tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~1994年

年末恒例『このミステリーがすごい!』の30余年の歴史を振り返る記事でございます。今回が6回目、今のところ、順調に投稿できておりますね。

 

はい。てなことで本日、ランキングを振り返るのは1994年です。

ではでは、いつも通り、まずは1994年と言う年を振り返ってみましょうか。

 

ちょいと興味がわいて1994年生まれの声優さんを調べてみましたら・・・上田麗奈さん、佐倉綾音さん、高野麻里佳さん、鬼頭明里さん、高橋李依さん、日高里菜さん、麻倉ももさん、和氣あず未さん、大橋彩香さんと言う、もう並びだけで強過ぎる方々が出てきて『おおっ』と思わず、声を出してしまいました。

『女性声優 キセキの94年組』と言う検索ワードも出てきたくらいなので、声優好きの方たちの間では、有名なことなのかもしれないのですね。

 

ちなみに男性声優では、畠中祐さんのお名前が出てきましたよ。

 

はい。そんな1994年、何があったのかなぁ、といつも通りウィキペディアを見てみたら・・・おっふ・・・4月、ルワンダでジェノサイド、集団虐殺が始まった、と言う項目が目に飛び込んできました。約100日間で100万人の方が虐殺されたとのことで。

なんだかなぁー・・・なんか、ほんと、人間って何なんだ・・・。

また6月にはオウム真理教による松本サリン事件も発生していますね。

いや、もっと他に素晴らしい出来事も起きているはずなのだが・・・なんか、たまたま目に入ってきたこの2つの項目のせいで、一気に気分が欝々してしまいました。

 

人間って、ほんと、何なんだ・・・。

 

はい。では、気分を変えて1994年の『このミステリーがすごい!』のベスト10の中から、私が読んだ作品を中心に振り返っていきます!

ja.wikipedia.org

いつものように、こちらのリンクから1994年の結果を見て頂くと、より分かりやすいかと思います。

 

この年、トップに輝いたのは髙村薫さんの『マークスの山』でございます!

読んだ!読んだ!読んだ!(笑)

てなことで、こちらは後程、たっぷりと語るといたしまして・・・その他、ベスト10にランクインした作品の中で私が読んだことがあるのは。

9位、折原一さんの『異人たちの館』、3位、稲見一良さん『セント・メリーのリボン』、そして2位、山口雅也さんの『キッド・ピストルズの妄想』ですね。はい。

 

ではでは。まず9位『異人たちの館』からです。

天才少年と呼ばれた少年が富士の樹海へと姿を消してしまった。売れないゴーストライターの島崎は、少年の母親から、少年の伝記を書いてほしいと言う依頼を受ける。島崎は少年の人生に迫るべく、膨大な資料を読み込み、また関係者にも取材を行っていく。しかしやがて不気味な『異人』の存在が、島崎の周囲に出没し始めて・・・と言うのが簡単なあらすじです。

 

ほとんど覚えてないので(汗)読書感想文を振り返ってみましたが・・・やはりロクな感想は残っていませんでした・・・えー・・・。

ただ『どうなるんだろ、どうなるんだろ!』とわくわくしながら読んだのは確か。と言うか、以前、他の作品の時にも書いたと思うんですが、折原さんの作品って叙述トリックなのですよね、うん。なのでそこに騙される快感みたいなものは楽しいのですが、逆を言えば、他の作品などを読んでいて『折原さんは叙述トリック』と言うのを知っていると・・・読む前から、ある程度、トリックに推測がついてしまうと言う。はい。

なので当時の私も、そんな感じだったんじゃないかなぁ。

逆に折原作品、まだ読んだことがないわ!と言う方は、是非とも、事前知識なしに、どの作品でも良いので読まれてみて下さい!

 

はい。続いて3位『セント・メリーのリボン』でございます。

稲見さんが作家として残されている作品、その数は、決して多くはないのです。ただいつぞやの記事で熱弁した『ダック・コール』、そしてこちらの作品も、本当にきらきらとした輝き、派手派手しくない、温かく、やさしいきらめきを放っている作品ばかりで、胸にじわりと染みてくる、それでいて小説としての面白さに満ち満ちているのが、本当に素晴らしい。

癌のために亡くなられたのが63歳。その癌の治療に際して全摘出が叶わない、そのことで生きた証として小説執筆に打ち込まれたと言うのが、何とも皮肉なのですが。

しかしだからこそ『生きた証として小説を書く』と言う道を選ばれ、残された作品の数々は、生きること、そのすべてが厳しくも、やさしく、温かな眼差しで描かれているように、私には思えるのです。

稲見先生の作品を未読だと言う方は、ぜひぜひ、読まれてみて下さい。幸福な読書時間を味わうことができますよ。

 

で。こちら『セント・メリーのリボン』は行方不明になった猟犬の捜索を生業としている竜門と言う男性が主人公です。その彼のもとに、盲導犬捜索の依頼が舞い込んできます。愛犬と共に、その捜索に乗り出した竜門は、ひとりの、目が不自由な少女のもとにたどり着くが・・・と言うのが表題作です。全部で5つの物語がおさめられた、やはり『ダック・コール』と同じく『珠玉』と評するにぴったりな短編集でございます。

ハードボイルド的な味わいもあり、だけど決してキザすぎない。不器用な男の不器用な優しさが心に染みる、そして登場するわんこ、犬たちの姿も実に魅力的な『物語』の魅力を存分に堪能できる作品集だと思いますので・・・ほんと・・・読んで。

稲見先生の作品は、もっとともっと、世に知られても良いと思うのよ、マジで!

 

はい。そして2位にランクインしたのは山口さんのキッド・ピストルズシリーズの2作品目である『キッド・ピストルズの妄想』でございますね。

読書感想文の記録を振り返ってみると、やはりこの作品らしい、そして山口先生の作品らしい、ある種の狂気、常人には到底、理解しがたい、しかしだからこそ、どうしようもなく美しく、常人を惹きつけてやまないようなそれが炸裂した、そんな1冊だったようです。

 

なんだろう・・・読書感想文の記録を振り返りつつ、山口さんのデビュー作『生ける屍の死』を思い返してみると、何と言うか、こー。

簡単に、実に簡単に言ってしまうと『理解することの難しさ』をミステリーを通して描かれているなぁ、と今更ながらに感じました。

『人間同士だけど、異なる背景を持っている以上、理解できるなんて夢幻である』と言うところから生まれる、主には『何故、罪を犯したのか』と言う部分の推理であったり、描写と言うのは、そもそも『理解』とは何ぞやと言うところから始まって『人間同士だから、理解できるはずだ!』と言う陳腐な思い込みがいかに陳腐で、そしてまたいかに危険であるかを突き付けているようにも感じられて。それと同時、だからこそ、自分の理解を超えた驚愕であったり、不謹慎ながら面白くもあったりして、そこがまた、人間と言う生き物の面白さ、悲しさを浮かび上がらせているようにも思えるんです。

長々と語りましたが、結論としては『面白い』で済みます(どーん)

なんだろ・・・個人的には文化人類学とかに興味がある方は、絶対、『生ける屍の死』やキッド・ピストルズシリーズ、楽しく読めるはずだと思うのですが。

 

そしてそして、やってきました第1位!

マークスの山』でございます!合田雄一郎を主人公としたシリーズ、初期3部作の始まりとなる作品ですね。

髙村さんご自身は『ミステリーではない』と言う発言をされているとのことですが、個人的にはやはりこの3部作、極上のミステリーであり、骨太な人間ドラマが描かれた作品だと思っています。はい。

 

南アルプス夜叉神戸峠で起きた親子の心中事件。そこで残されたひとつの犯罪の種が、16年後、鮮やかに開花し、殺人事件を引き起こす。自らを『マークス』と名乗り、次々と殺人を繰り返していく犯罪者。

それに立ち向かうは若き刑事、合田雄一郎。

しかし姿の見えぬ『マークス』は、彼を弄するように事件を繰り返していく。『マークス』は一体、何者なのか。そして『マークス』とは一体、何を意味するのか。被害者たちに繋がりはあるのか・・・と言うのが、本作の簡単なあらすじです。

 

で、です。

前回、ご紹介した『わが手に拳銃を』もそうだったのですが、こちらの『マークスの山』も、やはり単行本版(早川書房)と文庫本版では、大まかな話の筋こそ同じではありますが、物語から受ける雰囲気や味わい、読了後に抱く感情などはまったく異なっています・・・いや、あくまで私個人の感想ですが。

なんてったって、全面改稿ですからね。

しかも、です。

文庫版に至っては2度にわたり出版されています。講談社から2003年に、そして新潮社から2011年にと言う感じなのですが、やはりこの文庫版も講談社版と新潮社版とでは味わいが大きく異なる仕上がりになっています。いや、何だ。もうぶっちゃけ『マークスの山』と言うタイトル、大筋こそ同じではあるものの、3冊どれも全くの別物と言ってもいいくらいなのです。はい。

 

てなことで、私も単行本→講談社文庫→新潮社文庫とすべて読んだのですが・・・やはり、と言うか。多分、読んだ年齢とかも関係していると思うのですが、新潮社文庫版がいちばん強く印象に残っています。

特に登場人物の書き込み、その心理描写の深みみたいなものは、作家として髙村さんが執筆を重ねてこられた部分もあって、新潮社文庫版が増しに増している、その厚みが凄まじいものになっているなぁ、と思います。はい。

なんてか『マークスの山』に限らず、ここから続く一連の合田を主人公とした3部作、すべてにこれは共通していることではないかな、と。はい。

 

とは言え、先ほどから書いていますが、大まかな話の流れ、『マークスの山』だと、あざ笑うかのように殺人を繰り返す『マークス』と、それに翻弄されながらも捜査を続ける合田たちの姿。そして『マークス』とは一体、何を意味しているのか、被害者たちは何を恐れているのか、そう言ったミステリー的にスリリングな部分の面白みと言うのは、すべてに共通しています。

 

そしてこれが、本当に面白い。極上のミステリ&エンタメ作品。仄暗い闇と狂気、そしてある種の純粋さを内に抱えながら、ひたすら殺人を繰り返す『マークス』の姿も、そして種々様々な事情を抱えながら、その沼のような深さに足をとられそうになりながら、もがきながら、それでも刑事として捜査にあたる合田たちの姿も、とにかく徹底的に、炙り出すように、『これでもかっ!』と言うくらいに描かれている。

そこに感じるのは人間の圧倒的な愚かさであり、悲しさであり、忸怩たる思いを抱えながらも日々を営んでいく、生きていくしかない人間の、もう業としか言えないような姿・・・なんですけど、それがまた、どうしようもなく染みてくるんですよねぇ。

だから本当に、胸を強く揺さぶられるような、なんか声を上げて叫びたくなるような、そんな感覚にとらわれることもしばしばなのです。

 

また合田が、義兄の加納との、ただの義兄弟である(しかも『元』である)関係を超えた関係に悩んでいる姿なんて、もう最高に辛気臭くてたまりません!(笑)

 

そうした厚み、深みがありつつ、しかしミステリー作品として、エンタメ作品としての疾走感、重厚感に満ちていると言うのも、本当に素晴らしい!読んでいてどんどん、どんどん、猛吹雪吹きすさぶ山、そこに連れ去られていくかのような、その猛吹雪の轟音が聞こえてくるような、なのです。

直木賞受賞も頷けるわ!

 

と言うことでここから続く『照柿』『レディ・ジョーカー』も今後、『このミステリーがすごい!』の上位にランクインしているのですが。

まずは!やはり!未読の方は是非とも、その始まりであり、圧倒的な引力をもって読者を物語の世界へと引きずり込んでくれる、そして極上の読書時間を提供してくれる本作を読んでください!

 

個人的には早川単行本→講談社文庫→新潮社文庫と出版された順に読んで頂きたいですが、早川単行本は、もう図書館で借りるくらいしか読めないような気がする・・・。

『えー、そんな同じ作品、3回も読むの面倒くさいよ』と言うそこのあなた!

何度も言うようですが、確かに『マークスの山』は『マークスの山』なんですけど、ほんとに味わいがどれも異なるので、実質、1粒で3度おいしいのよ!

だから読んでっ!

 

と言うことで本日は1994年の『このミステリーがすごい!』を振り返ってまいりました。次回は1995年ですか。

おおっ、調べてみたら続編の発売が待ち遠しい、あのシリーズの第1作品目がランクインしているではないですか!ほっほー、これは楽しみだな。

 

と言うことで、次回も引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。

ではでは。今回の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!