tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

読書感想文をお送りします~『うるはしみにくし あなたのともだち』

マジック5まで来たし、もう大丈夫やろ・・・さすがに大丈夫やろ・・・。

まだ油断できないかな?どうかな。

いや、もう片手まできたから大丈夫やろ。

 

あかん、阪神、アレしてまう!

 

そんなこんなで本日は澤村伊智さんの『うるはしみにくし あなたのともだち』の感想をお送りいたします。

澤村さんと言えば、このブログでも幾度となくご紹介してきました『比嘉姉妹シリーズ』で多くの方に知られている作家さんだと思います。

ただし当然ですが『比嘉姉妹シリーズ』だけがすべてではなく。このシリーズもめちゃくちゃ面白い。めちゃくちゃ面白いんですけれど。

このシリーズ以外の作品も、実に面白い。そして実に、その作風が多彩なんです。基本はオカルト、ホラー、そこにミステリー要素が加わって、と言う作風なのですが、その見せ方、描き方、あるいは作品の構築の仕方みたいなのが作品ごとに違っていて、まぁ、どの作品も読んでいて楽しいし驚かされる。

そして作品ごとにテーマみたいなもの。メッセージ性のようなもの。それが押しつけがましくない程度に、ちゃんと作品の雰囲気、流れ、物語と絡んだうえで描かれているのも、私は好きです。

こう言う言い方は語弊があるのかもしれませんが、私の中では澤村さんはいわゆる『はずれ』がない、そんな作家さんとしてめちゃくちゃ信頼を抱いています。はい。

 

てなことで本作品『うるはしみにくし あなたのともだち』です。

いやぁ、この作品もめちゃくちゃ面白かった。面白かったって言うか、すごい読んでいて、いろいろとしんどかったです。うん。

 

では早速、まずは作品のあらすじから。

とある高校の女子生徒、羽村更紗が自殺を遂げる。彼女はクラスでいちばん美しく、それ故に人気もあり、クラス内カースト上位に位置していた生徒だった。遺書も残されておらず、何故、彼女が自殺したのか。彼女のクラスの担任教師、小谷舞香は疑問を抱く。

しかし更紗の自殺をきっかけにしたかのように、更紗のクラスメイトであった女子生徒たち、その容姿が次々と無惨なまでに傷つけられていく。

およそ理解しがたいその異変に、クラスメイト達は疑心暗鬼に陥り、そのクラス内カーストにも微妙な変化が生まれていく。

そしてそんな中、小谷は、この地域に伝わる『ユアフレンド』と呼ばれるおまじないの存在を知ることになり、と言う内容です。

 

おまじない、です。なんだろ。もうこの言葉自体が、私としては懐かしさすら感じるくらいなのですが。どうなんだろ。今の若い方々の間でも信じられているおまじないって、あったりするのかな?

この作品のキーである『ユアフレンド』と言うおまじないは、簡単に言えば人の容貌、容姿を変えることかできる、と言う内容なのです。

勿論、そこにはクリアしなければならない様々な条件があります。でもそこをクリアさえすれば、クラスでいちばん美人なあの子の、あるいはクラス内でいちばんぶさいくなあの子の容姿を、思うがままに変えることができる、と言う内容なのです。

 

なので本作品『容姿』、美しい、醜い。可愛い、可愛くない。それがひとつのテーマとなって物語全体を覆いつくしているのですが、これがもう、読んでいてただただしんどかった。

更紗のクラスメイト、その女子生徒がたくさん登場するんです。そしてその1人、1人、当たり前ですが容姿は千差万別なんです。そしてその容姿から来る、1人の1人の性格、自意識の在り方みたいなもの。それも千差万別なんです。

その描写。そしてそれが生み出すクラス内カーストの在り方。その生々しさが、もう読んでいて本当に、言い方はアレですけど気持ち悪いくらいに肌で感じられて、とにかく息が詰まるような思いしかなかった。

 

なんだろ。それこそ『性差別だ!』と怒られる方もいらっしゃるかもしれませんが。

男性であり、この作品に登場する『女子高生』ではなかった澤村さんが、何故、ここまで、『女子高生』だからこその、あの時期特有であり限定の、残酷なまでの自意識であったり、他人に対しての気持ちの抱き方であったり。そうしたものをここまで生々しく、リアルもリアルに描くことができるのか、と私は心底、驚かされたのです。

作家さんってほんと、凄いよなぁ。

 

クラス内カースト。この言葉が登場したのは、感覚的にはここ数年のことのように私は思います。少なくとも私が女子高生やっていた20年以上前には、こんな言葉はなかったもんなぁ。それでも確かに、私が女子高生だった20年以上前にも、この言葉が意味するような状況はあった。少なくとも私のクラスではあった。

ねー。なんて残酷な、それでいて的確な言葉なんだろう。そう思います。

色んな偶然が重なった末に、ひとつのクラス、ひとつの教室で共に過ごすことになった人間。その人となりを全く知らない赤の他人。

そんな中、誰だって真っ先に考えるのは『1人は嫌だ。私と仲良くなれそうなのは誰だろう』と言うことじゃないですか。

そしてその人となりを知らない中、その判断基準となるのは、結局は見た目。そこから来る雰囲気、そうした部分が大きいと言うのは、もう仕方ないことなんだよなぁ。

私もそうだった。

『仲良くなりたい』と思う人と『仲良くなれそう』と思う人は、必ずしも一致していなかった。『仲良くなりたいな。話してみたいな』と思っていた人は、スクールカースト下位に属していた私とは、全く違う世界に存在しているような、スクールカースト最上位の人だったもんなぁ。

 

ちなみに。そんな私の高校時代、その出発の人間関係で盛大につまずいた1年と、その影響が尾を引いた2年はまさに暗黒も暗黒。出席日数ギリギリ綱渡り、『これ以上、休むと進級も危ういよ』と言われるレベルでしたが、3年は当時の担任。そして何より『仲良くなれそう』と思った人たちのお陰でめちゃくちゃ楽しかったのを、ここに書いておきます。あの時の担任、そして私と仲良くしてくれた人、本当にありがとう。

 

すごく勿体ない、そう思うんです。

ねー。だって、容姿とか雰囲気とか。それだけのことで人間関係が区切られてしまう、限定されてしまうって、本当に勿体ない。

だってもしかしたら、話してみたら、容姿も雰囲気も、何なら性格だって全く異なる人同士、だからこそ、めちゃくちゃ楽しく過ごせる。そんな可能性だってあるかもしれないのにね。

その可能性が容姿やら雰囲気やらで、最初からないものにされてしまうのって、本当に勿体ない。

そう私は思うのですが・・・でもやっぱり、これもまた10代の子どもたちにとっては、一種の戦場と言っても良いでしょう。その場である『学校』『クラス』と言う環境にあっては、致し方ないことだよなぁ、と言う思いもします。

それだけの余裕を許してくれないもんな、学校って。

 

てなことで『ユアフレンド』を用いて、次々とクラスメイトたちの容姿を変化させていた犯人。

その犯人が抱いていた思い。痛切な思い。それを遮るクラス内カーストの存在。

それがラスト、犯人がネット上に投稿したメッセージと言う形で明かされるのですが。

これを読んだ時、私は心底、心底、やはり『勿体ないなぁ・・・そしてなんて悲しいんだろう』と思わずにはいられなかったのです。

でもやっぱり『グループが違うから』、その理由だけで『友達になりたい人』と友達になること、友達になれるかもしれないことを諦めてしまった犯人の思い。そこにあった苦悩、葛藤も、痛いほどに理解できたと言うか何と言うか。

なんだろ。さっきも書いたけど本当に、自分のことを思い返しても『学校』『クラス』って、戦場なんだよな。戦場。しかも一度、つまずいたら、なかなか再起することが難しい、それを許してくれない戦場。

だからこそ、本当にやるせなかったです。

 

ちなみに、この犯人至るまでの展開。澤村さんと言えばオカルト×ホラー×ミステリーの融合がお見事!な作家さんなのですが、本作品でもそれは炸裂しています。

『ユアフレンド』と言うおまじないが醸し出しているホラーチック、オカルトチックな部分。そこでぐいぐいと物語に引き込んでいくと同時、『『ユアフレンド』を使って、クラスメイト達の容姿を傷つけている、その犯人は誰なのかっ!?』と言う謎解きの部分。そこが更に、その引き込み具合、そして引きずり具合、巻き込み具合を加速させていて、もうページをめくる指を止めることができないと言う(笑)

『ユアフレンド』のおまじない。それが発動、実験されるためには数々の条件をクリアする必要があります。つまり犯人を特定するためには、その条件のひとつひとつを潰していかなければならないわけです。

その部分に対しての推理の流れは、まさしく本格ミステリーの推理そのまんま。緊迫感すら漂わせる展開は、読み応えたっぷり。

そうして犯人が特定された、と思いきや・・・からの展開も、もうお見事の一言!

 

感想の冒頭でも書きましたが、この作品に登場する少女たち。その容姿は千差万別です。しかし共通しているのは、客観的に見て、あるいは男子生徒から見て容姿が優れている、美しい、可愛いと認められている少女は、どこか自信に溢れている。そしてスクールカーストの上位に位置している。

一方、そうではない女子は皆、自分に自信がない。鬱屈とした、あるいは卑屈な思いを抱いて、息を潜めるようにして日々の学校生活を送っている。

 

その頂点に立っていた更紗。彼女が口にした言葉と言うのが、その言葉を口にされた人物の回想によって作中では語られています。

『自分に自信を持ってください』『前を向いたらいいよ』『他人と比べても良いことなんかないしね』『自分が笑うと周りも笑顔になるよ』

 

卵が先か、鶏が先か、ではないですけれど。

更紗は誰もが目を奪われる容姿の持ち主でした。自信に溢れていた。スクールカーストの最上位に君臨し続けていた。それでいて、そのことをとてもクールに、冷めた思いで受け止めていた節もあった。

容姿が先なのか、内面が先なのか。

 

『学校』『クラス』と言う場所、環境下においては、やっぱり『容姿が先』なんだよなぁ。だから彼女の自信、カースト最上位と言うのも、やっぱり彼女の容姿があったからこそなんだと、私は思った。

だからこそ、彼女が口にした先程の言葉の数々には、ただただ『持てる者』だからこその残酷さをひしひしと感じて、私は、その言葉を彼女から口にされた人物の気持ち。

怒りであったり、苦しさであったり、途方もない惨めさであったり。そうしたものが手に取るように理解できて、ただただしんどかったです。

 

この物語の中にも登場していますが。通りすがり、全くの他人から容姿のことを嘲笑われたり。家族から冗談とも本気もつかないトーンで容姿のことを笑われたり。学校でも男子から容姿のことをからかわれたり。

そんな経験をしたことがない更紗と、作中で更紗の言葉に打ちのめされた人、あるいはそうした経験をしたことがある私との間にある壁は、果てなく強く、高いものなんだと、改めて突き付けられたような。

 

あと作中では、いわゆる『キャラ』を演じることで、自分の容姿に対する声。それから受けるダメージから自分を守ろうとしている女の子も出てきます。

彼女の立ち居振る舞いも、もう読んでいてめちゃくちゃ辛かったです・・・わかるよわかる・・・私も、中学生くらいの時は『明るく何を言われても笑っている、そんな寛容なデブキャラ』を演じることで、『デブ』ってからかわれるダメージを和らげようとしていたもんなぁ・・・。

 

なんだろ。ほんと、しんどいな(泣)

 

自分ではどうすることもできない、自分の容姿。

目で見てわかるそれだからこそ、時には内面以上に雄弁に、勝手に、『自分』を『他人』に語ってしまっているそれ。

だからこそ、そこにからめとられ、苦しめられている少女たち。

そして実は、教師であり大人である小谷もまた、そんな人間の1人だったりします。

 

少しネタバレになってしまいますが、物語の中盤。

『ユアフレンド』のおまじないが、その小谷にも実行され、彼女の容姿も醜いものへと変貌してしまいます。

当然、彼女もまたそのことに絶望し、一切の物事を拒絶しようとします。

しかしそこで1人の少女が見せた行動が、それによって示された意志が、小谷の心を強く動かします。

その少女もまた、自分の容姿に圧倒的な引き目を、絶望を抱いています。

 

そんな彼女が見せた、精一杯の意地。自分の気持ち。意志。

あるいは『ユアフレンド』によって容姿を変えられ、一度は絶望の底へと叩き落とされた別の少女。その少女が突き当てた『ユアフレンド』、そのおまじないの正体。真の正体。

 

そうしたものによって小谷の気持ちが変わっていく。言葉は適切ではないけど『やけくそ』的な強さを得て、真相に突き進んでいく。

その辺りの展開は胸熱でしたし・・・なんだろうなぁ。

やはり少しネタバレになってしまうかもしれませんが。

 

勿論、容姿、容貌の強さと言うのはある。それが他人に与える影響も、その影響を受けて自分が感じる影響の強さと言うのもある。それは決して、無視できるものではない。

他者からの態度で、言葉で受ける傷と言うのも、確かにある。

だけど、当たり前だけれど、それがすべてではない。

『すべて』だと思い込んでいる、そう思うその心こそ、気持ちの在り方こそ、実は幻覚以外の何物でもないのではないか。

そこにつけこんでくる、つけこんできて、その幻覚を実態のようにして見せるのが『ユアフレンド』なのではないか。

そんなことメッセージを感じさせるような展開にも、またこれ、いろいろと考えさせられました。

 

・・・でもやっぱり『学校』『クラス』、そして『女子高生』においては、それがすべて、みたいな部分はあると思うんだよなぁ~(涙)

そう言う意味ではなんだろ。当たり前だけれどこれらの設定。それらがあるからこそ、それらが持つ意味みたいなもの。それが存分に生かされていたからこそのお話だったなぁ、と言うことも感じました。はい。

 

そんなこんなで本日は澤村伊智さんの『うるはしみにくし あなたのともだち』の感想をお送りいたしました。

なんだろ。これはほんと、現在、女子高生の人、あるいは男子高校生の人。また私と同世代くらいの男性の人。それぞれの感想を聞いてみたい。そんな作品でもあります。

 

はい。ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!