はい。1が付く日なので読書感想文の日です。
自分で希望休取っといてなんですが、ほんと、1が付く日が仕事休みだと、なんかすごく損した気分になります(笑)
そんなこんなで、読書感想文。
本を読んでいないことはないのですが、困ったことにストックがない。ないと言うか、感想文を書くべき本はあるんですけど、書いてないから記事として挙げられない。
ならば、と言うことで本日はこちらの作品の感想、と言うよりも、紹介をします。
それが伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』です。
何故、こちらの作品をとりあげることにしたか。
単純です。ハリウッドでの実写映画化が決定している本作品の予告映像が、最近、解禁されたからです。
ちなみに映画にあたってタイトルは『ブレット・トレイン』に変更されています。
ネタバレではないですが『マリアビートル』と言うタイトル自体、この作品においてはとても重要な意味を持っている言葉です。なのでそれが変更されたと言うことは、その設定自体もあんまり重視されないかな、と感じたのですが。
そう言うことを感じたのは他でもない。
公開された予告映像が、原作の雰囲気とは似ても似つかぬ、まったくの別作品の映像化みたいな感じになっていたからです。
いいですね、海外の方から見た日本、そのトンチキ描写みたいなのに溢れていたし、そもそも前々から思っていたけど、主人公の七尾を演じるのがブラッド・ピットと言う時点で何もかもが違い過ぎると言う印象しかなかったわけなのですが。
でも予告映像を見た限り『原作の雰囲気はどこかへ吹き飛ばされてしまったが、それはそれで振り切っていて面白そうな作品ではあるな』と言う印象を受けました。はい。
あと『檸檬』が『レモン』になっていたのには、軽く衝撃を受けました。字幕だから、まぁ、読めない人もいるかもと言う配慮からなのか・・・だったら『蜜柑』も『ミカン』になってるのかなぁ・・・。今、いろいろ調べたら『タンジェリン』って役名なのか。成程。じゃあやっぱり『ミカン』なんだろうな。
と言うわけで『マリアビートル』どんな作品か、実に簡単にまとめますと『新幹線の中で窮地に陥った殺し屋たちと、大人を翻弄したいひとりの中学生が躍動する』と言うお話です。『躍動』と書いて『殺し合う』と読むと、実にわかりやすいかと思います。
あぁ『殺し屋たち』と『ひとりの中学生』が殺し合うだけではなく、当然、軸となっているのは『殺し屋たち』の殺し合いです。
この作品について調べると必ず『『グラスホッパー』の続編』と言う文言が出てくるとと思います。
なので伊坂さんの作品を読まれていない方、映画化にあたって『マリアビートル』を読んでみたいと思われている方の中には『『グラスホッパー』を読んでいないとダメ?』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、読んでいなくても特別、問題はないと思います。一部のキャラクターが『グラスホッパー』にも登場していたり、そこでの出来事がちょろっと『マリアビートル』内で語られたりする、そんな感じなので、問題はないと思います。
ただ身も蓋もない言い方をすれば、読んでいた方がより楽しめるのは事実です(笑)
はい。そんなこんなで、ではこの作品の、個人的に思う魅力をご紹介していきます。
まずは何と言っても、個性豊かな殺し屋さんたちです。以前、記事にも書いたと思うのですが『殺し屋』なんて、絶対に現実世界ではお知り合いになりたくない、お近づきにすらなりたくない人たちです(笑)
なんですけど、本作品に登場する殺し屋は、実に個性豊かで、人間的に破綻している部分はあるんですけど(そりゃ『殺し屋』だからね!)でも、それを補って余りある魅力に溢れているのです。だから『あぁ・・・ちょっと仲良くなりたい』と思ってしまう(笑)
特に私が推したいのは、先ほどもちょっと登場した蜜柑と檸檬です。2人1組、コンビで活躍している殺し屋であるこの2人。腕は立つ、想像する限りイケメンそう、かっこいいことこの上ない2人なんですけれど、まぁ、この2人の会話がとにかく面白い。
息がぴったりなようで微妙にずれている、大の大人の男2人が、何を妙ちきりんな会話を繰り広げているんだ、とつっみたくなるほどに、だけどずーっと2人の会話を聞いていたいくらいに面白いのです。
萌。
ちなみに。私の勘違いでなければ、予告映像で『レモン』と呼ばれていた方は黒人の、非常に恰幅の良さそうな、見るからにチャーミングな方でしたね。そして彼を『レモン』と呼んでいた方は、察するに『蜜柑』になるのでしょうか。こちらは正統派のイケメンと言う感じの方でしたね。
とりあえず、やはり原作からイメージする蜜柑と檸檬とはかけ離れてはいます。
そもそも原作では『長身で容姿も似ているので双子に間違えられることもある』と言う2人なのですよ。
どうみても間違えないよね~、予告動画に登場した2人を双子には!(笑)
なんですけど、でもこれはこれで非常にキャラクターのイメージ、個性をとらえている配役だなと感じました。
文学好きで冷静で常に檸檬に振り回されている蜜柑。そして子供っぽさも残っていて、某機関車アニメが大好きな檸檬。
予告映像で蜜柑にブリーフケースの場所を聞かれて、檸檬は『ちゃんと隠してある』と答える。でもその後のシーンで『ここに隠したのに』と答えている、あの、ちょっとふてくされた子どもを感じさせるような表情が、最高に檸檬でした。はい。
この蜜柑と檸檬、それからブラピさん演じる主人公の七尾などなど、本当に個性豊かで面白い、かっこよくてクールで、なのにどこかチャーミングな殺し屋が、本作の魅力のひとつです。
それから。
伊坂先生の作品を読まれている方ならご存じだと思うのですが。
伊坂作品においては『良いこと、悪いこと』の判断基準と言うのが、何と言うかなぁ、ある種、とてもわかりやすい、でも人によってはとてもわかりにくいのが特徴です。
何と言うか『法律』とか『決まり』とか、そう言うのが割と無力なのですね、うん。その代わりに『心で決める善悪』みたいなものが、めちゃくちゃ強く描かれている。
ものすごく端的に言えば、人を殺すことは悪いことである。それを描いたうえで、だけどじゃあ、その殺された側がどうしようもない人間、誰かや、あるいは自分より弱い動物の尊厳や精神、命を傷つけ、弄び、虐待するような人間で、しかもそいつはそのことを全く反省もせず、のうのうと生きている、そんな人間であったなら。
殺すことは悪である。でも、そんな人間を殺したいと思ってしまうのは、人間の心として悪である、間違っていると言えるのか、みたいな。
そんな問いかけであったりメッセージみたいなものが、実に軽やかに、でもストレートに描かれているんです。うん。
『重力ピエロ』や『鴨とアヒルのコインロッカー』あたりを読んで頂くと、このあたりは実にわかりやすいかと思います。
だから人によっては『え?こんなことでそこまでする?』的な、すごく不快感を抱かれたり、疑問を抱かれたりすることもあるかもしれません。はい。
で、殺し屋ばかりが登場し、殺し合いを繰り広げる、倫理観が著しく低下した(笑)こちらの作品にも、そうしたメッセージ、問いかけが描かれているのも、個人的には魅力のひとつだと思っています。
その鍵を握るのが殺し屋たち、つまり大人たちを弄ぶひとりの中学生の存在です。
見た目は見るからに優等生、ともすれば美少女に間違えられるほどの美少年。年齢にそぐわぬ圧倒的な知識、更には独自のネットワークを有しているその彼の名は王子と言います。
なんですけど、この王子が、まぁ、まぁ、まぁ(笑)
怖い。一言で言えば怖い。殺し屋さんたちとは『ちょっと仲良くなりたいかも』と思った私でも『こいつとは絶対、絶対に仲良くなりたくないし、お近づきにもなりたくないし、一生、私のことなんて知らないままでいて欲しい。微塵も関わりたくない』と思ったくらい、なんなら願ったくらいに、とにかく怖いのです、王子。
何がどう怖いのか。それは作品を読んで頂ければわかりますが、そんな彼が様々な大人に対して投げかける疑問。
無邪気さをはらんでいる疑問。
でも王子にとっては、それすら大人を弄ぶ手段でしかないのであろう疑問。
それが読み手であるこちらの心にも、いろーんな感情を投げかけてくるのですね。
殺し屋たちの殺し合い、新幹線と言う動く密室の中で繰り広げられる、実にスタイリッシュな殺し合い。迫るタイムリミット。
そうしたエンタメ要素十分な作品である一方、伊坂作品だからこその要素、倫理観に問いかけてくるようなメッセージもずっしり、だけど軽やかに描かれている。
そこがもう、素晴らしいし、面白い。
私の中ではCV田村睦心さんである王子。彼の問いに対して、大人たちがどんな答えを口にするのか。個人的には鈴木(彼こそ前作『グラスホッパー』の登場人物のひとりであります)が口にした答えが、すごく彼らしいし、いちばんしっくりきました。
そのあたり含めて、殺し屋ではないのに、しかしいろいろな意味で『殺す』ことをためらわない王子の活躍も、読み応えたっぷりですよ。
そして王子を待ち受ける結末ってのが・・・実に、実に、ああっ、これ以上は言えないわ!
・・・なんですけど、どうなんでしょ?
劇場版では王子、登場してるんですかね?
映画の尺にまとめようとすると、確かに王子のくだりはカットせざるを得ないのかもしれないし・・・あの予告映像を見る限り『殺し屋たちのスタイリッシュアクション映画だぜっ!』と言う色を前面に打ち出しているように感じたから・・・もしかしたら、王子のくだりは全面的にカットかもしれないなぁ。いや、まだわかんないけど。
違うわ。今、調べたら、多分『プリンス』ってのが、この王子に該当する役なのかな?演じられるのは女優さんだから・・・どうなんだろ。でも役としては多分、小説の王子に求められるような立ち回りの役なんだろうな、と思うのですが。
はい。
そしてラストは、とにかく面白い!と言うところです。
動く密室、新幹線。そこに乗り合わせた、種々様様な思惑を持った殺し屋と中学生。
計画は、計画通りに進んでいるはずだった。なのに、互いが互いの知らぬところで干渉し合った結果、すべての計画が狂い始め、中学生を除いては皆が窮地に立たされる。
しかし新幹線は止まってくれない。終点である盛岡を目指して走り続ける。
盛岡に新幹線が到着するまでに窮地を脱しなければ、それはすなわち『死』を意味する。焦燥感に駆られるがままに行動を起こす殺し屋たち、そしてそんな殺し屋たちを純粋に、残酷に弄ぶ王子。
面白くないわけがない。
伊坂先生らしい、本当にエンターテインメント性あふれる、極上の娯楽作品だと思います。はい。
またそれぞれのキャラクターの視点ごとに物語が進んでいくので『あ~、成程。あそこのあの部分はこう言うことだったのね』と言う、ミステリの謎解き的な面白さが存分にちりばめられているのも、この作品の魅力です。
物語中にちりばめられた多くの伏線、それらがひとつずつ拾われ、解決されていく。その展開がやがて大きな流れとなって、誰も想像だにしなかった結末を迎えるわけです。
で、そうしたエンタメ性、ミステリ的な面白さあふれる展開の中にも、先ほど書いたように、伊坂作品らしい『善悪とは?』『本当の悪とは』的なメッセージが登場して、それが真正面から描かれている。
だからより一層の読み応えがあるのであります。はい。
とは言え、まぁ、映画ではどうなっているかわかりませんが。
推測、あくまで推測する限り、ほんとトンチキ日本を舞台にした、アクション満載の殺し屋たちの生き残りをかけた殺し合い映画って感じがします。はい。
なので、と言う言い方もおかしいですが。
先に小説を読んでから映画を見られても、良い意味で全然、影響はないのではないかなぁ?そもそも全員、日本人の登場人物を、日本人ではない海外の演者さんが演じていらっしゃると言う時点で、こー、文字だけのキャラクターを演者さんに重ねようがないような気がするし(笑)
てなことで・・・個人的にはこれを機に、アニメ化とかドラマ化とかされたらなぁ、とか思ってるんですけどね。前にも書いた気がするんですけど。
特にアニメ化は、絶対に合うと思うのです。それこそMAPPAあたりが手掛けて下さったら、ほんとアクションシーンも含めて、めちゃくちゃ面白いことになると思うんですけど・・・まぁ、多分、ないだろうな。うん。
はい。そんなこんなで本日は読書感想文・・・ではなかったな、うん(汗)
全米では7月公開予定、日本国内でも年内公開が予定されている映画『ブレット・トレイン』の原作、伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』について語ってまいりました。
ってかアレですね。今までの読書感想文をもう一度、振り返るってのもありですね。特に初期の頃は一行感想しかなかったわけだし。
改めてそれを振り返って、いろいろ思ったことを書くと言うのもいいなぁ。
ストックがかつかつって、尽きてるわけだし(震え声)
とにもかくにも次回は必ず、読書感想文をアップします。はい。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!