tsuzuketainekosanの日記

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読書感想文~『777 トリプルセブン』

今日からまた4連勤でーす。

皆さん、ご唱和ください。

げんなりげんげーん!

 

ってか私もこれから店長とか副店長とか、厄介なお客さんにやんややんやと無理難題をふっかけられたら『しゃけ』『めんたいこ』『ツナマヨ』で答えようかな。

狗巻先輩、可愛い。

 

本題です。1日遅れで本日、感想をお送りするのは伊坂幸太郎さんの『777 トリプルセブン』です。

 

すいません。どうしても耐え切れず、あるキャラクターにおいてえげつないネタバレをしております。なのでそう言うのが嫌、許せないと言う方は、どうぞ今すぐ、画面を閉じて下さい。お願いいたします。

 

こちらは伊坂さんが手がける大人気シリーズ『殺し屋シリーズ』の最新作。

『殺し屋シリーズ』とは、文字通り、個性豊かな殺し屋さんたちが活躍するシリーズのことで、これまでに『グラスホッパー』『マリアビートル』『アックス』の3作品が刊行されています。

kadobun.jp

こちらのサイト様に各作品のあらすじなどが掲載されていますので、よろしければ。

『殺し屋シリーズ』とありますが、各作品の主人公は別人物。そしてそれぞれの作品に微妙な関係性があったりしますが、基本的には全作品、独立している作品です。

勿論、シリーズ順に読まれるのがいちばんですが、別に『よし。私は『マリアビートル』から読んでやるぜ』『『アックス』が面白そうだなぁ』と言う感じで、ご自身の読みたい作品から読まれても、特段、大きな問題はありません。

 

ちなみに私の推し殺し屋(物騒だな)である蜜柑と檸檬が活躍するのは『マリアビートル』です。蜜柑と檸檬、マジでかっこいいから。最高だから。

そしてこの『マリアビートル』で主人公を務めた殺し屋、天道虫こと七尾は今作『777 トリプルセブン』でも主人公を務めています。

 

七尾は首折りを得意とする殺し屋です。つくづく物騒だな(笑)

真莉亜と言う女性とコンビを組んでおり、真莉亜が受けてきた仕事を七尾が実行すると言う役回りです。

殺し屋としては確かな腕、実力を持つ七尾ですが、その最大の弱点は『やることなすこと裏目に出ること。とにかくツキに見放されていること』にあります。

よって真莉亜が受けてきた『簡単な仕事』すら、七尾が実行に移すと『予想外に難解で危険な仕事』に早変わり。・・・やだなぁ(笑)

それなのに業界内でのあだ名は『天道虫』と言う、皮肉以外の何物でもない名前。

 

その七尾が今回、『777 トリプルセブン』で真莉亜から命じられたのは『超高級ホテルの一室にプレゼントを届ける』と言う内容の仕事。

『こんなもん、殺し屋である七尾じゃなくても、私でもできそうじゃん』とツッコんだのは私だけではないはず。でもその後に『でも七尾だもんな』とツッコんだのも、やはり私だけではないはず(笑)

 

どうあがいても簡単。どうあがいても安心、安全であるはずのその仕事。しかし七尾が細かいことに気を配ったのが裏目に出た結果、やはりと言うべきか、その仕事は思わぬ事態へと転がり出します。

更に時を同じくして、そのホテルには紙野結花と言う女性が、逃がし屋を生業とする女性共に身を潜めていました。驚異的な記憶力を誇る紙野は、ある人物から逃れることを決心していたのです。

しかしホテルには、紙野を狙う殺し屋たちも続々と集結し始め、と言うのが『777 トリプルセブン』のあらすじです。

 

てなことで、感想です。

 

いやぁ、面白かった。なんだろ。プロとして第一線で活躍され続けている作家さん相手に、こんなことを言うのは誠に失礼なのは承知の上なのですが。

『やっぱり伊坂さん、うまいよなぁ~』と、もうにやにやしちゃうくらいに、キャラクターの造詣、物語の構成、伏線の張り方、そしてその回収。全部が全部、本当に『うまいっ!お見事っ!』と万歳したくなるくらい。

そうしたうまさ、巧みさに唸らされつつ、しかし作品としてのメッセージ性。『伊坂節』とも言うべき(誰も言ってない)、伊坂作品ならではのメッセージ性。またとにかく読んでいて『楽しい!面白い!』『続きはどうなるんだっ!』と言う輝くばかりのエンタメ性が少しも損なわれていないのも、もうお見事の一言なのです。

うまいよなぁ。本当にうまいと思う。

 

七尾が主人公を務めた『マリアビートル』同様。今回の舞台もまた密室。『マリアビートル』では新幹線でしたが、今回は高級ホテルと言う巨大密室に次々と物騒な人間たちが集結。

この物騒な人間たち、つまり殺し屋たちの個性が、やっぱり今作品も強烈の一言なのです。そして彼ら、彼女らにつけられた名前、そのセンスが天才過ぎる!

 

まずは紙野を狙う『六人組』。文字通り6人の男女からなる殺し屋集団で(嫌過ぎる)メンバーは『アスカ』『ナラ』『ヘイアン』『カマクラ』『センゴク』『エド』です。

笑う。天才か。このネーミングセンス、天才か。

この六人組の特徴のひとつは、全員が全員、吹き矢を武器としている点。勿論、それ以外の戦闘もこなせる実力者ですが、狭い場所でも確実に相手を狙うことができる吹き矢を武器に、六人組は暗躍を続けます。

そしてもうひとつが全員、タイプは違えど容姿が優れていると言う点。そのため自分に対しての自信が著しく高く、他人は徹底的にバカにする、見下すと言う、なかなかの性格の悪さ(笑)

その優れた容姿から来る自信。そして他人を徹底的に見下すと言う生き様を貫いてきた彼ら、彼女らはいわゆる『スイスイ人』なのです。

『スイスイ人』の説明は、次の殺し屋さんたちの紹介で出てきます。

 

でもかっこいいんですよ。ほんと、人間としては最低なんですけど。いや、殺し屋って時点で最低なんですけど(笑)。殺し屋としての腕、実力は確かだから、もう彼ら、彼女らのアクションシーンは、本当に読んでいて惚れ惚れしちゃうくらいで。

でも性格、ほんとに悪いんですけどね。捻じ曲がりまくってるんですけどね。

 

次は『モウフ』と『マクラ』の女の子2人組です。顔は平凡、体格は小柄。スタイルも良くない。そのことを嘆き、自分たちとは反対の、顔もスタイルも良く、それ故にさしたる苦労もせずに人生を謳歌している人たちを『スイスイ人』と揶揄している彼女たちは、2人1組、抜群のコンビネーションで大の男の命も奪う殺し屋です。

梃子の原理に感謝。読めば、この言葉の意味はわかる。

彼女たちが何故、この業界に身を置くことになったのか。その過去の物語はめちゃくちゃ切なかったです。

 

とにかく可愛い。彼女たちに『可愛い』と感じることこそ命取りになるわけなのですが、紙野と逃がし屋であるココさん同様。この2人もまた『頑張れ!』『絶対に生き残るんだよ!』と応援したくなる気持ちを刺激するようなキャラクターなのです。

 

更に『高良』と『奏田』の2人組も登場します。読み方は『コーラ』と『ソーダ』です。ネーミング、天才過ぎやしないか!?

『この2人が、今作品における蜜柑と檸檬枠か!?』と私はめちゃくちゃ胸を高鳴らせたのですが・・・おっふ・・・。

まさか七尾のツキの無さに、早くもその1人が巻き込まれていたなんてな・・・泣く。

出番的には決して多くはないこの2人組ですが、しかしその登場シーン、あるいは回想シーンでは非常に印象的かつ重要なメッセージを残してくれています。

 

その中のひとつ。

『梅の木が、隣のリンゴの木を気にしてどうするんだよ』『梅は梅になればいい。リンゴはリンゴになればいい。バラの花と比べてどうする』

この言葉、メッセージは相次ぐ危機に見舞われる七尾、紙野を支える言葉となり、また私もこの言葉を読んだ瞬間、ちょっと背筋が伸びるような。何かに気付かされたような。そんな思いを覚えました。

 

比べなければならない場面、時と言うのもあることでしょう。

比べることで得られるもの、それが必要になる場面、時と言うのもあることでしょう。

それでも人間、努力しても努力しても不可能なことと言うのもあるわけで。

そこを比べたところで、どうなるのだと。

そこを比べたところで、どうするのだと。

それよりも、自分は自分であればいい。

自分として咲けば良い。ってか、本質的にはそれしかできないんだから。

 

そんなシンプルで、今までにも何度も見てきた、聞いてきたようなメッセージが、だけどこの物語。

殺し屋たちが命を奪い合う。そしてその殺し屋であり、2人1組で仕事をこなしてきた『高良』と『奏田』の会話から生まれた言葉だからこそ。2人のキャラクターの、その良い意味での身軽さみたいなものも伴って、ふわり、と胸に染み込んできた感があり。

『あぁ、こう言う感じもまたこれ、伊坂さんの作品ならではだよなぁ』と私はしみじみしたのです。

 

蜜柑と檸檬といい。奏田と高良といい。

・・・伊坂先生、こんな魅力的なキャラクター、コンビ、1作限りで退場させてしまうの、惜しくないんですか!?

とは言え、蜜柑と檸檬にしろ、奏田と高良にしろ、『殺し屋』として戦って、その戦いの中で退場していったんだから、まぁ、かっこいいよな。

ってか、お願いだから蜜柑と檸檬、奏田と高良で1冊、作品、出して欲しい。

あと本作品でもやっぱり、蜜柑と檸檬の名前が登場していて、私はぐっ、と来た。

好き。ほんとに好き。頼むから生き返って(無茶な)

 

ちなみに『高良』と『奏田』、自分たちで立ち上げたベンチャー企業が買収され、それによって巨万の富を得たことでこちらの業界の仕事も請けることになった、と言う変わった経歴の持ち主です。

そしてそんな2人が得意とする仕事が・・・これは本編を読んでからのお楽しみ、と言うところですが。

ヒントは『コーラもソーダも炭酸飲料。弾けますね。弾けます』です。ふふ。

 

更に紙野の人並外れた記憶力を重宝し、それ故『六人組』に彼女の身柄確保を命じる乾も登場。乾に関しては、他の登場人物の口からその人柄が語られるのですが、とにかくロクな人間ではないこと、残虐思考の持ち主で、他人を駒のように扱う、自らは決して手を汚さない卑怯な人間であることが、怖いほどに伝わってきます。

嫌だ。こんな人間、絶対に嫌だ・・・・・・・・・。

この長い三点リーダーは、何を意味しているのでしょうね。ふふ。

 

またやはり他のキャラクターの会話で、その存在がちらつかされているのが業者殺しの存在です。文字通り、こちらの業界で暗躍する殺し屋たちの両腕を脱臼させたうえで殴り殺すと言う、実に剣呑極まりない彼らの正体とは。

 

更に更に。奮闘する七尾をはじめとする殺し屋たちの緊迫感溢れる、先の読めない物語の合間、合間には、とある人物たちのお話も挟まれています。

それが元は政治家として活動していた蓬と、彼にインタビューをすることになった記者。その2人がホテルのレストランで、優雅に食事を楽しみつつ会話をする、と言うお話です。

 

蓬を語るうえで欠かすことができないのが2つの出来事です。1つは初当選を果たした後。電車内で刃物を振り回した人物を、自らも重傷を負いながらも捕まえたと言う事件。

それからもう1つが飲酒運転によって、彼の妻子が命を落としたと言う事故。この事故を機に、蓬は政治家を引退。その後、日本版CIAとも呼ばれる組織の役職に就くことになるのですが。

 

この蓬と記者の話が、果たして七尾たち殺し屋の物語とどう関係していくのか。

全く先が読めず『おいおい、これはどうなるんだよ!』と思わず、先のページをチラ見しちゃいそうな欲求に駆られたのですが・・・ぐっ、と我慢。

そして我慢した末に待ち受けていた、明かされていた関係、真相には『ああぁぁぁぁぁぁ!』と、もうポジティブな感情から来る鳥肌がぶわぁぁぁぁ、でした。

 

『そう言うことだったのかよおぉおぉぉぉぉぉぉ!』

『そう来たか、あぁ、そう来たか、そう来たかあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!』と。

心の中で大絶叫。

 

いろんな人物が登場して、その人物が個々に物語を繰り広げる。

それぞれの物語が微妙に、絶妙に関係している様相を感じさせながらも、しかし一方でまったくそれが見えてこない部分もある。

そしてそのまったく見えてこない部分が終盤になって見えてきた時の、その衝撃。『そうだったのかぁあぁぁぁ』と言う、伊坂先生の掌で転がされていた快感。

またそうして物語の全景、それが見えたことで、それまでの物語。あるいはそれまでの人物の見え方が、がらっ、と変わる、その驚き。そこから来る、新たな感情。

 

伊坂作品の魅力、その柱のひとつである、その部分。

端的に言うと構成の巧みさ。

それが本作品でもいかんなく炸裂しております!

 

だからもう終盤はページをめくる指を止めることができず。

『明日、仕事だから寝なきゃ・・・寝なきゃ!』と思いつつも怒涛の勢いで読み終え。

そしてひたすら、にやにやしっぱなし。

大満足のまま眠りに就くも、興奮のあまり眠れなかったと言う(笑)

 

不運に次ぐ不運に、いつものように転がされる七尾。

その天道虫の不運のお陰で、天道虫と出会うことになった紙野。

紙野を逃がすために奮闘を続けるココ。

その紙野の身柄を狙う『スイスイ人』の『六人組』

『スイスイ人』に対して嫉妬心と諦観のような気持ちを抱く『マクラ』と『モウフ』

ひょんなことから七尾と出会うことになった『高良』と『奏田』

残虐非道で卑怯な人間と噂されている乾。

国民からの人気も高い蓬と蓬を見舞った出来事の謎を探っている記者。

 

これらの物語が複雑に絡み合いながらも、やがてはきれいにひとつの結末へと収束していく、その物語の快感。是非とも、味わってください!

そしてまた、その果てに待ち受ける結末。そこで示されているメッセージも、個人的にはやはり『うーん、これぞ伊坂先生の作品だよな!』とにんまりと、胸を熱くさせられたようなものでした。

ここも最高。

 

この、伊坂作品だからこその、何て言うのかなぁ。

『勧善懲悪』の世界観。

本当の『正しさ』が救われる、実を結ぶと言う世界観。やっぱり好きだなぁ。

 

いやぁ、本当に面白かった!

 

てなことで本日は伊坂幸太郎さんの『777 トリプルセブン』の感想をお送りいたしました。あれだなぁ、いつかまた、伊坂作品の魅力を語る記事も書きたいものだなぁ。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!