tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日なので~読書感想文の日です

てなことで読書感想文の日です。

『このミステリーがすごい2022』の結果をもとに、やんややんやと語ろうかとも思ったのですが・・・『そんな・・・せっかく記事にできるネタがあるのに・・・容易に消化してしまっては勿体ないではないかっ!』と言う気持ちがわいてきたので(笑)通常通りの読書感想文をお送りしたいと思います。

 

てなことで本日は、今から2年前ですか?

2019年度の年末ミステリのランキングを総なめ、更には第20回本格ミステリ大賞を受賞したこちらの作品の感想をお送りしたいと思います。

それが相沢紗呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』でございます。

文庫になるのを楽しみにしていたのですが、いやいや、話題作と言うこともあって割と早くに文庫化されましたね。ありがてぇ・・・。

今年度にはその続編『invert 城塚翡翠倒叙集』も発売されましたね。こちらは『倒叙』とあるとおり、犯人側の視点で物語が進んでいく。つまり読者は、城塚翡翠に追いつめられる気分を味わうことができる!と言うわけですね(多分、違う)

こちらも『このミステリがすごい2022』では、6位にランクインしていました!

あーん、本作も、今から文庫化が待たれてならない・・・。

 

前にも書きましたけど、今年、本当にミステリ界では、数々の作家さんの新刊が相次いだので、それらが文庫化されるラッシュが来たら、もう嬉しさのあまり小躍りしちゃいそう、ぐへへ。

 

てなことで『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の簡単なあらすじです。

 

っと、その前に。

いつもの如く、直接的なネタバレは避けています。犯人の名前を書く、とか、騙しの部分の説明をするとかですね。はい。

ただし読む方が読めば『これってこう言うことなんじゃないの?』と推測できてしまうような内容はあるかもしれません。否定はできません。

なので『前知識、一切なしに作品を読みたいんじゃ!』と言う方は、今すぐ、この画面を閉じていただくようお願いいたします。

 

はい。では、改めてあらすじをどうぞ。

推理作家の香月史郎は、とある出来事を通して城塚翡翠と言う女性と出会います。彼女は死者の言葉を伝えることができる霊媒であり、それ故、心に癒されようのない傷を負っていました。彼女のその能力を利用すれば、どんな事件も解決に導くことができる。しかし彼女の能力で導かれた真実に証拠能力はないため、そこに香月が現実的な論理を加えることで、2人は様々な事件の解決にあたっていきます。

か弱くも、死者の無念を晴らすため、気丈に死者の声を伝え続ける翡翠に、香月は少しずつ、心惹かれていきます。そしてまた翡翠も、自分を支え、自分の能力を活かしてくれる香月の存在を頼もしく思うようになっていきます。

一方、警察は、一切、痕跡を残さず犯行を繰り返す残虐な殺人犯の存在に頭を悩ませていました。そしてその殺人犯の魔の手は、翡翠のすぐ傍まで迫ってきており・・・と言うのが、簡単なあらすじです。

 

『すべてが伏線』『大どんでん返し』等々、とにもかくにもミステリファンとしては心躍るような惹句に飾られているこの作品。

勿論、私もその惹句通りの展開を期待して、文庫版を購入し、そして読んだわけですが・・・あー、成程。

 

あのですね。個人的な感覚から言うと『うっへー!やられたぜ~!』と言う爽快などんでん返し、騙された快感がある作品ではないと思います。そんなわかりやすい、かつ、何と言うか、こー、語弊はあるかもしれませんが、小手先の『騙し』ではないんです、本作品に待ち受けている結末と言うのは。

なので個人的には『くっはー』でした。『くっはー・・・これは凄いわ。凄い。よくもまぁ(言い方!)こんな手の込んだことを!』と言うのが率直な感想で、正直、期待していたような『騙されたぜ!やられたぜ!こんちくしょうめ!(悦)』と言う爽快感はありませんでした。

が、とにもかくにも、もうラストですね、怒涛の如く明かされる真実、そしてそれらが次々と投げつけられてくるような展開には、ただただ、その凄さのあまり笑うしかなかったと言う。そうしてその凄さが、読了後にも、じわり、じわりと効いてくる、そんな作品だったと思います。

 

個人的、あくまで個人的な意見なのですが。

この作品に低評価のレビューを寄せていらっしゃる方の多くが、物語の合間、合間に登場する、姿を一切見せない連続殺人犯。その正体があまりにもわかりやすすぎる、だから惹句の『大どんでん返し』云々も、そうは感じられないと言う指摘をされています。

 

その通りです(どーん)

多分、ミステリを読み慣れている方などは、簡単に、この連続殺人犯については推測することが、当てることができると思います。

なにせ私ですら、初期の段階で『この人、絶対に怪しいやんな』と推測でき、中盤で『絶対、こいつ犯人やん』とあたりを付けることができたのですから。

 

はい。

 

ただこの作品の『すべてが伏線』『大どんでん返し』が当てはまるのは、多分、そこではない、と言うのが私の意見です。

いや勿論、その部分、つまり連続殺人犯の正体にあてはまることもあるのにはあるのでしょうが、でも多分、その割合としては10%程度だと勝手に思っています。

 

では残りの90%はどこなのか、と言うと。

それが、その連続殺人犯の正体が明かされた後の展開です。

死者の声を聞くことができ、そのことで自分の無力さを突き付けられ、心に深い傷を負っている霊媒師。か弱く、はかなげな雰囲気をまとい、しかしそれが、その美しさを更に引き立たせていると言っても過言ではない美少女。可憐で少し世間知らずなところ、ちょっと天然ボケっぽいところも魅力的で、何よりも健気で頑張り屋さんな、とても魅力的な人間。

 

あー・・・すべてを知っている身として、この文章、城塚翡翠を紹介する文章を書いているのが楽しすぎて、にやにやが止まらん(笑)

 

その城塚翡翠と連続殺人犯が対峙し、城塚翡翠が繰り広げる『推理』

 

そこにこそ、この作品の『すべてが伏線』であり『大どんでん返し』の魅力の90%がつまりに詰まっている、と私は思うのです。はい。

 

いやね、ほんと、終盤のこの流れは、圧巻の一言なんですわ。

冒頭にも書きましたけれど、ほんと、よくもまぁ、こんなことやってのけたな、と。

全否定、後、再構築、とでも言いますか。

自分で築き上げた相当な完成度を誇っている建物を、完膚なきまでにぶっ壊した挙句、再び、以前の建物にも増す完成度を誇る建物を築き上げたと言うか。

 

そしてそこにある、城塚翡翠の『探偵』としての頭脳の高さに、ただただ驚嘆し感嘆し、殺人犯同様、それに打ちのめされるような感覚を味わうしかないんです。でもその打ちのめされ感が、圧倒的な敗北が、もうただただ気持ちよくすら、爽快ですらあると言いますか。はい。

 

具体的なことは書きません。が、ヒント的なことを書きますと・・・。

本シリーズの作者、相沢沙呼さんは、マジックをたしなんでおられます。そしてそのマジックが、氏の作品に登場することも少なくありません。

 

マジックと言うのは、騙しです。見ている人を騙すものだと、私は思っています。

どんなに奇跡的に見えることでも、マジックである以上、そこには必ず『タネ』があります。優れたマジシャンと言うのは、その『タネ』の存在を微塵も観客に感じさせることなく、気取られることなく、完璧に、完全に、美しく、観客を騙すことができる人だと思います。

 

やってのけたこと、まるで奇跡のように見えたこと。

その裏側にある騙しのための『タネ』

それを盛大に観客に明かして見せる。

 

それが、本作品を語るうえでのキーワードになっている・・・とだけ、書いておこうかな。うふふふふ。

マジックを趣味とし、そこに魅入られている相沢先生。これまでの作品でも、度々、それを描いてきた相沢先生だからこその作品だよな、と読み終えて心底、感じさせられる作品でもあります。はい。

 

そんな具合で本日は『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の感想を書いてまいりました。

予想していた読後感とはちょっと異なる作品でしたが、いやいや、めちゃくちゃ面白かったし、ほんと、凄かったわ。

よくもまぁ、こんなことを(3回目(笑))

 

てなことで、次回の読書感想文は21日ですね。

31日は大みそかなので、読書感想文はお休み。と言うことで、次回が2021年ラストになるのか・・・早いな(遠い目)

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!