tsuzuketainekosanの日記

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読書感想文の日~『誰が勇者を殺したか』

と言うことで今年も1日を除く1が付く日を基本に、読書感想文をお送りしていきます。

今回のようにその日、仕事がお休みだった場合には、その前後にお送りします。また本が読めていない。あるいは読んだ本がなにひとつ刺さらず、感想を書こうにも書けないと言う場合には、お茶を濁した記事を書くと思います。

何卒、よろしくお願いいたします。

 

新年早々から色々なことが起きた2024年ですが、今年も可能な限り、本が読める環境、状況でありますように。

 

てなことで本日、感想をお送りするのは、駄犬さんの『誰が勇者を殺したか』です。

ペンネームの圧が強い。強いと言うか、わんちゃん好きな人間にしてみると『駄犬なんていないよ!どのわんちゃんも、バカで健気で面白くて可愛いんだよ!』って感じなんですけど、そんなことはどうでもいい。

はい。

 

本作品、刊行されしばらくしてから、私はネット上で『面白い作品があるぞ!』とその話題を目にして気になっていたのです。

で、アマゾンで何にも考えずに注文したら・・・届いたのが注文からおよそ1か月後だったと言う(笑)

去年10月に初版で、その2か月後の12月には4版となっていることからも、注目作であることがご理解いただけるかと思うのですが。

 

届くまでに1か月、待ったと言うこともあって。

私としても『おっしゃ、どんだけ面白い作品なんだ!期待しちゃうぞ!』とわくわくしながら読み始めた本作品。

まずは簡単な作品紹介です。

 

預言者によって選出される勇者。その勇者は魔王を倒し、世界の平和を守り、そして自らは帰らぬ人になった。魔王を倒したにもかかわらず、その直後、勇者は謎の死を遂げたのだ。

勇者のお陰で平穏を手にした王国は、亡き勇者を称えるために、その偉業を収めた文献を制作する事業を立ち上げる。

勇者と共に魔王を打倒した剣聖・レオン。聖女・マリア。賢者・ソロン。文献を編纂するにあたり、勇者と親しかった3人から冒険談を聞き出すも、3人が3人とも『何故、勇者は死んだのか』と言う点については言葉を濁す。

勇者は何故、死んだのか。殺されたのか。殺されたのだとすれば、誰が殺したのか。魔王なのか、魔族なのか。それとも3人のパーティの誰かなのか、と言うお話です。

 

本作品、レーベルは角川スニーカー文庫。なのでいわゆるラノベに該当するのですが、あらすじを読んでいただくとお分かりいただけるかと思います。内容的にはミステリーの要素もある作品です。

ラノベ作品でもミステリー要素のある作品はたくさんあるのでしょう。が、私はそもそもとしてラノベ作品をあまり読まないので、『ラノベ×ミステリー』と言う組み合わせが、個人的にはとても新鮮に感じられたのですが。

 

ではでは、感想です。

 

いやぁ、なんだ。読み終えて本作品のタイトル、『誰が勇者を殺したか』と言うタイトルが、もう『うまい!』と膝を打ちたくなるくらいに秀逸なタイトルだなぁ、と1人で感心しきりでした。

『誰が勇者を殺したか』、その通りなんです。あらすじでもご紹介しましたが、まさしくこの通りの物語なんです、本作品は。

その通りの物語なのですが、作品を読んだ方ならわかるはずです。この、作品を簡潔に表現しているタイトルに込められている様々な意味が。思いが、真実が。

そうですね。読み終えた方ならきっと『誰が『勇者』を殺したか』と。

『勇者』と言う部分を強調したくなるような、そんな思いに駆られるのではないでしょうか。ふふ。

 

作品においてタイトルが重要であるのは言うまでもないことですが、本作品に関してはそれを本当に感じさせられた。

物語を読み進めていく内に。次々と新たな真実。隠されていた思い。それが明らかにされていく内に、このタイトルが意味すること。意味するところ。そしてこのタイトルが何を訴えたいのか。それが染み入るように、それでいてひしひしと何かを訴えるようにして胸に響いてきて、本当に感心しきりなのでした。

こう言うシンプルにしてしっかり作品を表している。それでいて読み終えた後には、また違った意味合いを持って胸に響いてくる。そんなタイトルを付けられる人間になりたいものだ(何を目指しているの?)

 

それから『勇者』を殺した人物。むむぅ、これもネタバレになっちゃうので色々、言及するのが難しいのですが。

その人物の胸にあった思い。決して一筋縄ではいかない、そして言葉で説明できるものばかりではないその思い。

その人物の立場もあるからこその、そうした思い。それぞれの思い。

その思い故に何を隠しているのか。何が真実なのか。

そうした部分の見せ方、描き方。次々と変わっていく語り手たちによって少しずつ、それが読者の前に明らかにされていくと言う構成も、とてもスリリングで読みごたえがあり、ページをめくる指を止めるのが難しかったです。

 

んあぁぁぁぁぁ!いろいろと言いたいけど、でも直截的なネタバレはしたくないので。

難しいのですが。

 

ねー。ねー。切ないわ。なんだろ。

作中で『勇者を殺した』と端的に言ってしまえばされる人たちの思いは、だけど『殺した』と言う行為からは遠くかけ離れているほどに、ただただ優しく、またただただ温かく。そしてただただ身勝手で、しかし身勝手な故に切実なそれだったと言うのが、もう言葉を失うばかりなのです。

あなた方が、確かに『勇者を殺した』。だけどじゃあ、そこにあったその人たちの思い。それを知ってなお、その『勇者を殺した』人たちを責めることができるだろうか。

そんな思いにも駆られるようでいて、またこれ言葉が出てこないと言う。

 

あともうひとつ。

『人間が本当に死ぬのは、命が終わった時ではなく、忘れ去られた時だ』と言うような言葉がありますが。

それをひしひしと感じさせられた作品でもありました。

だとすれば殺された結果、他ならぬ自分を殺した人たちによって『勇者』は生き続けているのかもしれない。

それを考えると、またこれ、どうしようもなく胸が締め付けられると言う。

 

で、この作品の終盤を読んでいて私が強く感じたのは、線引きの残酷さでした。

これは登場人物の1人の姿に強く感じたのですが。

 

その人物は勇者を殺害した人物の1人です。そして同じく『自分が勇者を殺した』と言う人物から、その勇者が生きている世界に戻ることが可能であることを提案されます。

それでもその人物は、それを断るんです。

その決断にあったのは、ひとつは『世界が戻る』と言うことは、それまでの一切合切が無かったことにされてしまう。自分だけでなく、皆の苦労が無駄になってしまう。だからそれは大変だし、違うと言う思いです。

すなわち勇者1人の命と、それまでに世界の中で起きた全てを天秤にかけた時。その人物の中では後者の方が重い価値を放っていた。

その線引きは当たり前のようにも思えるのですが、それでも同時に残酷さも感じられて、胸が詰まった。そしてだからこそ、その決断を下せたこの人物の心の強さ。『勇者を殺す』ことに対しての覚悟の在り方みたいなものを感じたような思いがしたのです。

 

自分の人生はうまくいかないことだらけだった。それでも精一杯やってきたし、自分のしてきたことをなかったことには、偽りにだけはしたくなかった。

 

自らの判断にそんな思いを馳せた、この人物のこの思い。

そこにどうしようもない切なさ、そしてまた共感を抱いてしまうのは、きっと私だけではないはずです。

 

願えばキリがない。ただ現実としてあるのは、今の自分であり、今の世界であり。

ならばうまくいかないことだらけの人生、その中でも自分が必死にやってきたこと。精一杯にやってきたこと。思いをかけたきたこと。それを信じて、自分も世界も受け入れて生きていくしかない。

そんな前向きな諦め、人生と言う、ままならない時間を生きるすべての人に対しての、とても優しいまなざし、エールを私はここに感じて、胸が熱くなる思いでした。

 

ちなみにミステリー的な仕掛けに関しては。

個人的には『成程』でした。まぁ、あの、うん。この仕掛け自体は勘の良い方、ミステリーに慣れていらっしゃる方なら早めに想像がつくかもしれないです。

そこはかとないヒントも出てきますし。

ただ本作品の魅力はそのトリック云々よりも、先程から書いている通り。

『誰が勇者を殺したか』と言うタイトル。それが意味するところだと思います。

本当に勇者を殺したのは誰なのか。

勇者を本当に殺したのは誰なのか。

 

ちなみに。作者の駄犬さんは45歳で小説家デビューを果たされた方です。

あとがきではその辺りを自虐的に綴りつつ『本屋大賞が欲しい』と言う小説家としての目標も明らかにされています。

人から『できるはずがない』『なれるわけがない』と言われるようなことに挑む。馬鹿にされても頑張り続ける。ほんの少しでいいから自分に期待する。

そんな胸の内を明かしながら、本作品はそう言う作品だと書かれてもいます。

 

年齢が近いこともあるからでしょう。

駄犬さんのこの姿勢、思いに、私は作品読了後、また違った部分の感情が熱くなって、何か励まされたような思いがしたのでした。

そしたまた『あぁ、こう言う人が生み出された作品だからこその切なさと前向きな諦めと、それでも決して諦められない、諦めてはならない思いを感じられるんだろうなぁ』とも感じたのです。

 

新人作家さんであることには違いない。だけれども『自分が小説で描きたいこと』『自分が小説で訴えたいこと』それを明確に持っていらっしゃる作家さんであり、またそれをしっかりと小説で実行できるだけの力。それを持っていらっしゃる、そんな作家さんだと思います。はい。

駄犬さんの作品に関しては、既に5作品が書籍化決定されている。そんな話もどこかで目にした記憶があるのですが・・・間違っていたら申し訳ない(土下座)

 

本屋大賞』に関しては、私にはわかりません。この賞に関しては、そもそもとして駄犬さんもあとがきで書かれていた通り、ラノベと言うジャンルが不利と言うのは確かにあると思います。過去にラノベでノミネートされたことがある作品って、確か1作品だけだったように記憶しているので。

ただアニメ化。いや、駄犬さんは全然、そんなことには言及されていないのですが。

アニメ化に関してはこれ、ラノベと言うジャンルだからこそ、そう遠くはない未来に現実のものになったりするんじゃないかなぁ、と秘かに期待している私です。


www.youtube.com

こんなPVも公開されています。

茅野愛衣さんが演じられるとしたら・・・マリアかアレクシアかなぁ。

 

はい。そんなこんなで本日は駄犬さんの『誰が勇者を殺したか』の感想をお送りいたしました。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!