tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日なので読書感想文の日です~『人間じゃない<完全版>』

今日から久しぶりの4連勤よ!

このところずっと3連勤ばっかりだったから、正直、4連勤と言うだけで今から発狂しそうよ!

げっふ・・・。

 

はい。そんなこんなで11日、1が付く日なので読書感想文をお送りいたします。

本日の作品は綾辻行人さんの『人間じゃない<完全版>』でございます。ちょうど1か月前、8月10日に文庫として発売された作品です。

<完全版>と銘打たれているのはですね、こちら2017年に単行本として刊行されている作品なのですが。その時には収録されていなかった作品が1作、追加収録されているからだと思います。

ちなみに単行本の際には『綾辻行人未収録作品集』と続いていたことからもおわかりいただける通り、本作品はそれまで単行本や文庫本に収録されていなかった作品を集めた作品集となっております。

 

そして今回の<完全版>に収録されている『仮題・ぬえの密室』に関しては、2017年9月に講談社ノベルスから刊行された『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』に収録された作品です。

この『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』は綾辻さんをはじめとして、有栖川有栖さん、我孫子武丸さん、歌野晶午さん、法月綸太郎さん、麻耶雄崇さん、山口雅也さんと言う、錚々たる面々による書下ろし作品が収録された1冊です。

ミステリー好きなら、この中にお一人でも好きな作家さんがいらっしゃるなら読んで損なし!な1冊なので、こちらもお勧めしておきます!

 

てなことで本題『人間じゃない<完全版>』の感想まいりましょう。

全6作品。ちょろっとずつ感想を書いていきましょうかね。

 

・『赤いマント』

・・・『人形館の殺人』の後日譚にあたる作品。なので本作品で探偵を務めているのは『人形館の殺人』にも登場したキャラクターとのことなのですが、ぶっちゃけ私のようにそのことを覚えていなくても(汗)問題はありません!

ある怪談。その怪談が現実のものになったかのような奇怪な事件の謎に、大学生の女性が、大学の助手を務める男性とともに挑むと言うお話です。

『あった、あった、そして今もあるよね、こう言う都市伝説的な怪談』と懐かしくなるような気持ちを呼び起こされる作品でした。ただ作品内で起きた事件、その状況にもし自分が居合わせていたら、と考えると、その恐怖がひしひしと伝わってきて変な声が出そうになりましたよ。このあたりのホラー的描写は、さすがの綾辻作品だな、と。

ただネタバレにはなりますが、描かれているのは人が死なないミステリーです。そこに隠されている真相は、なんとも可愛らしいと言うか甘酸っぱい感情。そしてそれに触発されたかのように、主人公が最後、胸に思ったひとつの決心みたいなものも相まって、非常にマイルドでほっこりした気持ちになれる作品だと思います。

 

・『崩壊の前日』

・・・ホラー的であり、かつSF的な味わいもある作品、それでいてどこか美しさ、凄惨ゆえの美しさみたいなものも感じさせる作品だと私は感じたのですが。『眼球奇譚』に収録されている一編の姉妹編のつもりで書いた作品とのことなのですが・・・『眼球奇譚』を読んだことがないので・・・くっふ・・・。

『わたし』と『彼女』の何気ない会話。それがやがて、夢現の境界線を揺蕩うような現象を引き起こし・・・と言う、なんともあらすじも紹介しにくい、私の語彙力では説明しにくい(涙)作品です。

てかやっぱあれだな。凄惨なんだけど、それ故の美しさがひたと胸に迫ってくるような、そんな作品だな。今、読み返してみてしみじみそう感じました。

そして本作品に登場する『由伊』と言う名前の女性は、この後の作品にも登場します。彼女についてはまた後ほど、言及したいと思います。

 

・『洗礼』

・・・推理小説作家の『僕』のもとに届けられた1作の謎解き小説。そこに苦々しい思い出を触発された『僕』の今を描くと共に、その謎解き小説の謎解きを楽しめる、そんな作品です。

推理小説作家の『僕』が誰なのか。そして謎解き小説の作者は誰なのか。それは作品を読んでからのお楽しみ、なのですが。この謎解き小説が実に面白いと言うか、こー、ほんと、若さや勢い、ある種の青臭さみたいなものが満ち満ちていて。でも、たとえそうであって未熟なものであったとしても、確か実力のようなものを感じさせるもので。読んでいてめちゃくちゃ愛おしさがこみ上げてきました。

ふふ。皆さん、最初はこうだったんだろうなぁ。知らんけど(知らんのかい)

そして本作品には、新本格派とは、あるいは『僕』とは切っても切り離すことができない人物が登場されています。その人物が『僕』にとってどれほどの存在だったのか。そんなことを思わせるラストが、個人的にとても切なかったです。

 

・『蒼白い女』

・・・7ページの超短編です。でもホラー作家としての綾辻さんの真骨頂みたいなものが凝縮されているようで、私はめちゃくちゃ好きです。

ある珈琲店。そこ視界に入ってきたのは、妙に蒼白い顔をした女だった。何故、女はあんなにも蒼白い顔をしているのか。そこに様々な推測を巡らせていく私は、やがてひとつの異変に気付く、と言う作品です。

ホラー小説、と言うより小説に限らずホラー作品の醍醐味の一つに『なんだ、そんなことだったのか』とほっとした、安堵の息を漏らした次の瞬間に、新たな恐怖が襲い掛かった来ると言う展開があると思うのです。

本作品もまさにその展開が最後の最後に待ち受けていて、その1行を読んだ瞬間、背筋がぞわっ、としました。ぞわっ、と。

 

・『人間じゃない-B〇四号室の患者-』

・・・かつて異端の研究者が住み、そして謎の死を遂げた『星月荘』。廃屋同然となったその家を若者たちが興味本位で訪れる。するとその夜、ドアに8つの鍵がかかった密室内であまりにも凄惨な事件が発生する、と言うお話です。

ストーリーだけ聞くと綾辻さんの館シリーズを思われる方もいらっしゃるかもしれず、事実、私もそれを期待していたのですが。ネタバレになるかもしれませんが、この作品に限っては完全なホラー作品です。

ただお見事なのはそのホラー的な要素を使って、かつこの作品が生まれたきっかけ、流れの中にあった『漫画だからこそ成り立つ仕掛け』が、ミステリ的な騙し、トリックとして描かれていると言う点。これはいや、思わずにんまりしてしまいましたことよ。

そうなんだよな。そのトリックと言うか仕掛けに関しては、最初からこちら側にも堂々、提示されていると言えばその通りなんだよな。なー。うん。まさしく『思い込み』を利用したトリックだわ。

そして本作品で登場するのは、先ほども書きましたが由伊と言う謎の女性。彼女に関しては、この前、読書感想文の記事で取り上げた『再生』の中に収録されている綾辻さんの作品にも登場している女性です。

むぅ~・・・こうなると俄然、彼女のことが気になるなぁ・・・。

凄惨極まりない事件。なのですが、何故なのでしょうね。そこにどうしようもない美しさみたいなものを感じてしまうのは。

 

・『仮題・ぬえの密室』

・・・で、先程も書きましたが文庫化にあたり収録されたのがこちらの作品です。綾辻さんは勿論のこと、その奥様である小野不由美さんをはじめとして、綾辻さんと親交があり、かつ新本格派を支え続けてきている作家さんが実名で登場すると言う異色作。

確かに存在したのか否か。それすらも定かではない。しかし皆の記憶の中、確かに存在しているような、そんな気がしてならない作品の存在。その作品、さらにはそれが存在したのか否かをめぐってやり取りを繰り広げる綾辻さんたち。その中、綾辻さんは自らの記憶がくすぐられるような、そんな感覚に襲われ・・・と言う作品。

虚実ないまぜの作品なのですが、とにもかくにも私はめちゃくちゃ好き。何て言うのか、ほんと胸が熱くなるような思いがすると言うか。たとえそれが作り話であったとしても、なんかもう良いなぁ、と。そんなふうに、少なくとも綾辻さんにとってはそんなふうに描けるほど、振り返ることができるほどの、その人への思いや、その人との親交があるんだろうなぁ、としみじみ感じさせられるんです。そしてそこがもう、最高にエモい。胸熱。

なんだろ。月日が流れること、その中で築き上げてきたものの素晴らしさ、素敵さ。そうしたものがぎゅっ、と詰め込まれている作品だと思います。好き。

 

はい。てなことで以上、収録6作品の感想をつらつらと書いてまいりました。

なんでしょうね。

ガチガチのミステリありつつ、しかし収録作品の多くが、綾辻さんのミステリ作家としての一面とホラー作家としての一面、その両方が見事に融合している作品なので、ものすごく読みごたえがあります。かつミステリとての面白さ、ホラーとしての面白さ、そしてミステリとしての、ホラーとしての、その両方が融合した魅力を味わえるので、めちゃくちゃ贅沢な気持ちになりました。はい。

なので皆様、ぜひとも読まれてみて下さいね~。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

次回は・・・21日ですか。よろしければ引き続きお付き合い下さい。

読んで下さりありがとうございました!