tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2007年

『8月10日必着』って表書きしてあるのに・・・。

結局11日の昼過ぎだったよ、届いたの。

まぁ、いいけどさ。

いいけどさ・・・いいけどさ・・・。

 

はい。

 

年末恒例『このミステリーがすごい!』、その30年余りの歴史を、個人的に読んだことがある作品に限ってですが振り返ると言うシリーズ記事。

驚くほど順調に更新できており、初回の1989年から13回くらい(アバウト!)お送りしております。そして本日は2007年度のランキングを振り返っていきます。

 

てなことで、まずは毎回恒例。

その年に何があったのかを見ていきましょうかね。

2007年は平成19年。と言われても、やはりピンとこない。ウィキペディアで調べてみると、なんかつらつらと書いてはあるものの、いつものように個人的に『あぁ、そう言えば』と思うようなことが見つからなかった・・・何故。

いや、いいんですよ。だいたいいつも、思い出すたびに胸が塞がれるような思いがする、暗い出来事しか書いていないから(ちーん)

 

なので本日は2007年に流行したものを調べてみました。たまには明るくいこう!

まずは『あぁ~、あったあった!』となったのが、ビリーズブートキャンプでした。ビリー・ブランクスさんが考案したハイテンション(笑)短期集中エクササイズですね。当時、ご本人がテレビに出演されていたりしたことも思い出しました。

そして時を経て今、また『令和版』と銘打って新たな映像も公開されているようで。アマゾンのDVD商品ページ見てみたら、平成版と比べると負荷は少ないものの、適度な運動には最適と言った評価もあって『あ・・・ちょっとやってみたいかも』と思いました。ははははは。

 

ま、しかしアレですね。

いつの時代もダイエット関連の話題と言うのは、強いですね。

痩せたいもんな。

痩せたい(痩せたい)

 

その他、石川遼さんが史上最年少、15歳8か月で男子ゴルフツアー優勝を果たされたのもこの年。また現在ではコメンテイター、個人的には某番組の影響で『俳句おじさんの1人』と言う印象の強い(笑)東国原英夫さんが、宮崎県知事に初就任されたのもこの年でした。宮崎県産のマンゴーが、一気に有名になったもんなぁ~。

 

ではではここからは本題へとまいりましょうか。

いつものようにリンクを貼り付けておきますので、こちらから確認していただくとわかりやすいかと思います。

ja.wikipedia.org

この年、1位に輝いたのは平山夢明さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』でございました!怪談実話の分野で圧倒的な人気を誇る平山さんが手がけられた、ジャンル分け不能な短編集が堂々の1位を獲得!

こちら、私も読んでおりますので、後ほど語りたいと思います。

 

で。ベスト10にランクインしているほかの作品で、私が読んだことがあるのは・・・まずは10位、米澤穂信さんの『夏期限定トロピカルパフェ事件』、それから9位の東野圭吾さんの『赤い指』。更に8位、法月綸太郎さんの『怪盗グリフィン、絶対絶命』、7位の香納諒一さんの『贄の夜会』。6位、宮部みゆきさん『名もなき毒』、5位の乙一さんの『銃とチョコレート』・・・まだ続く、4位、大沢在昌さんの『狼花 新宿鮫Ⅸ』に3位、道尾秀介さんの『シャドウ』、2位、佐々木譲さんの『制服捜査』ですね。

 

あれ?もしかしてもしかして私、この年のベスト10ランクイン作品、米澤さんの作品と同率10位にランクインした建倉圭介さんの『デッドライン以外、全部読んでる?

・・・読んでるよね?

あっはあぁぁぁぁぁぁぁぁ!今更、気が付いた!

そうだったのか。この年も、ほぼほぼベスト10制覇していたんだぁ~。はぁ~。

 

それはそれは、こんな無駄な話をしている場合じゃないな。さっさと語り始めねば。

てなことで手短に行くんだぞ、自分!

 

ではでは、まずは10位、米澤さんの『夏期限定トロピカルパフェ事件』です。あぁ、なんか暑さの続く今日この頃。とっても爽やかな響きをもたらしてくれるタイトルですな・・・トロピカルパフェ、食べたい(でーん)

小市民を目指す高校生2人と、2人が遭遇する事件を描いたシリーズの2作目です。現状、シリーズは5冊、刊行されています。そしてそのどれもにスイーツの名前が含まれており、作中にもスイーツがたくさん登場するのですが・・・そのどれもが、ほんと、めちゃくちゃ美味しそうなのよ。空腹の時に読むのは厳禁よ!

なんですけれど・・・そんなスイーツの甘さがいっそ苦く響いてくるほどの展開が、今作には待ち受けております。小市民であるために、互恵関係を結んでいた2人に訪れた結末。ひねくれていて、意固地で、でもその自意識の思い上がりを徹底的に描いた青春小説としての味わいは、さすがの一言です。

 

続いて9位、東野さんの『赤い指』は加賀恭一郎シリーズの7作目です。加賀シリーズもドラマ化、映画化されており、本作品も2011年のお正月にSPドラマとして放送されました。加賀は阿部寛さんが演じていらっしゃいます。

一見すると普通の家族、普通の家庭。しかし外側からは決して見えない、様々な問題を抱えている前原家。その一人息子である直巳が、幼い女の子を殺害してしまう。父の昭夫は警察に通報しようとするが、直巳を盲目的に溺愛している母、八重子はそれを阻止し、直己の罪の隠蔽を昭夫に懇願する。仕方なく昭夫は八重子の言葉に従うのだが、加賀は捜査の中で前原家に疑念を抱く、と言うのがあらすじです。

罪を犯した息子を一心にかばおうとする母親の、あまりにも身勝手な愛情。そして夫として、あるいは父として、妻と息子を正すことができず、あまりに卑劣で身勝手な選択をしてしまう昭夫。そのどちらもに、言葉を失うくらいに呆れるしかありませんでした。だからこそ『家族間の愛情』が持つ二面性について、強く考えさせられた作品です。そして本作では、加賀さんと実父の確執、その行く末も描かれます。それがまた、前原親子の姿と対になっていて、実に鮮やかに、深く胸に染みるのです。

 

8位は法月さんの『怪盗グリフィン、絶体絶命』は5位にランクインした乙一さんの『銃とチョコレート』と一緒に語りましょうかね。

何故かと言うとこの2作は、講談社の子供向け推理小説シリーズ『講談社ミステリーランド』の1冊として刊行されたからです。こちらのシリーズと言えば前年度のランキングで5位にランクインした『何が子供向けじゃい!こんなもんトラウマ必至じゃわい!』と突っ込まざるを得ない(汗)麻耶雄嵩さんの『神様ゲーム』が有名ですが。

この2作品に関しては安心して子供さんが読むことができる、それでいて大人も楽しめる、冒険&ミステリ作品となっております!

『怪盗グリフィン、絶体絶命』は奇妙な依頼を受けた怪盗グリフィンが、巧妙な罠にかけられてしまい、国家の威信をかけた盗みを行う羽目になる、と言うお話。

そして『銃とチョコレート』は、富豪の家で相次ぐ盗難事件。その解決に乗り出した名探偵のロイズと、彼に憧れる少年リンツ、2人の冒険譚を描いた作品です。

それぞれの作品、それぞれの作家さんの持ち味が存分に発揮されている胸がわくわくする、それでいてちょっと切なくなるような味わいもある冒険作品。ちょうど夏休みだし、ぜひお子さんたちに読んで欲しい作品だなぁ~。

そしてよければ『神様ゲーム』も読んでみてね。ぐへへ。

 

7位は香納さんの『贄の夜会』です。犯罪被害者家族の集いに参加した女性2人が、惨殺死体で発見される。捜査にあたる刑事たちは、その集いに参加していた弁護士が中学時代、同級生を殺害。更にその遺体の一部を切り取り、学校の前に晒していた殺人犯だったことを突き止めるのだが、と言うのが簡単なあらすじです。

この後、本作品の物語は更なる広がり、展開を見せていきます。ミステリとしての面白さは勿論のこと、デビュー当初から主にハードボイルド系の作品を数多く手掛けてこられた香納さんらしい、ハードボイルド的な味わいも色濃くなり、ひりつくような緊張感を味わうこともできます。またシリアルキラーやサイコサスペンスの存在も描かれることで、社会派ミステリとしての面白さもある、まさに1冊で様々な魅力を堪能できる、氏の代表作のひとつと言っても過言ではない作品だと、個人的には思っています。

なお香納さんの作品は2007年度、20位にも『冬の砦』がランクインしています。

 

6位は宮部さんの『名もなき毒』です。こちらは杉村三郎を主役に据えたシリーズの2作目。1作目の『誰か Somebody』から1年後を舞台に、会社を解雇された1人の女性の悪意、それがもたらす数々のトラブル。それと並行して連続無差別毒殺事件の行方を描きます。

解雇された女性は、その解雇理由が彼女自身にあるにもかかわらず杉村を逆恨みし、様々な形の悪意をばらまき、彼を追い詰めていきます。しかも彼女は過去にも、平然と嘘を吐くことで兄の家族を崩壊に追いやっていました。自分が圧倒的に正しいと思い込み、人を徹底的に傷つける存在。平然と嘘を吐き、人を徹底的に傷つける存在。その描写は、あまりにも生々しく、リアリティに溢れており、読んでいる間、ずっと恐ろしくてたまりませんでした。社会に生きている、様々な人の、様々な感情、在り方。それを描かれると、宮部さんはやっぱうまいよなぁ、と改めて感じさせられます。

ちなみに杉村三郎シリーズは小泉孝太郎さん主演でドラマ化されています。そしてドラマで、この悪意をまき散らす恐るべし女性を演じていらっしゃったのは、江口のりこさんとのことで・・・ぴったりすぎるだろ(怖い)

 

4位にランクインしたのは大沢さん手掛ける大人気シリーズ『新宿鮫』その9作目となる『狼花 新宿鮫Ⅸ』でございます。

大麻所持で逮捕されたナイジェリア人、その取り調べにあたった鮫島は盗品を専門に売買する『泥棒市場の存在を突き止める。その組織の背後には、鮫島の宿敵でもある国際犯罪者、仙田の姿があった。一方、鮫島と同期でキャリアの香田は、外国人組織撲滅のために、暴力団と手を組むことを画策していた。それぞれが信じる正義に向かって突き進む男3人と、そこに関わる1人の中国人女性の姿を描いた作品です。

ぶっちゃけると、面白くなるまでにちょっと辛抱が必要な作品でした。そう言う意味では、ちょっとシリーズの中でも異色かもしれない。導火線が、ほかのシリーズ作品と比較すると長い作品と言うか。はい。ただその導火線が限界点を迎えてからの爆発っぷりは、爽快さすら感じるほど。そこからのスピード感、重厚感は『さすが』の一言。そしてタイトルの『狼花』も、読み終えた後、その咲き誇る様、大輪の花をつけた様、屹立しているかのような様が、まざまざと目に浮かぶようで、本当にぴったりのタイトル。

 

さぁ、ここからはベスト3に突入します!

まず3位は道尾さんの『シャドウ』でございます。この年は道尾さんが大ブレイクを果たされた年と言っても過言ではなかったような記憶があります。『向日葵の咲かない夏』が大きな話題となったのもこの年でしたが、その作品と同時にランクインを果たした1冊がこちら『シャドウ』でございます。

小学5年生の凰介は、癌で母を亡くしてしまう。それからほどなくして、幼馴染の亜紀の母親が、夫の務める病院の屋上から飛び降り、自ら命を絶つ。更に亜紀も交通事故に遭ってしまう。ただただ家族の、自分のごく普通の幸せを願う凰介だったが、父親の洋一郎もまた異常を見せ始め、と言うのが簡単なあらすじです。

凰介の、ただ幸せを願う健気な気持ちを思うと、もう胸が押しつぶされそうなほドニ、次から次へと押し寄せてくる精神的にヘヴィな出来事の数々。それと共に、変調をきたしていく父、洋一郎の姿が、実に陰鬱で、でもどこか冷え冷えとした、冴えわたる筆致で描かれているため、読んでいる間も呼吸が苦しくなるような。妙な緊張感を抱きっぱなしでした。そしてその緊張感が頂点に達して爆発を迎えた時に明らかになる、ミステリ的な仕掛けには『あぁ~』と、もはや降伏の一言です。決して明るく楽しい話ではありませんが、最後の最後には、私は微かな明かりみたいなものを感じられたなぁ~。

 

続く2位にランクインしたのは佐々木さんの『制服捜査』です。短編集であるこちらは、北海道警察を舞台にした駐在警察・川久保篤シリーズ1作目です。道警の不祥事、その巻き添えを食らう形で小さな町の駐在に異動した川久保が、町で起きた事件に関わる姿を描いています。

川久保が異動してきて早々に起きた、高校生の遺体が発見されると言う事件。川久保は事故に見せかけた偽装殺人を疑うのだが、再捜査はあっさり拒否されてしまう。しかし半年後、それは思わぬ結末を迎えると言う『逸脱』。

酪農家の飼い犬が惨殺されたことから、ある一家の内情が浮き彫りになってくる『遺恨』、前科者だが実直でまじめな男と、スーパーで万引きをした少年の交流と、その思わぬ顛末を描く『割れガラス』、連続して発生する空き家の不審火による火災被害。その容疑者と思しきホームレスが逮捕されたものの、何故か男は5件目の犯行だけは頑なに否認すると言う『感知器』。

そして個人的にはいちばん印象に残っているのが、ラストに収録されていた『仮装祭』です。13年前の夏に起きた、1人の少女失踪事件。未解決のそれは、川久保も非常に気にかけている事件だった。その年以来、中止されていた祭りが復活。盛り上がる空気をよそに、川久保は心中穏やかではなく・・・と言うあらすじです。

非常に胸糞悪いと言いますか。『小さな町』『閉鎖された地域』『地元の有力者』と言う言葉は負の部分を、これでもかっ!とばかりに生々しく描いており、ある意味、本当に救いようのない作品でした。なんだろ。私のような、あるいはこの作品の舞台であるような『田舎』に住んでいる方と、そう言う地域ではない『都会』に住まれている方とでは、この作品に抱くイメージ、感想も大きく変わるように思います。

 

そして!

ようやくたどりつきました!(笑)

2007年度のランキングで1位を獲得したのは、平山さんの『独白するユニバーサル横メルカトル』でございます!

『このミステリーはすごい!』はそのタイトル通り、ミステリ作品、そしてそれを中心に据えたエンタメ作品がランクインしているのですが・・・個人的にはまさしくジャン分け不能、このミスの歴史の中でも異彩を放つ作品の、まさしく異例の1位獲得だと思います。はい。

本作品は短編集で、全8作品が収録されています。タイトル、声に出して読むとそのリズムの良さが癖になる(笑)『独白するユニバーサル横メルカトル』は、その1作品のタイトルです。

本作の語り手は、長年、タクシー運転手の主人に仕えてきた1冊の道路地図帳。この時点で『うーん、シュール!』と笑ってしまったあなた。その地図である彼が語る、主人とその息子の所業を読んでもなお、笑っていられるかな、ふふふふふ。

その他、もうタイトルだけである程度、物語の内容を察することができる、できてしまう(汗)『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』や、ある男の殺害のため、熱帯ジャングルにやって来た男2人。危険だらけの川を渡っている最中、敵に捕らえられてしまった2人が連行されたのは・・・と言う『すさまじき熱帯』、新興宗教にすがる母親と暴力をふるうクズのよう義父。更に学校でもイジメにあっている1人の少女は、近所で発生した殺人事件の現場へと足を運ぶ。そしてそこに、殺人犯に会いたいというメッセージを残す。孤独な少女が殺人犯に託す願い、そしてその行く末を描いた『無垢の祈り』などが収録されています。

 

陰惨。残酷。暗黒。残虐。狂気。残忍。暴力。流血。虐待。もうなんと言うか、そう言う言葉を片っ端から集めて煮詰めて、徹底的に描いたような物語ばかりです。

なので正直、決して万人に『面白いよ!』とおすすめはできません。私は。

ただ面白いのは確かなんです。これが不思議なことに。

残酷や暴力、陰惨や虐待、そう言う人間のグロテスクでネガティブでダーク極まりのない、しかし本性がここまで突き抜けて描かれると、いっそ面白みすら出てくるのだなぁ、と。

 

そしてそこから、勿論、作品にはよるんですけれど。何故か美しさを感じることもあるのだから、これが我ながら不思議でならない。

ダーク極まりのない、しかし人の本性であるそれらが描かれていく過程で、切実さすら感じさせるような美しさ、哀切がひしひしと伝わってくる。

で、何故なんだろう、と考えてみたら。

作品ごとに異なる、変幻自在の文体、文章。それによって作られる作品ごとの強烈な色、個性の違いによるところが大きいんだろうなぁ、と。

だからそう言う美しさ、哀切さを感じる作品もある一方で、なんというかもう、良い意味でもそのままの意味でも『救いようねぇな、これ(引き笑い)』と言うお話もある。グロテスク極まりのないお話もあるからこそ、人のか弱き美しさ、儚き美しさ、そして強烈な哀切さがより一層、胸に迫ってくる。

今更ながらですが、改めてそんなことを感じました。

 

まさに1冊でいろんな『面白さ』を味わえる、だけど先にも言いましたが、私は万人にはおすすめできない、異色の短編集が2007年度の『このミステリーがすごい!』堂々の1位でございました!

何度も書いていますが面白い。しかし精神的にヘヴィな作品、描写も多いので、その辺りはどうぞご注意下さいね。

 

はい!と言うことで私自身も気づいていなかった。まさかまさかの1冊を残して、ベスト10をほぼほぼ全制覇していたとは!

いやぁ、振り返り企画、やってて良かった!(笑)

建倉さんの『デッドライン』もいつか、読んでみよう。そうしたら完全制覇だな!

 

てなことで次回は2008年の振り返りですね。

よろしければ引き続き、おつきあい下さい!

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!