tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

読書感想文をお送りしますよ~『ファミリーランド』

はーい。

と言うことで読書感想文の記事です。

 

今回、感想をお送りするのは澤村伊智さんの『ファミリーランド』です。

澤村さんと言えば比嘉姉妹シリーズを挙げる方も多いかもしれません。シリーズ第1作品目にして澤村さんのデビュー作でもある『ぼぎわんが、来る』は映画化もされたので、そちらでご存じと言う方もいらっしゃるかもしれませんね。

比嘉姉妹シリーズ、現状5作品が刊行されているのですが、どの作品もめちゃくちゃ面白いので本当におすすめです。

 

勿論、澤村さんは比嘉姉妹シリーズ以外にも、数多くの作品を発表されています。私はそのすべてを読んだわけではないのですが、それでもやはりこれらの作品も本当に面白い、読書に夢中になる、ページをめくる指を止めることができない、そんな至福の時間を味わわせてくれる作品ばかりだと思います。

 

で、今回、感想をお送りする『ファミリーランド』ですが。

こちらもめちゃくちゃ面白かった!

 

ではでは早速、まずは作品概要から。

『ファミリーランド』は短編集です。ただし全作品、そのテーマと言うか描かれている物語の内容は共通していまして、それが『テクノロジー×家族』です。

テクノロジー、日々の生活を彩り、便利にしてくれるような科学技術。それを生活に取り入れた、様々な形の家族の物語が、どの短編でも描かれています。

さて、このように書くと『あぁ、テクノロジーによって救われたり、あるいは快適な生活を送っている、そんな家族が描かれているのかなぁ』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが・・・それは、まぁ、後々、書いていきます。ふふ。

すべての短編は独立した物語ではあります。ただし別の物語の登場人物が登場したり、別の物語のお話がちょろっと語られたりする、そうした繋がりはあります。

 

ではでは、全6作。あらすじと感想を手短に(手短にだぞ!私!)書いてまいりましょう。

まずは『コンピュータお義母さん』です。主人公の『わたし』の毎日、その家族の生活は常に義母に監視されていた。タブレット端末を利用したシステムによって。そんな義母の監視から逃れようと『わたし』はある行動に出るのだが、と言うお話。

『目の上のたん瘤、無くなったらすっきりするはずだと信じていたのに・・・なんだろう、この寂しさは』的な心情が、すごい複雑(笑)。そしてその先に待ち受けていた本当の結末。何と言うか、ある意味では真の絶望より絶望的と言っても良いような、もはや諦念しかないのだよ、と言う展開がもうたまらなく胸に重くのしかかってきました。

何と言うか、結局『慣れるしかないんだよ』の言葉って、別にこのシステムに限らず、生きること、日々、生活していくことに付随する一切に言えることなんだよなぁ。それがもうめちゃくちゃやるせない。その通りなんだけど。

 

次は『翼の折れた金魚』。デザイナーズチャイルドの証である金髪碧眼の子どもたちが優遇される一方、そうでない子どもは暗黙の内に差別されている世界が舞台。そこで教師として働く男性の目線で描かれる、様々な子どもたち、親の物語。そして彼と彼の妻の間に生まれた子どもを巡る物語です。

なんかいろいろと考えさせられる話でした。子どもを作る、産むと言うのは、誰が主体の行為なんだろうなぁ、とか。勿論、そこには子どもの存在は未だいないわけなんですけれど、でもだからこそ、そこにあるべき主体はその子ども自身なんじゃないのかなぁ、と思ったり。人ひとりの命を、この世に作り出すわけ、そしてその子に、この世界で生きていかせる、そんな状況を作り出すわけですからね。ねー。うん。

そしてラストがまたこれ・・・一周回ってもはや痛快としか言いようがないと言うか。皮肉極まりないと言うか。でも同時に、その気持ちは痛いほどわかると言うのが、またこれ切ない。ほんと、いろいろ考えさせられる話でした。

 

3作目は『マリッジ・サバイバー』、こちらは国内最大手にして国の支援も受けているマッチングサイト『エニシ』、それを利用した男性のお話です。複雑な家庭環境で育った男性は『エニシ』の登録にすら苦労します。しかし友人の力もあり、どにか登録完了。そして自分と同じく『ビジネス婚』を目的とする女性と知り合うのですが・・・。

怖い怖い。怖い。無理無理無理無理無理無理無理無理。無理。無理。絶対無理。結婚指輪に秘められていたこんなシステム、怖ろしすぎる。無理。私なら絶対、3日目くらいには発狂する。しかしあれか、結局、このシステムも『結婚』の延長上にあるもの、『結婚』とはそう言う可能性もあるものなんですよ、と言う表現なのか。怖い。私には絶対、結婚なんて無理だ、そう改めて確信させられた作品でした。

そのシステムから束の間、逃れた彼が行った行為、その時の彼の解放された姿、そこから発散された暴力の苛烈さみたいなものも、だから私にはむしろ共感しかありませんでした。なのなのにそれなのにあぁ・・・怖い。ってかそうか。大体、国が関係しているシステムなんてろくなもんじゃないと言うことか(違)

 

お次『サヨナキが飛んだ日』。こちらは自宅看護用小型飛行ロボット『サヨナキ』と、それを巡る母と娘の物語です。物語は娘を殺害した母親の語りでつづられています。どれだけ母が娘を愛していたか、それなの何故、母は娘を殺害するに至ったのか。そこに『サヨナキ』はどう関係しているのか。

まぁ、なんだ。救いようのない話だなぁ、と思いました。母の愛の方向性、それがただただ救いようがないなぁ、と。報われるとか報われないとかのレベルの話じゃない。もはや方向性として誤っている、最初から誤っている時点で、もうこれどうしようもないじゃんね、と。

そして娘も、作中でも吐露していたけれど、母のことなんて放っておいて、さっさと家を出るべきだったんだよな。本当にそう思う。なんか自分のこと、自分と母のことが頭にあるもんだから、もうここはほんと、苦しいくらいにそう思った。あなたの人生はあなたのものなんだから、だからあなたがしたいようにすれば良かったんだよ、と。

結局『サヨナキ』と言う存在があろうとなかろうと、この母親は遅かれ早かれ、何かをきっかけに娘を手にかけていたとしか思えない。母と娘の関係なんて、ろくなもんじゃないよ。所詮、一番身近な女性同士でしかないんだから。

 

『今夜宇宙船の見える丘に』は、収録作品の中でいちばん好きな作品です。いわゆる『一般的な人生のレール』から逸脱した生活を送っていた主人公。彼は現在、心筋梗塞に倒れ寝たきりとなっている父親と同居し、その介護に明け暮れる日々を送っていました。切迫している経済状況、日々、悪化していく父親の状態、閉塞感しかない毎日。そんなある日、彼は大学の同期に再会し、と言う物語。

『宇宙船』と言う言葉が登場しているタイトルにふさわしい、SF的展開を迎えます。そこにはある種の感動的な雰囲気も漂うのですが・・・その先に浮かび上がる主人公の心情、もしくは真実は、ただただ笑うしかないと言う。いや、でもこれ、実際、現実でもニュースとかで取り上げられることもある内容だもんなぁ。

本作品に登場するテクノロジーは『ケアフェーズ』と呼ばれるもの。その内容は作品を読んでお確かめ下さい、なのですが。ねぇー・・・なんかこんなもの、絶対に実現化されたくないな、と言う思いがある一方。もはやそれもやむなし、そんな状況に追い込まれるような、そんな時代が実は日本と言う国は、すぐそこまで迫ってきているんじゃなかろうか、そんな気持ちもしてしまいます。はい。

結局はお金なんだよ。お金さえあればどうとでも、何とでもなるんだよ!

 

そして最後は『愛を語るより左記のとおり執り行おう』。何とも不思議なタイトルですが、あぁ、成程。物語を読み終えた後、このタイトルを改めて目にすると『成程ね。成程ね』とにやり、としてしまいます。

テクノロジーによりきわめて簡略化された葬儀が一般的となっている世界。WEB配信ドラマのディレクターを務める主人公は、ある日、奇妙な話を部下から聞く。それは死期が迫っている1人の老人が『昔ながらの、伝統的な葬式』を望んでいる、と言う話だった。かくして主人公は、その老人に話を聞くことにするのだが、と言うお話です。

私たちが知っている葬式が、もはや遠い過去のものになっている、その舞台設定が面白い。主人公たちは当然『昔ながらの葬式?』『伝統的な葬式って、それ、どんななんだ?』と言うわけなので、それを知っているこちらとしては、その不思議がる様が面白く、また新鮮でもありました。

で、実際、この老人の願いは実現のものとなるのですが・・・そこでの関係者たちの戸惑い、四苦八苦もまた微笑ましいのですが・・・何故、老人は昔ながらの葬儀にこだわったのか。主人公が、そこにひとつの推測を巡らせた時、胸にこみあげてきた感情は、個人的にはとても切なかったです。

何でしょうね。昔ながらの儀式って、それはもしかしたら『こう言うことがありましたよ!』と多くの人に伝える、そんな役割も果たしているんだろうなぁ。

葬儀が簡略化された、主人公たちが生きる世界。それは確かに煩雑さが存在しない、快適な世界のようにも思えるし、私も別にそれでいいとは思います。ただ一方で、陳腐な言い方ではありますが、人との繋がり、それがどんどんと失われていくような、そんな寂しさはあるのかもしれませんね。はい。

 

そんなこんなで全6作品の感想を、つらつらと書いてまいりました。

なんでしょ。テクノロジーが登場した世界が舞台、そしてそれに関わることになった家族の姿が描かれているわけですが、結局のところ、本質的な部分はテクノロジーがあろうとなかろうと、何にも変わらないんじゃないかなぁ。そんな気持ちにさせられた作品でもありました。

それを希望だととらえる人もいるだろうし、絶望だととらえる方もいらっしゃるでしょう。ちなみに私は後者です。しかも絶望と言うよりか、もはや諦めに近いようなそれと言いますか。人間って、家族ってどうしようもないね、的な。

でもだからこそ、妙な生々しさやリアリティ、そこから来る親近感みたいなものもあった作品だと思います。

 

あと。あとがきで細谷正充さんも書かれていたのですが、澤村さんの作品の多くは『家族』と言うテーマと切っても切り離せないような関係にあると感じます。

特に『家族』と言う言葉、その中に無理やり押し込められてしまっている暗部やネガティブな部分。そう言うものを浮き彫りにして描き、物語として描かれるのが巧みだなぁと。なのでこの作品は、そうした澤村作品と『家族』のひとつの代表作にも挙げられる、そんな作品なのではないかな。

 

はい。そんなこんなでそんなこんなです。

読書感想文、9月は30日までなので、次回は10月11日ですね。

よろしければ引き続きお付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!