ははっ!
できれば1日以外、末尾に1が付く日は休みじゃない方がありがたいんだけどね。
でもそうでした。本日11日は、私、希望休入れてたんでした。
ぐへっ・・・末尾に1が付く日なので読書感想文記事の日だ、と言うこと、まったく頭にありませんでした・・・ぐへっ。
まぁ、仕方ない。
そんな具合で11日、末尾に1が付く日なので読書感想文の日です。
今回、感想文を書くのは有栖川有栖さんの『捜査線上の夕映え』でございます!
・・・なんとびっくり。
火村英生シリーズ、誕生して今年で30周年だそうです!
マジかよ・・・もうそんなになるのかよ・・・えー・・・ちょっと信じられんぞ(汗)
30周年と言うことは、私が10歳くらいの時にシリーズとしては誕生しているわけですね。かっはー、小学4、5年生の時じゃん!大昔じゃん!
で、私がこのシリーズに初めて触れたのが、多分、高校1、2年、16、17歳の頃だったように記憶しています。『朱色の研究』が初めてだったと思うんだけど・・・『46番目の密室』のような気がしなくもないけど、まぁ、うん。とにもかくにもこのくらいの時期に初めて、このシリーズを読んだわけです。
以降、だから23、4年ですか。このシリーズをずっと追いかけているわけですが・・・ってか、いや、23、4年にしても、すごくね?自分で書いててびっくりしたわ(笑)
いやいや、本当に、時の流れの速さと言うより、その不可思議さをしみじみ感じるばかりなのですが、とにもかくにもシリーズ誕生30周年、おめでとうございます!
『自分より年上のお兄さんコンビ』がいつしか『自分と同世代のコンビ』になって、今や恐ろしいことに『自分よりかなり年下のコンビ』ですよ!
はは(白目)
アリスも火村先生も、もはや私の弟!
お兄さんだったはずなのに、今や弟!
その内、子どもになってもおかしくないわけだぞ!
かっは!(死)
いや、でも、こうして長きにわたりシリーズものを追いかけることができると言うのは、読者としては本当にありがたい限りです。幸せな限りです。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。
個人的願望としては、国名シリーズの短編集が読みたいです!(贅沢)
あぁ、一応、ご存じの方もいらっしゃらないかもしれないので、簡単にシリーズの概要をご紹介しておきます。
火村英生シリーズは作家アリスシリーズと呼ばれることもある、有栖川有栖さんのシリーズ作品のひとつです。
学生時代からの腐れ縁である准教授であり犯罪学者でもある火村英生と、推理作家の有栖川有栖、この2人が、様々な事件の謎を解明していくと言う内容です。
斎藤工さんと窪田正孝さんによるドラマが、5~6年前でしたっけ?放送されていたので、もしかしたらそれでご存じと言う方もいらっしゃるかもしれませんね。
有栖川さんの作品のシリーズは他にもたくさんありますが、もうひとつ、学生アリスシリーズと呼ばれるものもあります。こちらは探偵の役割を果たすキャラクターの名前をとって江神二郎シリーズと呼ばれることもあります。
ちなみに、先ほど私が『読みたい!』と書いた『国名シリーズ』と言うのは、火村英生シリーズの中で国の名前を冠した作品のことを指します。『○○の謎』と言う感じで、この『○○』に国名が入っているのです。
はい。そんなこんなで30周年を記念する新作『捜査線上の夕映え』です。
いやぁ・・・なんだろ。読み終えていろいろ胸に残る部分はあるのですが、やはりこの作品、『今』を切り取った作品としてとても意味のある作品なんじゃなかろうか、と強く思います。
作中でも新型コロナ、その影響はしっかりと描かれているんですね。うん。それが小説の世界と現実の世界、その境界線をあいまいにしている感じがして、個人的にはめちゃくちゃ物語をリアルに感じられたのです。
『あぁ、アリスも、そして火村先生も、この作品に登場するみんなみんな、私と同じ社会に生きているんだな。そこで日々、生活してるんだなぁ』と強く感じられて、それがとても、何と言うかファンとしては嬉しかった。
新型コロナの存在が今後、どうなっていくのか。それは私の頭ではわからないし、想像もつかないことです。ただいつの日か、その影響に揺れるアリスや火村先生、社会そのものの在り方をしっかりと描いたこの作品を読み返してみた時『あぁ、そう言えば、こんな大変な時もあったなぁ~』と穏やかに振り返ることができていますように、と今はただただ願うばかりです。はい。
そしてコロナによって旅行がなかなか難しくなっている昨今だからでしょうね。作中、事件の謎、それを解明するためにアリスと火村先生が旅行に出かけるんですが、そのシーンがもうめちゃくちゃ楽しかったです(笑)。読んでいて、こー、旅行ならではの解放感、旅先の空気、風景、気持ちの高揚、そうしたものをすごく味わわせてもらったような、私も一緒に旅行したような、そんな気持ちすら感じました。
いや、私なんてコロナであろうとなかろうと基本、出不精なんで旅行なんてもう数十年、行ってないんですよ、ええ。ただそれでも以前は『行きたい!そう思ったらいろいろ調整さえすれば行けた』状況だったわけです。でも今は、そうではない。『行きたい!そう思っても、やっぱり心理的な葛藤が大きい。だからなかなか行くにはもどかしい』そんな状況なわけで、両者の違いはめちゃくちゃ大きいですよね。
だからでしょうか。とにもかくにも、先ほども書いたとおり、2人が旅行して、事件の謎にまつわる事情を探りつつ、しかし仲良く自転車競走したり(笑)、旅先の旅行に舌鼓を打ったり。いろいろな光景を見て、いろいろな思いを馳せる、その道中の描写には、私も小説で旅行をしたような、そして心がリフレッシュしたような、そんな感覚を抱きました。
いやぁ~・・・やっぱ旅行って良いよなぁ・・・。ほんとコロナが収まったら、どこかに行こう。行きたいところに行こう。
そんな旅情をかきたてるような。そして同時、旅行によって離れた『いつもの日常』、そこに対する、何かしら切ないような、愛おしいような、そんな感情をもかきたてるような本書の表紙、裏表紙の写真も、本当に素敵なのです・・・。
なんか見るたび、胸がきゅっ、とします。
昼と夜が入れ替わる、その僅かにしか見ることができない独特の色合い。言葉には到底、表現できないこの色合い・・・素敵だよなぁ・・・。
で、今作の簡単なあらすじをば。
大阪のマンション、その一室で1人の男性の遺体が発見されます。鈍器で殴り殺され、スーツケースに閉じ込められた挙句、放置された男を巡っては金銭の貸し借り、異性トラブルが発生していたことが判明。そこから容疑者候補となる人物が次々、浮かび上がってきます。
コロナの影響を受けながらも火村とアリスは捜査協力の依頼を受け、容疑者候補との対面を重ねていくのですが・・・と言うのが、簡単なあらすじです。
長編なのでね。どうしても盛り上がりのシーンに至るまでの経緯が長い、それ故、まどろっこしさを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが。
ただそこの部分も当然だけれど、必要なんですよ。
特に後にも書きますけど、アリスがトンチキな推理を繰り広げるシーンとかあるんですけど、それも、それがあってこその後半の展開、と言う部分もあるので、窓ロコしさを感じつつ、じっくり読んで頂ければなぁ、と思います。はい。
今回の事件のポイントは2つ。1つはあらすじにも書きましたが、容疑者候補は次々と出てくると言う点です。しかしその誰しもにアリバイがあり、犯行を行うのは不可能であると言う点。
これに対してアリス、火村先生、更には森下刑事をはじめとする大阪府警捜査一課の面々があれやこれやと推理を繰り広げていくのですが・・・アリスの、実にとんちんかんな推理、それに呆れる皆、と言うシーンが、実に面白いです(笑)
でもそうなんです。まともに考えると、アリスのとんちき推理が実際に行われたとしか考えられない、それくらいに容疑者候補が犯罪を実行するのは、あらゆる面で不可能なのです。
それをどう切り崩していくのか。そこが本作の読みどころ、見せ場のひとつなわけですが・・・先ほども書きましたね、容疑者候補たちの故郷。アリスと火村先生は、そこに旅行に出かけるわけですが(まぁ、旅行って言っちゃうと語弊はあるかもしれませんが)、その地で不可能だった犯罪を可能にする方法、そのヒントを入手します。
そうして繰り広げられる2人の推理。会話形式で繰り広げられるこのシーンは、実に読み応えたっぷりでした。
謎が謎を呼び、更に深まっていく謎。
だけど最後にはそれが、難しいとはいえ現実的に決して不可能ではない方法で解決される、その鮮やかさは読んでいて気持ちがいいほど。
まぁ、無粋なツッコミをしちゃうと、防犯カメラの云々のところは『おいおい』とツッコミたくなる気持ちも無きにしも非ずなのですが、まぁ、それでも。
これこそまさしく、火村英生シリーズの醍醐味ですよねぇ~。にまにま。
ちなみに。犯人がどのように犯行を行ったのか。
それをアリスが頭の中で思い描くシーンがあるのですが、ここのシーンは読んでいて、良い意味での鳥肌が立つくらいの、何かしらの美しさを感じましたなぁ~。
ネタバレになるので詳細は差し控えますが、夜空を(以下自粛)・・・ここは、ほんと、映像化したら、めちゃくちゃ迫力と美しさ、それ故の何かしらの切なさが漂う、そんなシーンになりそうです。
そしてもう1つのポイントは、大阪府警捜査一課の1人。この火村英生シリーズでもすっかりおなじみ、準レギュラーと言っても過言ではないある人物にスポットライトが当たると言う点です。その人の過去も描かれています。
その人が誰なのかは内緒ですが、その人の存在が犯人にとってどんな存在だったのか。
それが明かされたラストの衝撃と言うか『あぁ・・・』と、ただただ息を漏らすしかないような、そんな感情の描写は、『圧倒的にエモーショナルな』と銘打たれた本作ならではのものだと感じました。
なかなかネタバレになるので難しいのですが。
なんか、切ないな。
この人と、1人の女性と、1人の男性と。
この3人の、それぞれの胸の内、それぞれに向けていた感情の色とか、明度とか、そう言ったものを考えると、ほんと切なくなる。
この人がなした行為と言うのは、警察官にとってはあり得ない、許されざる行為です。ぶっちゃけ私も、最初は『よりにもよってこの人が、こんなこととしちゃう!?』と納得できない気持ちの方が大きかったのですが・・・。
終盤、この人自身の口から、こんなことをなしてしまった理由が語られた時には、思いのほか、腑に落ちている自分がいました。
思春期時代の気持ちと言うのは、どれだけ本人が見て見ぬふりをしていようと、年を重ねてからも大きな影響を持つもんなんだよなぁ・・・。
あるいは犯人にとっては、その気持ちはずっとずっと胸にあったものなのかもしれない、とかいろいろ考えると・・・ねー。はい。
なー。うん。そして1人の男性がアリスや火村先生と対面した時に放った言葉。
『面白くもない毎日です』から始まるこの言葉も、その言葉を口にした彼の思いも、すごい胸にずしん、と来ました。
あぁ、ここからいろいろ語りたいけど、それはネタバレになっちゃうので内緒にしとく。ただあるシーンでこの男の、この言葉を思い出したアリスの心情には、めっちゃ同意しかありませんでした。
そうだったんだろうな。アリスの思った通り、そうだったんだろうなぁ。
いろーんな人の、いろーんな思い。
それらが入り混じった今回の事件、事件そのもの、あるいはその真相。
それらすべてを読み終えて、改めて本書の表紙、裏表紙の、この美しい光景を見ると、再三ですが胸がぎゅっ、と締め付けられるような思いがするのです。
いつの時代も、人が生きるってのは大変だよなぁ、と。
そんな感覚すら抱いてしまうような。
染みるなぁ・・・。
なんかコロナ禍で、よけいに『生きること』に対しての制約が多くなっている今だからこそ、なおのこと、染みると言うか何と言うか・・・。
はい。
てなことで本日、祝!火村英生シリーズ30周年!
シリーズ最新作の長編『捜査線上の夕映え』の感想をお送りいたしました。
そうかぁ・・・30周年かぁ・・・。
いやぁ、本当にめでたい!
でもファンとしては・・・そろっと、少しくらいは、火村先生の過去とか、『人を殺したいと思ったことがあるから』にまつわる出来事とか、なんかそのあたりが明かされてもいいんじゃないかと、勝手に思っています!
期待してます!
どこまでもついていきます!
だから、生きて、無事、穏やかに読書できる内に、よろしくお願いします!
有栖川先生っ!
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!