお声で、クセのないお声の方が合いそう。佐藤拓也さんとかもハマりそうだなぁ、と思いました。
てなことで本日はミステリとしては勿論のこと。切ない恋情の行方を描いた作品としても読みごたえたっぷりな『焔と雪』の感想をお送りいたしました。
これは続編、あるのかなぁ。
露木のことを思うと、もうなんか『今のまま』がいちばんなんだろうなぁ、とも思うのですが。
でもやっぱり、2人の今後の物語、読みたいなぁ。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!