tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2008年

順調よ、順調よ!

そんなこんなで『このミステリーがすごい!』の歴史を、私が読んだ本に限ってですが振り返っているこのシリーズ記事。

冒頭に書いた通り、実に順調に更新できております!

そして今回は2008年の振り返りでございますね。

このミステリーがすごい!』は1989年からの刊行で、振り返り記事もそこからスタートしているのですが・・・それを書き始めた頃には『うえー・・・先が遠すぎるよぅ・・・』と涙目だったことを思えば、2010年代突入まであと2年!そんなところまで来たのかと、我ながらびっくりです(笑)

 

ではでは。毎回恒例、その年に何があったのかを見てまいりましょう。

今回はウィキペディアではなくて『2008年の出来事』とまとめられた記事を見ているのですが・・・あぁ、こんなことがあったなぁ、と鮮明に思い出されることばかりです。

北京五輪が開催、水泳の北島康介連続2冠を達成したり、女子ソフトボールが悲願だった金メダル獲得を現実のものにしたり、と明るい話題もあった一方、その中国で作られていたギョーザによる食中毒が発生。検査の結果、殺虫剤の成分が発見された話題もありましたね。これ以降、中国産、中国で作られた食品を避けるようになったと言う方も多いのではないかなぁ。

 

それから世界的な金融危機、何でしたっけ?リーマンショックだ。こちらが発生したのもこの年の9月くらいでしたか。当時も今も、何が起きたのかあんまりわかっていないけど(汗)、これがニュースなどで報じられるようになって途端、ハローワークの求人数も、求人広告の掲載数も一気に減ったのには驚いたよなぁ。

あとは秋葉原で通り魔事件が発生したのも、2008年のことでした。被告はつい最近、死刑が実行されましたが・・・彼が犯行に至ったその経緯。社会のどこにも居場所がなく、耐え難い孤独、疎外感を抱いている。仕事でも決して報われることはなく、ただただ人生に嫌気がさしたと言うその思いに対して、事件以降、ちゃんと社会は耳を、目を傾けてきたのだろうかと思うと、なんともやりきれない思いがします。同じような事件、いくつも起きていますものね・・・。

いや勿論、だからと言って事件を肯定するつもりも、容疑者を肯定するつもりも全くありません。同様の思いをしながら、だけど歯を食いしばって、あるいは心を殺して生きていらっしゃる方もたくさんおられることでしょう。

ただ刑に処されたその瞬間、『あぁ、こんな社会なら俺は生きたかった』と容疑者が自らの罪に対して、激烈に後悔を抱くような、そんな社会になったかと問われれば、決してそんなことはないですものねぇ・・・。

 

はい。そんなこんなで振り返りはこのあたりにしておきまして。

ここからは本題、『このミステリーがすごい!』の振り返りでございます。

ja.wikipedia.org

てなことで、こちらのリンクから結果をご覧いただくと、より分かりやすいかと思います。どうぞ。

 

この年のランキングを制したのは佐々木譲さんの『警官の血』でございました。単行本上下2巻で刊行された、親子三代にわたる骨太な物語を描いた超大作。ドラマ化されたのでそちらで知っている、と言う方も多いかもしれませんね。

私、こちらの作品は読んでおりますので、のちほどたっぷり語りたいと思います。

 

そしてベスト10ランクイン作品の中で『警官の血』以外に私が読んだことがある作品は・・・3位、有栖川有栖さんの『女王国の城』、7位、近藤史恵さんの『サクリファイス』、それから10位にランクインした米澤穂信さんの『インシテミル』ですね。

なので4作品について語っていくことになります。はーい。正直、冊数的にはこれくらいがありがたな(笑)

 

ではでは。10位『インシテミル』からまいりましょう。

 

・・・はたと今、気が付いた。そして思い出した。

私の読書感想文の記録、2008年だけ抜けてるんだよ。

これは本を読んでいなかったわけでも、読書感想文を書いていなかったわけでもなく。

この年だけ何故か、読書感想文をノートに、手書きでつけていたのですよ。長いものだと丸々1ページ以上にもわたると言うそれを、未だパソコンに入力できていないのです。だからこの年だけ読書感想文の記録が抜けたまま。そしてそのノートは、タンスの奥深くどこかにはあるのだけれど。

 

探すのが面倒くさい(汗)

 

し、仕方ない。この年の振り返りに関しては、完全、私の記憶を掘り返していくしかないぞ。頑張ろう。

 

てなことで『インシテミル』です。こちらはそうだ、デスゲームを主題にした作品だったんですよね。米澤さんの作品と言えば、割と人が死なない、殺されない作品が多いというイメージが強かったので(勿論、2008年時点でそうでない作品も発表されていましたけれども)、『その米澤さんがデスゲームを描かれるとは!』と驚いた記憶が。

米澤さんと言えば、どんな作品であっても根っこにあるのは本格ミステリーであること。そしてミステリーを書くことにものすごくこだわりを持たれている、そんな作家さんだと言う印象があります。『黒牢城』が直木賞を受賞した際にも、そのようなことを話されていらっしゃいましたものね。

そんな米澤さんが『自分なりにとことんミステリを追求した』と述べられ『こういうミステリも好きだった、そんな思いに淫してみた』と言うところから『インシテミル』と言うタイトルがつけられたと言う本作品。

 

7日間24時間監視生活を送るだけで巨額の報酬をもらうことができる。そんな募集につられて『暗鬼館』に集まった12名の男女。しかし彼ら、彼女らを待ち受けていたのは『人文科学的実験』と言う名の殺し合いでした。殺人を犯せば報酬は増える。逆に犯人であることを指摘されてしまうと、報酬は減額。また殺人を犯さなくても、元々の報酬が減ることはないーとなれば、行動を起こさないことがベストだと言う暗黙の了解が参加者の間には流れる。しかし3日目の朝、参加者の1人が死体となって発見され・・・。

そこから怒涛の如く発生する殺人事件。果たして事件の犯人は誰なのか。そもそも犯人は1人なのか、それとも。凄まじい緊張感、絶対に、こんな状況には巻き込まれたくないと言う気持ちが募っていく一方なのに、だからこそなのか、ページをめくる指を止めることができない作品でもあります。

米澤さんの端正な筆致で描かれる、緻密極まりのないデスゲーム。是非とも、ご堪能ください!

 

お次は7位、近藤さんの『サクリファイス』です。自転車ロードレースを描いたスポーツ小説。それとしても非常に完成度の高い、素晴らしい作品なのですが、そこに加えてミステリー要素が加わっている、しっかりとした謎解き要素が描かれているのが、この作品最大の魅力です。そしてまた青春小説としての魅力にもあふれている、まさにそれまでになかった作品だとも言えるでしょう。

主人公は陸上競技から自転車競技に転向した白石。プロチームに所属した彼の仕事は、チームのエース、その勝利のためにアシストに徹することです。ところがそのエースには黒い噂がつきまとい、更に次期エースを目指す同期のライバルの存在などに白石の心は乱されます。そしてヨーロッパで開催されたレース中に、ある悲劇が発生し、と言うのが簡単なあらすじです。

 

今でこそ『弱虫ペダル』のおかげで(いやマジで)自転車競技がどう言うものなのか、チームでの役割がどう言うものなのか。割と理解しているつもりの私ですが、本作品を初めて手に取った時は、そんな知識は皆無でした。が、そんな私でも非常に楽しく、かつ臨場感を抱きながら自転車競技の魅力を感じることができたので、もしその点を不安に思われている方がいらっしゃいましたら、大丈夫ですよ!

本作の主人公、白石の役割は、先にも書きましたがアシスト。つまりチームのエースの勝利のために、自らの犠牲にする役割です。主人公でありながら、しかし白石は物語の、本当の意味での中心的存在ではない、と言うのがこの作品の肝だと思います。

犠牲を意味する『サクリファイス』と言うタイトルを冠したこの作品の、物語の、本当の中心に存在しているのは誰なのか。そしてその人物が犠牲にしたのは何なのか。アシストである白石の『サクリファイス』と共に、そんなことを感じさせる衝撃的真相が、またこれうまい!

なおこちらは『エデン』『サヴァイヴ』と続編も刊行されています。

 

そして3位は有栖川さんの『女王国の城』ですね。有栖川さんが手掛けていらっしゃるシリーズの中には『有栖川有栖』が登場するシリーズがふたつ、存在しています。ひとつは作家となった有栖川が、大学時代の同級生であり現在は母校の准教授を務めている火村英生と共に事件の謎に迫る作家アリスシリーズ。そしてもうひとつは学生の有栖川が、江神二郎を部長とする推理小説研究会の面々と共に事件を解決していく学生アリスシリーズです。

で、この『女王国の城』は学生アリスシリーズの作品です。『月光ゲーム』『孤島パズル』『双頭の悪魔』に続く4作品目で、本作品単体でも楽しむことはできますが、できればシリーズ順に、全作品読んでおいた方がより楽しめるのは言わずもがな、です。

 

大学に姿を見せなくなった江神を心配し、アリスたち推理小説研究会の面々は、彼が出かけたと思われる岐阜県と長野県の県境、神倉に向かう。そこは人類協会と呼ばれる新興宗教の聖地であった。江神との面会を求め『城』と呼ばれる人類協会総本部を訪れたアリスたちは、一度はそれを拒絶される。しかし翌朝には、前日の説明には誤解があったと謝罪されたうえで『城』に迎え入れられ、無事、江神との再会を果たす。

だが再会の直後、殺人事件が発生。自力で事件を解決しようとする人類協会によって、江神たちは『城』に軟禁されてしまう。さらに第2、第3の事件が発生し、と言うのが本作のあらすじです。

 

ぶっちゃけると若干、冗長な感は否めなかった、と私は思います。はい。ただそこを差し引いても、なんでしょ、学生アリスシリーズならではの、あのギリッギリの推理の展開がたまらない、その魅力を味わえる作品でございます。正々堂々、読者に対してすべてのヒントを提示したうえで『さぁ、謎を解いてみたまえ』と言う、シリーズ1作品目から変わらない姿勢は本作も健在。なのでぜひとも、未読の方は『よっし、ならやってやろうじゃないか』と前のめりで読み込んでみて下さい!

私は惨敗でしたけど!はは。

このシリーズと言えば、推理小説研究会の面々、その1人1人の個性の強さ。またこの年代だからこその、ある種のモラトリアム的な時間が描かれているのも魅力だと思っています。『城』の内と外に分かれることを余儀なくされた面々が、しかし仲間のために、自分のために、それぞれの戦いを繰り広げる物語は、緊張感もありつつ胸が熱くなるような思いもするのです。

 

そしてやって来ました、第1位!

佐々木さんの『警官の血』でございます。

タイトルからもお分かりいただけるかもしれませんが、こちらは親子三代にわたり警察官となった男性3人の人生を描いた作品です。

最初の主人公は安城清二。昭和23年、彼が警察官になったところから物語は始まります。男娼殺害、それから時を経て起きた国鉄職員殺害事件。2つの事件の謎を独自に追っていた清二は、ひとつの事実を知ります。

その後、別件で手柄を挙げた彼は、かねてからの希望であった天王寺駐在所勤務になります。しかし異動してわずか3ヶ月後、駐在所隣の天王寺五重塔で火災が発生。その最中、よく見知った人物の姿を見かけた清二は、その人物を追いかけ姿を消します。翌朝、彼の姿は国鉄の線路上で遺体となって発見され、その死は、五重塔火災に責任を感じての自殺と判断されます。

 

それから28年後。清二の息子である民雄も警察官となり、紆余曲折の末、天王寺駐在所勤務となります。彼は父が気にかけていた2件の未解決事件の調査を、独自に調べ始めます。

そんなある日、父が亡くなった日、五重塔の火事があった際の写真を見た民雄は、そこにある人物が映っていることに愕然とします。父の死の真相がわかるかもしれない。そんな思いを胸に抱く民雄でしたが、その思いが叶えられる前に、ある事件で人質となった少女を救うために殉職してしまいます。

 

祖父である清二、そして父である民雄の思いを引き継いで、警察官となった和也は捜査第四課に配属されます。果たして和也は、祖父が真相に迫りつつあった未解決事件の謎を解くことができるのか。そして父が掴みかけていた、祖父の死の真相を知ることができるのか。

 

本作品、2009年にドラマ化されております。清二を江口洋介さん、民雄を吉岡秀隆さん、そして和也を伊藤英明さんが演じていらっしゃいました。私これ、見た記憶があるなぁ。スペシャルドラマだったから、隅から隅まで出演者さんがめちゃくちゃ豪華だった記憶があるのです。はい。

なんかすげぇ強烈に記憶に残っている、否、もはや焼き付いていると言っても過言ではないシーンがあって、そこから『多分、この人が犯人だったよね』と言う結論に至って今、調べてみたらその通りでした。はい。

てかそうか、私、ドラマを見てから小説を読んでいたんだな。成程。

 

てなことでドラマの話はここまでにしておいて、小説の感想を書いていきますと。いや、めちゃくちゃ面白かったです。

昭和から平成と移り行く時代の中。それでも決して途切れることがなかった父と息子、三代にわたる物語。ミステリとしては勿論なのですが、その親子それぞれの関係性や生き方のようなものも、めちゃくちゃ個性があって胸に染みる。だから骨太な人間ドラマが描かれた、家族小説としての楽しみも味わえる作品だと思います。そして勿論、タイトルからもお分かりいただけるとおり、警察小説の面白さもまさしく重量級、トップレベルな作品です。

 

個人的には民雄さん。彼の生き様と言うのは、もう読んでいてしんどかったなぁ。彼は最期、殉職と言う形でその生涯を終えるのですが、その瞬間に彼が何を思ったか。警察官であることに、あろうとしたことに振り回された彼が、ようやく警察官であることに、変な言い方、なじんできたのかもしれない、まさにその時に殉職してしまったと言うのが、もうめちゃくちゃ皮肉だし、切ないし。

あと安城家の男3人の物語ではあるけれど、同時、彼らを支えた、まぁ、和也は未婚なのですが、奥さんの物語であると言うのも肝です。彼女たちの姿、思いが描かれていることで、より家族小説としての面白みに深みが生まれているように感じます。

 

それぞれが対峙する事件に、その当時の、時代のにおいのようなものが濃厚にまとわりついているのも面白い。そうしてそのにおいの、最後の残り香のようなものが、時代が流れても息子が生きる、孫が生きる時代に漂っていく。それを頼りに、息子は、孫は真相を明かそうとする。その懸命な姿が、胸を打つのです。

ところがどっこい。やっぱりこう言う作品に欠かせないのが『警察内部の闇』ってやつですよね!てなことで本作品にもそれは登場して、それぞれの男たちを苦しめます。

時代がどれだけ変わっても、変わらない、その闇。その闇に迫りつつあった安城家三代の生き様は、思いは、果たして結実するのか。闇を払拭し、警官としての血を、人間としての血を、その誇りの高さを掲げることができるのか。

読み進めていく内にどんどんと胸が熱くなっていくこと必至の巨編。特にすべての思いを背負った和也の章に入ってからの『和也ぁっ!祖父ちゃんと親父の無念、どうか晴らしたってくれよ!頼んだぞ!』と言う気持ちの昂揚と言ったら、もはやちょっとした知り合いのようなレベルです(笑)

単行本全2巻、長いお話ではあります。しかし濃厚な人間ドラマを描く佐々木さんの筆運びは、良い意味で非常にシンプルであるため、とにかく面白く読みやすい!と私は感じました。なので読まれたことがない方は、ぜひぜひ、お手に取られてみて下さい!

 

そんなこんなで本日は2008年の『このミステリーがすごい!』を振り返ってまいりました。次回は2009年の振り返りですね。よろしければ引き続き、おつきあい下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!