tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

公休日ですが~1が付く日なので読感放出です

はい。休みです。昨日行って今日休み。1勤1休と言うやつです。

今日出勤にして、明日休みにしてくれたら、明日からの4連勤が3勤になるのに・・・。

シフトが15日しめなのですが、そのラスト、つまり明日12日から15日までの4連勤は『あー、なんかもうやけくそなんだろうな。シフト考えるの嫌になって、やけくそなんだろうなぁ』と言うのをひしひしと感じます(笑)

まぁ、仕方ないし、別にいいんですけど。

ただ1勤1休にするなら、ちょいと気を利かして4勤、潰してほしかったなぁ、と思う今日この日は読書感想文放出日です。

ではでは早速、スタートです。

 

前回に引き続き、無職生活中の2017年の読書感想文ですね。

 

・増田忠則『三つの悪夢と階段室の女王』

・・・怖い。怖い、怖い、怖い、怖い。何だろ、こんな怖い本、久しぶりに読んだかもしれない。いわゆる『イヤミス』に属する作品だと思うんだけど、そんな言葉が生易しくすら感じられるくらいに、怖い。何か、本全体から得体の知れない何かが滲み、漏れ出しているような、そんな感じ。あと、タイトル秀逸。何だろ。何が怖いって、これ、2作品目を除けば、被害に遭う方が自業自得だとののしられても仕方ないのかもしれない、とうっすらと思えてしまう点。そうなんだけど、でも、誰がその一言が、その行動が、こんな結末を招くなんて予想できる?そのことで、ここまで、まっとうすぎるほどにまっとうすぎるが故に、薄ら寒さすら感じさせるくらいに空虚な、妄信的で狂信的な悪意を向けられるって、誰が考えることができる?あぁ、そうだ。曽根さんの作品にもあったけど、そう、言葉がまるで通じないのだ。言葉がまるで通じないから、感情もまるで通じなくて、だから理不尽でもどうしようもなく、怖いのだ。その悪意にさらされ続けた結果、善良であった、ごくごく市井の人が、その悪意を向けてきた人間と同じように、ただただ自分のことしか考えることができない人間に成り下がる、と言う悲劇が、たまらなく怖い。後なんか、今の時代の空気の中にあっては、誰もが、些細な一言、些細な行動に目くじらを立て、「どうしてそんな躍起になれるの?」と思うくらいに、薄ら寒い正義感を振りかざすような今の世の中にあっては、本と、この作品に描かれていた物語は、ごくごく身近に起こり得るんじゃないかと言う気がして、それも怖い。はい。その辺りの、まともすぎるが故に空虚な、狂ったような人間が醸し出している独特の、何とも言えない雰囲気と、それに追い詰められ、振り回され、悲劇的な末路を迎えてしまう人間の緊迫感、悲しさのようなものが、本当に過不足なく書かれていて、いやぁ、怖い。怖いのに、くぐっ、と物語に引きづりこまれて、怖いのに面白くて、あっと言う間に読めてしまいました。ミステリ的要素は勿論だけど、その追い詰められる側の緊迫感のようなものが、精神的にも、肉体的にも、そして距離的にも追い詰められていく様が本当にスリルがあって、お見事。新人さんですって。凄い人が出てきたもんだ。ホラーでも、ミステリでも、どちらでも描くことができる人だと思う。個人的には『夜に目覚めて』と『階段室の女王』が印象に残りました。『夜に目覚めて』…辛いなぁ。これは、自業自得の要素が無いだけに、とても辛い。なぁー…辛い。理不尽だわぁ。辛い。そして『階段室の女王』は、なにこれ、主人公、私?(笑)。大学卒業後1年くらいなら、まだまだ若いじゃん。こっちとちゃもう12年も経過しちまったよ、今日で36歳になった無職だよ!(死)。何だろう、この辺りの、元引きこもり、現ニートの、屈折した自虐心、抱かなくてもいいはずの社会に対する申し訳なさのようなものが描かれていて、それに対する社会の偏見の目のようなものも描かれていて、本と、胸が詰まりました。ただ。『階段室の女王』は良い。ステキ。開き直った私の、死ねばいい、死ね、の連呼が最高にクール。そうだよ、考えれば彼女、何も悪いことはしていないんだから。自分を嘲笑ったような女を見殺しにして、何が悪い?自分の親しい人、近しい人であれば、その死は痛いよ。だけど、自分とは相容れない人間、まして自分を傷つけたような人間の死なんて、願いこそすれ、死以上でも以下でもないもの。…と、思うあたり、私の相当、歪んでいるなぁ、と思うんだけど。何だろう。それでも、この作者さんは、人間のこういう気持ちこそを描ききろうとしている、そう言うダークな節が、この作品からはとても強く感じられて、だからこそなおのこと、この作品は好き。他の作品は怖いけど、この作品だけ怖くない。うん。そうなのだ。結局、人間、言葉を尽くしても相容れることができなければ、極論、その人間に対しては死ねばいい、死んだって構わない、死んでも自分とは無関係と思うくらいの感情を抱く生き物なのだと思うよ。自分のためなら、他がどうなろうが知ったことじゃない。そんな怖い、怖い、人間の本質がこれでもか、と言うくらいに描かれた作品集です。うーん、怖い。

 

三浦しをん『月魚』

・・・本当はこちらを先に読了していたのです。爽やかな、それでいて痛みを伴ったような読後だったのですが…あっと言う間に、後から読み始めた↑の作品の暗黒さにかき消されてしまったよ…ふふ。はい。そんなこんな。BLだね。うん、BLだ。でも、ものすごく面白く読むことができました。瀬名垣が犯してしまった罪とは何なのか、と言う一点が、特に前半においては、物語を引っ張る役割を果たしていたように思います。個人的には、その結果、姿を消してしまった真志喜のお父さんの孤独と、人間的器の小ささが(笑)他人事とは思えませんでした。うむ。『どうも俺達は無駄な遠回りをしているな』の、瀬名垣の言葉通りで、でもその遠回りこそが、読んでいる身からしたらとてももどかしく、もどかしいからこそ切ない思いに駆られてしまうと言うか。2人の過去の出来事が中心にあって。それを重さにして、その重さに苦しみながら、だけど、その重さに引っ張られるようにして2人がその周りを円を描くようにして、絶妙な、重なり合いそうで重ならない程度の距離を保ちながら、ぐるぐるとまわっている姿が頭に浮かんできて、その出来事があったからこそ素直になれない、でも、その重さがあってももしかしたら素直になれなかったのかもしれなくて、そもそもその重さがあるからこそ、こんな関係であれ続けていることができているのかもしれないと言う、2人の複雑な気持ちが、本当に瀬名垣の言葉通りだなぁ、と。そんな2人の姿が、心情が、静謐に、美しい表現で描かれていて、ものすごく物語の世界に引き込まれて読むことができました。何だろ、冷やっこいんだけど、2人が互いに抱えている思いの熱、火照りのようなものも感じられて、その熱が伝わってくるようで。済んでいるんだけど、2人の心中にある、欲のようなどろりとした感触も感じられて。だから毎夜、読み終える度に、なんか熱に浮かされたような、ほう、と言うため息が出てくるような感じがしていました。うーん、やっぱこういう物語は萌えますな。罪と断ずるにはあまりに甘く、それに苦しめられる事すら甘くて心地よく、だけどそれ故、引くことも押すことも、直視することもできず、ただただ戸惑いながら、不器用に同じところをくるくると回り続けているってのは、もどかしさゆえにたまりませんな。瀬名垣×真志喜と言う、攻と受のステレオタイプ的キャラクターの造形もさすが三浦先生!と言う感じがしたし、とても好感が持てました。ふふ。ラスト、縁が重なった布団で何をするんですかね、げへへ(ゲス顔)。恋だな。恋。人が恋に落ちて、縛められて、がんじがらめにされるってのは、どうしてこうも切なく、心惹きつけられて止まないのでしょうかね。はい。水面に沈む私の村、も良かったです。ラスト、瀬名垣と真志喜がフェンスを飛び下りた、そのシーンの鮮やかさがまるで目に浮かんでくるようで。宇佐見先生が抱えている、真志喜に対しての思い、そのほの暗さと、2人がフェンスを飛び下りた瞬間の、宇佐見先生、更には大人には絶対に触れることができない鮮やかさの対比も面白く、だからこそ、その鮮やかさこそが、宇佐見先生を拒絶する、瀬名垣と真志喜の世界そのもののようにも思いました。はい。いいなー。こういうBLをもっと読みたい(どーん)。

 

浅井ラボされど罪人は竜と踊る

・・・いやぁ・・・長いこと、生かされていると本と、こんなこともあるんだなぁ、と思うようなことに出会うものです。まさかのアニメ化。どうしてそうなった(笑)。と言うことで、どう?多分、もう、15~6年近く前じゃないだろうか、初めて読んだのは。結局、途中で挫折してしまったけど、よもやのアニメ化。もっと他にあるだろ!なんでこんな難しそうなのを選んだ!言え!(笑)。はい。ね、ほんと。秋アニメだと言うのに制作会社ひとつ、PVひとつ出ていないのはどういうことなの、と思ってたら、つい最近、発表され、思いのほか、綺麗だったからびっくりしたけど、騙されるな!(笑)。アニメのPVは、メイクを完璧にした女性だぞ!はい。いや、何、期待の裏返しなんですよ、これは。ほんとに。頼みますよ(土下座(やろうと思えば何期でも続けてできるんだからさ!)。はい。そんなこんな。久しぶりに読んでみたけど、面白かったです。うん。ただそれだけに本と、どうしてこれをアニメ化しようと思ったのかが、割と真剣に知りたい(笑)。魔法じゃないけど、漢字が出てこないんだけど、そのシーンとかはどんなふうになるのかなぁ?楽しみだなぁ。どうか、しっかりとしたクオリティで作られることを期待したいなぁ。はい。

 

米澤穂信『満願』
・・・年末のミステリランキングで3冠に輝いた著者の代表作とも言える作品です。読もう、読もうと思っていたのですが、何だか知らないまま今日に至っておりました。はい。いや、何だろ。ミステリと思って読むと、ちょっと拍子抜けと言うか、得られる満足感は少ないかもしれないと思う。それよりも純文学と言うか、文学作品としての香りが色濃い作品集のように感じます。端正な文章に、丁寧に描かれる登場人物たちの機微、それこそが最もなミステリだと言わんばかりの作品で、そこにこそ、今作の味わいはあると言うか。うん。そんなふうに感じました。端正で、ひやりとしていて、その文章で描かれる人間の心の動きは、時に暗く、時にどこかよそよそしく、あるいは生々しく、そして時には色香すら漂わせていて。何だろ、作家さんなんだから当たり前、と突っ込まれそうだけれど、でも、日本語で丁寧に、美しく、過不足なく、丁寧に、読まれるに値する文章を小説として描くと言うのはとても難しいことで、なかなかそれを実現させることができる作家さんと言うのは、作家でも少ないのだと思う。勿論、それだけが全てで、それだけが重要と言うわけではないんだけれど、でも、それがもたらしてくれる美しさ、満足感と言うのはとても、とても深いものがある、と言うことをこの作品は体現しているように思います。はい。個人的には「柘榴」「万灯」「関守」が好き。「柘榴」は、もう、文章の美しさが最大限にまで活かされている作品だと思う。「万灯」は、罪に手を染めてきた人間の、その命運を握るのが発症しているかもしれない病気と言うのが好き。「関守」は少しずつ、少しずつ、おばあさんの本性があらわれていく、その様が緊迫感ある文章で描かれていて、ぞわり、とした。主人公さんはどうなっちゃうのかなー。「夜警」も面白かったな。こんなはずじゃ、の一言が、何か、他人事とは思えない。うまく隠し通すことができる、と思い込んでいたんだろうなぁ。はい。本当に謎なのは、人の心。それを美しい文章で、やんわりと暴き出すような作品集。一撃必殺!みたいなミステリも良いけれど、こういうのもまたいいですな。できれば、秋の夜長にゆったりとした気分で読みふけりたい一冊です。

 

赤川次郎『毒』

・・・何だろ、この人のイメージ的に毒が次から次にわたっていく、その受け取った人の心理みたいなのが描かれるのかなと思っていたら、ガッツリミステリでした。面白かったです。どうだろうな、絶対に服毒させたことがばれない、しかも相手は確実に死ぬと言う毒。もし、手に入れたらどうするだろう。でも、飲ませたは良いけどきっといつまでもドキドキするだろうし、罪悪感に苛まれるだろうなぁ、と。そんな罪悪感に苛まれた人の顛末が悲劇的なのが第一話。第二話は、殺したい相手が死んでほしくない相手になっていて、そこに絡んでくる理不尽な理由がまた悲劇的。悲しいなぁ。三話は、女優の怯える第一のファンと言うのが、第一のライバルと言うのが驚き。そして最後の切れ味の鋭さと言うか、最後までライバルが勝ち誇ったと言う結末が何とも。ラストは何だろう、主人公の女性が大学教授のプロポーズを受け入れたと言う結末しか頭に残ってない(笑)。と言うか、何だろ、この辺りの男女関係の描き方が妙にトレンディドラマチックで時代を感じさせて笑ってしまいました、あはは。はい。そうだな、二話、三話がやっぱり面白かったかな。毒がどうなるんだろう、と言う謎と共に、誘拐事件の顛末はどうなるんだろう、第一のファンの正体は誰なんだろう、と言う二重構造になっていてドキドキとして、緊迫感をもってして読めました。はいよ。

 

有栖川有栖『名探偵傑作短篇集 火村英生篇』

・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛かっこいいよぉぉぉぉぉぉぉ。はい。我慢できずに購入してしまいました。はい。全部、読んだはずなんだけどね。はい。いや、ほんと、かっこいいよ、火村先生。結婚しよう(ド直球)。アリスつきでもいいよ。いや、むしろ、アリスつきがいいよ。私は邪魔しない。ふたりがいちゃいちゃしている姿を遠目で見ているだけでいいから。はい。かっこいいな。また今回、収録されていた短編集が、割かし、火村先生のダークサイドと言うか、こー、狩人的な面を強調するような作風、ラストであるものが多かったからこそ、もう、本と。たまらんな。はい。あとな、昔は割と、火村先生がかっこいい、かっこいい、と言う側面ばかりが強調されていたんだけどな。こうして読み返してみると、こー、推理部分がたまらないと言うか。なんだろ、ものすごい諸刃の剣のような論理の展開だと思うの。ものすごく綱渡り的で、細い細い糸で編みこまれているようなもので、少しの穴が見つかった瞬間、全てが崩れていくような推理だと思うの。だけどその穴が見つからなくて、細い、細い糸が手繰り寄せられ、編み綴られ、そうしてできあがったひとつの結末と言うのが、とてつもなく美しくて、凄いなぁ、と思う。AだからB、だからCと言う結論はあり得ない、と言うのはともすればとても乱暴な推理にもなりかねないんだけど、その乱暴さを拭い去るための、たったひとつの推理、そこに導かれるまでの論理の展開と言うのが、とても美しく、読みごたえがあって、たまらんのです。はい。「赤い稲妻」「ブラジル蝶の謎」「スイス時計の謎」あたりは、もう、その論理の展開が美しく、うっとりするようでした。たまらんな。結婚しよう、火村先生(大事なことなので2回言っといた)。はい。なー…このシリーズとの付き合いも、本当に長くなったなぁ。彼らは34歳のまま、私は36歳になってしまい、だけどこうして無事に彼らの年を追い越すことができたと言うのは、とても幸せなことなんだろうな。「スイス時計の謎」では、過ぎゆく時間、その中で個々に訪れた様々な出来事、そしてその結末として、過去と同じようにはいられない個々の人生が描かれていたけれど、なぁー。うん。そう考えると、何か、流れゆく時間と言うものに様々なことを考えたなぁ。それでも火村先生とアリスはそのままで、きっとこれからもそのままで、私はもう少し、ちゃんとしていられたらいいなぁ。うん。はい。そんなこんな。ちなみに長編の続編に関しては、3年以上の間が開けられたことがない、シリーズものとしては非常にコンスタントに続編が出されていると言うのも、ファンとしては嬉しいところだな。はい。華奢で、脆いが故に、とてもとても美しい論理的推理と。そして火村先生の滲み出るかっこよさと、それを支えるアリスと。更に森下君や船曳刑事と言った、火村先生とアリスを支える人物たちの物語を、これからも長く、長く、そして願わくば、火村先生のひとつの結末を読み続けることが、読み終えることができますように。

 

曽根圭介『黒い波紋』

・・・以上、読んだ順番バラバラですが、ためてしまった本たち。はい。まずはこちらから。何だろうね。まぁ、この作品に限ったことじゃない、出版不況においてはこういう釣りみたいな宣伝文句は常套手段なのかもしれないけどね。はい。うーん…帯の宣伝文句を書いた書店員さんは、本当に時間が止まったのだろうか、あの一行を読んで。まぁ、衝撃がなかったとは言わないよ。うん。確かに衝撃的だったよ。でもさ、どう考えてもそれまでの流れ、脅す側と脅される側の緊迫感とは関係のないところでの衝撃と言うかさ。それを、さも、物語の謎解きの根幹にかかわるようにして宣伝をするのはどうなんだろうか。腹をくくった人間のやることは恐ろしいとは言うけどさ、別にこれ、そんなに恐ろしいことでも何でもなくなくないか?簡単に言えば枕営業的なことでさ、きっとこんなことは、今も昔もよくあることじゃないか?それを、こんなふうに宣伝されてしまっては、やるせないよ。うーん。はい。その辺りの後味の悪さと言うか、どんでんがえし!みたいなことを期待していた身としては、ただただ、またやられたよ…と言ううんざり感だけが残り、残念な作品でした。脅す側から始まった物語だけどさ、これ、逆に脅された側から始まる物語にして、もう名前も忘れちゃったけど、追い詰める側の人の、恋心と忠義の間で揺れ動き、でも実は利用されていたと言うふうにした方が、より、この一文も効果的だったんじゃないかとも思うんですが。はい。

 

宮部みゆき『人質カノン』

・・・宮部みゆきさんの作品は、いつだって少し悲しく、だけど、その悲しさをそっ、と包み込むようにやさしくて、だからこそ、その小さなやさしさが切なくて、心にじわりと浸みていくような気がする。ここ最近はあまり読んでいないけど、今作を読んでそんなことを感じました。うむ。表題作は、コンビニはそう言う場所、と言う一言が、途方もなく切ない。そして時代は進み、今やスマホがひとりひとりのコンビニになってしまっているような気がして、なおのこと切ないし寂しい。『十年計画』は、オチが好き。明確にはされず、ただ匂わされただけの真相がいいな、と思う。殺人まで計画しながら、だけど逞しく生き抜いてきた女性の生き様にも、心惹かれます。そんな強さが、私も欲しい。

 

月村了衛『機龍警察 狼眼殺手』

・・・まさか、まさかこんなにも早くにシリーズの新刊が読めるなんて。この作者さんはこのシリーズ以外にも多数の作品をコンスタントに発表されていて、おまけにそのどれもがクオリティが高くて、本と、一体、何者なんだろう(遠い目)。そんなこんなで、本当に嬉しかったシリーズ最新作です。いやぁ…読む前は「さすがに帯の「最高傑作を更新した」は煽り過ぎじゃろ」と思ったんですが。更新してたわ(ちーん)。更新と言うか、まさ最高傑作が誕生したよ、本と、どこまでこのシリーズは最高傑作をぽこぽこと生み続けるんだよ、と。脱帽です。以下、いつものように箇条書き①闇は深く、深く、拭っても、拭っても覆い隠すようにわきあがってくる。その深さに、黒さにおののきながらも、絶望を感じながらも、それでも「警察官」として、その闇に立ち向かおうとする特捜部をはじめとするキャラクターの面々が、本当にかっこよくて胸を揺さぶられます。これまでの作品とは違って、誰かが特別、主人公と言うわけでなく(一応、ライザと緑に焦点はあてられていたけれど)、作者さんの言葉通り、皆に見せ場が設けられていて、だから群像劇のようにして、その人たちが抱く思いのようなものが垣間見れて、本当に面白かったし胸が熱くなりました。いいなぁ。「機龍警察」と言うと、つい機龍のアクションやらに目を奪われがちだけど、違うんだな。本シリーズの何よりの魅力は、人間ドラマにありきなんだよな。熱い、熱い人間ドラマ。正しきことのために、ボロボロになりながらも、うちのめされながらも立ち向かい続ける人間たちの、熱い、熱いドラマ。たまらんなぁ。鳥居さんの最後の決意表明なんて、本と、武者震いしたよ。②夏川さん、気づいて。ユーリが言葉をつぐんだのは、きっとあなたと由起谷さんの間にも、不穏な死の影を見てしまったからかもしれないからだと思うの(汗)。はい。と言うことで、大丈夫?由起谷さん、中国マフィアに目を付けられちゃったけど。てか、この辺り、「黒警」シリーズの匂いを感じさせるような、クワンさんの執着を思わせるようで、頭が腐っている人間としては、ぐふふ、とにんまりしてしまいました。どうでしょう、マフィア堕ちした由起谷さんを、夏川さんが救いに来るとか。うふふ(笑)。冗談はこの辺で。ここは本当に流されないなぁ。それがとても頼もしくも思えるし、けれどそれがいつか、命取りにならなければと切に思う。何気に死亡フラグ、高いよ、ここ(汗)③宮近さんと城石さん。闇堕ち筆頭候補(笑)。笑えないけど。でもどうなんでしょ?堀田が殺され、小太り小野寺がその後釜にちゃっかり陣取り、そして彼がふたりをほとんど見切った今、逆にチャンスと言えばチャンスだと思うんだけど…そうはいかないんだろうなぁ。宮近さんは奥さんのこともあるし、城石さんだって理想のための立身出世が胸にあるだろうし。このふたりのぎくしゃくした感じは、ほんと、これまでの二人を、特に「火宅」の短編で描かれていた二人を思うと、本当に辛い(でも、その煩悶する姿がたまらない)。どうなるのかなぁ。ここもいずれクローズアップして描かれるんだろうなぁ。残って欲しいなぁ、二人には。二人も特捜部の、沖津さんの思いには感化されているようだし。うーん。辛い(辛いけど、傍目にもそうとわかるほど憔悴しきって、ぎくしゃくしている二人の姿は、やっぱりおいしい)。④魚住さんと仁礼さん。いいなぁ。和み系だわ。かわいすぎるだろ、なんだよ、数字の声が聞こえるって。二人していちゃいちゃ盛り上がりやがって!キャラクター造詣が、本当に巧いよなぁ。これだけたくさんの登場人物がいるのに、そしてどれもがステレオタイプ的な造形がなされているのに、それなのにひとりひとりが際立っていて、しっかりと存在感がある。勝手な思い込みだけど、この辺りはやっぱりアニメ脚本を書かれていたと言う経緯が大きいのかな、とも思ったり。沖津さんの言葉通り、ふたりが再び、特捜部とタッグを組む時もそう遠くはないんでしょうな。特捜部の前に立ちはだかる黒い、黒い闇。それに対してほんわか二人組がどのように対峙していくのかも楽しみだなぁ。⑤暗殺者、エンダ。「森しか」なかった彼女が、どんな思いをライザに向けていたのか。そしてどんな思いで、自分を執拗に追い詰めているIRFを支援し続けていたのか。その思いを想像すると、そして亡くなった彼女の姿が殉教者のようであったと言う一文が、本当に胸が切なくなる。表紙は、私には、エンダのように思えます。そしてテロリストから警察官へと変貌を遂げたライザ。ここももう、本と。ライザが、どうしてキリアンクレイの書物より先に、緑の父親の書物を手にしなかったのだろうか、と思うシーンがあって、そこがもう、めちゃくちゃ心に響いた。がつん、ときた。そしてだからこそ、たとえ遅すぎたとしても、まだ間に合うことに気がつき、背負いながらも自由になり、テロリストとしてではなく警察官として、正しく生き残るためにエンダを殺害したライザの姿が、もう、鮮烈。清冽。あんたは女神か(ちーん)。そしてそのライザと緑が言葉を交わすラストシーンは、涙、涙ですよ。現実はこうは簡単にいかないってことは百も承知で、それでも人は、その意志さえあればぶつかり合いながらでも、反目しあいながらでも、きっと、きっと気持ちを通わすことができる瞬間が来るのだと、それこそが唯一の希望なのでないか、と言うことが描かれていて、本と、胸が熱くなった(そしてこのまま、妙に互いが互いを今まで以上に意識し合うのかと思うと、もうピュアピュア百合過ぎてにやにやがとまらない!)⑥ユーリと姿さんには、今作はちょっと出番少な目。でもこれでいいのだ。姿さんの「衛生兵」の一言には、笑ってしまいました。いいなぁ。あと夏川さんと由起谷さん、ユーリも仲間に入れてあげて下さい。⑦かっこいいよ、沖津さん…てか、なんかもう、特捜部の人はワーカーホリックが限度こえていて、人生そのものが特捜部みたいなアレで、沖津さんなんてほんと、ご飯、ちゃんと食べてる?と突っ込みたくなるくらいで、心配を通り越して笑えてくるよ…。この人が抱えているもの、過去に何があったんだと言うのは気になるんだけど、まさか5作目にして投下された桂主任の壮絶な過去…よもや、彼女にまでそんな過去があったとは…とは言え、沖津さんに引っ張られるくらいだから、何かしらのことがあるのも当然かと言う気もするんたけど、そうなると俄然、何があったのかが気になって来るよ…あぁ、また新たな謎が産まれてしまったよ。⑧そんなこんなで、ほんと、あらすじにも書かれているけど、生々しいと言う言葉がこれ以上ないと言うほどしっくりくる今作品。国を憂い、国を守り、国のために尽くすべきはずの人間が、国を欺き、国を騙し、その真相は幾重にも張り巡らされた「何か」の力によって圧縮され、歪曲され、また闇の中へと押し戻されていく。その闇の深さは現実にも存在しているもので、それを思うとほんと、もう暗澹たる気持ちにしかならない。物語中には、それでも、その闇に立ち向かおうとする覚悟を決めた人の姿が描かれているけれど、現実はどうなのだろうか。それを思った時に、物語と現実の違いを思い知らされることが、この国に生きる一市民にとっては絶望となり得るのではないだろうか、とも思ったりしつつ。だからこそ、そうか、このシリーズはこんなにも面白く、熱く、激しく胸を揺さぶられるのか、と感じました。はい。と言うことで、次の新刊はいつですか?もう刻々と大自然災害やらなんやらのタイムリミットは迫ってきているのであろう今においては、とにかく無事、シリーズ新刊が発売され、読むことができますように、と願うばかりですよ。次にスポットライトが当たるのは誰かしら。勝手に予想しておこう。本命はクワン絡みで夏川さんと由起谷さんコンビ、プラスでユーリ。対抗馬は宮近さんと城石さん。同時でも何ら問題はなし!と言うか、もう、無事、シリーズ新刊が読めれば、ありがたやありがたやですよ!と言うことで、楽しみに待っています!

 

有栖川有栖『暗い宿』

・・・何でしょう。何となく、改めてシリーズを読み返してみようと思いまして。はい。とりあえず、読み返してみた。当時も多分、同じこと言っていたような気がするんだけど、「ホテル・ラフレシア」がべらぼうに好き。と言うか、この短編集、シリーズの中でも3本の指に入るくらい好きかも。他も読み返してみないとわからないけど。はい。表題作「暗い宿」は、論理的展開が面白いなぁ、と。その中で、人を殺した人間か、殺した人間の遺体の人間関係に気を使うことに対して意見を述べたアリスと、それに対して「するんだよ、人間は」と返した火村先生のやり取りがすごい好き。下の作品の感想にも少し触れることだけど、何と言うか、論理的推理は、人間の感情やら何やらの可能性を一切排除、無視して、たったひとつの可能性に絞り込む作業だと思うの。だけどそこには、何よりもたったひとつの人間の感情のような物が含まれていて、その相反する存在が含まれている真実と言うのが、本当に面白いし魅力的だなぁ、と思うのであります。はい。「ホテル・ラフレシア」は、本と好き。多幸溢れるリゾートホテル、その夢のような、甘い毒ような雰囲気が伝わってきて、だけど、それが破られる、夢が弾け終わるラストが、本と好き。あと、リゾートホテルに来ても相変わらずな火村先生も本と好き(告白)。「異形の客」、これも論理的展開だよな。ラスト、犯人に自首を勧めない、それを禁じる火村先生の言葉が、まさに狩人のそれ。そんな火村先生が災厄に襲われる「201号室の災厄」も、ラストの切れ味が良いな。一応、論理的展開が繰り出されて、だけどそれはどこか不自然で、とても穴だらけのように、ずさんのように思えて、ん?となるんですよ。そのまま終わるのかな、と思ったら、まさかまさかのラストですよ。そうか、割とこの短編集に含まれている作品のラストの切れ味と言うか、逆転みたいなのが、私好みなんだ。はい、そんなこんなで、読み返してみてもやっぱり面白かったです。論理的推理の面白さに改めて魅了されている今日この頃、改め読み返せるのが本当に楽しみであります!

 

はい。と言うことで本日はこのあたりにしておこうか。

 

以下、印象的な作品などについて。

 

まず最初に登場した増田忠則さんの『三つの悪夢と階段室の女王』は、本当に不快で、その不快さが心底、恐怖に感じられたミステリ作品で面白かったのですが・・・うーん、調べてみるとこれ以降、作品を発表されておらず・・・。

なんだろ。勿論、諸々様々な事情があるのかもしれませんが、この作品の完成度の高さ、それを支えている確かな筆力、物語の構成力、そしていろんな意味で魅力的な(げんなり(笑))キャラクター造形や描写力のようなものを思うと、増田さん、もっとたくさんの作品を書いて頂きたいなぁ、と今でも思うのですが・・・。

 

それから浅井ラボさんの『されど竜は罪人と踊る』のアニメですね。結論から言うと、放送開始予定時期から半年だっけ?の延期が発表された時点で嫌な予感がして、実際、私としてはその悪い予感は大当たりしたと言う、非常に残念な仕上がりでした・・・ってかだからアニメ、1話しか見てないもんなぁ~。あー残念だ。

そして月村先生の『機龍警察』シリーズの単行本としては現状最新作である『狼眼殺手』ですね。あー、今、雑誌に連載されているシリーズ最新作『白骨街道』、早よ単行本にならんかなぁ・・・。あと月村先生の『東京輪舞』文庫化されました。ほんと、個人的にはラストに涙が止まらなかった、何と名付けて良いのかわからない感情からきた涙が止まらなかった傑作だと思うので、皆さん、ぜとひも読んで下さい!

 

はい。と言うことで本日はここまでです。
2017年の読書感想文はもう少し続きますが、次回からは無職生活も終わりを迎えた2018年の読書感想文に突入する予定です。引き続き、よろしければお付き合い下さい。

 

ではでは。文章の塊、読んで下さった方は本当にありがとうございました。