はい。そんなこんなで本日は21日。
末尾に1が付く日なので読書感想文を放出いたしますよ。
読書感想文に入る前に、現在の読書状況を。
現在は有栖川有栖さんの火村シリーズの新作『捜査線上の夕映え』を読んでおります。
いやぁ・・・このシリーズ、今年で30周年を迎えるとのことで・・・。
マジか(驚愕)
30周年・・・ってことは、何だ。私が10歳の時から始まってたってこと?
私が初めて、このシリーズの作品に手を伸ばしたのが多分、高校1、2年生の時。
『朱色の研究』が最初だったように記憶しているので、それから考えても、もう20年ちょいの付き合いになるのかぁ・・・はぁ・・・。
だよなぁ・・・年上だった火村先生もアリスも、いつからかすっかり、年下になったんだもんなぁ・・・はぁ・・・そうかぁ・・・。
時間の流れって怖い!
はい。あとこちらの本を読んでいるにもかかわらず、新聞広告で目にして気になったので購入した『超短編!大どんでん返し』の文庫も、手元にある状態です。
はは。
そんな具合で、ではでは、本日の読書感想文です。
本日、取り上げるのは青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、死体がありました』でございます!
こちら刊行されて以来、本屋大賞にノミネートされたり、『このミステリーがすごい2020年度版』にもランクインしたり。またテレビ番組などで取り上げられることもあった作品なので、もしかしたらご存じの方も多いかもしれませんね。
『むかしむかしあるところに』と言うタイトルの始まりから『もしかして・・・』と察せられる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです、その通りです!
こちらの作品は『誰もが知っている昔ばなし×本格ミステリ』、そんな作品が詰められている作品集でございます!
私がどうのこうの言うより特設サイトがあるので、詳しい作品紹介などはこちらを見て頂いた方が正確かつ早いかと思いますので、どうぞどうぞ。
いいですねぇ。
カバーイラストを担当されているのは、五月女ケイ子さんでございます。その五月女さんのイラストが、ほんと実にいい味を出しているなぁ。
しかし、です!
五月女さんのイラスト、その味わい、思わず頬が緩んでしまうような面白さに気を取られていると、うっかり『やられたっ!』と鋭い切れ味を味わうことになるのが、この作品の魅力であり面白さであります。
『むかしむかしあるところに』から始まる昔ばなし。
誰もが知っているその物語をベースにしつつ、しかしそこに本格ミステリーの要素が加わることで、誰も知らない、読んだことがない極上の『昔ばなしミステリー』が繰り広げられるのであります。
いやぁ、ほんと。
正直、まことに失礼ながら最初、読む時は『アイディア勝負!みたいなところで勝った作品なんだろうなぁ~』と言う思い込みがあって、正直、ミステリーとしての面白さはそれほど、期待はしていなかったんですが。
が。
ミステリーとしてもめちゃくちゃ面白く、そのうえで、昔ばなし本来が持っている味わい。そこにミステリー要素が加わることで生まれた、新たな味わいも味わうことができる、本当に面白く、贅沢な作品集でした!
てなことで今回の作品集に収録されているのは『一寸法師』『花咲かじいさん』『鶴の恩返し』『浦島太郎』そして『桃太郎』をベースとしたミステリーです。
まず『一寸法師の不在証明』です。うーん、タイトルが既にめっちゃミステリー!
とある事件の容疑者となった一寸法師。しかし彼には、犯行が行われたと思しき時間帯、鬼の腹の中にいたと言う鉄壁のアリバイがあり・・・と言うのが、簡単なあらすじです。
本格ミステリーではありますが、同時、昔ばなしでもある、その世界観の中で事件が起こり、謎解きが繰り広げられる、と言うのが本作の肝です。なので『一寸法師』でおなじみの、あの重要アイテム、あれが事件の、そして謎解きの大きなカギを握っている・・・おっと、これはネタバレになってしまうのかな!?
でも明かされた真相は、そのアイテムの存在や効力が見事に本格ミステリーの謎解き、論理の展開に絡められており『成程なぁ~』とただただ唸ると共に、先ほど書いた私の思い込みがとんでもなく間違っていたことを実感したのでした。
続く『花咲か死者伝言』は『花咲かじいさん』の、ある意味では主人公とも言える存在である、ワンちゃん、犬が語り手となっています。
心優しいおじいさんとおばあさんに拾われ、幸せな生活を送っていた犬。しかしある事件が起き、その生活は一変。ついには犬が大好きだったおじいさんの命まで失われてしまうことになり・・・と言うのが、簡単なあらすじです。
泣いた(泣いた)。もうね、犬が語り手と言うだけでダメ。ダメ。泣くに決まってると思ってたけど、案の定、泣いた。泣かされた。はい。
犬がたどり着いた、驚愕の、そしてあまりにも悲しく、だけどどうしようもなく許せない結末。そこからの、犬の決意と言うのがね・・・もうね、ダメ。
泣く。犬好きの人は、間違いなく泣く(泣く)
続く『つるの倒叙がえし』は『鶴の恩返し』の作品そのまま、本当は鶴でありながら、それを隠し人の姿で、自らを助けた男のもとにつうが恩返しに訪れるところから始まります。
ところがそれより先に、死体が既に登場しているのが、この作品ならではです(笑)
死体を隠したい男VS恩返しをしたい女!その攻防戦の結末やいかに!・・・なんですが、こちらの作品、最後の最後に作者が仕込んだ仕掛けが、盛大にさく裂しています。
ぶっちゃけ、私、最初、読んだ時には『・・・?一体・・・な、何が・・・』と呆然としたものですよ、ええ。それからもう一度、読み返して『あー・・・成程、そう言うことか・・・なんとまぁ』となった時の、あの、なんとも言えない爽快感と敗北感と言ったら(笑)
果たしてこの仕掛けを見破ることができる方はいらっしゃるのかな、ドキドキ。
それから『密室竜宮城』です。亀を助けた浦島太郎は竜宮城へと招かれ、素晴らしい時間を過ごします・・・と言うのは『浦島太郎』と同じなのですが、そこで思いもしていなかったような殺人事件が発生するのが、こちらの作品です。しかもあろうことか、現場は完全密室!その謎に浦島太郎は挑むのですが・・・。
物語のラストと言うか、展開的には『花咲か死者伝言』に続いて、本作が好きです。
事件は解決へと導かれるのです。はい。ところがところが・・・そこから先の真相がね・・・もう・・・あぁ、と。
そしてそこから流れるように描かれる、物語のラストが、もうただただ、悲しく。だけど、それ故の美しさを感じさせ、それがまたどうしようもなく切ない。
なおこちら『密室竜宮城』は、先ほど貼り付けた特設サイトにて、全文、公開されています!なんと太っ腹!
そしてラストは『絶海の鬼ヶ島』です。『桃太郎』をベースにしつつ、今回の主役は桃太郎ではなく、その桃太郎に打ち倒された鬼の子孫たちです。
ミステリー的な衝撃、その裏側にあった桃太郎ととある鬼との秘密。それが絡み合った果てに待ち受ける結末は、衝撃的でありながら、しかしどうしようもない悲しみもある作品です。ミステリー的な謎解き、その展開の二転三転、更に次から次へと事件が起きる緊張感と恐怖、そうしたものの味わいは、収録されている作品の中でいちばんだと、個人的には思います。
ただ!
ただ、登場人物が全員『鬼』が頭につく名前なのです。一例を出すと、鬼蛍とか鬼茂、鬼丸とかなんですよね・・・うん。これがね、作中、乱舞しているもんですから、どうしてもなかなか登場人物を把握するのが難しかったのが、ちょっと残念だったかな。はい。いや、まぁ、でも、これは記憶力が衰えていない皆さんなら、全然、問題にならないと思います、はは!
はい。以上5編が、今回、収録されている作品でございます!
いやぁ、こうして振り返ってみると、本当にそれぞれもともとの昔ばなしを大切にしつつ、そこにミステリーと言うスパイスを加え、新たな物語を生み出している、新たな魅力を生み出していると言うことを、しみじみと感じるなぁ~。
再三、言っていますが、誰もが知っている昔ばなしがモチーフなので『ミステリーって、どうもお話が難しいイメージがあるんだよなぁ~』と思われている方でも、とっつきやすい、お話にとっかかりやすい、そしてその世界に入り込みやすい作品集になっていると思います。
ぜひぜひ、ミステリー好きな方も、そうでない方も、読まれてみて下さい!
ではでは。本日は青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』の読書感想文をお送りいたしました。
こちらの作品、続編もあるようなので、また読んでみたいなぁ~。
それでは、本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!