夏ですね。夏と言えば、各出版社が文庫に力を入れる季節です。
読書好きの方の中には『さてさて、今年は各出版社、どんなふうに宣伝をしてくるのかな?』とか『今年はどの文庫を推してくるんだろう』と楽しみにされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かく言う私もそのひとりです。
この時期、書店に行くと間違いなく、各出版社が今夏、力を入れている文庫を紹介した小冊子が並んでいるので、必ずそれを持ち帰っています。
で、今年の夏、ぱっ、と目を引いたのが集英社の『ナツイチ』でございます。
『きみとぼくを、つなぐ一冊』と銘打って『ナツイチ』が開催しているのが、声優による集英社文庫作品の朗読でございます。公式ホームページはこちらです。
で、こちらの企画も勿論、小冊子が制作されておりまして。今、書店行けば、多分、普通に文庫売り場やレジ前に陳列されていると思います。
文庫を購入していなくても、文庫だけでなく何も購入していなくても無料で持ち帰り可能な冊子なので、気になる方はぜひとも、ご覧になって下さいね。
こちらの企画に登場されているのは江口拓也さん、小野賢章さん、斉藤壮馬さん、竹達彩奈さん、西山宏太朗さんの5名です。
で、小冊子ではそれぞれ、浴衣姿で読書に夢中になっている姿などが収められた写真も掲載されていて、なかなか趣のある作りになっています。
更に集英社文庫作品の中から、それぞれがおすすめする作品と言うのも紹介されており、読書好き人間としてはこれがなかなかに興味深かったのです。
と言うことで非常に前置きが長くなりましたが、本日の記事は、この小冊子内にてそれぞれの声優さんがおすすめされていた作品について、私がやんややんやと語ると言う内容です。
・・・とは言っても、当然のことながらすべての作品を読んでいるわけではないので、ちょっと偏りがあるのは申し訳ないのですが・・・。
その代わりと言っては何ですが、小冊子に掲載されている写真についての感想も書いてみました。ふふ。
ではでは早速。
まずは江口さんです。江口さんの写真に書かれてある文章が『本を読むとき眼鏡だなんて、ずるい』なんですけど・・・。
あれ?江口さん、伊達眼鏡?えっ、ってか、ナチュラルド近眼牛乳瓶の底を思わせるような分厚いレンズの眼鏡が手放せない私からしてみたら『いや、眼鏡をかけなきゃ本を読めないんだが・・・』とツッコミを入れてしまったのですが・・・あれ・・・なんか解釈の仕方、間違ってる?(汗)
なんか江口さんの被写体としての表現も素敵なのですが、正直、この一文が気になって突っ込まずにはいられなくなってしまい、結果、江口さんのお写真の感想になっていない気が(汗)
そんな(どんなだよ)江口さんがおすすめされているのが、こちらの3冊。
・瀬尾まいこさん『おしまいのデート』
・寺地はるかさん『大人は泣かないと思っていた』
・木原音瀬さん『捜し物屋まやま』
この中だと私は『おしまいのデート』を読んだことがあります。で、江口さんと西山さんが本作の一編を朗読されているんですが・・・この話、本当に好きだなぁ。ってかこの話目当てにこの文庫、購入したんだっけか。
なんでしょ。普段『誰が殺した』『誰を殺した』『どうやって殺した』『どこで殺した』『なんで殺した』みたいな話を好んで読んでいる私には(げんなり)、とにもかくにも眩しすぎるくらいに、本当に心温まる、切なくもじんわり、ほっこり来るようなお話が収録されていたように記憶しています。
あと食べること。どの作品も、食べること、誰かと一緒に食事を共にすること、それシーンが描かれていた(ように記憶しているのですが)のが、とても印象深い作品です。
お次は小野さんですね。写真の感じとしては、小野さんの写真がいちばん好きです。何でしょうね、小野さんって、ほんと、コンテンツごとにがらっ、と雰囲気が異なる演者さんだと言うのを、改めて突き付けられたような気がします。『アイドリッシュセブン』のライブアーカイブを見て、七瀬陸としての小野さんを見た後に、この写真の小野さんを見ると、ほんと、なんとも言えない色気がすごい。
そんな小野さんがすすめられている3冊はこちらです。
・米澤穂信さん『本と鍵の季節』
・行成薫さん『本日のメニューは。』
・宇山佳佑さん『この恋は世界でいちばん美しい雨』
この中だと『本と鍵の季節』を読んだことがあります。図書委員を務める男子高校生2人組が、いわゆる日常の謎を解いていくミステリものなんですけれど・・・そこは作者が米澤さんですもの。一筋縄ではいきませんことよ。
この2人組の男子高校生の最後がね・・・もうね・・・『あぁ、最高に米澤先生!』とにんまりしたくなるような、ビターで余韻ある、それでいてその余韻を一切、拒むようなラストで。
だけど勿論、バディもの、謎解きものとしての楽しさ、米澤先生の豊かな表現力で紡がれる青春ものとしての面白さもあるのでおすすめです。
お次は斉藤さんです。きれい。色気がすごい。いや、ってか、もし喫茶店で向かいの席とかにこんな人がこんな具合で読書に耽ってたら、私、ずーっとちらちらちらちら盗み見しちゃうわ。気がついたらそれで2時間くらい、時間潰しちゃう自信あるわ。お先の2人とはちょっと異なる、斉藤さんのアンニュイ、フランス語の意味でもカタカナ語の意味でも両方の意味でアンニュイな雰囲気、その魅力が存分に引き出された写真ですよ!
読書人としても知られている斉藤さんがおすすめされているのはこちらの3作品。
・伊坂幸太郎さん『終末のフール』
・朝井リョウさん『桐島、部活やめるってよ』
・乙一さん『夏と花火と私の死体』
わお!この内、2冊、読んだことがあるわ。
と言うことでまずは伊坂さんの『終末のフール』です。タイトルにある通り、終末、世界の終わりが3年後に迫っている日常を舞台に繰り広げられる、様々な人間ドラマが描かれています。
世界の終わり・・・と聞くと、どうしても悲観的、あるいは逆に過剰なまでの人生賛歌のような物語が繰り広げられるのかな、と思われるかもしれませんが、そこは伊坂先生ですからね。実にバラエティに富んだ『それぞれ』の生き方、ドラマが描かれています。緊迫感あり、くすっとした笑いあり、そしてじんわりとした温かさもあり。人気作家、伊坂先生の魅力を堪能できる短篇集です。あと個人的には、とても静謐な短篇集だ、と言う印象もあります。
そしてもう1作品は乙一先生の『夏と花火と私の死体』ですね。いやー、これはほんと、初めて読んだ時には『こんな語り手の設定ありか!?』とそれはそれは驚かされたなぁ~。そしてその語り手の設定だけではない、物語の構成力の巧さ、安定した文章力、豊かな表現力も本当に素晴らしいの一言の、大傑作だと思います。
全編を貫く、圧倒的な孤独と冷え冷えした感覚。そしてラストに待ち受ける結末と、それが残す余韻。今、思い出しても鳥肌が立つような。
ちなみに乙一さんで言えば、やはり集英社文庫から発売されている『ZOO』もおすすめです。今作品に収録されている『SEVEN ROOMS』は、今でも、今でも私の中で1、2位を争うほどに怖くて、悲しくて、ある登場人物のとった行動、それが描かれているシーンから伝わってくる、あらゆる感情が忘れられない作品です。
お次は竹達さん。可愛い。そして右手に光る指輪が・・・かっは、萌える。斉藤さんのお写真同様、こんな美人な女性が読書に夢中になっているのを目前にしたら、私、気持ち悪いくらいに見つめちゃうわ!そんな自信があるわ!
しかし『役と声優ご本人は別』と言うのは頭ではわかっているつもりですが・・・竹達さんが『究極進化したフルダイブRPGが(以下略)』とかの『黙っていれば美人でグラマラスなお姉さんなのに、口を開いた途端、うさん臭さがだだ漏れしてしまう』と言うキャラクターを、あそこまで生き生きと演じていらっしゃると言うのは、ほんと、面白いなぁ。
竹達さんがおすすめされていらっしゃる3冊はこちらです。
・原田マハさん『旅屋おかえり』
・サンデグジュペリ『星の王子さま』
・さくらももこさん『ももこの世界あっちこっちめぐり』
残念!どれも読んだことがない・・・うう。
ただ、ですね。原田マハさんの作品に関しては、本作以外の作品であれば、結構、読んでいます。竹達さんがおすすめされている本作品は、旅代理業を始めた女性の物語のようですが、原田さんと言えば、私の中では『美術(アート)×人間ドラマ×ミステリ』の印象が強い作家さんで、私が読んだことがある作品もそうした作品です。
『暗幕のゲルニカ』『楽園のカンヴァス』『サロメ』『たゆたえども沈まず』が挙げられるのですが、とにかく何と言うか、その時代、そのアート作品が生まれた時代の光景や、その時代を生きていた人たちの姿が、実に鮮やかな筆致で描かれていて、ページを開いた瞬間から、ぐわっ、とその物語の世界に引きずり込まれるのです。
プラス、そこに謎解き要素も含まれているので、本当にもう、ページを繰る指が止められないんですよねぇ~。
それから『星の王子さま』は読んだことはありませんが、お話の内容は聞いたことがあるような。と言うか、竹達さん、夫である梶裕貴さんのYouTubeチャンネルで、梶さんの『星の王子さま』の朗読に参加されていましたよね?
そちら聞いたのですが・・・おふたりの柔らかな語り口調、そして役の演じ分けとかが、めちゃくちゃ心に染みたように記憶しています。きっと、ご夫婦そろって、本当にお好きな作品なんだろうなぁ~。素敵だなぁ~。
はい。そしてラストは西山宏太朗さんです。配信番組などでお見かけする、あざとさ満載の西山さんとはまた異なる(笑)、何だろ、とても自然な感じのする表情だなぁ、と思いました。特に2枚目のお写真の表情がとても好きです。『本を返したい、と言ったら、また会ってくれるだろうか』と言う文章も、これまた、なんとも計算高さがうかがえつつ、でも『そうまでしてでも会いたいんだ』と言う気持ちが伝わってきて、切なさもあるのが素敵です。
西山さんがおすすめされていらっしゃるのはこちらの3冊です。
・松井玲奈さん『カモフラージュ』
・宮下奈都さん『太陽のパスタ、豆のスープ』
おっふ、どれも読んだことがないよ!
ただ湊かなえさんは、他の作品であればいくつか読みました。様々な登場人物が語る、と言う構成で物語が進んで行く、と言うのが、湊さん作品の特徴です(すべての作品を読んだわけではないので、そう言う構成ではない作品もあるのかもしれませんが・・・すいません)
そうした構成だからこそ生まれる『騙す意図がない騙し』『ひとつの物事でも語る人によってまったく異なる面を見せる』と言った面白みがあって、それが次々と語り手が変わることによって、読者をより物語の面白さの深みへと誘うような役割を果たしているんですよねぇ~。
はい。と言うことで本日は集英社文庫『ナツイチ』に登場されている声優さんのおすすめの本について、あれこれと語ってまいりました。
読書好き人間としては声優さんに限らず、人様がどんな本を読んでいらっしゃるのか、どんな作品を特に好きでいらっしゃるのかと言ったことは、めちゃくちゃ気になるんですよねぇ~。
なので今回の『ナツイチ』の企画は、声優さんの表現者としての魅力も味わえつつ、おすすめの作品も知ることができたので、まさに一石二鳥な企画でございました。
ぜひぜひ・・・もっとたくさんの声優さんに登場していただきたいよ・・・。
ではでは。今回の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました!