tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2015年

順調順調。

このミステリーがすごい!』の歴史を振り返るシリーズ記事。本日は2015年の結果を振り返ってまいります。

 

てなことでまずは毎回恒例。その年に何があったのかを見てまいりましょう。

2015年ですか。今から7年前。まだ私は書店に勤めていた頃ですね。まだ後2年、書店に勤めつつ、怠惰な生活を送っておりましたことよ。はい。

 

2015年、個人的にまず思い浮かんだのが『刀剣乱舞』がスタートしたと言う話題。そうか、何だかんだ言いつつ、もうゲームが始まって7年経過しているのか~。

私は出演されている声優さんに惹かれて『よくわかんないけど、とりあえず事前登録しておこう!』と登録した人間でして。でもいざゲームが始まってからしばらくは、そのことすっかり忘れておりまして(笑)

多分、実際にゲームを始めたのは開始から1か月後くらい。2月くらいだったかな?で、いざ始めてみたらみたで、このようなゲーム、プラウザゲーム?と言うのも、育成シミュレーションゲームと言うのもプレイしたのが初めてだったので、そりゃ戸惑いましたことよ。

刀装の存在、その役割に気が付いたのは、ゲームを始めてから2か月くらい経過してからでした、ははははは!

 

それから社会面の話題に目を転じてみますと。今、何かと話題になっている『マイナンバー』、その制度が開始されたのもこの年2015年だったとのこと。

どうですか?皆さんはマイナンバーカード、もう取得されましたか?私は例によって例のごとく、面倒くさいの一点張りで何もしていないのですが。

今後はマイナンバーカードが健康保険証の役割も果たす。従来の、紙の健康保険証の人に対しては、窓口で支払う医療費が上乗せされるとか何とかで。そう言うのを聞くと、最終的には免許証もそうなりそうだから、今の内に申請しておいた方がいいのかなぁ、とも思うのですが。

 

おかしい。最初は強制でも何でもなかったはずなのに。

あくまで任意、個人の自由であったはずなのに。

 

何が嫌って、個人的には通帳と紐づけなければならないのが、本当に嫌。別にやましいことはしてないけど、なんか嫌。とても嫌。

でもなぁ・・・申請しておいた方が良いんだろうなぁ・・・ぐぬぬぬぬ。

 

はい。そんなこんなで2015年の振り返りはこの辺りにしておきまして。

ここからは本題。2015年の『このミステリーはすごい!』の振り返りです。

ja.wikipedia.org

いつものようにリンクを貼りつけておきますので、こちらから結果を見て頂きながら記事を読んで頂くと、いろいろわかりやすいかもしれません。

 

てなことで、この年の栄えある1位に輝いた作品は米澤穂信さんの『満願』でした。米澤さんはもはや『このミス』常連、それどころか1位常連の印象すらあるなぁ。こちらは私も読んでいますので、後ほど語りたいと思います。

それ以外では・・・まずは6位、月村了衛さん『土漠の花』、それから5位も同じく月村さんの『機龍警察 未亡旅団』、3位の下村敦史さんの『闇に香る嘘』ですね。

8位、黒川博行さんの『破門』とか4位の連城三紀彦さん『小さな異邦人』も読んだ記憶もあるのですが・・・記録がない。おかしい。私の勘違いか。とりあえず記録がないのでどうしようもないので、読んでないと言うことにしておきましょう。

 

ではでは、早速。6位、月村さんの『土漠の花』です。陸上自衛隊第一空挺団の精鋭12名が、ソマリア国境付近で墜落ヘリの捜索にあたっていた。その野営地に、とある氏族の氏族長の娘が駆け込んでくる。以前からいさかいのあった別の氏族の襲撃に遭い、逃げてきたのだとその娘は言う。捜索隊の面々は彼女を避難民として保護する約束をするが、その直後、野営地が兵士たちの襲撃を受け、と言うあらすじです。

日本の自衛隊員の男たちが、命を懸けて1人の女性を守り抜くため奮闘する姿を描いたサバイバルアクション小説?になるのかな?

 

月村さんと言えば、個人的にはこの次にご紹介する『機龍警察シリーズ』が一番に来る作家さんなのですが、このシリーズ以外にもめちゃくちゃ面白い作品を多数、発表されているのです。

で、こちらの『土漠の花』もそうした作品のひとつだと思うのですが。

これはあくまで、あくまで私個人の意見ですよ。この『土漠の花』に関しては、良い意味で非常に映画的、きれいにまとまった2時間の映画的な作品と言う印象があります。お話の筋としてめちゃくちゃわかりやすい、そして登場人物の感情もとらえやすい。ある意味『お約束』をしっかりと描いて、それを回収していく。人間ドラマあり、派手なアクションもあり。くさいほどに泣ける展開もあり、胸が熱くなる展開もあり、ハラハラする展開もあり。それ故、物語の世界に浸りやすい。良い意味で、ほんと『お約束』通りの作品なのです。

なのであまり普段、本は読まないと言う方や難しいお話は苦手と言う方でも、楽しんで読める、そんな作品だと思います。

 

私はこの作品で初めて月村さんの作品に触れたのですが、この後に『機龍警察』のシリーズ1冊目である作品を読んだ時には、良い意味で両作品のギャップ、作風の違いに驚いたと共に、しかし描かれていることの共通項みたいなもの。登場人物たちの熱き思いに『成程。これは凄い作家さんだ!』と思った記憶があります。

 

てなことで、5位はその『機龍警察』の4冊目にあたる『未亡旅団』です。個人的には『機龍警察』の中でもアクセル全開なのが、シリーズ3作目の『暗黒市場』とこの『未亡旅団』だと思います。アクセル全力で踏み込んで、全力ノンストップで爆走、みたいな。ちょっと何言ってるかわかんないけど。

今回、特捜部の前に立ちはだかるのはチェチェン紛争で家族を失った女たちで結成されたテロ組織『黒い未亡人』。公安部と合同で捜査にあたる特捜部だが、未成年による自爆テロをも辞さない彼女たちに翻弄される。一方、城木理事官は政治家である実の兄に対しある疑念を抱く、と言うのが簡単なあらすじです。

 

あー・・・思い出すだけで面白かった。めちゃくちゃ面白かった。また読みたい。もうね。この『黒い未亡人』の女たちの、深い深い、底知れぬ暗き情念、怨念。はたまた聡明で、優しい彼女たちが夢見た、夢見てしまった理想の儚さ。そしてその女たちを取り囲む男たちの身勝手さ。あるいは、もはや現世の地獄と言ってもいいような、ただただ過酷極まりない現場で、それでも人として、この国の、この国に生きる人々の平和を守るために戦い続け、立ち続けている特捜部や捜査員たちの熱き思い。そうしたものが、もう怒涛の勢いで、凄まじい重量を伴って、ぶわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!と押し寄せてくるんですよ。

だからもう読み手としては、ただただ翻弄されるしかないんです。

 

で、勿論、ミステリとしての面白さ。謎解き、ではないんですけれど『果たして真相はどこに!?』と言う面白さもあって、かつ従来のシリーズ同様、アクションシーンも満載。なのでもうね。ほんと。

頼むから読んで下さい(土下座)。私のへっぼこな語彙力、表現力ではどうあがいても『機龍警察』のシリーズとしての魅力を、十全に伝えることは不可能なので、頼むから・・・頼むから少しでも興味がある方は、とりあえず読んで下さい。頼む(土下座)

 

ちなみに。『全員が主役!』の感があるこのシリーズですが、お当番と言う言葉を使うのであれば、本作品は特捜部、1、2位を争う男前、イケメン2人。由起谷さんと城木さんがお当番だと思っています。それぞれがそれぞれに奮闘するのですが・・・待ち受けていた結末は、まさしく天と地。個人的にはこの作品で完膚なきまでに闇落ち寸前に追い込まれた彼の(ネタバレのために伏せておきますが)、今後の闇落ちっぷりが楽しみで楽しみでなりません・・・鬼か。

 

とにかく読め。四の五の言わず興味がある人は読め(どーん)

めっちゃくちゃ面白いから。めちゃくちゃ面白いから(大事なことなので2回言いました)

 

続いて3位、第60回の江戸川乱歩賞受賞作で下村さんのデビュー作でもある『闇に香る嘘』でございます。

いや、これ多分、受賞が決まった時にも話題になったように記憶しているのですが。作品そのものはめちゃくちゃ高評価だったのですよ。なんですけれど、投稿時のタイトルへの評価が散々で、とにかく散々だったんですよね。ウィキペディアで調べてみても、そのことがしっかり掲載されていたので、思わず『ふふ』となってしまいました。

 

満州で生まれ育った村上は、戦中・戦後の栄養不足が原因で41歳と言う若さで盲目となる。その数年後、もはや死んものと諦めていた兄が中国残留孤児として帰国し、村上は再会を果たす。しかし中国の養父母に育てられた兄に相容れないものを感じた村上は、自然と兄と距離を置くようになる。

それから数十年の時を経て、あることがきっかけで村上は、兄に腎臓移植の適合検査を受けて欲しいと頼む。しかし兄はそれを頑なに拒む。その理由すら話そうとしない兄に対し、村上はひとつの疑念を抱く。目の見えない自分の前にいる兄は、本当に自分の兄なのかどうかと言う疑念を。

 

主人公が視力を失っている。この設定が、もう凄い。その設定、見えない主人公の主観で、最後の最後まで物語を書き上げたと言う点だけでも、個人的には新人離れしていると言っても良いのではないか、そんなことすら感じたくらいです。

そしてその描写がすごくわかりやすく、だからこそ静かな迫力をもってこちらに伝わってくる。視力を失った主人公の生きている世界、主人公の感情、それらが伝わってくるかにこそ、この作品の最大の謎である『本当にこの人物は自分の兄なのか』と言う部分の引っ張る力、物語をけん引する力みたいなものも衰えないんですよね。

設定の珍しさ、目新しさだけではない。その設定をしっかりと生かし切る、描き切ると言う実力も実に素晴らしかったのです。

 

『兄』だと思っている人物に対する疑念。それが深まる中、『本当の兄』を名乗る人物からの電話があったり、差出人不明の、展示の俳句が届いたり、と謎が更なる謎を呼ぶ本作品。そこに中国残留孤児や腎臓移植、また視覚障害を抱えて生きることと言った社会的な問題も絡めて、物語は進んでいきます。

若干、その辺りの描写や謎解きのトリックがてんこ盛りすぎるきらいは否めませんが、まぁ、でも、個人的にはそれもまた嬉しいってもんですよ。

『兄は果たして兄なのか。兄でないとすれば誰なのか』、その謎を追い求める村上が見た真実とは・・・ネタバレになるので詳細は控えますが。兄の正体を追っているつもりが、実はじ・・・おっとここまでにしておこう。

 

さ、そして2015年の1位に輝いた作品、米澤さんの『満願』です。こちらは『このミステリーがすごい!』を含む年末のミステリーランキングの国内部門1位を総なめ。史上初のミステリーランキング3冠を果たした作品でもあります。

でもわかる。それくらい、何と言うか米澤ミステリ、米澤作品の最高峰のひとつと言っても過言ではないほどの完成度の高さ、そして面白さのある作品だと思います。『最高峰のひとつ』って表現が既におかしいんですけれど、米澤さんの場合、ほんと、最高峰がいくつもいくつもありすぎるんだよ~。

 

本作品は短編集。『夜警』『死人宿』『柘榴』『万灯』『関守』『満願』の全6篇の物語が収録されています。

それぞれのあらすじを簡単に、実に簡単に紹介していきますと、まず『夜警』はある警官が殉職した事件。そこに隠されていた真実とはと言うお話。

『死人宿』は過去の後悔からある女性の居場所を探す『私』が主人公。そこで女性と再会した『私』は、その女性から思わぬ依頼をされると言うお話。

父親の反対を妊娠と言う形で押し切り、不思議な魅力を持つ青年と結婚したさおり。しかし結婚生活はうまくはいかず、娘たちの親権を巡る裁判も勃発。よほどの問題がなければ、通常であれば母親が勝てるはず。そう信じていたさおりに衝撃の判決が下される。その理由を描いた『柘榴』。

仕事一筋で生きてきた男性。バングラディッシュでの天然ガス資源開発に挑んでいた男性は、しかしここにきて地元の村、その村長との交渉に難航していた。ところが開発による恩恵を期待する他の町民から思わぬ計画を持ち掛けられる『万灯』。

そして『死を呼ぶ峠』峠を取材することなったライター。その道中にあるドライブインの店主のばあさんに、ライターは取材を行う。ところがある会話を境に状況が一変する『関守』。

ラストの『満願』は、ある事件を巡る裁判。それに携わることになった男性が、事件の謎に迫っていく物語です。

 

いやね、もうね。ほんと、まさしく『珠玉』と称するにふさわしいほどの物語なんですよ、どれもこれもが。

で、米澤さんと言えば、個人的には文章がめちゃくちゃうまい作家さん、その代表格と言うイメージがあって。作品が面白いのは勿論なんだけれど、とにかく文章がうまい。そして端正で美しい。どこか透明感や冷ややかな質感があり、仄かな光沢を放っている、そんな文章と言うか。そして日本語の使い方、チョイスが抜群に素晴らしい。一切の妥協なく、丁寧に、考え抜いて考え抜いて言葉を使われている、選択されているのがひしひしと伝わってくるんですよね。

その美しく端正な文章で紡がれるミステリは、人の感情、その機微。時に暗く、時にとろりとしていて、時に色香があり、時にどうしようもなく生々しく。そうした感情の機微を過不足なく描き切っていて、読む側を物語の世界にすっ、と誘ってくれるのです。

 

そしてそれが短編になると、一層の、ある種の切れ味の鋭さであったり、短編だからこその満足感、余韻がある。なのでほんと、もう1つ1つの物語を読み終える度『ほぅ』と、満足の、読書における至福のため息がこぼれるような。そんな作品なのです。

もうね、めちゃくちゃ贅沢よ。贅沢。なんてかミステリは苦手よ、と言う方でも、米澤さんのこの美しい文章。それによって紡がれた、種々様々な人間模様、その感情。その物語と言うだけでも、絶対、読んだ方が良いってか読んでくれ(どーん)

 

てなことで、個人的には『夜警』の『こんなはずじゃなかったのに』に隠されていた真相。『うまく隠しおおせると信じて疑っていなかった』と言う、その感情のダメさ加減が、もう他人とは思えず(汗)。

米澤さんの美しい文章。それによって炙り出される人間の本性。あるいは狂った部分。毒。そうしたものが、しかしやはり美しく胸を侵食していくような『柘榴』もたまんないし。

あとはばあさんの本性。それがちょっとずつ、ちょっとずつ明らかになっていく。その緊迫感がたまらない、そしてあぁ、果たしてライターの命運やいかに!と言う『関守』もたまらんかったなぁ。ミステリでありながら、ホラーチックでもあり。

1人のビジネスマンの、欲に塗れた果ての暴走。そしてその先に待ち受けていた、誰1人として予想していなかったであろう結末がただただ恐ろしい『万灯』も好き。

 

全6篇。全てが全て異なる魅力に彩られた短編集。

史上初の年末ミステリランキング3冠は伊達ではないと、素直に感じさせてくれる作品ですので、未読の方は是非とも読まれてみて下さい!

 

そんなこんなで本日は『このミステリーがすごい!』の2015年の結果を振り返ってまいりました。

次回は2016年ですね。よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!