tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

4連休中ですが1が付く日なので~読書感想文の日です

絶賛4連休中ですが、1が付く日なので読書感想文をお送りします。

昨日に引き続き、通常営業です(笑)

 

てなことで本日お送りするのは、中山七里さんの『死にゆく者の祈り』です。

 

中山さん。

個人的にあんまり読んでいなかったんですよねぇ。何故だろう。

映画化された『護られなかった者たちへ』と、あと数冊、本当に数えられる程度しか読んでいないと思います。

何故だろう(2回目)

『護られなかった者たちへ』も、そして今回の『死にゆく者の祈り』も、とても面白かったので、これからちょこちょこ中山さんの作品、読んでみようかなぁ~。

 

てなことで『死にゆく者の祈り』です。

まずは簡単なあらすじから。

主人公は高輪顕真。彼は教誨師としての一面も持つ僧侶です。

ご存じの方も多いかと思いますが、教誨師とは、刑務所で受刑者に対して徳性教育を行い、受刑者の改心などにつなげることを目的とする宗教者のことです。

その顕真はある日、拘置所で思わぬ人物を見かけます。その人物の名は、関根要一。大学時代、とある事故で命を落としかけた顕真を救ってくれた人物です。

拘置所にいると言うことは、関根は何かしらの罪を犯したと言うこと。顕真が調査すると、関根は見知らぬカップルを刺殺していたことが明らかになります。関根の鼻には痣があるのですが、通りすがり、カップルからその痣について笑われたことに立腹しての犯行だと言うことですが、顕真にはそれがどうしても信じられませんでした。

顕真の知る関根は、そんな短絡的な犯行を行うような人間では、決してなかったからです。しかし戸惑う顕真を前に、関根は頑なに自らの犯行だと言い張ります。

既に死刑が決定している関根は、何かを隠しているに違いない。

顕真はその思いを胸に、その事件について調査を始めるのですが・・・。

 

いや面白かったです!

読み始めたが最後、続きが気になって気になって仕方なく、読了までに1週間もかかりませんでしたよ!

今作品のポイントはふたつ。

ひとつは、関根が本当に罪を犯したのかどうか、と言うところ。そしてもうひとつは、関根への死刑は執行されてしまうのかどうか、と言うところです。

 

序盤は、ひとつめのポイント、本当にカップルを刺殺したのは関根なのかどうかを中心に、物語が進んでいきます。

教誨師と言うのは、当然のことですが、どの受刑者に対しても公平であらなければならない存在です。よって学生時代の思い出、印象、また命を救われたと言う経験があるが故、どうしても顕真が、関根に対しての思い入れが強すぎるきらいがあるのは否めない点ではあります。

ただだからこそ、必死に、時には不格好な姿をさらけ出してまで、ひたすら関根の事件を調査していく顕真の姿は、個人的には頭が下がるような思いがしました。

もし、自分が同じ立場だったとして、果たしてここまでやれるかなぁ、と。最初の内は頑張れるにしても、ひとつ、壁にぶつかってしまったが最後『やっぱりだめなのか』と諦めてしまうんじゃないかなぁ、と。

 

宗教家である以前に、ひとりの人間として。

関根と言う人間を徹底的に信じようとする、信じる顕真の姿、その行動力は目を見張るものがあります。

 

そんな顕真の熱意に負ける形で、途中から顕真と共に事件再調査にあたるようになるのが、刑事の文屋と言う人です。

この文屋さんも、実にかっこいい。関根が無罪だった場合でも、有罪だった場合でも、刑事である自分の立場は息苦しいものになる。

自分たちはいつでも、自信を持って有罪だと断じている。けれど千にひとつ、万にひとつ、何かを見逃している恐れも否定はできない。その恐怖、不安と戦っている自分を納得させるための再調査だと、顕真の熱意に負けた文屋さんの、実に刑事らしい立ち回りは『さすがはプロだぜ!』の一言です(笑)

 

亡くなったカップルの遺族などを訪問する2人は、やがて1人の男性の存在を突き止めます。そしてその男性の存在が、2人の再調査に大きな進展をもたらすのですが・・・それは是非とも、作品を読んでお確かめください。

 

そして物語の終盤も終盤、ラストはふたつめのポイント、関根は死刑に処されてしまうのかどうかを中心に、物語が実にスピーディーに進んでいきます。

いやぁ・・・ここはもう、本当に読んでいてドキドキが止まりませんでした。この時点でひとつめのポイントであるカップル刺殺の謎、その真相は明らかにされているわけなのですが、そこからの急転直下だったので、もう『え!?どうなるの!どうなるの!』と、ページすっ飛ばして結末だけを読みたくなる衝動をこらえるのが必死でしたよ(笑)

 

そしてここでも、顕真の関根に対しての気持ちが大爆発します!(笑)

でも・・・あー、わかるなぁ。わかると言うか、やっぱりここでも、顕真は宗教家、教誨師である以前に、ひとりの人間として、関根と言う人間の命を守り通そうとしているんですね。

それがもう、めちゃくちゃ伝わってきていて胸熱でした。

 

何でしょ。物語を通して、この顕真と言う人物。

教誨師、僧侶としては未熟なんだろうな、と感じさせる部分も多々、あるんです。あるんですけど、そこが逆に、教誨師、僧侶としては未熟だけれど、だからこそ、ひとりの人間としては、とても・・・魅力、じゃないですけど、こー、話をしてみたいと思わせる人だな、と感じさせると言うか。

なので個人的には、めちゃくちゃその行動には共感できたし『こんな人が教誨師だったら、受刑者も少なからず、自分のしてしまったことに対して何かしらの思いを抱くんじゃないだろうか』と思ったのであります。

・・・ま、現実的には、なかなかそう簡単にはいかないんでしょうけど(汗)

 

はい。

てなことでふたつのポイントを軸に、どんどん加速していく物語。

それに合わせて、こちらのページをめくる指も止められない、そんな作品なのですが。

 

ふたつのポイントに合わせて、死刑の在り方や、本当に罪を償うとはどう言うことかと言うのが、様々な登場人物を通して描かれているのも、本作品の魅力だと思います。

それによってエンタメ作品として面白いのは勿論のこと、そこに深みが出ているんですよね。はい。

個人的には刺殺されたカップルの遺族。その言葉や思いが、胸に突き刺さるようでした。うん。

教誨師と言う立場である顕真の言葉や思いと言うのもわからなくはないんですが・・・ちょっと作品からは話がずれる気もするのですが、何と言うか、日本はもう少し、もう少し、犯罪被害に遭われた方や遺族の方の気持ちに対して意識を向けるべきじゃなかろうかなぁ。うーん。

そしてネタバレになってしまうかもしれませんが、この犯罪に巻き込まれ命を落とした者、そうして残された者の気持ちと言うのが、今回のカップル刺殺の真相に関わっているのも、ま、ちょっとご都合主義な感じは否めないですが、構成としてうまいなぁ、と思わされました。

 

『死にゆく者の祈り』がタイトルの本作品。

死にゆく者と言うのが、死刑を待つ関根であるとするならば・・・彼は一体、何を祈っているのか。誰のために祈っているのか。

それが語られる部分では、何と言うか、人が生きること、人生を生きることの、どうしようもない難しさや切なさのようなものを、しみじみと感じさせられました。はい。

 

帯に書かれてあった『大どんでん返し』は、まぁ、やっぱりそれほど『大どんでん返し!』と言う気は、個人的にはしなかったんですけれど(笑)

でも『はっはぁ~、成程~』と十分、にんまりさせられましたし、何よりほんと、終盤の、関根に死刑が執行されてしまうのか否か、その1秒を争う攻防のスピーディーさ、緊迫感はたまりませんでした!

 

何でしょ。良い意味で、2時間・・・はちょっと厳しいから、2週連続スペシャルドラマみたいな感じで映像化したら、めちゃくちゃ面白いだろうなと思わせるような作品です。

文章も変な癖がないですし、作品の筋としても非常にわかりやすい。登場人物もそう多くなく、その関係性も複雑ではないので、あまり読書は得意じゃないわ、と言う方も、読みやすい作品だと思います。

だよな、中山さんの作品、たくさん映像化されているから、この作品も映像化されても、何の不思議もない気がするわ!

 

はい。

と言うことで、本日は中山七里さんのタイムリミット型ミステリ『死にゆく者の祈り』の感想をお送りいたしました。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!