tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2011年

年末の風物詩『このミステリーがすごい!』、その30余年の歴史を、私が読んだ作品限ってですが振り返ろうと言うシリーズ記事。

すっごい順調!他のシリーズ記事に申し訳ないくらい(汗)順調に更新できております。

そんなこんなで本日は2011年度の振り返りです。

 

では早速、2011年に何があったかを見ていきましょうか。

もうこれはわざわざ調べなくても思い出せる方も多い、そう言う方は多いかと思います。この年の3月11日に東日本大震災が発生しましたね。はい。

 

当時、私はまだ書店に勤めていたのですが仕事は休みだったんですよ。で、母親と近くのスーパーに買い物に出かけていて。母が会計を済ましている間、私はぼーっと袋詰めの台のところで突っ立って待っていたんです。

その時、何となく揺れたような、強い眩暈に襲われたような感覚があって。『あれ?地震かな?』と思って周囲を見回したけれど、皆さん、普通の様子だった。あとスーパーなのでとにかくその場がうるさかったので、音で地震がどうかを判断することもできなかった。なので『まぁ、眩暈だろうな』と思ってその場は済んだのですが。

 

帰宅してテレビをつけて、びっくりしましたね。衝撃と言う言葉を通り越して、画面に映し出されている映像に、ただただ言葉を失うしかなかったと言うか。

『いや、これ本当に今の日本で起きていることなの?』と茫然自失の思いで、ただただ見ていることしかできなかった。

 

なー・・・ほんと、凄かったですものね。いや、凄いと言う言い方が適切なのかどうかは迷うところですが。

2004年にに発生したスマトラ島沖地震。あの時も凄まじい津波の映像がニュースなどで放送されて『マジか。これマジか』と、ただただ信じられない思いに駆られるしかなかったのですが。

東日本大震災の時は何と言うか、自分の住む日本で、自分の生活圏とそう大差ない風景、光景、それが津波に飲み込まれ破壊されていく。そのことがあったから、なんかなおのこと衝撃的でショックだったと言うか。

そしてまた九死に一生のところで避難されて、目の前で起こる惨事をただただ見つめることしかできない方々の姿が映し出されていたのも、本当に見ていて辛かった。

なんならアレだもんな。津波から逃げようとして、だけど間に合わずに飲み込まれてしまった方の映像も放送されていたものなぁ。

 

なー・・・ほんと自然の強大さ、巨大さ、恐ろしさ。それをまざまざと突き付けられたような。そんな震災だったなぁ。

そして何が恐ろしいって、これで終わりと言うわけでなく、日本に住んでいる以上、地震災害と言うのは必ず起こる。東日本大震災と同レベル、否、それ以上のレベルの地震がいつ起きてもおかしくないと言うところが、もう何と言うか何と言うか(汗)

 

ちなみに、この年は割と地震などの災害、またテロなどの人災も多い年だったようなのですが、そんな中。ウィキペディアの11月11日のところに『1が6つ並ぶ日。11時11分11秒にデジタル時計と記念撮影をする人が世界各地で見られた』と言う記述を見つけた日には、思わず気持ちが癒されました。

 

はい。ではでは気持ちを切り替え、本題に参りましょう。

2011年度の『このミステリーがすごい!』の振り返りです。

ja.wikipedia.org

いつものようにリンクを貼っておきますので、こちらから結果を確認しながら記事を読んでいただくと、いろいろわかりやすいかと思います。

 

この年、栄えある第1位に輝いたのは貴志祐介さんの『悪の教典』でございました!

私、こちらの作品は読んでません!が、その内容やラストなどはいろいろなサイトで調べたので(汗)そこそこ知っています。

 

本作品は伊藤英明さん主演、三池崇司さん監督で映画化もされています。当時、その特別上映会に招待されたAKB48大島優子さんが涙を浮かべて退席。『私はこの映画が嫌いです』『映画なんだからと言う方もいるかもしれませんが、私はダメでした』と言うコメントを残されたのは、結構な話題になったように記憶しています。

作品の内容としては、伊藤さん演じる主人公、ハスミンこと蓮見聖司。彼は生徒からも、その保護者からも人気が高い教師だったが、その本性は他人に対して一切の共感能力を持たないサイコキラーだった。

そんな彼が犯した殺人が、些細なミスと疑惑の連続で隠蔽不可能な状況に追い込まれてしまう。折しもその日その時、彼が受け持つ2年4組の生徒たちが、文化祭準備のために学校に泊まり込んでいた。

今までもそうしてきたように。彼は自分の邪魔となる2年4組の生徒たち全員を抹殺することを決心。そして血塗られた惨劇の夜が始まる、と言うのがあらすじです。

 

まぁね・・・大島さんも言われていた通り、作り物なので。うん。アレですけど。私がネタバレサイトなどを踏んではいるものの、気にはなってはいるものの、本作品を読むにまで至っていないのは、やっぱりどこかこの残虐性に対して拒否感があるからだろうなぁ・・・いや、普段、さんざん人が殺されるミステリー読んでいる人間が何を言うか、って話なんですけれど(汗)

はい。いや、読んでない作品なのに、思わず振り返っちゃったわ。

 

てなことで。改めてベスト10作品の中で私が読んだ作品を見ていきますと。

まずは6位、伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』ですね。そして3位の梓崎優さんの『叫びと祈り』・・・以上2作品か。おおっ、いつになく少ないな。

しかしその分、と言いますか。どちらの作品も個人的にはとても思い入れのある、大好きな作品なので、たっぷり語っていこうと思います。はい。

 

では早速、6位、伊坂さんの『マリアビートル』からまいりましょう。こちらは先ごろ、ブラットピットさん主演の映画も公開された『ブレット・トレイン』の原作にもなった作品です。

グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの姿を描いたシリーズの2作品目です。ただしシリーズと言っても、前作『グラスホッパー』を読んでいなくても、ほぼ問題なく、楽しく読める作品になっています。

 

元殺し屋の冴えない中年男、木村。彼は息子を意識不明の重体にまで追いやった中学生、王子慧への復讐を胸に、東北新幹線『はやて』へ乗り込む。

腕の立つ殺し屋のコンビ、檸檬と蜜柑は、裏社会の大物からの依頼で、誘拐された彼の息子の救出と、支払われた身代金回収を無事、達成した。

ツキのない殺し屋の七尾は、仕事のパートナーで仲介人の真莉亜より『簡単な仕事』との依頼を受け、東京駅から新幹線に乗り込むことに。

3組の殺し屋。そして1人の冷酷な中学生。彼らの運命が、身動きの取れない新幹線の中で交差した時、物語が動き出す、と言うのが本作品のあらすじです。

 

『『悪の教典』は悪趣味だと思うって書いたのに、殺し屋たちが登場人物のこの物語は良いのかよ!』と突っ込みを入れられそうですが(汗)

・・・うん。いいの。だってめちゃくちゃ面白いから。殺し屋さんたちが、とにかくかっこいいから。そして何より、全編に溢れている伊坂イズムとでも言いますか、伊坂作品だからこその味わいがたまらなく胸にしみていくから。

だからいいの。いいの(遠い目)

 

はい。いやでも本当にめちゃくちゃ面白いんです、この作品。動く密室、新幹線。それが目的地に到着するまでのタイムリミットの中、殺し屋たちが動く。自分たちの思惑を胸に、自分たちの立場を、利益を、大切な人を守るために密やかに、大胆に動く。でも当然、殺し屋同士がエンカウントしてしまうこともある。

物語はそれぞれの殺し屋の視点で進んでいきます。なので読者はある程度、物語の動きの全容がつかめているわけです。でも殺し屋たちはそうはいかない。遭遇した相手が殺し屋だとは、まさか自分の同業者とは知らないこともあるわけで、その辺りの駆け引きの緊張感や、伊坂さんの作品らしいずれたやり取りもたまらんのですよ。

そしてそうした殺し屋、すなわち大人たちをただただ『バッカだなぁ、こいつら』と言う感じで弄ぶ王子、その子どもの存在感。殺し屋でないのに、多分、どの殺し屋よりも残酷で残虐で冷酷であろう彼の存在感も、本当に良いアクセントになっているのです。

 

勿論、伊坂さんの作品ですから、伊坂イズムと言いますか。ぐっ、とこちらの喉元に突き付けてくるような鋭い疑問、倫理観や常識に対しての疑問。そしてそれに対するはっとさせられるようなひとつの答えのようなものも、押しつけがましくなく描かれています。この辺りもうまいんだよなぁ・・・。

なおこのひとつのシーンでは、シリーズ1作目である『グラスホッパー』に登場した鈴木と言う人物が登場しています。またそれ以外でも、やはり『グラスホッパー』で活躍した人物が出てきたりもしています。が、先にも書きましたが、別に本作品を読んでいなくても、大きな問題はありません。が、もしよろしければ『グラスホッパー』を読んでおかれるといいかもしれませんね。

 

ちなみに『グラスホッパー』で私イチオシの殺し屋は、蝉です。蝉。蝉は良いぞ。

 

殺し屋たちの狂騒曲は、最後には思いもよらない展開を迎えます。伏線が凄まじい勢いで回収されていき、『そう言うことだったのかよおぉぉぉ!』『そうきたか、そうきたか!』の連続。そして個人的には『よっしゃあぁぁぁぁぁ、ざまぁ!』とにんまりが止まらなかった怒涛のラスト。

まさしく新幹線のようにほぼノンストップで転がり続ける物語、どうぞとっぷりと楽しんで下さい。

 

なお本作での私イチオシ、推しの殺し屋は檸檬と蜜柑のコンビです。このブログでも再三、語ってまいりましたがね。映画の吹き替えでは関智一さんと津田健次郎さんが担当されています。あー、成程。

私の中ではややイメージとは異なっているのですが、そもそも日本人(明確にそうと言う描写はなかったけれど、でも多分、日本人だと思う)の檸檬と蜜柑を海外の役者さんが演じてられいると言う時点で、既に原作の檸檬と蜜柑のイメージと違うのは当然のことですからね。はい。

 

檸檬と蜜柑は良いぞ。いや、映画の方はどうなのか知らんけど(知らんのかい)

いいぞ。原作小説の檸檬と蜜柑は、本当に良いぞ。たまらんぞ。

 

はい。そして続いては3位にランクインした梓崎さんの『叫びと祈り』ですね。こちらは梓崎さんのデビュー作にあたります。デビュー作がいきなり『このミス』3位にランクイン。それだけでなく年末のあらゆるミステリーランキングでも上位に食い込んだ作品なのですが、いやいや、読まれたらそれもただただ納得しかない、それほどまでに完成度の高い、デビュー作とは思えないほどの傑作なのです。

 

こちらは『砂漠を走る船の』『白い巨人』『凍れるルーシー』『叫び』『祈り』の全5作の中~短編からなる作品です。

全作品の実質的な主人公は(この言い方から、何かを察することができる方は察して下さい(笑))、海外の動向を分析する雑誌、その雑誌社に勤めている斉木と言う青年。1年の内、100日近くは出張をしている彼が、行く先々の異国で遭遇した事件の謎を解いていくと言うお話です。

 

どの作品もミステリーとして、そして小説として完成度が高い。先程も書きましたが、無駄のない研ぎ澄まされた、瑞々しく、端正な文章。ミステリーとしての騙しや衝撃の高さは『本当にこれがデビュー作?実は既に活躍されている作家さんの別名義なんじゃないの?』と疑った程です。

 

そして全5作品、どれも物語の雰囲気、テイストが見事に異なっていると言うのも面白い。

砂漠を行くキャラバンを襲う連続殺人。一触即発の中、斉木が導き出した真相は勿論、その動機にただただ驚愕するしかない『砂漠を走る船の道』、スペインの風車の丘、そこで繰り広げられる推理合戦が、登場人物の『思い』の強さへとつながっていく『白い巨人』。ロシアの修道院を舞台に起きたある事件。斉木が導き出した論理的な推理、整合性のとれているそれを嘲笑、冷笑するかのようなラストには、ただただ背筋が凍るような思いしかない『凍れるルーシー』。

 

で、最後の2作品『叫び』と『祈り』は、ネタバレになるので多くは語れませんが。

『叫び』だけちょろっと紹介しておきますと。舞台はアマゾン。少数民族が生活するある村では死病が蔓延しており、生き残りはたったの5人にまでなっていた。そしてその5人すら、次々と何者かの手によって命を奪われていく。

わざわざ殺害しなくても、生き残りの5人もいずれは死病により命を落としていく可能性が高い。そんな状況で発生する連続殺人に、斉木とイギリス人の医師、アシュリーは殺人者を突き止めようとするのだが・・・と言うお話。

 

で、この『叫び』のインパクトが、もう凄い。割と真剣に、頭を力いっぱい叩かれたような、そんな衝撃すら受けたくらいです、私は。

やはりこの作品で肝となるのも『何故、殺したのか』と言う動機、ホワイの部分なのですが、これを突き付けられた、悟った斉木。彼を襲った絶望感と虚無感たるや、いかほどのものだっただろうかと思うと、もう読んでいた私もただただ茫然と立ち尽くす、膝から崩れ落ちるような虚脱感を味わうしかなかった、それくらいの作品です。

そしてこの作品で、崩されるんです。斉木が様々な異国をめぐって感じてきた思い。文化の違い、価値観の違いは確かにある。それによって埋めようのない部分があるのも確かである。しかし同時、同じ『人』として、分かり合える部分も確かにあるはずだ、『人』として理解できない、そんな『人』なとは存在しないはずだと言う、その微かな希望、願いのようなものが、あっさりと、完膚なきまでに崩されるんです。

まさに絶望しかない、そんな作品なのです。

 

で、それを受けての『祈り』が・・・これ以上は言えない。言えない。言えないけど、この構成が本当ににくいし、うまい。そしてしっかり、ミステリーとしての仕掛けも用意しておきながら、それが明らかになった時に目の前に広がっていくような希望、小さな希望、それを感じられる物語になっているのも、もう秀逸。

 

はい。てなことでどの作品も異国が舞台。そこで日々を営んでいる人たちが登場人物。主人公である斉木は、主人公でありながら、しかし彼ら、彼女らにとっては『異人』なのです。その『異人』である斉木を通して読者の前に広がる、その土地、その土地で生きてきた、生きている人だからこその価値観、文化。

それがどの作品も濃厚に描かれているからこそ、読者も斉木と同じように、その土地を訪れ、その土地、そこに生きる人たちの価値観、文化に触れているような、そんな感覚を味わえるんですね。

で、斉木と同じように、それに打ちのめされたりもする(はは)

だけどだからこそ、心が通い合ったと信じられる小さな瞬間にも、とても心を揺さぶられる。

 

アレですね。コロナの影響で国内は勿論のこと、海外への旅行が本当に遠いものになってしまったじゃないですか。

私はもともと、旅行自体しない人間なのであれですが。

私の母なんてコロナ前は年に3回程度は海外旅行を楽しんでいた人なので、もうここ数年は嘆きに嘆いているんですけど。ほんと、そう言う方は多いんだと思います。

 

読書で旅行気分を、と言うには本作品。あまりにもヘヴィな展開が待ち受けている作品でもあるので、難しい部分はありますが。

それでも異国情緒を味わうことができる作品ではある思うので、海外旅行好きな方にもオススメしたい作品です。はい。

 

ちなみに。斉木が主人公の作品として続編『リバーサイド・チルドレン』、こちらは長編ですが刊行されているのですが・・・以降、新作の発表はなし。

またこのシリーズ以外の作品も、2018年に雑誌に収録された作品を最後に音沙汰がないようなのですが・・・うーん・・・うーん・・・うーん・・・。

調べたところによると梓崎さん、他にもお仕事を持たれている兼業作家さんとのことなので、もしかしたら本業の方がお忙しいのかなぁ、と思ったり。

 

なんか何年か前に『梓崎さん、待望の新作、出ます!』みたいな呟きが、東京創元社さんのツイッターでされていたように記憶しているのですが、それも結局、実現されていないようだしなぁ・・・。

 

梓崎さんの文章って、ほんと、めちゃくちゃ美しいんですよ。無駄がなくて、澄み切った水を思わせるように美しくて、端正で。それでも、その光景や登場人物の気持ち、その機微もしっかりと伝わってくる。

だからもう、ミステリーに限らず、様々なジャンルの作品を書いて頂きたい、と勝手に思っている作家さんなので、どうか、どうか作家としてもう一度、活動をされて下さい・・・お願いです・・・。

 

はい。てなことで本日は2作品、たっぷりと語ってまいりました。

次回は2012年の振り返りですね。今から10年前だ。おおっ、いよいよそんなところまでやってきたか!

よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!