tsuzuketainekosanの日記

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今年最初の読書感想文!~『この夏のこともどうせ忘れる』

刀剣乱舞』の新刀剣男士のビジュアルが一部、公開されましたね。

青峰大輝でしたね。違うけど、青峰大輝でしたね。

で、毎度、毎度、思うんですけど。

公開直後から特定班が動き出し、刀剣の名前を出されてくるの。

あれ、凄くないですか?

しかも今回、推測から導き出されたのは『八丁念仏団子刺し』って。

名前、強すぎるやん。こんなん、刀の名前ちゃうやん。『必殺仕事人』で、仕事人が暗殺する時に使う手段の名前やん。そんな名前の刀が、この世には存在しているなんて。

いやぁ、特定班の方々の、その知識量と熱意には、毎回、本当に『ふへぇ~。凄いよ!』と感嘆させられるばかりです。

 

はい。てなことで1が付く日なので読書感想文をお送りいたします。

今年も無事、平穏に読書を楽しめますように。

そしてたくさんの作品と出会えますように。

こちらの心をがつがつ揺さぶってくれるような、思い込みや倫理観をぶち壊してくれるような作品と出会えますように。

 

そんなこんなで新年一発目にお送りする読書感想文はこちら。

深沢仁さんの『この夏のこともどうせ忘れる』です。

 

冬なのに夏!

季節感、どこ行った!

 

はい。てなことで本作品は全5編の短編から成立している1冊です。

高校生の少年、少女を主人公に、彼ら、彼女らの『ひと夏』を描いています。

 

深沢さんの作品に触れたのは本作品が初めてだったのですが、いや、もう、この1冊に関して言うならば『めちゃくちゃエモかった!』です。

なんだろ。『エモい』って、なかなかこー、それがどういう感情なのか、言葉に表現しづらいじゃないですか。だからこそ『エモはエモなんだよ!』としか言えないような、そう言いたくなるようなアレなんですけど。

ほんと、本作品、5つの物語、ひとつひとつがもうエモの極致としか言いようがないような。青春と言う言葉、そこに付随する一切のエモさが詰め込まれて描写されている、そんな作品だと感じました。

 

では5つの物語、ひとつずつ、感想を書いていきますね。

・『空と窒息』

・・・ある秘密を抱えた少年と、偶然、その秘密を知ってしまった少年の関係を描いた作品。読み終えた後には『これBLじゃん・・・BLじゃん・・・』と呟かざるを得ないほどの感覚に襲われた、そんな作品でした。

『共犯関係』、そんな言葉が浮かんでくるんです。うん。その言葉からイメージされるような危うさが、途方もなく読み手を惹きつける、そんな作品でもあるのですが。同時、その裏側にある現実、『もしかしたらこんな関係ではなく、本当の意味で友人になり得たかもしれない2人』と言うことに思いを巡らせると、めちゃくちゃ胸が締め付けられると言うか。

主人公がこうなってしまったのも、その主人公に頼まれた、ただそれだけの理由で、あの行為に及んだ彼自身の思いも。彼ら自身はなにひとつ悪くないと言うのが、これまたどうしようもなくやるせない。

 

絶望的に救いがないような最後は、それでもだからこそ、一縷の救いがあるようにも思えて。あるいはそれは読者である私自身の願いなのかもしれなくて。

『こう言うテイストのBLも嫌いじゃないのよ。でもやっぱり私は、正統派甘々のBLが好きなのよ。だからお願い。東京で落ち合った2人が、どうか幸せに生活してくれますように』と願いつつ(BLではない)、それでも、この切ないまでの『共犯関係』を続けていくこともまた、彼らにとってはひとつの在り方なのかな、とも思うと、それもまた切ない。

『この夏のこともどうせ忘れる』と言うこの本のタイトルが、どうか現実のものになればいいのに、と思うのであります。

 

・『昆虫標本』

・・・憧れのクラスメイトの少女から、その自宅へと招かれた少女。そこで繰り広げられる少女たちの危うげな関係を描いた物語です。

百合(どーん)。いやもうまごうことなき百合。百合に必要な耽美さ、生々しさ、そして毒と棘。それらが全て詰め込まれている、そんな作品でした。

だからもう読んでいる間、主人公の少女同様、私も憧れのクラスメイトの女の子、その言動に翻弄されてしまうような、魅入られ身動きがとれなくなってしまうような。そんな感覚にとらわれて、怖さすら感じるくらいでした。

 

あとですね。主人公ちゃんの弟と、この憧れのクラスメイトのお兄さん。その関係も描かれるんですけど。何があったのかは描かれないんです。あくまで弟くんが最後に、それをばーっと語るんですけど、当然、それが真実だとは限らない。ただただ姉である主人公ちゃんの視点で、弟の変化が描かれ、それによって暗に『あ、何かあったんだな』と言うことが読者に伝わってくる。

そこがまためちゃくちゃ憎いな、と。だからこそ想像も膨らむし、姉である主人公同様、弟もまた、憧れのクラスメイトの少女の兄にとらわれてしまったのかもしれないな、と言う思いがこみ上げてきて・・・たまらんな。

 

ひと夏の、怪しくとびきり美しい御伽話のような経験を経て、変わった主人公と弟。その変わった姿、変わり方の違いと言うのがなんともやるせなく。

その『変容』をある意味、開き直りで受け入れた主人公に対して・・・今なお、屋敷へ通い続けている弟の物語も、これはこれで独立した物語として読んでみたいと切に思わされました。はい。

 

・『宵闇の山』

・・・BL・・・いや、だからなんでしょ。この作品、5編の物語。本当に少年、少女の瑞々しさや、暗さを孕んだような一途さ。そして自分たちではどうしようもない状況、そこであがくしかない絶望みたいなもの。それを描いているからこそのエモさがあって、だからこそキャラクターの関係性も、とても濃厚なんですよ。だから物語すべて、もうBLか百合かTLなんですよ。ほんとに。

 

はい。てなことで個人的にはいちばん好きな作品です。毎夏、夏の花火を一緒に見ていた少年たちの姿を描いた物語。物語中盤で明かされる、思いもしていなかったような展開にも驚かされた作品でもあります。

 

いやぁ・・・ねー・・・。胸が締め付けられたわ。サツキの主人公に対する思いに名前を付けるとしたら、どんなそれがふさわしいのだろう。私にはわからない。わからないからこそ、残酷な現実を前にしてもなお、穏やかにいられるサツキの感情が切ない。いや違うな。サツキは多分、穏やかでいることを自分に課しているんだろうな。主人公の気持ちを必要以上にかき乱させないために。かっはー。そのサツキの優しさが、またこれ、どうしようもなく切ないわ!

そして同時、都合よく、そのサツキの存在にすがってしまっている主人公の感情も、これもうどうしようもなく切ない。

 

あることに対して、そうするのが普通だろ、と主人公が答えて。でもそこに強い恐怖を抱いていることを思わせる描写もあって。

いつまでもこのままでいい、このままがいいとは思えない。思えないけれど、ならばせめて、主人公の『その時』が穏やかなものでありますように、と。そしてそれまではどうか、ひと夏のこの一日だけは、サツキの姿があってくれますように、と。

願わくば、主人公の『その時』に、サツキがいてくれますように。

主人公の本当に最後を看取るその人が、どうかサツキでありますように。

 

・『生き残り』

・・・TL。この作品も相当、好き。主人公は『女子高生であること』に凄まじいまでの価値を見出している少女。その少女が『ちょうどいい人』として彼氏候補に選んだのが、とある出来事から『生き残り』と呼ばれている1人の少年だった。少女の猛烈なアピールの末、2人は付き合うようになったのだが・・・と言うお話。

 

これもどうしようもなくやるせない。『生き残り』と呼ばれている少年、そのきっかけとなった出来事は物語序盤で明かされるんですけど。でも実はそれだけじゃない。本当の意味で彼は『生き残り』であり、今もなお、自分の大切な『家族』を守るために、息を潜めながら、状況を、あまりにも理不尽な状況に耐えながら生き続けてきている『生き残り』なのだと。

それを突き付けられた時の、圧倒的な衝撃と悲しみと言ったら。

 

『空と窒息』もそうでしたが・・・何と言うか。ネタバレにはなってしまうかもしれませんが、親と言う存在が、子どもである少年、少女にどれだけの影響を与えるか。逃げたくても、でもいろんな側面から逃げるのが難しい存在だからこそ、その『どうしようもなさ』が胸に重くのしかかってくるようで。

怒りもあるけれど、でもなんかもう、圧倒的な絶望感しかないんですよね。うん。

 

読んでいるこちらも、少年と付き合い始めた少女と同じようにその不器用さ、あるいは真意がどこにあるのかわからない少年の態度、言葉にはやきもきさせられるんですけど。『もっとはっきりしてよ!』と(笑)

 

でもそれは違った。少年は、確かに少女の存在、彼女と過ごす1分、1秒に救われていた。文字通り、本当に救われていた。そしてそのことを知って、少女も少年が、初めて自分が好きになった人だと気が付く。

『忘れたっていいよ』って言われたって、忘れられるわけがないよね。『楽しかった』って言われた。そう思ってくれていた。そんなことを本人から明かされて、忘れられるわけがないよね。そんなのあまりにも残酷だよね。

 

そして2人が下した決断。『この夏のこともどうせすぐ忘れる』と言うタイトルならば、どうか2人がいつの日か、笑って、穏やかな気持ちで、この夏のことを思い返せますように、と祈るような気持ちです。

 

・『夏の直線』

・・・BL。ある春の日、忽然と姿を消した作家の父。その父の別荘にやってきた主人公。ある夜、主人公は、父の作品に登場していた人魚、そのモデル思しき、1人の謎めいた少年と出会う、と言うお話。

息をつめたくなるほどの、繊細で、美しく、透明で、瑞々しいお話。そしてどこか幻想めいたお話でもあります。あと夏のお話なんだけれど、でも描かれているのは、伝わってくるのはその熱さではなく、冷やっこさみたいなものだと言うのも、この作品の特徴かな、と。はい。

 

人魚のモデルと思しき少年。その謎めいた、それでいてどこか色気漂う存在感と、主人公の少年の、何かを諦めているようで、でも諦めきれない部分もあるような諦念。その融合が独特の雰囲気を醸し出しています。

結末も本当なら寂しさがこみ上げてきてもおかしくはないはずだろうに、寂しさは勿論、あるのですが。それ以上に『少年が経験した、ひと夏の不思議な出来事。不思議な思い出』と言う、さらっ、とした感じの方が強いのも、個人的には好印象でした。

 

はい。てなことで全5作品、感想を書いてまいりました。

5つの物語、10代の少年、少女たちの瑞々しくもリアルな姿が、様々な形で胸を打ってくる作品ばかり。

彼ら、彼女らと同世代の方は勿論のこと、私のように『かつて、彼ら、彼女らと同世代だった』方が読まれても、様々な思いが胸を過ることでしょう。

そして読まれる方の年代によって、胸に過る思いが異なりそうなのも、面白い。そう言う意味では読み終えた後、色んな人と意見を交換したくなるような作品だとも思いました。はい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!