『チョコデート・サンデー』だよ・・・『チョコレート・サンデー』じゃないよ。
『チョコデート・サンデー』だよ・・・この前の休みの日の記事、流れるように、自然に曲名を間違ってしまっていましたね。
園田智代子・・・ごめんな・・・ごめんな・・・。
こう言うのはちゃんと確認しないといけませんな(確認はしたんだけどな(言い訳))
申し訳ない。
てなことで本日、感想をお送りするのは織守きょうやさんの『花束は毒』です。
本作品は2021年に単行本で刊行されておりまして。その時から『早く・・・早く文庫化にしておくれ!』と文庫化を待ちわびていた作品なのです。
そしてこの度、文庫として発売されたので購入いたしました!
文庫化までに約2年ちょいですか。昨今、割と4年、5年と経過しても文庫化されない。そんな作品も珍しくはない。そんな印象があるので、この2年ちょいで文庫化と言うのは、結構、早いなぁ、と私は感じました。
『読みたいなら単行本で読めばいいだろ』
ご尤もです。
ただやっぱり、作者さんの作品を生み出されるまでの苦労、執筆中の苦労、労力はじゅうじゅうわかっているつもりですが。
それでもやっぱり、単行本、高いじゃないですか(震え声)
はい。てなことでまずはあらすじを。
憧れの家庭教師だった真壁。結婚を前にした真壁に脅迫めいた内容の手紙が送りつけられていること知った主人公は、その調査をとある探偵事務所に依頼する。
主人公の前に姿を見せた探偵は、中学時代、いじめに遭っていた従兄を、実にえげつない方法で救ってくれた先輩、北見だった。
主人公と北見は、様々な情報を収集しながら、真壁に送り付けられている脅迫状の謎に迫っていく。その中で明らかになったのは、真壁が過去、ある事件を起こした容疑で逮捕されていたこと。最終的には示談をしていたと言うことだった。
ならば彼に脅迫状を送り付けているのは、その事件の関係者なのでは。
そんな思いで更に調査を進めていく主人公と北見だったが、と言うお話です。
物語は主人公である木瀬と探偵役の北見、この2人の視点が章ごとに入れ替わる形で描かれていきます。
はい。てなことで感想です。
なお、いつものごとく明確なネタバレはしません。しませんが、勘の良い方、ミステリーを読み慣れていらっしゃる方なら『あ、それは』と察することができるかもしれない、そんな記述はすると思います。
なので『そう言うのは嫌よ!』と言う方は、今すぐこの画面を閉じて下さい。
よろしくお願いいたします。
この作品が単行本で発売された時。この終わり方が『衝撃のラスト!』と話題になっていたように記憶しているのですが。だからこそなおのこと『読みたい!』と私は目を輝かせたのですが。
このラスト、私は宮部みゆきさんの初期の某名作を思い出しました。
いや、あくまで私の感想です。そしてそのことを『真似してるんじゃないの?』とか言うつもりはまったく、毛頭もございませんのでご理解を。
ラストの、その光景であったり、あるいは木瀬と北見、2人の心情。強い困惑、あるいは真実を知ってしまったからこその恐怖、後悔、苦しみ。そこからくる体が冷えていくような、ネガティブな方向性での興奮みたいなもの。そう言うのがもう、まざまざと目に浮かんでくる、こちらに伝わってくるようで。
私はただただにやにやが止まりませんでした。
こう言うラスト、物語の畳み方は賛否両論あると思います。
が、私は大好きです。
『ほいっ』と投げられたボール、それを思わず反射的に受け取ってしまって『さぁ、どうしよう』と困惑していても、ボールを投げた本人は『好きにしたらいいよ』と意地悪めいた微笑ひとつ残して、その場を立ち去ってしまった。
そんな良い意味での放り出された感。それが切れ味鋭い衝撃をもたらしながらも、同時に余韻となって胸かき乱してくれるような。だからこそ、作品を読まれた方と一緒に『どうする?あなただったらどうする!?』『この後、どうなったと思う!?』と語り合いたくなるような。
そんなラストではないでしょうか。好き。
てなことで。
ねぇ~。作品を読まれた方なら知っていらっしゃるわけですが。
ご自身だったらどうされます?木瀬、あるいは北見だったら、どうされます?
どうしましょうか(にやにや)
私は、でも、意外に迷わなかったなぁ。はい。私は『言わない』です。黙ってます。
主人公の木瀬にとって真壁は親交のある人物でもあり、また憧れの人物でもあります。
自分がもし、木瀬だったなら。その親交のある、憧れの真壁に対して真実を告げないことは罪になるのではないか。裏切りになるのではないか。
そんな迷いも確かに覚えました。
が!
そーんなに親交が深いわけでもないじゃん!命の恩人ってなら別にしても、たかが家庭教師やってもらってただけでしょ?(言い方!)
真壁との親交の深さ。それと真実を明かしてしまった時のリスク。そのリスクを冒した時に、自分に降りかかってくるかもしれない恐怖を天秤にかけたら、私は『さようなら、真壁さん』と即決してました(笑)
自分の身は自分で守るしかないんだよ!(もはや開き直り)
ってか、主人公が自身に言い聞かせるようにして思っている、その言葉に尽きると思います。
『真実を知っても、誰も幸せにはならない』です。その後に続く言葉が、いかにも法曹に携わる父と祖父を持つ木瀬。『正しい』に満ちたまっすぐな心を持った木瀬らしい言葉だなぁ、とも思いました。
その通りです、ご尤もです。
ただ私は、自分に火の粉が降りかかってくるのだけは絶対に避けたい。
『自分以外はしょせん他人』です。冷たい。
木瀬みたいに法律の知識があって、その知識を持つ人間も周囲にいて、ある程度までは自分で自分の身を守れるかもしれないならともかく。
私にはなんの武器もない。
だから私は、自分で自分の身を守るために、真実は胸に秘めたままにしておきます。
そしてそれとなく、真壁との交際も絶つようにします。
以上!
てなことで、この作品の謎は主には2点です。ひとつは『結婚を控えている真壁に、その結婚そのものを否定するような脅迫文を送り付けているのは誰なのか』と言う点。そしてもうひとつは『過去、真壁が起こしたとされる事件。本当に真壁は無実なのか否か』と言う点ですね。
本作品の作者である織守さんは弁護士として活躍される傍ら、小説も執筆されていたと言う方です。なのでその織守さんの弁護士としての知識。それが存分に活用されている作品でもあります。
だからひとつひとつの描写、説明がとても細かい。故に『成程』と言う説得力がある。
物語の終盤。すべての事件の黒幕の正体が明らかになった際に、その黒幕がとったとされる行動。それも一見すると『そんなうまいこといくものなの?』と突っ込みそうになったのですが『もしかしたらこう言う事例があったのかもしれない』と言う、謎の納得につながっていったのは、自分でも謎ですが『弁護士』と言う肩書を持たれている作家さんが描かれているからこそだと思いました。
ただ、ですね。
ひとつ、ひとつの調査がものすごく細かい。また木瀬と北見、真壁の心情、その変化なども丁寧に描かれている。そこはものすごく読みごたえがあるし、先ほども書きました、そのが故の説得力も生まれているので素晴らしいことだとは思うのです。
思うのですが・・・やっぱり、そのことで若干、私は中だるみを感じてしまったのは否めないかなぁ、と。
読みごたえはある。説得力もある。面白くないことはない。だけどどうしてもスピード感が薄れてしまっている部分が、中盤、なかなかのページ数を占めているのは、何と言うか少し勿体ないなぁ、と思いました。
そうは言っても、ここで描かれていることも最終的には真相につながる、そのヒントにはなっているわけですが・・・。
たとえば真壁の同窓生であったり、過去、お付き合いがあった女性であったり。ここのシーンはもう少し削れた、人数的にも削れたんじゃないかなぁ、とか思ったり。
ただまぁ、これもミステリーのお約束『怪しい人』を登場させるためには必要であるのは確かなのですが。はい。
てなことで個人的にこの作品がアクセルを踏み込んできたのは、スピードを上げてきたのは、すなわち、その面白さを加速させていったのは292ページからだと思っています。
ここから始まる8章は木瀬目線で語られるのですが、ここからの展開がまさしく『怒涛!』の一言で、もうページをめくる指を止めることができないくらいに面白かったです。めちゃくちゃ興奮しました。
そしてそこから明らかになる真相。すべての黒幕の正体ですよ。
衝撃の展開のような気もしたし。
でも私としては『そうそう。ミステリーでこう言う『顔の見えない描かれ方』をしている人って実は怪しいんだよね』と言う気が途中からしていたので『やっぱりそうだったか!』と言う気もしないことはなく。
いや、でも、ねぇ~。
ねぇ~。
ねぇ~(笑)
凄い執念だわ。
だからこそ、なんですよ。
だからこそ、私としてはやっぱり『もうそっとしといてやれよ』と言う気持ちがこみあげてくる部分もありまして。
真実があり、でも、当然ですがそれを知ることが『正しい』や『幸せ』につながるとは限らないではないですか。
知らないままでいる正しさ。知らないままでいる幸せ。それも確かであり、それもまた『正しい』であり『幸せ』であるとも言える。
北見は探偵ではありますが、いわゆる神がかり的な力を発動させて、少ないヒントのみで真相を明らかにしていくような名探偵ではありません。
彼女が真相にたどり着けたのも、とある人物と出会うことができたから。その人物と会話することができたからです。
それでも、本作品における探偵役が導き出した真相。本来ならば探偵が、自らの行いを誇示するようにして事件の犯人に突きつけるその真相。
それが非常にダークで、とんでもなくビターな、胸糞悪くなるような味わい、重量級の存在感を放っていながらも、それで犯人にとどめを刺すことができない。
その無力感をも同時に味わわせる、突きつけてくるという意味では、この作品もまた『探偵の敗北』を描いた作品なのかも、とも思った次第です。
でも・・・ラストの北見さん。まぁ、確かに探偵としては、依頼を請け負った探偵としては、木瀬に対してはそう言うのが正しいんだろうけれど。
『ちょっとずるくない?』と思ったのは、私だけでしょうか?
んぁ~、このラストに関しては、ほんと、本作品を読まれた方と語り合いたいわ!
てなことで本日は織守きょうやさんの『花束は毒』の感想をお送りいたしました。
ってかこれ、中盤のちょっと中だるみしちゃってると感じた部分も、映像にしたらまた印象が変わってくるように感じます。
そう言うところも含めて、めちゃくちゃ実写化に向いているんじゃないかなぁ、とも思いました。
勿論『原作に忠実に』が大前提ではありますが。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んでくださりありがとうございました!