tsuzuketainekosanの日記

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読書感想文をお送りします~『放課後探偵団2』

ここ数日、毎日、アニメを見ては泣いている私がいる・・・。

 

読書感想文をお送りいたします。

本日は東京創元社さんから文庫で発売された『放課後探偵団2』です。

だいぶ前に発売された文庫で気にはなっていたのですが購入しないまま。月日が流れ『読む本がない』と思ったところで本作品のことを思い出し、購入した次第です。

 

学園ミステリーアンソロジーである本作品。その1作目である『放課後探偵団』には相沢沙呼さん、市井豊さん、鵜林伸也さん、梓崎優さん、似鳥鶏さんと言う1980年代生まれの、発売当時新鋭だった作家さんが参加されていました。

それから10年の月日が流れて発売された『放課後探偵団2』に参加されているのは、1990年代生まれの作家さんたち。

 

・・・ってか、そうか。

もう2000年生まれの方も、23歳なんだよな。

恐ろしや・・・。

 

話を戻します。てなことで『放課後探偵団2』に参加されているのは本格ミステリーの分野でも活躍目覚ましい青崎有吾さん、斜線堂有紀さん、『響け!ユーフォニアム』の武田綾乃さん、辻堂ゆめさん、額賀澪さんの5名が参加されています。

 

ではでは早速、全5つの物語の中で最も私が好きな作品から感想を書いていきます。

その作品は・・・どんっ!

斜線堂さんの『東雲高校文芸部の崩壊と殺人』です!拍手!

お話の内容はタイトル通りです。部員僅か6名。しかしそれなりに和気藹々と文芸活動に勤しむ東雲高校文芸部。その文芸部内で起きた1つの殺人。それによって炙り出された部員たちの心模様。そして部の崩壊を描いた作品です。

 

やはり学園、学校が舞台と言うこともあってか、殺人事件を描いた作品って『放課後探偵団』でもなかったように記憶しています。つまり本作品が初。そこが最高に斜線堂さんらしいと感じたし、なんだろ。斜線堂さんの作品らしい、登場人物たちの心の本音。その鋭さと黒々とした光、どす黒いのに何故か個人的には共感しかないようなそれがさえに冴え渡っていたような、そんな作品でもあると感じたからです。

斜線堂さんの作品、全部を読んでいるわけではないから偉そうなことは言えないんですけど。それでも登場人物たちが皆、どこか浮世離れしているような、それでいて実に生々しい欠陥を抱えているようで、そこが私は好きです。

なんだろ。物語の登場人物らしい造詣なんだけれど、でも、その生々しい欠陥ゆえに、めちゃくちゃその存在が生々しいと言うか。

 

また50ページ程度の短編ながらしっかり本格ミステリーしていたのも好き。推理パートはとても読みごたえがありましたし、何より事件、それがしっかり『青春』、痛々しいほどのそれと絡んでいたのも最高に最高。

1人の少女が『主人公』になるために事件を利用した。その気持ちは最高に悪だし間違っているし、でも最高に、その気持ちが私には、彼女と同じように高校時代『何者にもなれやしない』ことを突き付けられ絶望し、虚しさに駆られ何とかして『何者かになりたい』『特別になりたい』とただただ願っていた私には、理解しかなかったです。

そして『特別な存在』である、この事件における名探偵。その名探偵自身が、特別であることを許されているはずの名探偵自身が、そのことに関して自らを『探偵気取り』と自覚しているのも、最高の一言でした。

 

後味の悪さがもっと突き抜けても良いのに。それ以上に、ただただ切ないまでの痛々しさとすべてが崩壊してしまった哀しさ。それだけが胸を締め付けてくる、そんな作品です。痛切な、青春の物語。斜線堂作品はいいぞ~。

 

ではここからは、他の作品の感想も収録順にお送りいたしましょう。

まずはトップバッター、武田さんの『その爪先を彩る赤』です。

演劇部から消えた赤い靴。劇の上演で使うはずだったその靴が消えた原因を探って欲しい。生徒会へと寄せられたそんな依頼に、生徒会役員である『僕』は1人の少女とあたることになるのだが、と言うお話。

 

物語の途中で明かされた『僕』の正体には『成程』とにんまりでしたが、その『僕』と共に事件にあたる少女、久津跡さんの真相には、ふふ、私、気づけたぞ!

この2人の、陳腐な言い方をすれば『本当の自分』。本来ならばもっとシビアに、深刻そうに語られてもおかしくないようなそれが、だけどあくでもコミカルに、さらり、と描かれていたことに、私は非常に好感を持ちました。

だからこそなおのこと『本当の自分』をさらけ出すことが難しい、『なりたい自分』の前にもがき苦しむ、そんな思春期の繊細さや、更に言えば『学校』と言う場所の特殊性のようなものも際立っていたよなぁ、とも感じたと言うか。

くだらなさすぎる理由とは言え、事件の真相、その裏側に潜んでいた事情も実に愛らしい、青春ならではじゃないですか!ラストシーンも相まって、にまにましてしまうような。にぎやかで楽しい作品でした。

 

次に斜線堂さんの作品が収録されていて。

その次には辻堂さんの『黒塗り楽譜と転校生』が収録されています。

合唱コンクールが間違に迫り、その練習に明け暮れているある三年一組。しかし一部の生徒を除いては、合唱コンクールに向けての士気は今一つだった。そんな中、練習で使うはずだった楽譜が、何者かによって真っ黒に塗りつぶされていると言う事件が発生、と言うお話です。

 

なんだろ。先に挙げた斜線堂さんの作品の後に来ていたからか。なおのこと、実にドストレートな、『アオハルっ!』と表記するにふさわしいほどの青春が描かれていたよう感じられた作品でした。

合唱コンクール、あったなぁ。本と、その時のクラスのメンバーによって、こう言う行事に対する熱意、意欲みたいなものってかなり変わってきますよね。いつだったか。中学3年か?その時の私のクラスの合唱コンクールに対してのやる気のなさったら・・・今でも記憶に残っているくらいの有様だったなぁ・・・懐かしい(苦笑)

ただどうだろ。ひねくれ者の私からすると、まっすぐすぎて、良い意味で実にシンプルな青春物語。登場人物もみんな『いい子』だったからこそ、ちょっと物足りなさも感じたと言うか。そんなものも感じてしまった作品です。

ごめんね・・・ひねくれ者で、ほんとごめんね(土下座)。だからこそ、正々堂々青春物語×ミステリーが好きと言う方には、いちばん、この作品がおススメできるかな。

 

で、4作品目が額賀さんの『願わくば海の底で』です。

高校二年生だった主人公の僕。その日常、否、人生をも一変させたとある出来事。それによって行方知れずになった先輩の存在。大学進学を機に故郷を離れていた僕は、久しぶりに帰郷した際、とある人物と再会する。そしてそこで思わぬ依頼をされるのだが、と言うお話です。

 

お話としては、このお話も好き。斜線堂さんの作品とどっちを挙げようか、迷ったくらいに好き。

ものすごく重たい作品です。『とある出来事』と言うのは、現実社会でも起きた出来事です。だからもう、この物語自体、非常に生々しかった。この物語で描かれていたこと、起きていたこと。それは実は『物語』でも何でもなく、本当にあったことなのではないか。そんなことを思わせるくらいの、圧倒的な生々しさ。あるいはひたひたと迫ってくるような、静かな迫力。そこから来る圧倒的な痛み、辛苦があって、それに押し潰されそうな作品だと感じました。ただただ言葉を失うと言うか。

 

ただ最終的に斜線堂さんの作品を1位に挙げたのは、すいません。ひとえに額賀さんの文章との相性の悪さをひしひしと感じてしまったからです。

全体的に比喩表現が多い。硬質な文章で、非常に日本語として美しい文章なのですが、比喩的表現が多い(あくまで私の感覚ですが)ために、一周回ってどうしても鼻につくような感も否めなかったと言うか。

あと、作中で取り上げられているその出来事。その中にあった、そして今なお、その中にある人たちを描くと言う、非常にデリケートな題材を取り上げているが故の繊細さと言うのは伝わってくるのですが、それでもやはり、登場人物たちが同じような内容の会話を繰り広げているのが気になって仕方なかった。そこで一気にテンポの停滞感が生まれてしまっているようにも感じられてしまった。

でもこの文章、この文体だからこその、この作品なのだとも思います。なんだろ。語弊ある言い方かもしれませんが、私は『安易な共感』を拒むような、そんな作品だと感じました。

だけど物語の終盤で明かされた、ある人物が抱えていた秘密。何故、それを抱え込んだままで、沈黙したままでいたのかと言う、その感情には共感を覚える人は多いのではないかな?

 

あととにかく、回想のみで語られる先輩、そのキャラクターが実に魅力的。だからこそより一層、ラストの一文に胸を穿たれるような思いがするのです。

そんなこんなでやっぱり好きな作品ではあります。はい。

 

そしてラストは青崎さんの『あるいは紙の』です。

格闘技場裏に度々、捨てられている煙草の吸い殻。同じ新聞部に所属している向坂の一言で、その話題を記事にするため、新聞部副部長の倉町は吸殻を捨てた人物を探すことになる。張り込みの結果、各闘技場裏で煙草を吸い、その吸殻を捨てていた人物を特定した倉町と向坂。しかしその人物は、自らが喫煙していたこと、更には吸殻を捨てたことを頑なに認めようとしない。倉町と向坂は、この話題を記事にすることを諦めかけるが、と言うお話です。

 

裏染天馬が登場します。って、さも知っているかのようにして書いていますが、すいません。私は彼が初登場した青崎有吾さんのデビュー作『体育館の殺人』はリタイアしてしまっており、それ故、それ以降のシリーズ作も読んでいないので、彼のことはまったく知りません!

ただあくまでこの作品での印象ですが、アニメオタクで頭の回転が速い。犯人を追い詰めるのは得意でも、内面に踏み込み踏み込まれるような普通の友達同士のような会話は苦手、そんな裏染くん。めちゃくちゃ好感が持てました。

うーむ・・・再度『体育館の殺人』、挑戦してみようかな。

 

はい。そんな具合なのでこの作品に登場している向坂さんや倉町くんも、裏染天馬シリーズを読まれている方ならおなじみの面々なのかもしれませんね。

禁煙であるはずの学校で喫煙していた人物に、その行いを認めさせることができなかった。それどころか、その人物に証拠隠滅まで図られてしまった。

その現実に倉町くんの心は、この事件自体を記事にすることを諦めてしまいそうになります。けれどそれでも、諦めきれないその思いの裏側には、いつも、どんな時も、前向きに、一生懸命に、無理をしてでも突っ走る向坂さんの存在があったから。その向坂さんの頑張りを、無理を、暴走を倉町くんは知っていたから。

そしてまた、裏染も向坂のそうした姿を、思いを知っていて、不器用に、彼なりに心配をしていたのです。

そんな2人の少年の思いが、実にこの2人らしい言葉のやり取り、思いのやり取りで交わって、倉町くんが思いを新たにして、そして、と言う展開も実に胸熱でした。推理部分の展開も『平成のエラリー・クイーン』の異名を持つ青崎さんらしい、ロジックが鮮やかに冴え渡る作品であるのも魅力的です。

 

はい。そんなこんなで本日は『放課後探偵団2』の感想をお送りいたしました。

第1作目である『放課後探偵団』を読んだのがもうずいぶん前なので『梓崎優さんの作品がとにかく良かった。泣いた。めちゃくちゃ胸を締め付けられた』と言う感想しかお覚えていないのですが。

それでも作家さんの個性、それが炸裂していたことは確かで、そう考えると今作『放課後探偵団2』も実に各作家さんの個性、魅力がばらけて、それぞれがそれぞれの色を放っていた、そんな印象があります。

 

『学園を舞台にしたミステリー』と言うテーマでも、これほどまでに作品の雰囲気、内容がばらけるのって、いやいや、本当に面白いですね。

そして『放課後探偵団3』は、このペースでいけば、2030年に、2000年代生まれの作家さんによるアンソロジーとして発売されるのでしょうか。

先が長い話ではありますが今から楽しみではありますね、ふふ。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!