3月も今日で終わり!明日から4月だよ!
『明日から新生活が始まる』と言う方も多いのかしら。羨ましいわね、ふふふふ。
今日も、明日も、明後日も、明々後日も、私は代り映えのないあの職場で、鬱屈とした感情と苛々を抱えながら働き続けるよ!
ちなみに4月の占いを見てたら、ある占いで『獅子座は4月後半にキャリアに大変化が押し寄せる予感。今の職場にこだわる理由は何ですか?プライドよりも、収入よりも、大切なことがあるかもしれませんよ』って文言を見つけました。
今の職場にこだわる理由ですか?プライドよりも、収入よりも大切なことですか?
某大人気バレー作品に登場する名台詞『プライド以外に何があるって言うんだ!』(CV斉藤壮馬さん)のように潔く、答えられたら良かったんですけど。
残業無し、社会保険完備、朝から夕方までの勤務、以上です。
プライドよりも収入よりも、社保完よりも大切なこと、そりゃ、あるでしょうよ。
あるでしょうけど、仕事に関しては、現実は、それだけで踏み出して『はい、万々歳!』と言うほど優しくはないですしなぁ~。
4月後半。今から既にもう怖い(汗)
それはそうと、コロコロ話題が変わって申し訳ないですが。
『世界ふしぎ発見!』終わっちゃいましたね。
世界は広い。そしてどんな場所にも、人は生きている。そんなことを教えてくれた、本当に壮大で、楽しい番組だったなぁ。
んぁ~、世界一周を夢見ていた私は、一体、どこに消えてしまったのか・・・。
はい。
そんなこんなで前回はお送りできませんでしたが、無事、本日はお送りできます。
1が付く日の読書感想文です。
本日、感想をお送りするのは道尾秀介さんの『雷神』です。
道尾さんと言えば、個人的にはデビュー作(でいいんですよね?)の『背の目』からずっと作品を追いかけ続けていた作家さんです。
ただ途中から、その作風が、作品によってはミステリー色が薄いものも増えてきて。そこからはあんまり追いかけられていなかったのですが。ただし直木賞受賞など、折に触れてのそのご活躍ぶりには『ふふん。私は、道尾さんをデビュー作から知っているんだよ』と人知れず、厄介なファンアピールをしておりました。すいません。
近年だと『N』ですかね。本作品は全6章の物語。それをどの順番で読むかによって、物語の全容も、味わいも、そして結末も全く違ってくると言う、実に面白い工夫に満ちた作品なのですが。
ただし刊行された順で言えば『N』よりも本作『雷神』の方が先だった。
2021年に刊行された際には『久しぶりにがっつり、道尾さんのミステリーを楽しめそうだぞ!読みたい!』と思い続け、結果として『早く文庫になって!』と待ち続けていたのですが・・・約3年の時を経て、2月に文庫が発売されたので速攻購入し読みました。
文庫の帯には『最後の1行まで驚愕が迫ってくる 大どんでん返し!』と言う惹句がでかでかと踊っているのですが。
個人的感覚から結論だけ言うと『だからこう言う、派手なだけの惹句は止めようよ~』の一言です。
いや、確かに最後の1行まで驚愕だし、大どんでん返しもあるのです。そして勿論、そうした部分、ミステリーとしての面白さ、炸裂する仕掛けに翻弄される快感、魅力と言うのも存分に堪能できる作品なのですが。
それでも、何と言うか。こう言うわかりやすい惹句では決して収まりきらない、かつそこには該当しない魅力にも溢れている作品なのですよ。そして個人的には、そこの魅力の方がより深く、心に残っている作品でもあるのです。
てなことで前置きが長くなりましたが、まずは作品の概要です。
小料理屋を営む藤原幸人のもとに、1本の電話がかかってくる。ある『秘密』を知っていると脅迫するその電話の内容は、決して、娘の夕見には明かせないものだった。
ある日、幸人、そして彼の姉である亜沙実は、夕見から行ってみたい場所があると、ある写真集に収められた写真を見せられる。そこは幸人、亜沙実が生まれ育った故郷の地だった。
幸人、亜沙実、そしてその父と母は、かつて、その地で大いなる悲劇に見舞われていた。その過去に向き合う決心をした幸人は、夕見、亜沙実と共に30年ぶりに故郷の村に赴くのだが、と言うのが物語の導入です。
かつて、その村で慎ましく生活を送っていた藤原家。
しかしその生活は、幸人と亜沙実の母親が謎の死を遂げたことで一変します。その翌年には、村で開催される伝統祭の当日、亜沙実が落雷の直撃を受け、生死の境をさまようと言う事態に。更にその祭りで出されたキノコ汁を食した村の権力者の男性たちが、命を落とす、もしくは重体になると言う事件も発生。
その犯人として疑われたのが、幸人と亜沙実の父でした。しかし父は逮捕されないまま村から離れます。
事件の真相を知っていると思しき宮司。亜沙実の同級生の母親であるその女性は、遺書を残し、自殺してしまい、事件の謎はいまだ解明されていないままです。
帰郷した幸人、亜沙実、そして夕見がこれらの事件の謎を探っていく様子が、物語では描かれています。
一言で言うなら哀切極まりない話です。どうしようもなく哀しく、どうしようもなくやるせない。言葉ではなかなかうまく表現できないような、ただただ胸を塞ぐような感情に襲われる、そんな作品であり読後でした。
だから、なのです。
この感情と、帯の惹句、『驚愕が迫ってくる』や『大どんでん返し!』と言う派手な文句が、私の中ではどうしても結びつかなくて。なんかそう言う派手な惹句に、この作品の哀切さ、それがかき消されてしまいそうな気がして。
だから最初、散々、この帯の宣伝に文句をつけちゃったんですけど。
ただ結論から言うと『大どんでん返し!』の方は『そんなでもなくない?』と言う感じだったのですが『驚愕が迫ってくる』は『確かに』の一言でした。
ただしその驚愕の裏にある真実が、とにかくやるせないんです。哀しいんです。
幸人と亜沙実、2人の母親の死。少しネタバレになってしまうかもしれませんが、それがすべての悲劇の始まりであり、そこにあったのはただただ汚れた欲望のみだったのです。
その欲望の犠牲に、2人の母親はなってしまった。そしてその母親の犠牲が、新たな悲劇を生み出し、新たな罪を生み出してしまった。
普通に、慎ましく、ただただその地で穏やかに生活していた藤原家。
その命運を狂わせた、その最初のきっかけが、藤原家の誰1人として悪くはないところから始まったものであると言う事実。藤原家はただただ理不尽に、そこに巻き込まれただけであると言う事実。その果てに、新たな罪が生まれてしまっただけだと言う、その真実がとにかくやるせないの一言。
そしてまた、その因果を断ち切るかの如く、亜沙実の体を貫いた雷撃。
その存在もめちゃくちゃ重要な役割を果たしていまして。
そこにもまた、ただただ重い溜息をつくしかないような感情に駆られるのです。
でもこれもまた、自分たちの力ではどうしようもないことじゃないですか。雷なんて。自然現象なわけですし。
だからまた、ここにも、どうしようもない、どこにぶつければいいのかわからないやるせなさを抱かずにはいられなくて。
そしてラストですよ。ラストの一言。これは夕見からある思いを打ち明けられた幸人が抱いた思い、それがモノローグで綴られているのですが。
この一言が・・・もう・・・ほんとに。
それまでの物語を読んできて、そのやるせなさ、切なさ、哀しみと言う名の鈍器で静々と殴られまくった心に、止めを刺すかのような一言でして。ええ。
あまりの救いようのなさ、救われなさに。だけど、その一言は真実であると心の底から思うからこその、これまたどうしようもなさに、私はただただひきつった笑いを浮かべることしかできなかったのです。
おっふ。
幸人の妻であり夕見の母である女性は、夕見が幼い頃に不慮の事故で亡くなっているのです。ただしその死にも、色々と事情があり、その事情を、幸人は、決して娘には、夕見には知られてはならない。そう固く心を決めているのです。
その幸人が、絶対に秘密を知られてはならない。守り通そうと心に決めた相手である夕見からの一言を受けて、思ったあの一言と言うのは・・・ただただ辛い。
ってか改めて読み返してみたけど、やっぱり打ちのめされるわ。
慈悲はないのか。ここには、微塵の慈悲も存在していないのかっ!(涙)
でも、そうなんだよな・・・。
これが現実なんだよな。
どれだけ日々を慎ましく、精一杯、ただ生きているだけでも、まったく自分たちの意識とは関係ないところから、大きな力が襲い掛かってくることはある。そしてその大きな力によって、平凡な、穏やかな日常が一変してしまうこともある。
それを前にして、無力な人間に、一体どれだけのことができようか、と。
そんな思いにも駆られて、ただただ項垂れるばかりなのです。
現実は残酷で苛酷だ。
その残酷で苛酷な現実が、途切れることなく紡いできた因果の糸。
それに絡めとられた登場人物たちの生。
誰もが誰かを、大切な誰かを思っていた。
ただそれだけなのに、その果てに待ち受けている光景の、実に荒涼たるや。
そこにただただ立ち尽くすしかない幸人の心情含め、その哀切さに、皆さんも打ちひしがれるがいいさ!
そしてミステリー的な仕掛けについても、めちゃくちゃ読みごたえがありました。
犯人が誰かと言う点は勿論のこと。事件の真相を解く手がかりとなる、宮司が遺した遺書。そこに隠されている秘密。
それが解明された時の『あぁ~、成程!』と言う驚きと、それから次々と点が線になっていく、そしてそれに合わせてひとつひとつの謎が解き明かされていく流れはお見事の一言。まさにミステリー小説だからこその快感を味わうことができました。
とは言え・・・これまた、その秘密を施した人。その人の心境を察すると、もう言葉にならないんだよなぁ。
辛い。
先ほども書きましたが、本作品で重要な役割を果たしている雷。
作中で登場する『雪おこし』と言う言葉は、毎冬、それが来ることで『あぁ、雪が降る』と絶望的な気持ちにさせられる私にとっては、とてもなじみのある言葉です。
ただし本作では、そのなじみのある言葉。なじみのある冬の雷が、何かもっと強大な力を帯びた存在。まさしく地上で生きるすべての生命を罰するかのような力を持った、そんな存在のようにも思えまして。
ただただ言葉を失うと共に、その無慈悲さに、やはり項垂れるしかないのでした。
辛い。
何と言うか『感情が死んだまま生きる』と言う言葉が、今、ふと頭に浮かんできて。
幸人は勿論なのですが、作中でやはり重要な役割を果たしている女性。その女性のこれからの人生を思うと、これまたもう、しんどいの一言なのです。
ってかこの作品。あとがきでも触れられていましたけれど、『村』に囚われた女性。囚われながらも、それでもただ平穏な生活を望んでいた女性。だけどそれすら叶わなかった女性たちの生の在り方、その描写もまた、めちゃくちゃ胸を重くさせてくるんですよねぇ。
辛い。
てなことで本日は道尾秀介さんの長編ミステリー『雷神』の感想をお送りしました。
ままならぬ人生、その悲しみ、残酷さ。そこに振り回された人々の哀切。
それが織りなすミステリー作品でございます。あぁ、辛い。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!