tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2020年

はい。そんなこんなで『このミステリーがすごい!』の振り返り記事です。

前回も書きました。そして今後も書くことでしょう(笑)

1989年分から振り返ってきました『このミステリーがすごい!』の記事ですが、いよいよ本日は2020年でございます。

そうして残りは2回。2021年と2022年のみ。

かっはー!そこまで来ちゃったか、来ちゃったか!

終わりが目前に迫ってきている、と言うわけです。

 

さぁ、代わりの記事、どうしようか(遠い目)

 

ではでは。いつも通り、まずは2020年に何があったかを見ていきましょう。

2020年と言うと3年前ですね。『たかが3年前、されど3年前』と言う感覚が強いのは、やはりコロナに対する認識の違い故でしょうか。

2019年末、中国の武漢で拡大した謎の感染症。その不穏な空気は、しかし当初はさほど大ごとのようにはとらえられていなかったように記憶しています。私もそうだった。

年明けすぐに新型コロナであることが判明。そして3月には、WHOが新型コロナの感染拡大はパンデミックに相当すると言う認識を明らかにしています。

 

ねぇ~・・・いや、今でも十分、その影響は残っているし、病床のひっ迫などは常にニュースなどで報道されています。ですがやっぱり、良い意味でも悪い意味でも、コロナに慣れてしまったと言う部分はありますよね。

でも2020年はそうじゃなかった。とにかく未知のウイルス、そしてどんどんと拡大していく感染の波に、皆が『何事っ!?』と慌てふためいた。4月に出された緊急事態宣言も、それに拍車をかけたように思います。

イベントはことごとく中止。エンタメ業界もほんと、一時、お通夜みたいな状況でしたものね。甲子園や卒業式、修学旅行などが中止になってしまった、その悔しさ、悲しみをどこにぶつければいいのか、戸惑う若い人たちの表情は、ニュースなどで見ていても本当にしんどかった。辛いのぅ・・・。

またマスクやトイレットペーパーを求めて、小売店には人が殺到。私の勤めている店も、凄かった。実に凄かった。言い方はアレですけど、ほんと、毎朝、開店前からずらりと人が並んでいて。開店と同時に、その人たちが店内に雪崩れ込んできて、我先にとマスク売り場、トイレットペーパー売り場へと駆けていく姿は、まさしく異様でした。

いやぁ・・・改めて思い出してみても、ほんと、すごかったなぁ・・・。

 

先程も書きましたが、エンタメ業界が大打撃を受けた年ではありますが、この年の10月に公開されたのが『鬼滅の刃 無限列車編』でございます。

コロナ渦真っ只中での公開でありながら、皆様もご存じの通り大ヒット。ついには『千と千尋の神隠し』を超えて、日本の歴代興行収入ランキング1位を記録しました。

 

ではでは。ここからは本題。『このミステリーがすごい!』の2020年の結果を、私が読んだ作品のみですが振り返ってまいりましょう。

ja.wikipedia.org

いつものように、こちらのリンクを見ながら記事を読んで頂くとわかりやすいかと。

はい。てなことでこの年の1位に輝いたのは、去年、ドラマ化もされましたね。相沢紗呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』でございました。こちらは私も読んでいますので、後ほど語りたいと思います。

 

その他、ベスト10にランクインしている作品の中で私が読んだ作品は・・・いつもならここで、ざーっとその作品を羅列していくのですが。

今回は8作品もあったので!羅列は割愛!早速、語っていきたいと思います!

 

まずは9位、米澤穂信さんの『本と鍵の季節』です。こちらは去年の秋に続編が刊行されましたね。まだ読んでないけど・・・読みたい・・・。

図書委員を務めている堀川と松倉。2人の男子高校生が、様々な謎の解明にあたると言う青春ミステリでございます。

 

青春ミステリ。でも作者は米澤さん。と言うことでファンの方ならよーくご存じのことでしょう。本作品で描かれている、と言うより、最後に浮かび上がってくる青春の形もやはり、一筋縄ではいかず、どこかほろ苦さを漂わせているのが、個人的にはたまりませんでした。それまでの、文系男子高校生の、地味で、きらきらとは程遠い、けれどさらさらと密やかにきらめいているような日々が、ちくっ、と切なさと痛みを伴って胸に差し込んでくるような。

ラスト、堀川君はそう言えば良かったんだと私は思う。思うけど、でも言えないよな。言えない。複雑な思い、複雑に変わった関係を抱えながら、それでも図書館で松倉を待つ決めた彼の、その静謐な思いも胸に染みてくる傑作です。

 

お次は7位ですね。こちらにランクインしたのは月村了衛さんの『欺す衆生』です。

戦後最大にして現代の詐欺のルーツともされる横田商事事件。その横田商事で働いていた隠岐は、そのことを隠しながら、どうにか日々を生きていた。ところがある日、同じく横田商事で働いていた因幡と再会。半ば脅されるような形で、隠岐因幡と共に『ビジネス』を立ち上げるのだが、と言うお話です。

 

いやぁ・・・月村さんの作品って、ほんとどれもめちゃくちゃ面白いんですけど。この作品ももう、めちゃくちゃ面白かったです。何て言うのか、時代と共に変化し進化していく詐欺、騙しの形。その一方で変わらない騙す側の執念と、騙される側の、ある種の愚かさ。そして騙す側も、騙される側も人間である、その悲哀、虚しさのようなもの。それらが『これでもかっ!』と言うくらいの筆力で描かれていて、もうずしずしとこちらに迫ってくるんですよね。物語の世界に飲み込まれそうになるほどの、暗い迫力。それがもうたまらなくたまらないのです(語彙力)

因幡と共に、どんどん、どんどん『騙しのビジネス』にのめりこんでいく隠岐。その彼に待ち受ける最後の結末は、これもう、あまりに強烈過ぎて、私はただただ笑うしかありませんでした。隠岐がここまで落ちに落ちた、しかしその最初にあったはずの思い。その根源みたいなものを考えると・・・この結末は、もうたまらんな。たまらん。

 

6位、阿津川辰海さんの『紅蓮館の殺人』ですね。

主人公の僕と友人は高校合宿を抜け出し、山中に隠棲したと言う文豪の館を訪れる。運悪く、落雷による山火事で身動きをとることができなくなった2人は、館に住む1人の少女と親交を深める。しかし翌朝、その彼女が無残な姿となって発見される。彼女の死は、事故なのか、それとも事件なのか。僕と友人はその真実を明らかにしようとするが、館の住人、そして山火事から逃れてきた者たちは、脱出を優先すべきだと言い始め、と言うのがあらすじです。

 

そうか・・・この作品、阿津川さんの作品だったのか。阿津川さんの作品、最近、いくつか読み、面白いなと感じたのですが。この作品に限っては、正直、ちょっと文章がわかりにくい。あと妙に鼻につくような主人公やその友人のキャラクター造詣、セリフ回しがどうにも気になって、あんまり楽しく読めなかった記憶があります。なんだろ。個性が強すぎるあまりに、逆に没個性的になっちゃっていると言うか。うん。

ただクローズドサークルものの緊張感。後半、怒涛の勢いで繰り広げられる推理パートの読み応え。更に『探偵とはなんぞや』と言う問いかけ含めて、その辺りは『なんか凄かった』と言う記憶があります。

こんな感想でごめんなさい(土下座)

 

5位は伊吹亜門さんの『刀と傘 明治京洛推理帖』です。

舞台は慶応3年、幕末の京都。新政府と旧幕府の対立に揺れるその地で、尾張藩士の鹿野師光は1人の人物と出会います。その人物の名は、江藤新平。後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物です。その2人が様々な事件の謎を解決していくを描くと共に、激動の時代に翻弄される2人の姿を描いた時代ミステリー作品です。

 

本作品は伊吹さんのデビュー作・・・と言うことでいいのかしら?だと思うんですけど、デビュー作とは思えないほどの完成度の高さなんです。文章の端正さも、ミステリとしての面白さも。そこにしっかり、時代、舞台が関係していることも。また登場人物の人間味あふれる造詣、その描き方、ドラマの構成力も。そこにまず驚かされましたね。うん。

時代物なんですけれど、鹿野師光と江藤新平、激動の時代に運命的に出会いを果たした2人のバディものとしての魅力にも溢れています。正反対な2人の躍動が愛おしくなってきた頃に、物語は最後のお話を迎え、そして・・・あのラスト。いやぁ・・・もう、めちゃくちゃ切ない。やるせない。そこに漂うのは、ある種、ブロマンス的な味わいでもあるので、私のような妄想想像逞しい方も、是非とも読んで下さい!

 

4位は奥田英朗さん『罪の轍』ですね。

文庫本で約830ページの超大作です。過酷な過去を生き抜いてきた孤独な男。その男が犯した罪を追いかける刑事たち。その双方の姿を描いた本作品。

去年のクリスマスイブに購入してから、体調不良もあってなかなか読み進めることができていなかったのですが、この度、めでたく読み終えることができました!

なので本作品の感想は、明日の読書感想文記事にてたっぷりと語っておりますので、よろしければそちらをご覧ください。よろしくお願いいたします。

 

さ。ここからはベスト3でございます!

おおっ、思ったよりもずっとコンパクトに記事がまとめられているので、ベスト3作品に関しては、少し長めに語ってまいりましょうかね。

少し長め(あいまいな言葉)

 

ではでは。まず3位です。3位にランクインしたのは今村昌弘さんの『魔眼の匣の殺人』でございます!

こちらは今村さんのデビュー作でもある『屍人荘の殺人』から始まる剣崎比留子シリーズの2作目です。

前作でシリーズの主人公、葉村や剣崎の2人。更には多くの人たちの人生を狂わせた班目機関。その謎を追うため、葉村と剣崎は『魔眼の匣』と呼ばれる、人里離れた村にある施設を訪れる。その施設に住むのは、預言者と恐れられている老女だった。

その老女は、葉村と剣崎を含む施設を訪れた9人に対し、こう告げる。『あと2日のうちに、この地で4人死ぬ』と。直後、葉村たちは脱出不可能な状況に追い込まれ、更には予言通りに1人が命を落とす。果たして、老女は本当に予言者なのか。そして葉村と剣崎は無事、施設から脱出することができるのか、と言うお話です。

 

なんだろ・・・シリーズ3作品、全部読んでいる身としては『よくぞまぁ、ミステリを書く作家として、ご自身の首を絞めるようなとんでもない舞台、とんでもない設定、とんでもない謎を思いつかれるものだ』と心底、思います。本当に。そして同時『そしてよくぞまぁ、ご自身でご自分の首を絞めるような舞台、設定、謎を思いつきながら、それを実に鮮やかに、美しく、ロジカルに畳みこまれるものだ』とも、心底、思います。いやぁ、今村さん、凄いわ。凄い。

本作品の謎解きは、前作『屍人荘の殺人』以上に、細い細い糸を手繰り寄せ、繊細に、しかし大胆に編み込んでいくような。そんな印象があります。一読しただけでは、なかなかわかりにくい。が、何度も読み返していく内に『!あぁっ!そう言うことか!』となった時の快感。そして『はぁ~・・・もう何も言い返せないっ!』と言う、爽快な敗北感は、たまらないものがあります。

また最後の最後には大どんでん返しも待ち受けていて、更なる驚きを味わわせてくれる言うのも、実にお見事!そして憎い!

言うまでもなくシリーズ1作目『屍人荘の殺人』を読まれてから本作を読まれた方が、正しく楽しめます。が、1作目のネタバレ云々を気にされないのであれば、本作品から読んでも問題はないと思います。

ひとつひとつの謎が解かれていき、やがてその点が線となった時に明かされる、ひとつの大きな謎。その正体。そこで襲い掛かってくる衝撃。是非とも体感して下さい!

 

続いて2位にランクインしたのは、横山秀夫さんの『ノースライト』でした!本作品も、2020年にドラマ化されているのですね。主演は西島秀俊さんと言うことで、ご覧になられた方、いらっしゃいますか?

一級建築士の青瀬は、吉野と言う夫妻から、信濃追分に『あなたが住みたい家を建てて欲しい』との依頼を受ける。設計した家は雑誌でも紹介されるほどで、青瀬の代表作となる。

しかし引き渡しからしばらく経過した頃、雑誌でその家を見かけ訪れた人から、家に人が住んでいる気配がない、と聞かされる。青瀬は、建築事務所所長共に現地を訪れるが、鍵は破壊されており、室内は無人。一方、光熱費は口座引き落としできちんと支払われていた。また室内には一脚の椅子が残されていた。その椅子がブルーノ・ダウト作のものではないか、と気づいた青瀬は、この不可解な状況の謎に迫っていくのだが、と言うのが簡単なあらすじです。

 

ミステリなんですけど、でも派手な謎解きやトリックが炸裂すると言う作品ではありません。まぁ、横山さんの作品、多くはそう言う作品ですけれどね。人の心、その機微をも含めた様々な動きが生み出す謎を、じっくり、炙り出すように描く。横山作品はそう言うイメージがあるのですが、本作品もどちらかと言えば、それに近い感じです。

そこに青瀬と言う1人の男。その人生の紆余曲折。彼なりの歩み。それが残してきたもの。また残せなかったもの。そうしたものも含まれることで生まれる『人生』と言うものに対する、様々な感情が実に胸に染みいるのです。後悔も、苦々しさも、歓喜も、希望も、一切合切のそれが描かれ、詰め込まれ、人間ドラマミステリとして描かれ切っていると言いますか。何と言うか、『大人の青春』と言う言葉が、読了後、私の胸には浮かんできたのです。

また吉野一家の謎多き失踪に加えて、作中では青瀬たちは大きなコンペに挑むことになります。それが生み出す、職業人としてのプライド、業界内の緊張感あふれるやり取り、何よりコンペの行く末なども、物語に深みを生み出していると感じました。

じっくり、じっくりと描かれるのは、ままならぬ人生の、しかし、それでもなお完全には『何か』を諦めきれない、捨てきれない『大人』のミステリ。著者の持ち味が存分に生かされていながら、それでいて新たな境地を見せつける作品です。

 

そして栄えある1位に輝いたのは、相沢さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』でした。この年の年末ミステリランキングは、ほとんどこの作品が1位を獲得したんじゃなかったのかな?

でも、それも頷ける、個人的にはとんでもないことをやってのけた、とんでもない作品と言う印象があります。去年にはドラマ化もされましたね。第1期とでも言えばいいのかしら?続編である『invert 城塚翡翠倒叙集』に入る前の最後のお話。

あそここそ本作品の最大の肝であり、あの、小説だから生み出される迫力が、果たしてドラマで再現されるのか。私は勝手に心配していたのですが・・・ネットの評判を見た限りでは、とても素晴らしかったようですね。清原果耶さん、ありがとう・・・。

 

小説家の香月は、とある事件を通じて城塚翡翠と言う女性と知り合う。実は城塚には、死者の言葉を伝えることができると言う能力があった。その能力故、孤独な人生を歩んできた彼女は、しかしその能力を生かして、死者に関する相談事を受ける仕事を無償で行っているのだった。

城塚の伝える死者の言葉をもとに、香月が論理的な推理を組み立てる。2人は互いの能力を生かしながら、様々な事件の謎を解明していく。そしていつしか2人は、互いが互いに恋愛感情を抱くようになっていた。

一方、巷では、20代の女性を狙った連続殺人事件が起きていた。その魔の手は、城塚のすぐ傍にも迫ってきており・・・と言うのが簡単なあらすじです。

 

この作品に関しては、多分、ブログでも結構、語ったような気がします。なのでその繰り返しにはなってしまうのですが。

いや、ほんと。冒頭にも書いた通り、とんでもないことをしでかしている作品です。

『大どんでん返し』と言う惹句が、この作品を語る際には使われることが多いと思うのですが。確かに、あの真相には驚かされました。うん。でも個人的にはそれ以上に、度肝抜かれた感が強いと言うか。

『そんなっ!自分で組み立てた、作るのめちゃくちゃ難しくて、めちゃめちゃ時間がかかった実に美しくかつ繊細な砂の城を、わざわざ自分でぶっ壊すようなマネを!?』と真剣に我が目を疑ったと言いますか(笑)

それくらいのことをしでかしているんです。この作品。そしてそれだけのことをしでかしていながら、もう一度、めちゃくちゃ難しく、時間のかかる砂の城を作り上げて、結果、それは以前にも増して美しく、繊細で、更に強靭さも迫力も増していて、もはや太刀打ちできないものである・・・と言うことをやってのけているんです。うん。

 

何を言っているかわからないと思います。

が、ドラマを見た方なら、あるいは作品を読まれた方なら、少しはわかっていただけるかと思います。

いやぁ・・・凄い。あの衝撃は『大どんでん返し』で味わうそれとはまた違う感の衝撃だったなぁ~。

『ドラマは見たけど原作小説は未読よ』と言う方!ドラマと小説とではまた異なる味わい、印象、衝撃があるとと思いますので、是非、原作の本作品も読まれてみて下さい!

 

はい。そんな具合で本日は2020年の『このミステリーがすごい!』を振り返ってまいりました。

次回は2021年ですね。今から2年前か。どんなだったっけか?

たった2年前。されど2年前。ほとんど思い出せない(ちーん)

よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!