『姫様"拷問"の時間です』の最新話見たんだけど。
なんかもう、あまりにも尊すぎて泣きそうになっている私がいたことをご報告いたします・・・決して泣くような作品ではないはずだぞ(笑)
世界中がこの物語のようになればいいのに・・・!
アニメ最新話ではCV小林親弘さんの昇天ボイスも聞けますよ。笑った笑った。
1月ラスト、31日。てなことで1が付く日なので本日こそ、読書感想文をお送りします。
11日にお送りした駄犬さんの『誰が勇者を殺したか』は、読んでいたのは2023年。
なので新年最初に手に取り、読み始めたのが本作品でございます。
私にとって2024年読書開き、それを飾ってくれたのが本日、感想をお送りする白井智之さんの『ミステリー・オーバードーズ』です。
笑う。
『新年早々!』『新年初!』のおめでたさ、清々しさ、縁起の良さから遠くかけ離れた作品で、ただただ笑う。
そんなこんなで白井作品です。白井作品に関しては今までもブログで語ってきました。ミステリー小説が好きな方なら、氏の作品を読まれた方も多いのではないでしょうか。
ざっくり、実にざっくりと氏の作品の特徴を説明しますと。
『エロ・グロ・不道徳』と本格ミステリーの融合です。
単に『エロ・グロ・不道徳』だけではなく、それらが本格ミステリーとしっかり融合している。そこから生み出される設定、世界観が本格ミステリーの世界の中に違和感なく組み込まれ、活かされている。
なので氏の作品は数多くのミステリーの賞も受賞、多くの支持を受けているのです。
新星が次々と登場するミステリー界の中でも、唯一無二の存在感を放ち、唯一無二の作品を生み出し続けている作家だと言えるでしょう。
ただし何度も言うようですが、とにかくエロい。くだらなくエロい(笑)。そしてグロい。『ミステリーなんてそんなもんなんじゃないの?』と言うツッコミのレベルを超えてグロい。道徳観、倫理観、がばがば。
しかもそこには、これは私の感覚ですが、人を小ばかにするような色合いすら感じられる時もあるのが、またタチが悪い(笑)。読まれる方によっては心底、不快になられる可能性も十分にあると思います。
なので間違いなく好き嫌い、と言うか、受け付けられる、受け付けられないがわかれる作家さんだとも思います。
そんなこんなで『ミステリー・オーバードーズ』です。こちらは全5つの作品からなる連作集です。
良かったですね。本作品もやはりエロとグロ、不道徳、暴力と陰惨がぎらぎらと輝く傑作本格ミステリーばかりでしたよ(白目)
ではでは。1作ずつ感想を。
・『グルメ探偵が消えた』
・・・大量の食事を摂ることで推理力を発揮する、『グルメ探偵』と呼ばれている男の死体が発見された。かつて彼とコンビを組んでいた主人公は、彼の死に自身の過去を思い出すのだが、と言うお話。
グロ度で言えばおおよそ白井作品らしくないと思ったのは私だけでしょうか。5編の中では、その点においては非常にまともな作品だと思います。
ただし作中で重要な役割を果たすスムージーがナッツのそれ、土色のそれであることには、何かしらの意味があるような気がしたのですが・・・いかんいかん、白井作品に毒されているぞ(笑)
作中、僅かな手掛かりから凄まじい推理を披露した人物を賛辞する言葉が登場するのですが。この短編集を読み終えた今、私はその言葉をそっくりそのまま、白井さんに投げかけたいと心底、思うのであります。
この人、やっぱり天才なんだと思う。
切れ味鋭い推理は勿論。何と言うか、物理的、視覚的なグロは少ない作品ながら、それを補って余りある人間と言う生きもののグロさ。その醜さ。そして底なし沼のような黒さ、暗さ、本性。それが炸裂しているような作品で、その残虐さ、ダークさがクセになる作品だと私は感じました。
謎の死を遂げた探偵、そして主人公たちが受けた、受けることになる『報い』
これもまぁ、よくぞこんなことを思いつくよなぁ。すげぇわ。
・『げろがげり、げりがげろ』
・・・タイトルで察して下さい。正しく表記しようか!?『ゲロが下痢、下痢がゲロ』だよっ!この作品から以降、アクセル全開です(笑)
AV制作現場でADを務めている主人公は、ある日、AV女優になった幼馴染に現場で再会する。ところがある出来事に巻き込まれた主人公が目を覚ますと、そこは異世界だった、と言うお話です。
まさかの異世界転生。そしてその異世界での設定が『ゲロが下痢』で『下痢がゲロ』だったと言う内容です。
人間は口から排泄物を出して、下からゲロを吐く、食事を摂取する。つまり口と肛門の役割が逆転してしまった世界だったって、何を食べてどんな生活を送っていたらこんな設定を思いつくの!
はい。てなことでもう上も下も関係なし。淡い思いを抱いていた幼馴染がAV女優になっていた、と言うのも衝撃ですが、異世界ではその彼女が、肛門にこんにゃくを突っ込んでいると言う。ただ食事してるだけなんですけど。
泣く。
でも白井作品です。この目を覆いたくなるような(究極の褒め言葉)設定が、当たり前ですが推理に組み込まれています。ただもう、推理が披露されるたびに、やれ『肛門にこんにゃくを突っ込んでいた』だの『口から脱糞』だのの言葉が飛び交うのは、やっぱり泣くしかありません!
さすがの私も引き攣り笑いだよ!
ただそのインパクトが強いからこそ、推理にもずいずい引き込まれますし、なんだろ。言葉で読む以上に理解できると言うか。『あぁ、確かにな』と言う感じが強いのは、さすがの一言。
げろがげり。げりがげろ。そんな悪夢のような異世界から元の世界に戻る、最後のチャンスを目の前にして主人公がとった行動。
これがもう、たまらない。なんだろ。白井作品の、この、作品のとんでもなさ、何もかもを嘲笑うかのような不道徳さ、倫理観の崩壊を描き切った後の、最後に登場人物の思い。その熱さをぶつけてくるような展開。
ずるいの一言。
ただただ下品で、引き攣り笑いしかない作品なのに、この最後によってどうしようもなく熱く、切ない恋愛小説にすらなっているの、最高。天才。
・『隣の部屋の女』
・・・隣の部屋の住人と思しき女性が、何者かによって連れ去られようとしている。その現場を目撃した新婚の梨沙子。身重の彼女は独自にその謎を探ろうとするのだが、と言うお話。
グロさと言うか、インモラルと言うか。道徳観、倫理観がいちばんぶっ壊れている作品だと思います。端的に言えばカニバリズムです。
でも私はこの作品がいちばん好きです。ミステリーとしてのどんでん返し、驚きは勿論のこと。ホラー的な味わいもある作品で。終始、作品を包み込んでいる陰鬱さ、静寂さが『カニバリズム』と言う単語から想像されるようなおどろおどろしさを中和している。そんな気すらするような作品です。
何より、とにかく悲しい作品だと、私は思いました。行き場のない悲しみを描いた作品。その中心に据えられているのが、やはり行き場のない女性だと言うのが、またこれ一層の悲しみを募らせるのです。
私の倫理観、道徳観も大概なんでしょう。
ある人物の命を奪い、その人物を食べた人間の、罪深い人間の思いが、身勝手極まりない思いが、思い込みが、だけど私には真実のようにも思え。また愛情、愛と情にも思えたのです。
罪悪感から逃れるためと言う名目ではあったけれど。もしかしたら彼女の中には、自分が命を奪った人間の命を食らうことで、その人間の命を自分の中に取り込む、そのことで自分が殺した人間の命を生かそうとする。そんな思いがあったからなのではないか、そんな思いもしてきたのですが。
いずれにしても収録されている作品の中で最もインモラルな作品。それでありながら最も静謐で、悲しい作品。ミステリーでありながらホラーテイストな作品でもあるので、白井さんの作家としての引き出しの多さ。それをまざまざと見せつけられたような思いすら味わえる傑作だと思います。
なんだろ。韓国映画とかにしたら、めちゃくちゃハマりそう。
・・・いや、無理でしょ(汗)
・『ちびまんとジャンボ』
・・・フナムシ早食い競争で人気の大食いファイター、ちびまんが謎の死を遂げた。イベント興行会社の役員から、1日で事件の謎を解け。解けなければお前を殺すと脅された主人公は、と言うお話。
あーあ。もうなんか。タイトルからして、フナムシ早食い競争と言う競技からしてむちゃくちゃだよ!そしてこのイベント興行会社の役員である3兄弟が、まぁ、強烈。絵に描いたような倫理観も道徳観もぶっ飛んだ3兄弟で、ただただ引き攣り笑い。
てなことでその3兄弟に脅された主人公に残された猶予はたった1日。てなことで非常に濃い、悪い意味で濃い1日が描かれています。
ほかほかのゲロです。やたらと登場するワードです。もうヤダ(涙)
こんなに何もかも破綻しかかっているのに破綻していない。
ゲロもグロも、血も暴力も、ちゃーんとミステリーとして作品内に活用されている。
意味がわからない。
なお白井作品においては男女平等です。なんか『平等』の言葉の使い方、間違っているような気もするんですけど(汗)
てなことで収録作品の中でいちばん、女性が酷い目に遭っています。酷い目です。
どの作品の登場人物もお近づきになりたくはない。でも私は、この作品の登場人物、主人公と興行会社の役員3兄弟とは絶対に、絶対に、道ですれ違いたくすらない。
そう、心の底から願いました。
・『ディティクティブ・オーバードーズ』
・・・探偵たちが集った館で起きた殺人事件。不可解な状況で起きたその事件の謎を、探偵たちは解明しようと試みる。しかしその夜、探偵たちがワインを口にしたことで事態は思わぬ方向に進んでいき、と言うお話。
探偵たちが飲んだワインには、事件の犯人によって幻覚作用のある薬物が混ぜられていました。そのためそれを口にした探偵たちは、凄まじい幻覚に襲われることに。その幻覚に襲われたまま、探偵たちは事件の謎に対する推理をノートにしたためるのですが。
その内容が、まさしく『支離滅裂!』の一言なのです。
意味がわからない。日本語としてもよくわからない。すごい理論?とか計算式とか出てきているのもあって、それも全くわかんない。ページにびっしり、叩きつけるようにして書かれた探偵たちの推理。全然、わかんない。
わかんないわかんないわかんないわかんない。
『幻覚作用、すげえ!』の一言しか出てこねぇ!
まさしく『オーバードーズ』なんです。
過剰摂取。
探偵たちの推理。その脳内のオーバードーズなんです。
なんですけどね。
何が凄いって、この支離滅裂でしかない推理。探偵たちが幻覚を見ながら、しかし各々の個性を爆発させまくった推理。
ごっちゃごっちゃに絡まり合った糸。その結果として出来上がったような塊。
それが、後に登場する新たな探偵役によって解き、解されていくんです。
ちなみにその探偵の名前『岡下いろり』って言うんですけど。
本人が改名したいと言うその理由。気付いた時には、やはり呟かざるを得ませんでした。『もうヤダ』と(笑)
『?』と思われた方は、どうぞ彼女の名前をゆっくり、口にしてみて下さい。あるいは字で書いてみるとわかりやすいかもしれない。
で、そのいろりによる推理。
探偵たちが残した支離滅裂極まりない、およそ現実離れした推理。ぶっ飛んだ推理。それらが絡まり合って出来上がった塊。
それが解き解されていく流れが、もう『圧巻』の一言。
凄いの。凄いの。もうほんと『凄いの』と言う言葉しか出てこない凄さなの。
凄いの(圧)
めちゃくちゃ極まりない推理が。
推理と言うより、もはや探偵たちの幻覚が生み出した排泄物でしかなかった支離滅裂な論理が。
それがいろりの推理によって『推理』に昇華されていく。
そんな奇跡を目の当たりにしているような気持ちすら抱くくらいに、ただただ『美しい』『圧巻』の一言だったのです。
ねぇ、だから、何を食べてどんな生活を送っていたら、こんな作品を生み出せるの?
意味がわからないよ!
だけどそれだけ美しく、圧巻の推理を見せつけておきながら・・・。
この作品のラストよ・・・笑っちゃったよ。
どこまで本気なのか。どこまで我々を、その掌で転がしたいのか。
5作品の締めを飾るにふさわしい、白井智之作品の魅力。その唯一無二の黒い輝きに目を焼かれるような思いすらする1作です。凄い。
はい。
そんな具合で以上『ミステリー・オーバードーズ』の感想をお送りいたしました。
何度も言うようですが、作品の性質上、万人の方に対して『面白いよ!』とおススメできる作品ではありません。おっふ。
悪趣味。その一言に尽きると思います。褒めてます。
ただエロもグロも、暴力も。道徳観も倫理観もぶち壊れているのも。全て『創作物』と割り切って受け入れられる方で、本格ミステリーが大好きと言う方には、間違いなく楽しんで頂ける作品だと思います。
いや、なんだろ。ほんとこの人、天才だと思う。
何を食べてどんな生活をしていたら、こんな作品を生み出せるのか(何度目よ)
真剣に白井さんの頭の中を覗き見たい(危険)
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうごさいました!