はい。そんなこんなでタイトル通り、今年ラストの読書感想文記事でございます。
末尾に1が付く日に挙げているこの記事。
次の12月31日は大晦日なので、まぁ、その日は通常記事を挙げる関係で、今年ラストと言うことになります。
いや、今年もそこそこ本を読んだなぁ~。
『このミステリーがすごい!』で1位に輝いた呉勝浩さんの『爆弾』をはじめとして、今年刊行された作品もそこそこ読んだし、それ以外の作品もそこそこ読んだし。
ありがたい、ありがたい。読書ができるって、本当にありがたいよ・・・。
てなことで今年最後の感想をお届けする作品は、藤崎翔さんの『逆転美人』です。藤崎さんは元はお笑い芸人として活動されていたと言う経緯の持ち主。で、コンビ解消後、様々なアルバイトに勤しみながら執筆された作品のひとつ、『神様のもう一つの顔』(刊行時には『神様の裏の顔』に改題)で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞され、作家デビューを果たされたと言う方でございます。
『神様の裏の顔』は私、読んではいないのですが、書店に勤めていた当時、結構、話題になっていたような気がします。
で、今回の『逆転美人』でございます。
アマゾンでいつものように気になる作品、購入したそうな作品を漁っていたところですね、たまたまこの作品が挙がってきまして。
『ミステリー史上初の伝説級トリックを見破れますか?』と言う、実に自信満々な惹句が帯にでかでかと書かれていまして。
大抵、この手の惹句には騙され続けてきたんですけどね(遠い目)
それでもやはり、この手の売り文句にはホイホイ、引き寄せられてしまうのがミステリー好きの性ってもんじゃないですか。
てなことでホイホイ、引き寄せられ購入してみた、そんな次第です。
果たして今度こそ、この盛大ともいえる惹句に騙されずに済んだのか。
それともお約束通り、綺麗に騙されたのか。
その結末はいかに!
てなことで『逆転美人』の、まずはあらすじでございます。
不幸な交通事故結果、車いす生活を余儀なくされた娘。その娘の学校に教師に襲われたシングルマザーの女性、香織(仮名)。
飛び抜けた美貌を持つが故、不幸ばかりの人生を歩んできたと言う彼女は、この事件が報道されたのを機に『逆転美人』と題した手記を発表することになる。
いかに彼女が、その美貌故に理不尽で、不幸な目に遭ってきたのか。その美貌が原因で、平凡な生活を送ることすらできないほどの目に遭ってきたか。過酷な人生を歩んできたのか。
彼女自身が振り返るその人生の記録。しかしその裏側にはとんでもない真実が隠されていた、と言うのが簡単なあらすじです。
物語の大半は香織(仮名)の手記、つまり一人語りで進んでいきます。そしてその後、ある人物によって、その手記に隠されていた真実が、やはり手記と言う形で明かされると言う構図です。
肝心の、帯の惹句に書かれていたこと。
それに関してはまた後々、書くことにしまして。
手記ものです。
わかりますね。
ミステリー好きな方、普段、ミステリーをたくさん読まれていらっしゃる方なら『手記ものです』と言っただけで、ある程度、察しはつくかと思います。
そう言うことです。
私も手記ものと呼ばれるミステリー、数多く読んできましたけど。
その度、騙されてやんの(笑)
そしてこの作品も、まーんまと騙されたの。
バカじゃないか、私!知ってたけど!
はい。いや、まぁ、何をどう騙されたのかはさすがに内緒ですが。
でもこの香織(仮名)の手記。
人並外れた美貌が故、苦労を強いられてきたような人生をつづった手記。
これがまぁ、面白いこと面白いこと。
なんでしょ。ほんと、こー、まさしく昔の昼ドラ(昔は『昼ドラマ』と言うものがあって、お昼の13時くらいだったかな?に30分のドラマが放送されていたのですよ。それはそれは濃い内容の作品が多かったのですが)を彷彿とさせるような内容で。
またその内容とか描写が『いや、それは美貌のせいだけじゃないだろう。単にあなたがおバカなだけでしょ』と突っ込みたくなる感じと『あー・・・でもそれは確かに、その美貌のせいかもしれないなぁ』と納得せざるを得ないような部分のバランスが絶妙で。
何とも言えない気持ちにさせられて、でもとにかく波乱万丈で面白い。それ故に読みごたえもあって、ぐいぐいと作品の世界、香織(仮名)の半生に引き込まれていくのです。
香織(仮名)の人並外れた美貌とは正反対、人並以下の容貌の持ち主、10代の頃にはそれでからかわれたことも、馬鹿にされたことも少なくはない私からしてみると『美貌故に不幸になる。美貌故に平凡な人生すら歩めない』と言う香織(仮名)の思い。
最初はちょっと『いやぁ。嫌みかよw』と鼻で笑うしかなかったんですけど。
でも何でしょ。手記を読んでいく内に『あぁ、確かに。そう言う一面もあるのかもなぁ』と思わされる部分もあったりして。
その辺は、なんかいろいろと考えさせられました。ねー。
でも何度も言います。
手記です。
手記。
そう言うことです(でーん)
はい。でもほんと、なんかミステリー云々と言う部分を差し引いても、単純にこの香織(仮名)の手記は面白かったです。
絵に描いたような、ドラマのような、実に濃い内容!
ただその中、時折『?』と思わされたり『この描写、やたらくどいな』と感じる部分。また明らかに違和感を抱くような部分もあったりで。
結果、それが、後半部分で明かされる真相の暴露に繋がっていくのですが。
さ、そしてその手記に隠されていた真実が後半、明かされて。
で、更にその人物、香織(仮名)の手記の真相を明かした人物が隠した仕掛け。
その正体が明かされ、すなわちその仕掛けこそが、帯に書かれてあった『ミステリー史上初の伝説級トリック』になるわけですが。
他の方も言及されていますが『ミステリー史上初』ではない、ですよね。
うん。この手のトリック、仕掛けを描いたと言うか仕込んだ作品は他にもありますわな。うん。私も多分、読んだことがあると思う。
なので帯の惹句、間違ってんぞ!
言い方厳しいけど、自分で自分の首、締めてんぞ!
はい。
具体的にどんなトリックだったかは、勿論、書きません。
が、ざーっくり書いてみると。
文章や文字の並び。その読み方。それを利用したトリックが仕掛けられています。
『そんなこと言ったら、わかっちゃうかもしれないだろ!これから読もうと思ってるのに!騙される楽しみなくなっちゃうじゃないか!』とお怒りになられる方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。
まず、見抜ける方はいらっしゃらないと思います。
それくらいに凝りに凝った作りになっているので、本当に作者の労力にはただただ頭が下がる思いしかありません。
凄いわ。
このトリックを思いついて、じゃあそれを実行しようとなった。そのために、それはもう計算の上に計算をし尽くしたうえで、文章を書いていく。
その上で、かつ物語としての面白さも当然ながら生み出さなければならない。維持しなければならない。
こうした素人目からしたら『いやいや、そんな無理。無理です(でーん)』と言うしかないような難しいことを、だけどやってのけて面白さもしっかりと満たしている。その点においてはこの作品、本当に『お見事!』『ブラボー!』『素晴らしい!』と拍手したくなる、そんな作品だと思います。
うん。
作者さん、凄い。
ただ、です。
もうほんと、好きか嫌いかのレベルだと思います。
この手のトリック、非常に練りに練られたトリックに対してどう思うかは。
で、私は・・・うーん・・・。
素晴らしいし、ほんと、作者さんの労力には素直に頭が下がる。凄いと思う。
思うんですけど。
アレです。
私としては『ミステリー的な騙し』『ミステリー的なトリック』を期待していたんですけど・・・。
蓋を開けてみたら違った(ちーん)
いや、じゃあ『『ミステリー的な騙し』『ミステリー的なトリック』ってなんだよ!?』って突っ込まれると、なかなか難しいんですけど。
たとえば『十角館の殺人』をはじめとする『館シリーズ』とかさ。『屍人荘の殺人』とかさ。他にもたくさんありますけど。
なんかそう言う作品に共通している、美しい推理、論理的な展開。
危うく、脆弱で、しかし美しく儚く。
だけど堅牢な砂の城。
それを思わせるような騙し、トリックを期待していたのよ。
そして私は、そう言うのが好きなのよ・・・好きなのよ・・・好きなのよ・・・。
なのでこの作品の『伝説級のトリック』に関しては、正直、何度も言いますが労力には素直に敬意を表しますが、好きか嫌いかで聞かれると。
嫌いとは言わない。だけど好きとも言わない。
そんな読後でした・・・うん・・・いや、なんかすいません。
勝手に期待したのは私なので『そんな作品じゃねぇんだよ。勝負のジャンルが違うんだよ!』と突っ込まれたらそれまでで。
結論・申し訳ない(土下座)
はい。いや、でもほんと、このトリックは、伝説級でも史上初でもないけれど、ほんと素直に凄いと思います。
どれだけの労力、時間を費やされたことか。
あと、そう。
まさしく『紙の本』だからこその仕掛けですよね。このトリックは、この作品が映像化されても、何の意味も持たない、何の魅力にもならないと言うのも素敵です。
なのでその点、たまらない方にはたまらない仕掛けになっていることと思いますし、何より物語として面白いので、ぜひぜひ、読まれてみて下さいね。
文庫なので手が伸ばしやすいと言うのも、嬉しい限りですよね~。
今年1年、読書感想文記事にお付き合いいただきありがとうございました。
来年も私のへっぽこ読書感想文、よろしければお付き合い下さいませ。
よろしくお願いいたします。
そして来年も、平穏無事に読書を楽しめますように。
面白い作品とたくさん出会えますように!
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!