tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

休みだけど読書感想文~今月のシフト

日曜祝日が5回あるじゃないですか。

私、2回しか入ってないわ。

・・・1回は犬の世話するために希望休取ったから仕方ないけど・・・。

 

やるせなし・・・。

 

まぁいいんですけど。

内職で頑張って、時給100円アップ分を補填しよう。

 

はい。そんな具合で本日21日、祝日は公休です。

タイトル通り、休みだけど読書感想文をアップしておきます。

ついでに言えば31日も休みです(白目)

 

休みの日は、できればその日に書いた記事をアップしたいんですけどねぇ・・・。

ぐぬぬぬぬ。

 

そんな具合で本当ならば今の季節にぴったりな、髙村薫さんの『李歐』、こちらの感想を、と思ったのですが、どうにも間に合いそうにないので。

少し前に読んで感想をアップしていなかった、こちらの作品の感想をどうぞ。

 

それが澤村伊智さんの『恐怖小説キリカ』です。

うーん、タイトルからして、何かしらぞくぞくするような響きですなぁ~。

 

人気作家を多数輩出してきたホラー小説新人賞。念願叶ってその賞を受賞した『僕』は、デビュー作出版に向けて、出版社の担当者と共に準備を始める。

その『僕』を支えるのが、妻であるキリカの存在だった。

慣れない作業に苦労する『僕』は、しかしキリカの存在に幾度なく助けられながら、一歩ずつ、作家の道を歩み始める。

幸せな日々がこのまま続くはずだと思っていた『僕』だったが、友人の一人が一方的な猛進を『僕』にぶつけ始めたことから、その日常が崩れ出す。そしてついには『僕』とキリカの関係に隠された秘密をも、暴かれることになってしまい・・・と言うのが、本作の簡単なあらすじです。

 

そして簡単なあらすじかつ、物語で言えば序盤も序盤のあらすじでございます。この後、物語は予想だにしなかった展開を見せるのですが・・・まぁ、それは読んで頂いてからのお楽しみ、と言うことで。

 

あ、ひとつ注意をば。

こちらの作品、残酷な拷問や暴力シーン、まぁ、ぶっちゃけると殺人のシーンですね、それが中盤辺りに描かれています。

なのでそうしたシーンが苦手な方、嫌悪感を抱かれる方はご注意を。

 

はい。てなことで感想ですが・・・。

ネット上で本作品のレビューをあさっていたら『お願いですから私のところには来ないで下さい』と言う懇願が書かれたレビューが結構あって、『ふふっ』となりました。

 

そうですね。個人的な感想としては・・・まず今知ったのですが、作家デビューのことを友人に話したら、友人から離婚した奥さんに意趣返しができる云々と言われた、と言う作中にも描かれているエピソードが、澤村さん自身、体験されたことだった、と言うことに驚きました。

成程。

作品の主人公・・・と言っていいのかどうかはちょっと疑わしいのですが、とにかく序盤は間違いなく主人公である『僕』が、妙に生々しい、澤村先生ご自身を思わせるのは、そう言う経験からこの物語が生み出されたからなのかなぁ、と思ったり。

 

で、です。

 

この作品がどんな作品か。一言で言うなら『人間が結局、いちばん怖い』です。

比嘉姉妹シリーズもこれは当てはまるのですが、ただあちらは、たとえば『ぼぎわん』であったり『ずうのめ』であったり。そうした、こー、語弊はあるかもしれませんが怪異の存在があり、その怪異の存在から、人間の怖さ、本性、それらが浮かび上がってくると言う構図がとられているように思うのです。

 

が。

 

『恐怖小説キリカ』に関してはですね、違うの。

ネタバレになってしまうのかもしれませんが、そう言う怪異的な存在は、一切、登場しません・・・ただし人によっては・・・っと、これ以上はネタバレになるからだめだ。内緒にしておこう。

 

怪異は登場しない。しかしそれに近いような存在は登場しているのですが、しかしその存在はちっとも怖くない。むしろ作中の良心と言ってもいいくらい(笑)

 

一方で登場する人間が、とにかく怖い。

ストレートに、何てか、これも変な言い方になってしまうかもしれませんが、わかりやすく、何の工夫もなしに、ただただ怖い。

 

怪異の存在と言うのは、想像力を働かせること、それを必要とすると思うんです。

『相手の存在、正体が何かわからない』と言うところからきて、そこに対していろんな想像力を働かせる。そのことで生まれる恐怖がある。

 

だけど本作品は違うんです。

想像力がいらないんです。なんてか剥き出しのわかりやすさがあるから。そして相手は、私と同じ、この社会にたくさんいる人間でしかないから。

わかりやすい。想像力もいらない。同じ人間。なのに怖いと言う。

 

そうして描かれている人間が、本当にわかりやすく、非常に偏った、クレイジーで極めて自己的な考えしか持っていなくて、それを実行することに何のためらいも抱いていないわけです。

そしてその行いで、次々と人が傷つけられていく・・・と言う流れ。

そう言う流れは、別に本作に限ったわけでなく、数多くの作品で描かれているはずなのに、私には改めて怖く感じられました。

 

何故か。

それが冒頭の話に関係してきます。

ネット上のレビューで見かけた『私のところには来ないで下さい!』と言う文言ですね。

 

この作品、途中から『作家と読者』の関係、そこから生まれたある種の歪みみたいなものを描いています。

それがまぁ、実に何と言うか、陰惨と言うか残酷と言うか『おっふ・・・』と言う感じなんですけれど。

 

でも、だからこそ、私としてはそこにリアリティを感じずにはいられなかったと言いますか。そしてリアリティを感じたからこそ『怖い!人間、怖い!』と心底、感じさせられたのです。

 

てなことで、私も懇願しておこう。

ああっ、お願いだから私のところには来ないで!

こんなレビューを書いている私のところには来ないで!

私は『ぼぎわんが来る』も『ずうのめ人形』も、その他の作品も、めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きましたよ!

だから!

私のところには来ないで!(土下座)

 

はい(笑)

 

そしてですね。

この『作家と読者』の関係。もう少し踏み込んで言うと、読者がありとあらゆるところでレビューを書く。作品の感想を世にさらす。それを不特定多数の人が見る。作品を書いた作者自身も目にする。そしてそこに対して・・・と言う流れが、個人的にはめちゃくちゃ面白くて。

 

と言うのも、澤村先生の比嘉姉妹シリーズにおいては、都市伝説と言いますか。

始まりはわからない。だけど人から人へと、あらゆる手段で継がれていった物語が、いつしか人を呪う力を帯びた話へと変わり、人から恐れられるようになる、と言う要素が登場していることも少なくないんです。

 

で、今回のその読者のレビュ→それが不特定多数に広がる→作家もそれを目にする→そしてその作家が読者をこ(以下自粛)と言う流れも、私は非常に都市伝説的な広がりに近いものがあるよなぁ、と思いまして。はい。

 

プラス、この作品自体も、もしかしたらもしかして、その都市伝説的な存在になるかもしれない、そう言う可能性も無きにしも非ずだよな、と言う気もするのです。

 

『澤村伊智って人の『恐怖小説キリカ』、あの作品を読んでレビューを書いた人、なんか次々と失踪しているらしいよ』と言う始まりからきて、最終的には『澤村伊智って人の作品を読んでレビューを書くと、その作品の世界に閉じ込められちゃうんだって!』と言う都市伝説的な物語が生まれると言うか。うん。

 

そう言う流れは『さすが!』と思ったし、そう言うことを感じさせるくらいに、小説でありながら、だけど現実との境界線を淡いにさせるような構図や作り、そして物語のリアルさみたいなものは『うーん、うまいっ!』と唸るほどでした。

 

比嘉姉妹シリーズのホラー的な面白さありつつ、しかしそれとは少し毛色の違う『人間が怖い』を全面に押し出した恐怖ありつつ、更にはミステリ的な仕掛けもありつつ、と1冊で非常にお腹いっぱいになる、そんな作品だと思います。

 

お願いだから私のところには来ないで!

 

・・・作品を読まれると、この意味もわかると思います(笑)

 

いやしかし。

澤村さんの作品は、ほんと、どれも面白いなぁ~。

いやこれは『作者にとって好意的でないレビューを書いたら○されるかもしれない』と言う恐怖から書いているのではなく(笑)本心から書いているのですが。

比嘉姉妹シリーズ以降、読んでいる作品、どれもほんと面白い。

前にも書いたと思うのですが、とにかくまず作家さんとして当たり前だけど、でも実はとても重要なことである、文章がうまいんですよね。うん。

 

そして物語への引き込み具合が凄い。

ずるずると引きずり込まれるような描き方で、そして引きずり込まれたが最後、スピード感あふれる物語の虜になって、次から次へとページをめくりたくなってしまう。

ミステリ的な仕掛けは勿論のこと、人間ドラマや、その人間たちのありとあらゆる姿もしっかり描かれていると言うのも、またこれ素晴らしいですよねぇ~。

 

てなことで、今手元には、澤村さんの文庫の最新作になるのかな?

『ひとんち』があります。

今、何度目かの読み返しをしている『李歐』を読了したら、次はこの『ひとんち』を読む予定です。うふふ、楽しみだ。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!