tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日なので~読書感想文を出しますよ

は~い。今日から4連勤の始まりよ~。

ぶん殴ってやりたいわよ~。

 

あとこの読書感想文、1日を除く1が付く日に投稿しているのですが、31日、そして来月の11日、見事に公休でもはや笑うしかありません。

できればこの記事を投稿する日は、他の日に投稿する記事のストックを稼ぐためにも出勤したいんだが・・・偶然にしてもできすぎてて、なんかもう、それも腹が立つ(笑)

 

はい。まぁ、仕方ないんだけど。

ではでは。早速、読書感想文と言う名の文字の塊、放出です。

どうぞ!

 

綾辻行人有栖川有栖麻耶雄嵩法月綸太郎山口雅也、安孫子武丸

『7人の名探偵』・・・①麻耶雄嵩『水曜日と金曜日が嫌い』…この作者さんのことなので一筋縄ではいかないだろうな、と思っていたらその期待を裏切らない作品で笑ってしまいました。登場人物もその投げやりっぷりにつっこむメタっぷり。しかも綾辻さんの作品内で作者さん本人のいい加減さがネタにされている始末(笑)。読者や登場人物を置き去りにして、やることはやった、後は知らない!のメルカトルのSっぷりがたまりません。あとラストもこの人らしくて好き。メルカトルの長編作品も、また挑戦してみたいなぁ。②山口雅也毒饅頭怖い』…誰が嘘を吐いているのか、のやりとりには論理的やり取りがなされていて、挑戦しようと思ったけどダメだったよ…。自分たちが創作物の登場人物で、役割を与えられた存在でしかないと言うメタ的悲哀や、毒殺の裏側に隠されていた思いもよらぬ壮大な展開にニヤリとした後に待ち受けていた落語的オチは…審議拒否!(笑)。最後まで世界観が貫かれていて、思わず、お後がよろしいようで、と言ってしまいました。③我孫子武丸『シャーロックプロジェクト』…推理物からは少し外れた作品だと思うんだけど、「かまいたちの夜」を出がけた、ゲームにも造詣が深い作者ならではの作品だなぁ、と思いました。現実に起きても何ら不思議じゃないし、このオチを知った今、現実に既に、実は起きてるんじゃないか、とすら思えるような作品で、だとしたらめちゃめちゃ怖いよ、とぞっとしない気分です。④有栖川有栖『船長が死んだ夜』…火村先生、結婚しよう!はい。もはやお約束。相変わらずいちゃこらしやがって!はい。と言うのはさておき、次の法月さんの作品にも感じたことなんだけど。推理が、謎解きが論理的であればあるほど、それはそこにあるはずの人間の思惑がそぎ落とされていくようで、何か非人間的な物すら感じさせるようで、だからこそそれは暴力的なようにも思えて、暴論のようにも思えて、一瞬、納得できない思いがわいてくる。だから、いや、それ以外の可能性もあるかもしれないよ、と反論したくなって、色々考えるんだけど、どころがどっこい、その反論が、論理的な反論が出てこないんだよなぁ。うむ。悔しい。それを承知しながら、その危うさ、脆さを承知しながら、それでもそれを恐れることなく、ただそれのみを武器にして犯罪者を狩っていく火村先生の姿が、ともすればとても人間からかけ離れているようにも思えて、だから何と言うか、火村先生の、人を殺したいと思ったことがあるから、と言うそれこそが、実は、何よりも人間であることの証明のようにも思えて。うむ。あと、そう、人間の感情を排除しながら、だけど、残されたたったひとつの真実には、何よりも排除したはずの人間の、犯罪者の思惑、感情が濃密に残されているって言うのが、本当に面白いな、と思うのであります。それともうひとつ。法月先生、麻耶先生の作品でも感じたことだけど、やっぱりシリーズものの探偵と言うのは、強いなぁ。⑤法月綸太郎『あべこべの遺書』…論理的スーパー推理(どーん)。すごいな。よくもまぁ、こんな展開が思いつくものだなぁ、と感心しきり。そこに至るまでの細い、細い糸を手繰るような物語運びが凄いなぁ。尤も、あくまで推測でしかないと言う点は含まれているけど、そこがまた面白い。真実はどうだったのか、この上を行くような、綸太郎とパパ君の想像の上を行くような真実があったのかな、と思うとそれはそれで面白い。⑥歌野晶午『天才少年の見た夢は』…これもまた、今の日本においてはいつ起きてもおかしくないような舞台設定で、引き込まれていきました。安孫子さんと同じような題材になったのは偶然なんだろうけど、だからこそ面白い。作中に出てくる「君は論理を外れて考えることができない」「人の心は往々にして非論理的だ」の言葉が、ものすごい好き。にもかかわらず、その人間が行った犯罪を論理的に解いていくこと、それで対峙していく名探偵と呼ばれる存在のの危うさ、空しさ、滑稽さのようなものが感じられて、でも、それでしか犯罪者を暴くことができない悲しみのようなものも感じられて、何と言うか、論理推理の面白さが詰められた、表現するにふさわしい言葉だと思うの。うん。あと、新本格は人間が描けていないと言う、よくある批判に対しての答えになっているようにも思うの。論理的な推理を繰り広げる物語だからこそ、その中に描かれている登場人物は、きっととても、とても人間臭いんじゃないかな。はい。鷲宮藍の存在と、仲間の命を奪った犯人の、あまりにも人間らしい心の痛みとの対比が実に悲しく、鮮烈。この話も好きだな。⑦綾辻行人『仮題・ぬえの密室』…ずるい(笑)。でも同時、完全マニア向けのオチがたまらない。それが理解できる自分が、ちょっとだげ誇らしいし嬉しい。なんだろ、全編を通していわゆる新本格派ブームの始発点となった綾辻先生の、30年間、走り続けてきたことに対するノスタルジーやら、その中で変わったことやら、変わらなかったことやらが描かれていて、ぐっときた。その中で得られたものもあっだろうし、知らず知らずの内に薄れてしまったこと、失ってしまったこともあって、そのバランスを保つことにきっととてつもない思いをされてきた中で、それでもただ変わらない思い出、綾辻行人綾辻行人として始まるにあたり重要なポイントのひとつである思い出が、やさしく、ほんとうにやさしいタッチで描かれていて、胸がきゅっ、となるようで不覚にも涙した。30年間の重みのような物が、ひしひしと伝わってきましたよ。うん。てか、ほんと、素敵な話だなぁ。と同時、なんて幸福な話なんだろう、とも思った。勿論、ご本人たちの努力、苦慮と言うものもあってこそのこれまでの道のりなんだろうけれど、やっぱりそこには、何かしら目に見えない力のような物を感じてしまうよ。はい。そんなこんなで全7作。作家さんの個性を十二分に感じることができる作品ばかりで大満足でございます。あと、各作家さんのイラストも本と、可愛らしいし、個性が描かれていて素敵です。新本格派、これからもたくさんの謎と驚きで楽しませてください!

 

有栖川有栖『モロッコ水晶の謎』・・・やられた。表題作、思わずにんまりしてしまいました。これはフェア、アンフェア、ギリギリのラインじゃなかろうか、と。ただ、個人的にはものすごい好き。美しさすらのようなものすら感じてしまったよ。何だろ、上の作品やらなんやらで考えられていた、人間は時に論理的でない行動を行う、「するんだよ、人間は」の言葉の真骨頂と言うか、その言葉があらわれた真髄じゃないだろうか。なぁ、これは本と、好き。まして個人的に占いにはものすっごい人生を左右されたような経験が無きにしも非ずだから、あぁ、これはわかるわぁ~、ともうほんと、身悶えするような気分でした。どうなんだろう、発表されて当初はどんな感想を感じていたのだろう。もう、見返すのも面倒くさいから見返さないけど(笑)。あぁ、これはほんと、語りたい。いろんな人と語りたい。フェア、アンフェアと言う視点もあるけど、唯一無二の真実、論理的推理、人間の論理的でないところのバランスが絶妙に絡み合っていて、何か、本と面白い。はい。面白かったなぁ。あらすじで「本格ミステリの領域」の味みたいなものが出ていれば良いのだが、と語られていたけれど、これはまさしく、「本格ミステリの領域」のギリギリラインにある、本当に美しい、まさしく水晶のような真実だよ…はい。そんなこんなで引き続き、シリーズ、読み返していきたいと思います。

 

・岡田秀文『帝都大捜査網』・・・雑誌でやたら評判が良い本として掲載されていた記憶があったので借りてみたら、そんなに大々的には掲載されていませんでした。しょぼぼん。とは言え、面白かったです。ただ何だろ、論理的に騙されることを期待していたので、最後のオチと言うか、娘さんの死を受け入れられないでいた、と言うオチはちょっと残念だったかなぁ。はい。娘さんは生きていて、海外のミステリ小説に心惹かれるあまり、このような犯罪に手を染めてしまったと言うオチでも、十分、面白かったんじゃなかろうか、とも思うのですが、こう言うオチを選択したあたりに、きっと作者さんはやさしい人なんだろうな、と言うことを感じます。うい。被害者同士が行っていたこと、その共通項の意外さには度肝を抜かれましたし、その辺りは面白かったです。そうよ…結局、昔も今も、金なのよ。お金さえあれば、どうとにもできるのよ…世知辛いわ…。はい。うーん、そんなところかなぁ。面白くなかったことはないけれど、ラスト一行の衝撃が全てで、そのオチも個人的にはどうなんだろうね、と言う気がするので、はい。

 

有栖川有栖『絶叫城殺人事件』・・・火村先生が明らかにしていくのは、犯罪者のよりどころとしているところ。そんな指摘をアリスはした、そのシーンがとても印象に残りました。よりどころと言うのは、強固でなくてはならない。何かしらの弱点を補うために、犯罪者はそれを強固に塗り固めるために、ありとあらゆる手を使う。そうやって捏ね上げられたものを解体していく唯一の武器が論理的思考であり、そうやって強固に捏ね上げてきたと信じていた物だからこそ、それが解きほぐされた時、あるいは解きほぐされそうになった瞬間、犯罪者は自らが立っている足場が崩れていくような錯覚を抱くんだろうな。なぁー。そうか、よりどころか。とても適切な言葉だなぁ、としみじみ来ました。表題作の場合、大和田雪枝がよりどころにしていたのは、弟の犯罪を隠蔽し通そうとする意志。その意志のために彼女は、その賢しい頭脳で様々なことを考え、それを実現させた。そうして姉のよりどころが崩され、断罪されたのだと突きつけられた弟の空虚さが、また空しい。ゲームやらアニメやら漫画やらと、犯罪の関係に関しては今も昔も議論が続いているところだけれど、何と言うか、『皆が常識ある良い人だと信じるよりほかない』と言う、ゲーム制作会社の人のセリフが、今となっては何か、胸を突くなぁ…。もはや現代は、この言葉すら危うくなってきている感があるもんなぁ。うーん。はい。他で言うと、雪華楼が好き。論理的推理の中に、人知を超越した力が働いているような展開が時折、描かれているのも有栖川作品の魅力だと思いました。うむ。黒烏亭にしてもそうだもんな。そんなことあるわけない、って現実ならつっこみたくなるところだけど、こういうアクロバティックな展開があってこその小説、娯楽作品と言うこともできるわけだしなぁ。はい。昔は表題作一択だったような気がするけど、成程、こうした読み返してみると、やっぱり様々な面白味があって、どれも選びたくなるもんだなぁ。

 

・今村昌弘『屍人荘の殺人』・・・このタイトルで評判高いと来たら面白くないわけがないでしょう、読みたい、と思っていた本作品。図書館に入っていたので読みました。面白かった!久しぶりにページめくる指が止まらない、謎解きの部分も熱に浮かされたように、『細かいことは気にするな!わからないけどわかるわ!』と言うような感覚を味わうことができました。何だろ、やっぱりこー、新人さんの作品も読むことが多いけど、やっぱり巧い人は新人さんであっても巧いんですよね、読ませると言うか、初っ端からしっかりと物語に引っ張り込んでくれると言うか。後、当たり前のことだけど文章もすごく読みやすくて、キャラクターも、ラノベかよ、と言うツッコミがあったけれど、それくらいにしっかりと、濃く造形されているからこそ、読む側にとってはとても把握しやすいと言うか。がたつきがないと言うのかな、うん。物語の流れとしても安定感があって、無理が無くて、しっかりと物語としての流れを踏襲していて、おもしろいポイントや見せ場のポイントを抑えている。そしてその上で、その人なりの個性がしっかりと滲み出ている。特別なことを第一にやるんじゃなくて、それをやるための土台作りがしっかりされていて、その上で、自分なりの特別なこと、個性、武器を発揮させると言うのかな、そう言う作品は新人さんであってもそうじゃなくても面白いわけで、今作においてもそのことをひしひしと感じました。お見事です。うん。バイオテロが起きてゾンビが発生、と言うところが注目されがちだけど、だけどそれが設定として、物語に目を向けるための設定だけとして使われているのではなく、ミステリとしての謎解きや犯行などにもしっかりと関わっていて、またそれが無理のない、本格ミステリとして納得できると言うところも素晴らしいです!第一の殺人はゾンビによるもの、第二の殺人は憎き命を二度、殺すため、と言うのは、もう、本と鳥肌が立ちましたよ。そして同時にその裏側にあったもうひとつの罪と言うのも、とても切なくて、何だろ、静原さんの動機にしても、主人公君が嘘を吐いた動機にしても、ものすごくものすごく何て言うのか、地に足が付いていると言うか、とても人間的で、やさしい動機で、それが個人的には好感が持てました。うん。生ける屍、感情を失ったゾンビではなく、生きている人間としての証、感情があると言うことがとても切ないことのように思え、一層、悲しみやらやるせなさのようなものもこみあげてきて。そう、これだけでも作者さんがキャラクターをかける人だと言うのが理解できると言うか。明智さん・・・好きだっただけに、まさかあんなにも早く退場してしまうとは…でも、またこれもすごく物語の定番を踏襲していると言うかね。ゾンビになった明智さんが主人公君を襲うと言う流れも、それに抵抗することができない主人公君と言うのも、そしてそんな彼を「私のワトソンだ」と救う比留子さんも(かっこよすぎかよ!)、そしてその後、ゾンビとして死ぬのではなく人間として死ぬことを選択した静原さんも、みんなみんなお約束の流れなんですよ。でも、それまでの積み重ねがしっかりとあるからお約束であっても、私は心を揺さぶられました。はい。いやぁ、そんなこんなで本当に面白い作品でした。パニックホラーものとしても、ものすごく怖かったです。作者の言葉を見ると、ご本人はミステリには疎いとのことで、その疎さがあったからこその、何物にも捕らわれない発想力がさく裂した作品なのかなぁ、と思いました。でも一方で、読書に対しては雑食と言う、その経験が読ませる、楽しませることの力になっているのだと言うことも、ものすごく感じました。さぁ、こうなると勝負の2作目も楽しみだな。個人的にはかなりハードルが高くなってしまった作者さんなので勝手に不安を抱いておりますが(笑)。楽しみにしております!

 

はい。そしてここから2018年の読書感想文に突入します。

おおっ、なんだかずいぶん最近に近づいてきたような気が。

 

・市川憂人『ブルーローズは眠らない』・・・気がつけば年が明けておりました。去年も、なんだかんだ言いつつ読書を楽しめたことに感謝をしつつ、今年もなんだかんだ言いつつ読書が楽しめるような一年となりますように。はい。そんな一冊。もう読み終えたのがだいぶ前なのでアレなんですが、面白かったです。過去の日記と今の事件とが交互に綴られていく形で、「こんなん、絶対なんかあるに決まってるやん!」と思ったら案の定、最後にニヤリとする展開もありつつ。刑事さんが真犯人と言うのも意外性があって驚かされました。前年度の鮎川賞受賞したのがこの人なんだよなぁ。今村さんと言い、本と良い受賞者さんが続いているなぁ。と言うことでシリーズ化されているようだし、第3作目も楽しみにしております。

 

深町秋生『地獄の犬たち』・・・正月からずいぶんとまぁ血生臭い作品を読んでるなぁ、おい、と思いつつ読みました。何だろ、前半も勿論、どったんばったん大騒ぎだったんだけど、読了した今は前半は本当に、終盤の怒涛の殺戮劇に向けてのタメでしかなかったんだな、と痛感しました。三國が土岐を庇って死んだあたりで、溜めこんでいた熱量がぱちん、と弾けてそこからはもう、こちらが期待していた通りの展開。男たちの情念がどろどろと、それを抱え込んでいた体が銃弾で、刃物でぼろぼろにされると同時にどばっ、とあふれ出てきて、熱に浮かされたような感覚でした。ねぇ・・・やっぱやくざモノは、こうでなくちゃな、と。不器用な男たちの、どうしようもない情念がぶつかり合って、それ故に命など一瞬で散っていく。その様は美しく、悲しく、どうしようもなく切なく色気があって心を奪われてしまうのです。またな、ほんと、兼高が外道の道の中で得た絆に情を感じてしまっていたと言うのも切ないじゃないですか。正義のためにと外道に堕ちた先で、けれど確かな情を得て、それに絆されてしまいかけているってのも、阿内やら(情に狂った男であると言う点ではこの物語の確かな登場人物なんだけど、もう、この人は悪魔と言うか、外道そのものだと思うよ)十朱やら(セクシー。たまんない)に惑わされながらも、それでもただ人間で、正義に、正しいことに殉じる警官でありたいと願い、あえて修羅の道を選んだ生き様も、本当に不器用でなんか胸を打たれました。ねぇー。後、室岡も良かったなぁ。やっぱこういう物語には、こういう美しきキラーマシーン、殺人者は絶対に欠かせないと思うのですよ。うん。もう、彼の動きを脳内で再生するのが楽しくてたまりませんでした。そして彼と兼高の対峙するシーンも、もう本と・・・。室岡にしてみれば、何だろ、兼高といる時間と言うのが自分を保つ、殺すこと以外で自分を保ち、そして楽しいと思うことができる唯一のことだったのかもしれないなぁ、と思うと、ほんと、真実を知った彼の心中はいかほどだったかと。もう、こんなんBLやんな。やくざもののBLって、そんなに読んだことがあるわけじゃないけど、あれ、ほんと良くできてるんだなぁ、としみじみ思ったよ。もう、これは恋だな。恋であり、だからこその憎しみであり、愛であり。外道の世界に、情と言う鎖に縛り、繋がれてしまった悲しく、哀れな犬たちの生き様が本当に胸熱でした。紅一点と言ってもいいでしょう、しっかりとかたき討ちを果たした典子さんの存在も強烈だなぁ。鎖から解き放たれ、それでも、鎖に足や手に、首に残る鎖の感触を捨てきることができなかった兼高の、出月の最後の行動が胸に深い余韻を残します。

 

・古処誠司『いくさの底』・・・久しぶりの作家さんです。一貫して戦争、戦場を舞台にしたり、テーマにした作品を書き続けているとのことで本と、頭が下がるような思いですな。何だろ、文章自体がものすごく緊迫感、緊張感に満ちていて、戦場、戦争を描くにふさわしいと言うか、本と、その舞台、テーマだからこそ文章の隅々、言葉選びのひとつひとつにも神経を張り巡らせているんだろうなぁ、とひしひしと感じました。色々な面で極限を強いられ、そこから本物の極限が生まれる舞台、テーマだからこその文章、言葉。これだけでもこの作家さんの特殊性と言うか、この作家さんがメフィスト賞から純文学に近い立ち位置にまでたどり着いて、それでもその純度の高い部分にミステリと言う混沌の塊りのような物を投げ入れ、描き続けてこられたその力の源と言うか、その力の理由のようなものを感じるな、と個人的には思うのであります。はい。そして今回の作品。あぁ、成程なぁ~・・・と。「いくさの底」と言うタイトルが、読み終えた後には重く胸にのしかかってくるような。いくさ、それをかぎ分けて掬い取っていって、結局、その底に残っていたのは良くも悪くも人間の性だった、と言うか。そしてそれは、多くの書評に書かれてあったように、今も昔も全く変わっていないものだった、と言う。戦場、戦争が描かれていながら、結局、そこであぶり出されたものの正体がこれだったと言うことに、そしてお約束のようにしてそこで無辜の人生が弄ばれたと言う、そのことがなんかもう、言葉を失うようでいて、そしてまたとても薄ら寒いようにも感じられて。自己にとって、自己が属する組織にとって都合の悪い出来事は隠ぺいする、歪曲する。それ自体は、決して、悪とは断じることができないものなのだと思う。人間の性であり、そうしたいと言うのはどうしようもないことなのだと思う。ただしその裏側で、そのせいで翻弄された何の罪もない人生が生まれてしまうのであれば、それは悪と断じなければならないのだと思う。いくさと言う大局の中だから、このような状況が生まれ、このような事件は起きてしまったのか。そうではない、と突きつけるような、これはどんな状況でも起こり得ることであり、現に起きていることである、と突きつけるような作者の鋭く、そして冷徹なまでの視線がさえ渡るような。じっ、と読む者の心の底を貫くように見つめ、問いかけているような、そんな作品じゃないでしょうか。はい。

 

・呉勝浩『ライオンブルー』・・・初めての作家さんです。はい。「253Pの衝撃!」みたいな煽り文句が帯にかかれてあって、「もう騙されるもんか!」と思っていたのですが、いい感じに騙されました。そして何より、そこからの晃光がかっこいいこと!真相が明かされわかりやすい「悪と正義」の立場が逆転したと同時、晃光に対する印象もがらっ、と逆転したと言うか。いや、勿論、言ってることとかやってることは悪か正しいかって言ったら、もう、悪でしかないんですけど。それでも何でしょ。「一番大事なとこで笑ってごまかしてると、ほんまのくそになるぞ」とかな。「君は何者になりたいんや?」とかさ。「人を殺す時くらいは、君は君でなくちゃいかん」とか。なんだよ、もう(歓喜)。本と。かっこいいのよ、いちいち言葉が。そしてそこに透けて見える、晃光個人の思い、大きな物を倒したい、そしてくそみたいな獅子追を自分の故郷にしてみせると言う強い、一途な思いがもうたまらんのですよ。そのための覚悟と言うか、そのためのフェイクと言うか、そのための今と言うのがもう、どうしようもなく晃光と言う人間が不器用であることを物語っているようで、たまらなかったです。はい。またその晃光と、ただただ長原をなぞりたいがために、何者であるかもわからないままにただただ2人を殺した耀司を結びつけたのが、長原であると言うのも熱い。と言うか、これだけで本当に長原と言う人が、人としてどれだけ魅力的な人であったのかと言うのがわかるもんなぁ。なぁ。その長原が、耀司が逃げに逃げ、避けに避けてきた通過儀礼のようなものを突きつけたんじゃないのかぁ、とも思う。と言うか、そう、それから先、まるで一枚、皮が剥がれたように身軽になり、避けてきたもの、すべてにフラットに対峙していき向き合っていき、何かしらの覚悟を決め、自分の好きなように自分の行く末を選び取り、けれど誰かのために何かを我慢することも覚えた、その姿がとても心地よかった。なんでしょ、自分のこの一念を振り返ってみるとな。こー、自分が築き上げてきたものと言うか、自分の日常に思いもしていなかった大きな出来事が起き、それによってにっちもさっちもいかなくなり、自分の言い訳もなにひとつ通用しないような状況に陥り、打ちのめされ、言葉も奪われたような状態になって、それが極限状態にまで追いやられると、何かね、ほんと。ぽーんと、自分と言う人間が、そこまで不器用なりに作り上げてきた自分が壊されたような感覚になるんすよ。ええ。で、そうなると、もういい意味でなるようにしかならないし、意地はってるのもあほらしいし、いい意味でやけくそになると言うか。うん。何かだから、この辺りの耀司の姿と言うのは本当に共感できたし、その耀司の気持ちと言うのも、私にはとても腑に落ちるものだったと言うか、ええ。ほんと、なんかぞわぞわするくらいにわかる(どーん)。「だよね、本と、人間、これくらいのことが起こらないと変われないんだよね、ねぇ、耀司」と声を掛けたくなるような心境でした。気高き青、ライオン・ブルー。その裏側には獰猛で、悪で、決して表沙汰にはできない秘密を抱えた獣が隠れも潜んでいる。だけど、何だろ。もしその悪が、やはり同じような青をまとった悪にしか向かないものだとしたら?そんなことを考えてしまうような、極悪警察小説でした。面白かったです。

 

・斜線堂有紀『キネマ探偵 カレイドミステリー』・・・ぼちぼちですが読んでますよ。はい。と言うことで、昨夏に販売されてから、欲しいけどお金ないし、で買えずにいたシリーズ2作品目をようやく購入です。自己紹介的な1作品目に比べると、よりキャラクターたちの魅力を掘り下げたような、そしてそれらが絡まり合う、時にぶつかり合う日常の風景が魅力的な2作品目だったかな、と言う感じです。でも、これはこれで楽しんで読むことができました。何だよ、奈緒崎、ずいぶんと嗄井戸といちゃついてるじゃねぇかよ!はい。なんだろね、でも、前回にも感じた、作者さんの小説が好き、小説を書くことが好きと言う純粋な気持ちのようなものは変わらず伝わって来たし、現実は時折、どうしようもなく辛辣で残酷で、それらを時に癒やすために小説やら映画と言ったフィクション物はあり、けれどそれらができることと言うのは限られていて、それでも人間は死なない限りはどのような形であれ生き続けなければならないと言うような冷徹な真実をするり、と描いているのも、個人的にはものすごく好感が持てるのであります。『どれだけ酷いことが起こっても、そうそう人生は終わらない』、この一文には胸を突かれたような思いでした。その通りです。うむ。ということで、もっと長く続くと思い込んでいたのに3作品目でシリーズ終了と言うことで。まぁ、この作者さんのことだもん。決して意表を突くような、私好みのバッドエンドを持ち出してくると言うことはないと思うのではありますが、それでも奈緒崎と嗄井戸がどんな光景を目にするのか、それをどんなふうに私たち読者にも見せてくれるのかを楽しみにしながら読んでいきたいと思います。

 

はい。と言うことで本日はここまでにしましょうかね。

 

てなことで、この記事で挙げた中で印象的なのは、やはり今村昌弘さんと斜線堂有紀さんの登場ですかね。はい。

ご両人とも、この記事内で取り上げた作品、今村さんは『屍人荘の殺人』で、そして斜線堂さんは『シネマ探偵』・・・あぁ、シリーズ1作目は前回の読書感想文で取り上げたのか、でデビューされたわけなんですが、まぁ、両作品ともめちゃくちゃ面白かった。とにかく夢中になって、わくわく、どきどきしながら読んだ記憶しかない。

 

なんでしょ。ひとつの前の読書感想文の中にあったかな?

アニメ化も決定している『錆喰いビスコ』も瘤久保慎二さんのデビュー作品なんですが、なんかこの3名のデビュー作品には、私が求める、デビュー作家さんの作品に詰まっていて欲しいものすべて、あるいは、私が求める、デビュー作家さんの作品に欲しいものすべてが詰まっている、存在している、そんな作品だったように今でも思います。

 

てなわけで、せっかくなので。

そのうち、このお三方のデビュー作の何が個人的には好みだったのか、何をどう良いな、と思ったのかを記事にしたいと思います。

 

誰がそんな記事を読むんだ。

おっしゃる通り。

書いている私が楽しいだけです(どーん)

 

ではでは。今回はここまでです。

いつも以上に文字の塊でしかない記事、読んで下さった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます!