tsuzuketainekosanの日記

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遅れましたが読書感想文をお送りします~『名探偵のはらわた』

連休終了!今日から4連勤!来週も4連勤がある!

嫌い!4連勤なんて大嫌い!

いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

お仕事なんて大嫌い!

ギブミービッグマネー!

 

はい。

若干、錯乱状態(笑)

 

そんな具合でタイトル通り、3月31日分の読書感想文です。

本日お送りするのは白井智之さんの『名探偵のはらわた』です。

シリーズ最新作『名探偵のいけにえ』が、去年末に発表された各種ミステリーランキングにおいて上位にランクインしたので、気になっていたシリーズだったのです。

で、今回『名探偵のはらわた』が文庫化されたので読んでみました。

 

ふむ。しかし『名探偵のいけにえ』、シリーズ最新作とはありますが。あらすじなどを見た限りだと『名探偵のはらわた』の登場人物の名前は登場していない、ですよね?

と言うことはあくまでもタイトル的なつながりがあるだけで、シリーズと言うほど、両者の間には密接な関係があるわけではない、と言う感じなのかしら。

 

まぁ、そこのところはいいとしよう。

『名探偵のいけにえ』も早く文庫化されてくれ(どーん)

 

てなことで『名探偵のはらわた』の簡単なあらすじです。

名探偵・浦野灸のもとで助手として働く21歳の青年、原田亘。その昔、浦野に助けられたことがある亘は、浦野に心酔していた。亘には3年前から付き合っているみよ子と言う女性がいるのだが、彼女は極端に自分の故郷を嫌っていた。だが奇しくも、みよ子が忌み嫌う故郷にてある事件が発生する。事件解決の協力要請を受けた浦野と共に、亘は事件が発生した地に向かうのだが・・・。

 

『名探偵のはらわた』はいわばオープニングである『記録』とエンディングである『顛末』の2章に挟まれる形で全4つの中短編が収録されている作品です。

で、先程のあらすじは1作目『神咒寺事件』のあらすじ、と言った方が正しいかもしれません。

作品全体のあらすじとしては、この『神咒寺事件』がきっかけで、昭和史に残る犯罪者たちが地獄の底から現世に蘇ります。その悪逆非道、大虐殺に、亘と、とある伝説の名探偵が推理の力で対峙する、と言う内容になります。

 

このあらすじでお分かりいただけるかと思いますが。

この世を去ったはずの犯罪者が、この世に蘇る。そして現世の人間に乗り移る。そう言う設定がある作品です。そしてその設定により、通常だと難しい部分も極めて単純にクリアされている、と言う部分もある作品です。

なので何と言うか『いや、それはフェアじゃないよね!』『そう言うのはあんまり好きじゃないなぁ』と言う方には、一応のご報告でございます。はい。

 

さて。白井さんの作品と言えば。えー、ウィキペディアの『作風』に書かれている紹介文をそのまま掲載しますと。

特殊な舞台設定や破天荒かつ不道徳な世界観を表現する作品が多くバラバラ殺人、少女趣味、エログロ、虫などを扱う、グロミステリーが得意である。

・・・グロミステリー(笑)

はい。白井さんの作品を全作、読んでいるわけではない私ですら『そうだよね。うん。グロだよね。グロで、ミステリーで、おまけにちょっと人を食ったような作風でもあるから、何と言うか読み手を選ぶ作家さんではあるとは思うよね』と感じるのです。

大体、これまで刊行されたタイトルからして『東京結合人間』とか『人間の顔は食べづらい』『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『死体の汁を啜れ』・・・って、もう笑うしかないですよね。引き攣り笑い(笑)

 

で、今作のタイトルも『名探偵のはらわた』。ストーリーも、実際に発生した大事件を思わせる、その犯罪者たちが蘇り殺戮の限りを尽くすと言うことで『こりゃ白井さんのグロミステリー、大炸裂してるだろうな』といろんな意味でわくわくしながら読み進めていったのですが。

 

いや、驚いた。良い意味でそんな予想は、まんまと裏切られた、そんな作品でした!

勿論、やっぱり思わず引き攣り笑いしてしまうような、そんな白井節と言うか。これまでの作品に感じたようなグロ、悪趣味と紙一重の、それ故に『笑うしかないわ!』と言いたくなるようなグロ描写もあるんです。人を食ったような描写もある。

あるんですけれど、そこが気にならないくらいに、そこに足を引っ張られないくらいの熱量、それに溢れている作品でもあった。

 

熱。それはたとえば、亘と伝説の名探偵が、大量殺戮者に立ち向かっていくことの熱であったり。あるいは、それぞれの事件の謎を解明していくこと。推理をすること。そこに対しての熱であったり。そこに何を求め、何を見出すのかと言う、真摯な思いからくる熱であったり。

そう言うのがひしひしと伝わってきて、読んでいてめちゃくちゃ胸を熱くさせられた作品でもあったのです。

だからほんとに『まさか!まさか白井さんの作品で、まさかこんなにも胸を熱くさせられるなんて!』となんか予想外の感動すら抱いた作品でもありました。

白井さんらしいグロミステリー、人を食ったミステリーでもありつつ、しかし同時に折り目正しい探偵小説、本格ミステリー小説でもある。

最強か。

 

特にですね。ミステリー好き、探偵小説好きの人間としては、ある人物が言い放った言葉、『お前の推理には体温がない』と言う言葉に、めちゃくちゃ震えまして。ええ。

この後には『顔が見えない。息が聞こえない』と言う言葉が続くのですが。

 

ここに、この言葉にこそ、何と言うか。

グロミステリー、人を食った作風の中でも、白井さんが追い求め、描き続けてきたミステリー作品への思い。思いと言うか、そこにかける熱量みたいなもの。それがばしっ、と込められているような気がして。

今までと描こうとしているものはきっと変わっていない。ただその描き方を変えられたことで、今までの作品ではなかなか感じづらかった(あくまで個人的な感触です)その熱量が、この『名探偵のはらわた』と言う作品では、ずばっ、と前に押し出されてきた。そしてこちらの胸を打ってきたんだろうなぁ、と感じさせられたのです。

 

いや、このセリフはめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。

『お前の推理には体温がない』

全てのミステリーは、人間がいてこそのものである。

罪を犯す者も、それに理不尽に翻弄される者も。

そして、その罪に隠されている真実を暴く、神に等しき名探偵も。

全ては体温のある人間である。

そんな思いを込めたこの言葉が、死んだはずの犯罪者が蘇る、あるいは伝説の名探偵もまた蘇ると言う本作品で描かれているのが、また憎いじゃないですか!

かっこいいよ!

 

で、先程も書きましたが、この作品では特殊な設定が生かされている部分もあります。

でもそれはほんの一部分。それ以外の部分の推理は、論理の積み重ね。伏線の回収。それによって『あー・・・成程なぁ』と感嘆するしかないような展開が繰り広げられています。これもまた胸熱。

1つの作品は1つの事件を描いているのですが、その中で同時多発的にいくつもの事件が起きるため、一見すると『難しいかなぁ』と言うイメージを抱きがちなんです。

でも全然、全然そんなことはなかった!ミステリー好きでありながら、作品によっては『難しすぎてちんぷんかんぷんだよ・・・ぐすん』となることも多いこの私ですら、非常に楽しく読め、そして完全に理解できるほどの推理の美しさ、やさしさだったので、そのあたりが不安な方にもおすすめできる作品です。

そしてまたミステリーであると同時、物語としても熱がある。体温がある。余韻があり、エンタメ性に満ちていると言うのも素晴らしい!

 

特に亘と浦野の関係。浦野は、ネタバレになるので差し控えますが第1話の『神咒寺事件』で思わぬ事態に巻き込まれ、そしてその後には・・・。

その出来事を経て亘と浦野・・・と言うか、元・浦野と言うべきか。とにもかくにもこの関係にも大きな変化が生じ、それに亘は振りに振り回されることになります。

このあたりの振り回されっぷりは、哀れさ漂う一方、妙なコンビ感も出ていて面白かったです。

 

そして最後の物語『津々山事件』では、亘は、そのー、元・浦野(わけがわからない紹介になってしまっていますが、これは本作を読まれた方なら、言いたいことはわかるはずです!)の推理に盾突く形に追い込まれるのですが。

そこの流れがまた、いいのよ。熱いのよ。

亘にとって、浦野灸と言う名探偵、1人の人間が、どれほどの存在感であり、どれほどの救いであったのか。

それが胸に流れ込んでくるような展開で、ぐっ、と来たのであります。

いいですね。ここにもまた『体温ある人間たちの物語』と言う思いが描かれているような気がしました。はい。

 

ちなみに。本作品に登場する犯罪者たち、彼ら、彼女らが起こした犯罪は、実際の犯罪者、彼ら、彼女らが犯した事件がモチーフとなっています。

たとえば男性を殺害し、その局部を切断した阿部定事件とか。

どの事件も目を覆いたくなるほどの悲惨さ、理不尽さであり、そしてまた犯罪者たちの身勝手な、けれどそこにもまた人間の体温、人生を思わせる背景が存在していることを考えると、何と言うか、妙な生々しさ。

決して他人事ではないと思わせる、そんな生々しさ、薄ら寒さみたいなものが感じられるのも、この作品の魅力ではないでしょうか。

 

さて。本作品のタイトルは『名探偵のはらわた』でございます。

このタイトルがその意味を発揮するシーンは、作中ではふたつあります。

ひとつは『神咒寺事件』の終盤。亘が心酔する浦野がある事態に見舞われ、そこに直面した亘が描かれるシーンです。そこである人物が呟くんです。このタイトルを。

そしてもうひとつは作品のラスト、ある人物が口にする言葉。

ここでは『名探偵』ではなく『探偵』と言う言葉が使われているのですが、とにもかくにも、そこでもこの言葉が登場しています。

 

前者の方は、白井作品らしい、グロに溢れた意味合いで。はらわた、だもん(笑)

そして後者の方は、ひとつの確かな熱。それを感じさせる意味合いで。

違った風合いで響く『名探偵のはらわた』と言うタイトルも、これまたお見事と言う他ありません!

 

てなことで本日は『名探偵のはらわた』の感想をお送りしてまいりました。

ってかそうか。この作品もまた2021年の主要年末ミステリーランキングにて上位にランクインした作品だったんだなぁ。

そして私としては、シリーズ続編の『名探偵のいけにえ』も本当に早く読みたい!

『名探偵のはらわた』が、そのタイトル通りの作品だっただけに、きっと『名探偵のいけにえ』も、そのタイトルの意味合いが、物語の終盤にどすん、と響いてくる作品なんだろうなぁ。

読みたい・・・早く文庫になっておくれ・・・。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!