収入確保の手段を増やしたい。
そう思う今日この頃。
ってか、もうそれを思い続けて何年が経過したことよ・・・おっふ・・・。
本題です。
『准教授・高槻彰良の推察』このシリーズに手を伸ばしたのは他でもない『男性2人のバディもの、そんな作品を読みたい』と思ったのがきっかけでした。
語弊ある言い方かもしれませんが『普段、読んでいるミステリー作品とはまた違った、良い意味でライトな作品で読みやすそう』と思ったこと。また表紙イラストを鈴木次郎さんが手掛けていらっしゃったこともあって、第1作目を購入したのが、私とこのシリーズの歴史の始まりです。
調べてみたら第1巻の発売は2018年。多分、発売直後と言うわけではないけれど、それでもそれくらいの時期、割とシリーズが開始されてすぐぐらいに読み始めていたように記憶しています。
ま、私の記憶なんて不確か、あてにならないことこの上ないんですけど!
それから今年で5年目。気が付いたらドラマ化もされたし、コミック化もされた。小説は今作で9作目、短編集を含めたら10作目。
ありがたいことにCV付きのPVまで公開され、高槻先生を伊東健人さん、深町くんを内山昂輝さんが演じて下さると言う豪華さ。
かくなるうえはこのままの勢いで、このままのキャストでアニメ化されないか。
そんな思いを募らせているわけなのですが。
いやいや、そうか、もう9作目。次回で10作目になるのか。ずいぶんと長い付き合いになったもんだ。作品が発表されるペースが、ほぼほぼ半年に1度、年に2冊は新刊が発売されていると言うのも、ファンとしては本当にありがたい。
そんな思い、感慨にも似た思いにふけりつつ、今回の読書感想文をお送りいたします。
ちなみにボイス入りPVの感想ですが。これ、前にも書いたんですけど。まず深町くん役の内山さんに関しては、原作を最初に読んだ時に感じた以上に暗いと言う印象を受けました。ただ考えてみたら、深町くんが高槻先生に出会う、それまでに抱いてきた諦め、絶望、孤独。そうしたものを踏まえたら、これくらいの沈んだトーン、感情の起伏が失われた声のトーンの方が、むしろふさわしいんだよな、と気づかされたような思いもしました。
そして伊東さんの高槻先生に関しても、私の中ではもう少し、こー、柔らかさ、ともすればちょっと女性的な響きのある声を想像していたので、最初は意外性しかなかったのです。が『インテリオタク』『知性あるオタク』をたくさん演じられている伊東さんのお声、聡明さや知性、怜悧さを感じさせるお声は高槻先生にぴったりなんですよね。あとそのお声に、当然ですが男性らしい低音の響きがあることで、高槻先生の柔らかさと共に芯の強さ。妙なところで発動されるとても頑固な部分。それも表現されているように感じられて、いやこちらもナイスキャスティングです。
と言うことで感想文にまいりましょう。
『准教授・高槻彰良の推察』、こちらのあらすじを簡単にご紹介いたしますと。
主人公の深町尚哉は、ある出来事がきっかけで『他人が嘘を口にした時、その声が歪んで聞こえる』と言う体質になってしまいます。その体質のせいで孤独な日々を送っていた彼は、入学した大学で民俗学の講義を受けたのをきっかけに准教授である高槻彰良と親交を持つことに。
数々の怪異現象に高槻と共にあたっていく内、深町は、高槻もまた自分同様、過去に不可解な出来事に巻き込まれていたことを知ります。
そしてまた高槻を通して、様々な事件を通して、あるいは大学生活を通して。深町はたくさんの人と知り合うことになり、少しずつ、『人と向き合うこと』に対する考え方、態度も変わっていくようになる、と言うのがざーっくりとしたあらすじです。
高槻先生、深町くん以外にも物語が進むにつれ、キャラクターがどんどん増えていきます。その人たちの関係性の変化やそれによって高槻先生や深町くんの、その孤独だった内面が変化していく様子は、シリーズの大きな読みどころ、魅力です。
基本は怪異現象を軸としたミステリーですが、内容的にはそれほど難しくはありません。怪異現象が常識的に、論理的に謎解きされる場合もあれば、『それは怪異現象でしかない。以上』と言う結論が出されることもある。
つまり本シリーズにおいては怪異、それが存在しているものである、と言う前提で物語が進んでいきます。なのでミステリーとしての論理的な謎解きと、それでは決して解明できない怪異の存在。その、ある種、正反対な魅力がうまいこと融合しているのも、本シリーズの面白いところです。
ではでは、9作目の感想に参りましょう。
まずは『トンネルの中には』です。高槻ゼミに所属することになった深町は、同じゼミの学生たちと共に、とある怪異現象が噂されているトンネルに足を運ぶことに。そこでは帰宅途中の女性が何者かに殺害されると言う事件が発生しており、と言うお話。
同じゼミの学生と共に行動をしている深町くん、その姿が描かれているだけで、シリーズ当初から彼を知るこちらとしては『あぁ、深町くん・・・本当に変わったね・・・』と感慨深い気持ちにすらなりました。もはや親御さんの気分(笑)
ほんと、高槻先生じゃないですけれど、深町くんにはもっともっと、同世代の学生と同じように、学生生活を楽しんでほしい、と改めて思うのです。
そして今回の怪異現象の裏側にあった真実は、めちゃくちゃ胸を締め付けられました。その真相に関わっていた人物に高槻先生がかけた言葉も、ものすごく温かかったなぁ。大切な人を思うあまりのその感情が、その大切な人である死者を、恐ろしき怪談、怪異の物語に閉じ込める結果になってしまっている。それは確かに、あまりにも切ないことだもんなぁ。
無関係の人間が、ある事件、それから派生したと思われる怪異の物語。それを面白おかしく取り上げることの罪深さみたいなもの。そこも考えさせられました。
お次は『黒髪の女』です。ある演劇サークルの代表である男子学生から相談を受けた高槻と深町。その内容は、予定されている公演で主演を務めるはずだった女子学生の髪が、不自然な状況で切断されたと言うものだった。不可解な現象の謎を解明していこうとする中、高槻の身に予期せぬ出来事が降りかかり、と言うお話。
この話、好き。いや、基本的にどのお話も好きなのですが、このお話、特にまどかと言う女子学生、その存在感がめちゃくちゃインパクト大きくて。彼女の、その謎めいた魅力にこちらも振り回されるがごとく、どんどん物語にのめり込んでいくのが自分でも感じられたくらいです。
そして彼女が胸に秘めているのであろう感情に関しては、物語の序盤でなんとなく予想はついていたのですが・・・やはり、やはりそうだったか。でもなんでしょ。その感情は、私が想像していた以上に深く、深く、暗く。もはや執着のようにすら感じられて、彼女のその思い、その一端が垣間見えるようなあるシーンでは、ぞくり、と肌が泡立ちました。
『美羽ちゃん、どうぞご無事で』と書いていて『大げさかな』と思う気もするのですが、一方で『いや、割とマジで』と思う私もいる(笑)
またこの物語では、高槻先生が避け続けている状況。高槻先生を取り巻いている現実の、その確かなひとつであるそれに直面せざるを得ない状況も発生します。
ここは相も変わらず、読んでいてしんどかった・・・。高槻母の存在感もまた、まどかとは異なる、だけど圧倒的なインパクトの強さがありますよね。この人が登場するたび、ほんと、心がぞわぞわします。
高槻先生が現実に直面し、その精神を完膚なきまでに打ちのめされて、さぁ、と言うところでラスト。その高槻先生の相棒である深町くんにもまた、現実に直面せざるを得ないような事態が降りかかってきます。
『ど、どうするよ!深町くん!』とハラハラした気持ちを引きずったまま、物語は次の作品へと進みます。
で、ラストは『桜の鬼』です。前作のラストで友人の難波から、あることを指摘された深町。それ以来、難波と顔を合わせることすら避けていた深町は、高槻から気分転換も兼ねた旅行はどうか、と誘われる。気分転換が必要なのは高槻も同じだ、と深町はその誘いに乗ることに。かくして高槻、深町、そして佐々倉の3名は箱根旅行に出かけるのだが、宿泊先で、桜の名所で噂されている怪異現象の話を耳にしたことで平凡な旅行は一転することに、と言うお話。
普通の旅行がしたいなぁ、と何度も嘆くように、しかしおそらくは切実な思いで願っているのであろう深町くんの思いが、もう痛いほど伝わってくると言うか何と言うか(苦笑)。今までも旅行の話は何度か描かれていましたが、ほんと、『普通の旅行』だったためし、ないもんね。
あらすじの中で登場したキャラクター、まず難波くんです。難波くんは、深町くんが大学で知り合った男子学生。とにかく快活、いつでも元気、さっぱりとした性格の持ち主。どうしてもぐずぐずと悩んだり、沈み込んだりしてしまいやすい深町くんとはある種、正反対の性格であるが故、深町くんが最も親しくしている友人です。
そしてもう1人の佐々倉さんは、高槻先生の幼馴染です。職業は刑事。強面、いかつい体、と言う見た目から、ヤのつく職業の人に間違われることもしばしばある人です。ですが高槻先生を幼い頃から見てきており、その身を常に案じ、今もなおぶっきらぼうながらに高槻先生、更には深町くんのことを心配している、とても情に厚い人です。
この2人はシリーズ1作目から登場している・・・はず。ちょっと記憶はあいまいですが(すいません!)いずれにしても、シリーズ当初から登場しているキャラクターであるのは確かです!
何でしょ。他人のある行動って、その人のことをよほどしっかり見ていなければ、よほどちゃんと見ていなければ。しっかり、ちゃんと見ていて、かつ、その時の状況とかを覚えていなければ気が付けないものだと思うんです。
そして気が付けたとしても、何と言うか、ある程度の親しさみたいなもの。それが『自分』と『相手』の間にある、と思い込みでもいいから確信できていないと、それを相手に伝える、問いただすって、なかなかできないことだと思うんです。うん。
少なくとも私にはできない。難波くんのように、深町くんの、ある過去の出来事によってそうせざるを得なくなってしまった行動。それに気が付くことも、そして仮に気が付いたとしても、それを深町くん本人に問いただすことも多分、できないと思う。
それは深町くんの事情に踏み込むことになるだろうから。そんな思いがあるから。あるいは、そこまでその『相手』に対しての興味がないだろうから。
だから深町くんのある動作。そこに言及した難波くんが、私にはただただ『こいつすげぇな』としか思えなくて。それだけで、難波くんがどれだけ深町くんのことをちゃんと見てきていたのか。深町くんとしっかり向き合ってきていたのか。そして深町くんと自分との間に、信頼関係があると信じていたのか。深町くんに対して、ちゃんと興味を持っていたのか。そう言うのがめちゃくちゃ伝わってきていて『いや、難波くん。あんた凄いよ』と改めて思わされたのでした。
いや、でも多分、難波くんの性格から察するに。難波くん自身は、そこまで事を深くとらえていないと思うんですよね。そこがでも、また難波くんの難波くんたるゆえんと言うか。
深町くんは大学に入学して、いろいろな人に出会った。その出会いによって彼の人生は、彼自身も思いもしていなかったような方向に、だけど心の底では望んでいたのかもしれないような方向に転がりだした。
その最たる出会いは高槻先生との出会いなんだろうけど、いや、でも。難波くんのような、自分自身とは正反対の性格をしている人物に出会えたと言うのも、深町くん。
あなた、相当、運が良いわよ(何様目線(笑))
そしてこの一件で気まずくなってしまった深町くんと難波くんの和解のシーンも。もうほんと、この2人らしくて最高でした。胸がほんと、ほんわかしたよ!
またこの物語では新たなキャラクターも登場。でもこの人は、高槻先生や深町くんの心をかき乱してくれそうな、実にイヤーな感じのする、不気味な感じのする、クセのあるキャラクターですよね。でも好き(どーん)。どうぞこれからお好きなように暴れて、物語に波乱を巻き起こしていただきたいと願うばかりです。ふふ。
ちなみにこの物語で描かれていたのは、桜の名所を舞台とした怪異現象。なので作中でも満開の桜の描写が登場するのですが・・・その美しさたるや、ですよ。
だけど美しく、なのにどこかそこに、ひそやかな恐ろしさみたいなものを感じるのは私だけでしょうか?
季節が来れば、必ず、毎年、満開に咲き誇る。その姿は美しくもあり、健気でもあり、幻想的でもあり。だからこそ、そこには目に見えない何かしらの執着みたいなものも感じられて、ひそやかに怖さを感じるんですよね。うん。
はい。で、残る1作は『それはかつての日の話Ⅲ』で、こちらはとある食堂を夫婦で営んでいる女性が主人公。彼女と高槻の出会い、そこから夫婦で高槻と親交を深めていく様子が描かれています。
てなことで次でシリーズ10作目ですか!
高槻先生、深町くん、双方を取り巻く状況は相変わらず波乱含みではあるけれど、それでも互いが出会う前までのことを思うと、本当に明るく、にぎやかになったんだろうなぁ、と思うんです。
だからこそ、さぁ、次の10作目で、また『どかん』と大きな波乱が発生。それによって高槻先生と深町くんの関係にも、大きな変化が起きてしまう、と言うような。
読んでいるこちらとしては、ハラハラ、ドキドキ、メンタルがかき乱されるような展開も期待しちゃったりする私もいたりして。ふふ。
シリーズとしても多分、終盤に差し掛かっているのは確かだろうなぁ。深町くん、3年に進級したし。
ん?
そうか。大学生だから3年で終わりじゃないんだ!
まだ1年、あるんだ!
『3年で卒業を迎えるタイミングでシリーズも終わりかな』と書こうとして、はたと気が付いたわよ!はは!
となると、あとまだ2年、深町くんの学生としての日々は続くわけだから・・・卒業のタイミングでシリーズが幕を閉じるとしたら、今は中盤の後編って感じかな。
いやいや、何はともあれ、今後ともお付き合い、よろしくお願いいたします!
と言うことで本日は澤村御影さんの『准教授・高槻彰良の推察9 境界に立つもの』の感想をお送りいたしました。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!