『この夏のミステリ新刊ラッシュは凄いぜ!』
『だから読書感想文も、読み終えたら即、記事にするの勢いで挙げてくぜ!』
そんな意気込み。
どうにかこうにか1日に挙げた『楽園』に続いて今回も守れそうです。
守れそうですが、多分、これで最後です(笑)
理由は単純です。
記事を書くために本を読んでいる感がめちゃくちゃ強かったからです。『急いで読まなきゃ』感が猛烈にしたからです。
本末転倒。
なので次回は予定通り、21日に挙げます。
ちなみにその次は31日の予定ですが、多分、次に読む予定の月村了衛さんの『機龍警察』の新刊は、そんなさっさと読めるレベルじゃないと思うので。
31日、挙げられなかったらごめんなさい!
てなことで読書感想文をお送りします。
今回、感想をお送りするのは潮谷験さんの『山上のフェイク』です。
潮谷さんは、今年のはじめに読んだ『伯爵と三つの棺』がめちゃくちゃ面白かったので、新刊を楽しみにしていた作家さんのおひとりです。
7月の末に『一切の無駄を削ぎ落した極限の本格ミステリー!』と言う惹句が帯を飾る本作が刊行されたので『これは読まずにはいられまい!』と購入。
この惹句、改めて見てみても『うーん。ハードルを自ら高くしてないか?』と言う思いがするばかりなのですが。
いや、読了ほやほやの今なら『うん!その通りだ!』と頷くばかりでございます。
全てのヒントがきちんと読者に提示されたうえでの、謎解き。その謎解きの、綱渡りのようなスリルがありつつ、だけど筋が通っている、論理的であると言う美しさと快感。更には登場人物たちの人間ドラマ。ミステリーとしての、最後の企み、謎も非常に後引く、ガチガチの本格ミステリーでございました!
ではでは。まずは本作の簡単なあらすじです。山上のコテージで開催された同窓会。しかし参加者が下山してこないとの連絡を受け、山岳救助隊員たちはコテージに向かう。するとコテージは無人。そしてそこには、同窓会の主催者である男性の刺殺体が。
更に救助隊員たちは参加者が残した手記を発見。同窓会の様子、そして主催者の男性のある告白などが事細かに記録されたそれ。だが、そこに残されていたある記述が、救助隊員たちを更なる混乱に追いやる、と言うお話です。
救助隊員たちが目にする記録。そして救助隊員たちが、殺人犯、更には行方不明の参加者たちを捜索すると言う視点。その合間に犯人の独白が挟まれると言う構成で、物語は進んでいきます。
あー。そうなんだよなぁ。記録もの、記録によって物語が進んでいくミステリーでもあるんですよね、本作。
なので最後の最後に明かされたと言うか、炸裂したひとつの謎。真実。それも確かに『あぁ、そうか。確かにそうだよな。記録でしか知らないもんな』と、めちゃくちゃ納得させられて。
あぁ、言いたい。いろいろ言いたい。言いたいけどネタバレになっちゃうから言えない、と言う記述が、もう既にネタバレになっちゃってる気すらする。
なんでしょうね。記録もののミステリー。ある人物が記録したもの。それをもとに物語が進んでいく。謎解きが進められていくと言うミステリーも、それなりには読んでいるはずなんですけどね。
今回も今回とて、綺麗に騙された私の単純さに乾杯です!
万歳!(涙)
記録は過去のものです。それに対して救助隊がコテージに向かい、事件の謎を解いていくパートは現在進行形のそれです。そしてその合間に、ごそっ、と読者の心理を暗い底へと引きずり込むような犯人の独白。
それらが生み出す対比、スピード感も、とても魅力的な作品でもありました。
記録していた人物は同窓会の参加者である。なので行方不明になってからは当然、記録はできない。なので読者にも彼ら、彼女らに何が起きたのかがわからない。
その『?』と一瞬、宙ぶらりんになる感じも良かったです。
その上で山岳救助たちは、その行方の手がかりすらない参加者たちを救助しなければならない。更には事件の謎も解かなければならないと言う、非常に忙しい状態。
天候も最悪。険しい山道を命がけで進んでいく、その姿には警察小説的な味わい、熱さもあって、そこも印象に残っています。
山岳救助隊と言うニュースなどではよく見かけるけど、その内情はあんまり知らないと言う存在。そこについての情報も知れて、興味が深まったのも面白かったです。
調べてみたら、成程。山岳警備隊と言う名称で呼んでいる地域もあるんですね。
あと同窓会に参加したメンバーもさることながら、この山岳救助隊のメンバーも非常に個性的な面々で。性別、年齢もバラバラで、一口に『登山のプロ』と言っても『山登りのどう言った面に強いのか』と言う点は、それぞれに違いがある。そして当たり前ですが、その性格もバラバラ。
なのでそれらをまとめ上げる塞条さんは『かっこいい!』『理想の上司!』の一言でしたし。
個人的には驚異的な方向音痴である、民間協力者の矢子崎さんには親近感しかなかったです(笑)
ただこの矢子崎さんの方向音痴も、単に設定だけで終わっていない。塞条の機転によって、ある重要な手がかりを彼らにもたらすことになる、と言う展開は胸熱でした。
塞条が矢子崎さんに提示したある選択。かく言う私も『いや、そりゃこっちじゃね?』と、迷うことなく選択したのは矢子崎さんと同じものだったのには大笑い。
迷子になる人には、やはり共通した思考があるんだな・・・。
で。
『本格ミステリー!』と惹句で堂々と宣伝されている部分に関してですが、これも本当に読み応えたっぷりで。
ネタバレになるので説明が難しいのですが。
フーダニット、犯人は誰か。そこを絞り込んでいく上で、キーとなるアイテム。消えたそれと残されていたそれを頼りに『○○だから犯人は××』と言う流れが、読んでいて本当にお見事で、思わず『おお!』と声をあげてしまったほどでした。
そして『成程。だから盛んに○○に対する描写が多かったんだな』とにんまり。
そう言う意味では振り返ってみると、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ伏線のオンパレード。『謎解きに必要な情報は、ちゃーんと明かされていますよ』『なので頭を働かせて推理をすれば、犯人が誰かと言うのも、ちゃーんと当てられますよ』と言わんばかりに、実に正々堂々な本格ミステリーでございます!
ただし気を付けてっ!
記録もの、記録ミステリーでもありますからね!
ああっ、それ以上は言えない!言いたいけど!
そして単なる犯人当てに留まらず、その前後にどんでん返しがあったのも、読んでいてめちゃくちゃ楽しかった&満足満足でございました。
ぶっちゃけな!
最初のどんでん返しは『あぁ、やっぱりな』と言う気持ちもしたんですよ。
曲がりなりにもミステリーをたくさん、読んでいる人間なので。
『絶対この人、なんかあるよね』と言う当たりをつけた、つけざるを得ない人がいまして。案の定な展開だったんで『やっぱりな』と、自分で自分を褒めていたんですけど。
終盤。ラスト。『余談』と題された章で明かされた真実。否、『真実』と呼ぶには不確かで。でもこれまでの流れ、そして何より記録ものであると言う性質を踏まえると『確かに、その可能性は極めて高い』と納得せざるを得ないどんでん返しには、本当に驚かされました。
何度も言うけど、本当にその通りなんですよね。
あぁ、本当に言いたい!言いたいけどネタバレになるから我慢する!
でもほんと、その通りなんだよ!255Pの、塞条さんの心理描写、その通りなんだよ!
読んで!
そしてそうしたガチガチの本格ミステリーでありながら、しっかり人間ドラマが描かれていた。この関係性だからこその、切ない思いが描かれていた。更にはそれが、意外な人物のたくらみにもつながっていた、と言うのもお見事だよなぁ、です。
まぁ、正直、この部分に関しては『うまくいきすぎ』と言う感じは否めないことも無かったのですが。
それでも、何と言うかな。
大学時代の同級生であり。青春を共に過ごして、以降も、関係が続いた仲だからこそ。
怒りも、憎しみもある。だけどそれでも、それだけでない、捨てきれない思いもある。
だからこそ、と言う思いには、何とも胸を締め付けられました。
なー。
あぁ、言いたい。
なのでほんと、本格ミステリーであり、熱い警察小説でもあり、そしてしっかり人間ドラマ、その思いも描かれた、1冊で2度、3度も美味しい作品でございます!
あと山が舞台なので、自然の厳しさ、あるがままの美しさ、壮大さ。それが描かれているのもポイント高し。
人間と自然と言う、お馴染みの対比を描かれていたことで、より一層、人間ドラマの部分が深く感じられたのも素晴らしかったです。
ちゃんと山が舞台であること、その意味を感じさせたと言うか。
読了して、全てを知った上で、最初から読み返してみると、また違った光景が広がっている。そんな楽しみも味わわせてくれた作品でございます。
是非、皆さんも、犯人当てに挑戦されてみて下さい!
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ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました。
