tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日だから読書感想文の日~果たしてどうなった!?

去年10月でしたっけ?

新しくパソコンを買いました。はい。

 

さて、USBに眠っていいる私の読書感想文のデータを開こうとしました。

ところがどっこい、officeのプロダクトキーの入力を求められて、あたふたしたまま年を越してしまった、と言うのがつい最近のことです。

 

プロダクトキー、何じゃそりゃ、とネットで調べまくって、購入したパソコンの付属品、どこやったっけ?と慌てて大掃除もろくにしていない部屋を探しまくった末に、プロダクトキーが書かれていると思しき付属品を発見。

 

そちらを入力したのち、更にあれやこれやの入力を求められて『一体、何なの?自分が購入したパソコンのソフト使いたいだけなのに、なんでこんな入力求められなきゃならないの?何様なの?』と若干、理不尽に苛立ちましたが(笑)

 

ありがとうございます!どうにかoffice、使用開始することができました!

 

と言うわけで、しばらくお休みだった1日以外に末尾に1が付く日に、過去の読書感想文を大放出すると言うシリーズ、復活でございます!

 

やー、めでたい!

正直、『プロダクトキー、何それ?』と言う状態だった時は『あれ、これもしかして、このパソコンではofficeソフト、使えないままちゃうん』とすら思っていたので(汗)

 

ただUSB、去年の読書感想文はほとんど書いてなかったね・・・。

どうにか思い出して、今になってちょこちょことは書いていますが・・・。

やっぱりほんとを読み終えた直後に書くようにしないとダメだなぁ、と痛感しています。はい。

 

ではでは。早速、今回の読書感想文の放出、スタートです。

前回の森見登美彦さんの『有頂天家族 二代目の帰還』からの続きで、年代としては2015年となっています。

 

柳広司『ラスト・ワルツ』・・・中古で420円だった。ラッキー。このシリーズ、実は中古と言えども、全作、単行本を購入していると言う。珍しいしそれだけ、長いお付き合いと言うことですな。はい。そうだなぁ…1作目あたりの切れ味は、それは凄まじいものだったなぁ、と。すぱっ、とまさに一刀両断と表現できるような切れ味、読者を欺くのが、このシリーズの最大の魅力であり、持ち味であったと思う。で、今作。今作はどうだったかと言われれば、その切れ味はさすがに、鳴りを潜めてきたかなぁ、と言う気がしなくもなかったです。ただしその一方で、だんだん時代が変わっていく、その中で今後、多分、その在り方、立ち位置が変わることを余儀なくされるであろうスパイたちの姿のようなものが、切ない余韻となって読者の胸に迫ってくるような、これまでとは異なる味わいがあって、これはこれで面白かったです。と言うか、読者はいわば、今後時代が、日本が、どのような道を歩んでいくか知っているわけだから、いわば結末を知っているとも言えるんだよなぁ。なぁ。切ないなぁ、と思う一方で、完全にそうなるまでの経緯や流れを知らないことが、とても惜しく思えたし、とても恥ずかしく思えた。学校教育における、日本近代史の学習の薄さと言うのは前々から指摘されていたけれど、本当、こう言うことは知っておかないと恥ずかしいな、と痛感しました。はい。たとえば1作目、平和の象徴と言われている鳩が、青い空に羽ばたいていくラストシーンが意味しているもの。あるいは、そこに託された、物語の今後を占わせる現実。情報は、集めるよりもそれを使う、利用することの方が、はるかに難しいと言う現実にあって、そして時代が少しずつ、少しずつ、きな臭い方向へと傾いでいく中で、結城中佐は何を思っていたのか。そのことを一切、感じさせない、明かさない代わりに、まるで親しい関係のように、情報収集に利用された鳩が、結城中佐の求めに応じてその元に寄ったと言うのが、これまた切ない。その結城中佐に魅入られ、そして年を重ねていき、変わりゆく時代の中にあってただ膿んでいくしかないような自分の人生に、ただ諦観を抱くしかない女性の物語も、時の流れ、そこについていくことができない人間に遺されたものなど思い出しかなく、そしてその思い出が、時に今を生きる自分を苦しめると言う残酷な現実を突きつけているようで、胸が痛かったです。そしてラストのワルキューレ。映画が、時に戦争のための道具に使用されると言う現実が、とても重苦しかった。そういうものなんだろなぁ。真っ先に、普段なら切り捨てられるものなのに、士気高揚とかそういう都合の良い時だけ、利用されるものなんだと思うと、本当に切ない。その中で繰り広げられた物語は、実は物語の主人公がD機関のスパイではなく、同じ軍でありながら、敵対している海軍のスパイであったと言う驚きもありつつ、その彼が、一人の映画人を助けるために一芝居を繰り広げたと言うのが、また胸を打つ。このあと、ユダヤ人に対する迫害はますます苛烈を増していく。日本においても、映画は、戦争のための道具として使用されていく。スパイの活躍が描かれれば描かれるほど、そこに『平和のため』などと言う目的が描かれることはなく、ただ自らのプライドだけを賭けている姿が描かれているからこそ、今後の現実のことを考えると、胸を塞がれるような思いがする。『死ぬな、殺すな、殺されるな』。何よりも命、生きること、生き、残ることを至上とする、軍隊にありながら、異色の集団である、D機関。そこに所属する若きスパイたちが、そしてそれを設立した結城中佐が、軍の暴走の中にあって、そして殺すことを、あるいは死ぬことを至上とする戦争にあって、どのようにふるまうのか、あるいは立ち向かっていくのか、それとも―。その物語が今は待ち遠しいような、そんな物語は読みたくないと思うような。そんなことを思わせる1冊でした。あぁ、日本の近代史でも勉強しょうかなぁ。

 

日本推理作家協会『BORDER 善と悪の境界』・・・アンソロジーです。読んでみました。はい。以下、収録作の感想を少しずつをば。『随監』…広松さんのような人にいて欲しいと思った。警察は、法に触れたことしか悪いこととは認めない。でも被害に遭っている人にとっては、それが法に触れているか否かなんてことは関係がない。ラインぎりぎりのところで悩み、苦しんでいる人を救う存在がないと言うこと自体が、間違いだと思ったし、恐ろしいと思った。広松さんの在り方と、警察と言う組織に全幅の信頼を置いていて、その中でキャリアアップをすることこそが価値であると信じてやまない柴崎さんとの対比が面白いと思った。てか、柴崎さん、今、読んでいる作品で真相を知ったからだけど、この人、相当なクズ(ちーん)。『夏の光』…男だったのかよ!と思ったら、大人時代に、少年時代を思い出しているという体だったのね。その通り、少年時代の思い出や光景を鮮明に、そして時には残酷なまでに暗澹たる不穏に満ちたそれを描くことができるのは、さすが道尾先生だと思いました。振り返って見て、自らが失ったものに対する気付きがあり、そのことに対する差し込むような痛みも覚えつつ。強い人間は犬を角材で殴り殺したりはしない、と言う言葉に涙が出た。強さを身につけざるを得なかった清孝。その強さはいつか、彼を救うかもしれないし、彼を苦しめるかもしれない。でも、『強さ』と『弱さ』が、『なんか違うなぁ』と感じるような昨今、彼の、そして主人公の感じた『強さ』はまさしく、タイトル通りの存在だと思いました。『雨が降る頃』…真相が衝撃的でした。クロハの、ツジを通して描かれる表情の凛々しさ、特に瞳のそれに胸を射られるような気持ちを覚えた。クロハがいなければ、真相は明らかにならないままだった。そうなった時の、被害者の無念のいかばかりか。事件を解決するために自らはあると言い放ち、そしてそのためになら何物をも恐れるつもりはないと言い切ったクロハ。それは女だから言える言葉だと返したツジ。そして自らのためだけに無辜の市民を一人、警官でありながら殺したスギ。警察と言う巨大組織にある、どうしようもない闇を見た気がしたし、そこに、あるいは社会にある女性と男性の間にある断絶の壁のようなものを突きつけられたような気が重い一作。『ドロッピング・ゲーム』…読んだことあるね。はい。狂ってる。そう思いました。この狂い具合こそ、石持作品の魅力でもありますかな。啓介くんの活躍が、何とも皮肉と言いますか。でも、結局、『この国。』においては、やはり仮に生きていたとしても、翔一は啓介のようにはなれなかっただろうし、普通科の人生しか待ち受けていなかったのだと思う。心がやさしく、繊細な彼は、きっと、どこまで行っても生きづらかったと思う。うん。『波形の声』…トリックとか、吃音の少年が臨時教師に向ける感謝の思いとかは、嫌いじゃない。だけどなんかなぁ。偶然に偶然が重なり過ぎていると言うか。デビュー作からして、この人の作品、あんまり好きじゃなかったからなぁ。うーん。はい。『老友』…一番好き。いいわぁ。インモラル。時が過ぎること、老いること、変わることができないのに変わっていくことの残酷さ。それがグロテスクに、ブラックユーモアたっぷりに描かれていた作品だと思いました。源治の言った通り。村には、おめぇが必要なんだ。その通りなんだよなぁ。こんな人間でも、医者であるただそれだけで、道夫は、この村には、必要な人間なんだよなぁ。人間の価値なんてほんと、こんなにもわかりやすくて、頼りないものなんだよなぁ。認知症限界集落、ルートから脱落してしまった若者。日本のどこかで起きていても不思議ではない物語だと感じました。ステキ。『眼の池』…着地点の予想すらつかない作品でしたが、意外と面白かったです。多分、分類としては『そんなバカなっ!』と突っ込みをいれるべきバカミスなんだろうけど、その馬鹿馬鹿しさを、北朝鮮拉致問題とか、娘を拉致されたと思い込んでいる母親の悲しい姿とか、他人に成りすまして生きてきた男とかのリアリティが薄めていたような気がします。鳶先輩、いいなぁ。『師匠』…まぁ、あの、ラストにおかれていた作品の割には、ライトタッチと言うか、コメディ色の強い作品のように思いました。はい。と言うことで、順位をつけるなら、『老友』『雨が降る頃』『眼の池』辺りかなぁ。

 

日本推理作家協会『現場に臨め』・・・引き続きアンソロジー。はい。以下、印象に残った作品のみ一口感想を。『撃てない警官』…明らかに↑よりこっちを先に読むべきだった。柴崎、ゲス。クズ。最低。でも、元を辿れば彼、何にも悪いことしてないし。そういうことを含めて、そう言うことが日常茶飯事なんだなと言うことを、あっさりと書いてしまうあたりが警察小説なんだと思った。警察、最低だな、本と。はい。『スジ読み』…先の作品の後だったので、とにかく救われたような気持ちになりました。池井戸さんは、知らなかっただけで、こういう金融ものじゃないミステリも面白い作家さんなんだなぁ。面白おかしく、映画で扱われていた殺人法をまねるってのも、いかにも現代っぽくて、あっという間、物語に引き込まれました。現実に起きちゃ、ほんと、迷惑千万だけどね。『賢者のもてなし』…大人のおとぎ話と表現したくなるような作品。タイトルからして既に不穏で、もう展開とか読めまくりなのに、その通りの展開になって痛快で面白く溜飲が下がると言うのは、なかなかどうして。『あれ』の正体がスズメバチってのも、意表をつくようで面白かったです。『天誅』…曽根圭介。覚えた。この人の、本と、人が人に感じる価値観なんて、虫けらみたいなものなんだ、くそみたいなものなんだ、そんなもの、本当に頼りないものなんだ、って感じの作風、凄く好き。そして小さな女の子の、ビッチな残酷さもすごく好き。早よ、ゲス駐在と小悪魔少女と、同級生の気弱少年の3P薄い本、早よ(どーん)。『シンメトリー』…読んだね。読んだはずだけど、最初数ページ、単語のみで弾丸のごとく描かれる風景描写、そしてその後の凄惨かつ理不尽な展開、救われない無念、煮詰まっていく感情、そして姫川玲子登場、と言う一連の流れが、本当にいやらしいくらいにドラマっぽくて、なんか異色だったと感じた。『償い』…小説で何かを変えることができるとしたら、それを実現のものにできる作家が、葉真中さんと薬丸さんだと思う。うん。犯罪、被害者加害者、そして償い。難しいテーマをずっと書き続けているこの人の作品が、もっと日の目を浴びることを切に願う。償い。日本の制度におけるこの言葉が意味するところは、一体何なんだろうな。『思い出を盗んだ女』…いいなあ。ラストの、男性の表情が目に浮かぶようで。だからって別にいくらでも言い逃れできるじゃんって話なんですけど。すっ、と平凡だった日常に、巡り巡ってきた因果の果てが滑り込んできたようで、背筋がぞわっとしました。タイトルも秀逸。『墓標』…さすがは横山秀夫!と言いたくなるような緊張感漂う作風でした。し、事件の謎解きと共に、実はスランプに悩む作家が夫婦でゴーストライターだった、と言う謎も同時進行で明かされていって、読みごたえありました。ただ、これだけではちょっと消化不良な気がしてしまうのは、短編だから仕方ないなぁ、と言う気も。読んだっけ。これも、倉石さんシリーズだから読んでいるはずなのか、どうなのか(ちーん)。『小さな異邦人』…このミスにランクインしていたので読みたかった。ので、読めてよかったです。はい。はは。『直腸ポリープ』と口にするより恥ずかしいことって、何だよこのヤロー!(絶叫)。14歳で妊娠…おばさんはひっくり返ってしまいそうです。はい。面白かったです。成程、そういうことか、と。誘拐事件の思わぬ顛末。巧いですな。…しかし、本と…先生、教え子に何てことしてんだよっ!はい。そんなこんな。短編なので、どうしてもご都合主義が先行してしまっている点は否めなかったりもしたんですが、でも、作家さんの個性が出ていたし、短編ってこんなふうに書くんだなぁというふうな勉強にもなりました。はいよ。

 

・乾禄郎『機巧のイヴ』・・・ 面白かったです。うっかり、未読のまま図書館に返却しなくて良かったよ。はい。人に限りなく近いものでありながら、けれど、決して人ではなく、命ではない。そうしたからくりの姿を通して描かれる、様々な人の欲望、願い、生きざま、それらが鮮明に描かれていて、読みごたえ抜群でした。何と言っても一作目、三冊のアンソロジーに収録され、大絶賛を受けたそうですが、わかるわ。頷けるわ、それ。お見事だった。真相が明かされた時の、そうきたかっ!って言う驚きと、世界が逆転したような鮮やかな騙しは、見事だった。し、その後の会話が最高に痺れた。『敢えて聞く。お前に心はあるのか』『ある』『ならばその証を、どのように見せる』『あるからこそ、今、それを失うのだ』―これが、本作品の全てなんだと、読み終えた後ならわかる。この会話に、久蔵がどんな思いを込めていたのかも。人でない、しかし、人に限りなく近い存在であるからくり。その全てを知り尽くし、その全てを暴き、そしてその存在を一から自分の手で作り上げると言う、命に近い命を作り上げると言う、その冒涜的な行為に魅入られた久蔵の気持ち。そして、伊武と言う存在。人のような、けれど、からくりの伊武。可愛いなぁ。かわいい。もう、ものすごくかわいかった。彼女が人でないなら、人とは何かと突っ込みたくなるくらいの、あるいは、そうか、その純真さ、可愛らしさこそが伊武が、人ではない、からくりだと言う証なのかもしれないと思うくらいに可愛かった。だからこそ、お百度参りをしている彼女の願いを、どうしたら叶えることができるのかと言う問いに答えることができないのが、苦しい。からくりである彼女に、限りなく人間に近い彼女に、何をどうしたら、彼女の願いは叶うんだろう。なぁ。命とは、どういうもののことを、それと呼ぶんだろう。単純に活動する源のことをそう呼ぶのであれば、やはり伊武もまた、命ある存在であると呼べることができる。でも、彼女は人間ではない。ならば人間とは、どういうもののことをそれと呼ぶんだろう。伊武が人間でないのは、どうしてなんだろう。その問いに対する答えとして、他人との関わり合いが述べられていたのも興味深かったな。だからこそ、天帝様が大暴れした理由が、からくりの蟋蟀、ただ小さなその存在だったと言うのも、おかしいやら、切ないやらで。なぁ。他人がいる。だから、寂しいと言う感情を覚える。あるいは、もっと一緒にいたいと言う、はたまたそれ以外の感情も覚える。そこから人は、人足りうるのかもしれない。だとしたら、やっぱり伊武は、どうであれ、人間と呼べるのかもしれない。そんなことを感じました。はい。これ、小説ならではで、小説だからこその魅力に満ちていて、本と文章も素晴らしくうまかったんだけど、ぜひ、映像化して見てみたいなぁ、とも思いました。ちゃっちいのだったら怒るけど、現在の技術を持ってすれば、ものすごく忠実に表現できると思うし、見ごたえあると思う。うん。そんなこんなで、面白かったです。

 

・直原冬明『十二月八日の幻影』・・・面白かったです。はい。面白いと素直に言ってしまっていいものかどうかと言う、何とももやもやした感じは残るんですけど。この先の結末を知っている身としては、あぁ、もし、このふたりの奮闘が失敗していたら、と思わずにはいられない側面もありつつ。うん。でも、ふたりの奮闘があったからこそ今の日本があるのか、と思うとそれもそうかと言う気もするし、けれど、その後、惨敗の一途を転がり落ちていく日本を、ふたりはどんな思いで見つめ、生きていたんだろうかと思うと、またそれも切なく、でもまぁ、フィクションなんで詮無いんですけど。面白かったです。柳さんのスパイシリーズを読んでいたから、なおのこと、楽しく読めたと言いますか、うん。陸軍と海軍の衝突とか、防諜に関して国がまだまだ本腰を入れていなかった点とか、それを扱う人たちが特別視、異端視されていた物語の背景とかが、割とすんなり理解できて、物語に入り込めました。後はやっぱり、キャラクターの魅力、これな、表紙だけ見れば、若い子向けのコミック小説と言ってもじゅうぶん、通用するもんな。はい。でも、中身が複雑で、ともすれば重くなりがちな物語だからこそ、登場人物の魅力が占める役割は大きいと思うし、本作はそれを十分に果たしていたと思う。はい。潮田くん。個人ではない、国や軍と言う集団で勝敗を考える、その考え方がとても新鮮だった。と言うか、あぁ、そうか、やっぱりそう言う考えなんだなと思った。何というか、生きている時代の違いを痛感させられた。前線に立つことを何よりの誇りとし、たとえ自分が死んでも、軍として勝利したのであれば、多分潮田君は、自分の死は国のためになったと考え、そしてそれが誇りだと考えることができる人なんだろうな。成程なぁ。なんてか、凄いな。凄いわ。時代背景に即した考えを持った登場人物が、きちんと描かれていて、だけど読み手にはそれがちっとも嫌悪感につながらない風に描かれているって言うのも、大きいと思うし、作者さんの力量を感じました。はい。それから、渡海さん。雨中で喚きだしたときは、『あぁ、こいつインテリ受けや。メンタル、豆腐やんけ(歓喜)』と思ったけど、それすら芝居だったとは恐れ入りました。軍人を排除するのに他国の力を借りているようでは、作り直しても結局、無能の権力者が生まれるだけと言う彼の言葉が、痛切でした。専守防衛自衛隊の在り方を見直そうと言う動きには反対はしない。だけど、それを牛耳っているのが、判断を下すのが、政治家と言う無能の権力者の代表格でしかない、信ずるに値しない権力者だからこそ、それはこんなにも反対されているんじゃないだろうか。戦前の日本のように、軍が政権を握っているのと同じような状態だと、信頼に足らない政治家に対しては思われているからこそ、こんなにも反対され、不安がられているんじゃないだろうか、と思いました。それは結局、日本の軍事が、アメリカと言う他国の力なしでは語ることができず、そしてまた、自分たちの言葉で語ることをしてこなかったからなんだろうな。なぁ。はい。潮田君は、結局、渡海さんのもとで奴隷として働き続ける道を選んだ(言い方)。そのふたりの姿を、まだまた見たいような。けれど、歴史と言う現実を知る者としては、それを見たくないような気もするような。魅力的な登場人物たちだけに、これだけで終わっちゃうのは確かに勿体ない気もしますが。はい。そんなこんな。こんな小難しいことは考えなくても、エンタメとして存分に楽しむことができる作品です。十二月八日、真珠湾攻撃。その歴史的事実を、ここまでの物語に仕立て上げ、その時代に漂っていたであろう暗さは微塵も感じさせない娯楽作品として描ききった作者さんの今後に注目したいですな。

 

藤木稟『眠れない夜のための短編集』・・・案の定、『こんなん読んだら、もっと寝られへんわっ!』って突っ込みたくなるような作品オンパレードで草。はい。でも、面白かったです。世にも奇妙な物語を彷彿とさせるようで。日常の中に潜んでいる、狂気、異界への扉、その存在を突きつけられたようで。あと、どの作品にも何て言うんだろ、突き放すような作者の視点が感じられて、それが印象的でした。『内と外』…自分と、穴のある他人。そのどちらが内で、どちらが外なのか。あぁ、夢のような人生まであと少しだったのに。生きたまま焼かれるのか。でも、焼かれるのは死んだ桜井君の体だから、その内で生きている片岡君までもが死ぬかどうかはわからない。それがまた、怖い。『影法師』…一番好きな作品。なんか…父ちゃんの姿がだぶっちっまったよ…。切ないな、ほんと。世の父親とは、本当に切ないな。死んでいるわけでもないのに、生きているとは認められていなくて、でも、完全に無くなった存在でもなく。他人によってでしか、己の価値を、存在を認めることができない人間の悲しさ、切なさが描かれた作品。生きているのに死んだようにされ、死んでいるようだけれど生きている彼らの行く末はどこなんだろう。どこに彼らは行き着くんだろう。『妄想』…作者の狂気を感じた。狂気ってか、作家としてこんな投げやりともとれるような文章、作品を書いてのけた作者の正気を疑った。はい。恐ろしい作品。色んな意味で。『サカイヨ』…これも力技なんだよなぁ。怪しげな占い師なんて、この手の作品には出しちゃだめだろうに、あっさり出しちゃって、その後、力技で結末まで持って行ったにもかかわらず、それを受け入れられたのが不思議と言うか、なんかもう、明らかに作者に何かがとりついていたとしか思えない。でも、怖かった。これが一番、怖いと感じた。この世とあの世の境目。それに追いかけられて、立ち止まることすら許されなかった美佳ちゃんの恐怖が、手に取るように伝わってきた。よし。もし、寝つきが悪くて困っていると言う人がいたら、この本を満面の笑顔で薦めてあげよう!(ゲス)。

 

日本推理作家協会『驚愕遊園地』・・・読んだ順番はこれが一番です。はい。何と言うか、それなのに今ごろ、感想を書いていると言う現実に、察して下さいとしか言いようがない。はい。短編と言うより中編だったしな。あと、もう、冒頭の赤川次郎さんの作品で、がっつり、削られた。色々と。と言うことで、アンソロ、色々読んでみて分かったこと。やっぱり、これだけたくさんの作家さんが並ぶと、もう地の分と言うか、文章力がものを言うなぁ、と。やっぱ文章が巧い作家さんの作品は、それだけで引き込まれるし、読んでいて嫌な気がしない。逆に文章が下手くそと言うか、やたら会話が続くとか、砕け過ぎた表現が乱発している作品は、もう、げんなりする。開き直ってんのか、もう少し工夫しろよ、とつっ込まざるを得なくなってしまいます。はい。好みの問題もあるんだろうけれどね。ことミステリは、トリックとか謎解きとかに重きが置かれて、こう言うところは二の次、みたいな風潮がないこともないけれど、でも、小説なのだから、作家さんなのだから、読めるものを書いてほしいと思ったのであります。はい。アンソロ、読んでみると色々勉強になるね。

 

本格ミステリ作家クラブ『ベスト本格ミステリ2011』・・・読んだことがあるけれど、全作は読んでいなかった、そんなアンソロ。全作感想をば。『ロジカル・デスゲーム』…かっこいいよ、かっこいいよ、火村先生。痺れました。かっこいい。何だろ、アリス目線でもなく、第三者目線で描かれる火村先生が、一番好き。納得はできなかったけれど、このゲームの確率については、理解できた。わかりやすかったです。かっこよかった。『からくりツィスカの余命』…聴き屋!新刊出てた!予約した!いいなぁ、と思う。さりげない文章なのにとってもユーモアに溢れていて。登場人物たちの魅力が、最大限に生かされていたように思う。楽しみだなぁ、新刊。てか、前作もまた読みたくなった。『鏡の迷宮』…丁寧な文章で、悪くはなかったです。ただし、登場人物がみんないい人過ぎて、私の性には合いませんでした。『天の狗』…観察者シリーズも、アンソロにたくさん収録されているなぁ。これも読んだことある作品だけど、好き。ラストが、たまらなくにんまりできて、好き。観察者シリーズ、無茶はあるようだけど、不思議とそれが通用するような風に描かれているし、ラストのダークな余韻も好き。『聖剣パズル』…歴史書じゃないんだから。難しい話も、登場人物たちの会話でそうとは感じさせない…って、そうか?どうしても説明、説明の連続になっていたように思うぞ。興味がある人にとっては読めたのかもしれないけれど…うーん。『死者からの伝言をどうぞ』…『謎ディー』シリーズ。初めて読んでみたけど…好みに合いませんでした。『からくり』に比べると、あまりにもわざとらしすぎて、鼻につく。笑えよ、面白いだろ、って強要されているみたいで、げんなりしました。『羅漢崩れ』…好き。バラバラ死体を押して運んで、その最中に地面にぼたぼたと落ちていく、なんて最高。ラストも、直後に電車の甲高いブレーキ音が聞こえてきそうでステキでした。『エレメントコスモス』…この作品も、まとめられたの読んでみたいなぁ。この作家さんらしい、瑞々しい世界観に、ひっそりと頭をもたげている痛みと、痛切な祈りに満ちた作品。うん。読みたい。このふたりの同居が、どのような結末を迎えたのかを読みたい。『オーブランの少女』…一番好き。凝りに凝って凝り過ぎた感が否めない文章も、この作品だからこそ必要なものなのだと、理解できる。あまりに美しいオーブランの庭。そこに隠されていた凄惨な過去、狂気に塗れた真相。物語中で明かされたある真実。その歴史の結末を知る身としては、ヴィオレット先生の狂気もまた、理解できてしまうような気も。逃げようのない、世界の運命に立ち向かい、歴史を生き延びた彼女たちが、その後、何を思っていたのか。閉じ込め、細く、細く活かしてきた過去の狂者に殺された瞬間、そして自死を選んだ瞬間、彼女たちは何を思ったのか。そしてまた、狂気と同一したヴィオレット先生は、殺した瞬間に何を思ったのか。美しい花々の名をつけられた、世界で生きるにはあまりにも脆弱過ぎる少女たち。その少女たちを囲う、美しき牢獄。歴史の、狂気の嵐に飲み込まれ、その中で、無残にも花を散らして行った少女たち。そして時は流れ、再び作られた美しき庭で咲く、花の数々。その光景が、ただただ、哀しい。

 

・西村京太郎『殺人の双曲線』・・・びっくり!まさか、この人の本を手に取る日が来るとは。驚き。はい。でも、面白かったです。できればこの人、こっちの路線で行ってほしかったなとか思うけど、鉄道路線に切り替えたから、作家として名前を残すことができたのかと思うと、生き延びる道として方向転換されたことはお見事だと思うし、今もなお、第一線で活躍されているのは本当にすごいと思う。はい。そんなこんな。館、殺人、陸の孤島、ミステリ好きとして『巻き込まれたくはないけれど、魅力的な事件の舞台』のトップ5に入るであろう設定からして、面白くないわけがない、と。そこに、不遜な強盗事件を繰り返す双子の兄弟、決定的な証拠を掴むことができず歯噛みする刑事たち姿が絡んでいって、まさに先が読めない展開、これがどう、連続殺人と絡んでいくのかと、ハラハラしながら読むことができました。成程、双子であったのはそっちも同じだったのね、と言う驚きもありつつ、まぁしかし、そのためにずいぶんと手間をかけたなぁ、まどろこしいなぁ、おい、と突っ込みたくなる気持ちもあったれど、まぁ、それはご愛嬌と言うことで。そこに至るまでの動機、『何もしないこと』の罪を、あの時代からこんなふうに描いていたのは、凄く新鮮でした。結局時は流れても、人は変わらず、ってことかぁ、と。時代設定も面白かったな。『ワ』が面白かった。途中、これを探すのが癖になってしまったワ。はい。巨匠の、初期作品と言うのは、面白いですな。『あぁ、この作家さんは昔から変わらずだったんだなあ』と思う人もいれば、この人のように、今の作品(と言っても、この人の作品に関してはドラマでしか知らないし、あくまでイメージだけど)とは全くかけ離れた作品を書いていた人もいて、新鮮です。はい。スマホもネットもない時代だからこそ、犯罪を行う側も、犯罪を追う側も、一切の手間を惜しんでいない、地に足着いた感じがして、それが何とも生命力を感じさせて愛おしいです。

 

・芦沢央『悪いものが、来ませんように』・・・アマゾンで偶然見かけて、評価が高かったので読んでみた。あぁ…なんとも、身につまされるような本でした。『娘は、母を許しても良い』。この一言が重いな。なんだろう。奈津子が紗英たちの母親だと知らされるまでは、その、何だ、出産、子育て、仕事、夫婦、それぞれがそれぞれに悩んでいる事情に、もうげんなりした。どうして女たちはこうも懲りないものかとげんなりしたけど、ふたりの関係性の真実が明かされた後は、それを考えてみると、また違ったふうに感じられた。紗英が子供を産みたいと思ったのは、何なんだろ。誰のために、何のために、彼女はそこに固執していたんだろう。彼女のような女性が、子供を産むこと、授かることに固執し続ける人の気持ちが、私にはどうしても、どうしても理解ができない。だから、なんか、どうにもこの物語に共感し辛いと言うか。共感と言うより、どうにも没入し辛かったと言うか。はい。ただ、奈津子との関係は上手に騙されたし、今はやりの、友達親子と言うものの弊害について考えさせられました。奈津子にしたら、やっぱり紗英の存在と言うのは、どこかで『この子を産みさえしなければ』って思いがある存在だったんだろうな。だからこそ、それが紗英に知られていないにもかかわらず、そんな思いを抱いてしまったことに対しての罪滅ぼしのようにして、紗英との関係を過剰なものにしていった。何だかなぁ。うーん。母親と娘。自分の体の中から生み出した存在だからこそ、特別なものがそこにはあるんだろうね。なんかもう、嫌だ(ちーん)。悪いものが、来ませんように。そのタイトルが、何とも皮肉。

 

結城充考『プラ・バロック』・・・「…え?これで終わり?結局『鼓動』が何者とか、どうしてお姉さんたち襲撃したのかとか、明かされないまま終わり?』終わりでした。はい。何だろ、個人的に真っ先に読み終えて思ったのは、『電撃文庫新人賞で賞を取ったけれどその後、ぱっとしない作者が、うっかり手に取ってしまったソードアートオンラインとか、アクセルワールドからヒントを得て、それをミステリにしちゃった』と言う感触で、まったく失礼極まりないものなんですけど、本と。わかんない。この当時には、電脳空間での人間関係とか、ハンドルネームのままで犯人の真実の姿が明かされないとかは、珍しかったのかな?どうだっただろ。うーん。すごく癖のある文章で、でも、陰鬱な、暗い空気感を表現するには最適な文章だと感じる。雰囲気やら空気やらはじゅうぶん、伝わってくるのに、どうにもちくはぐな印象を受けると言うか。重厚な陰鬱な空気の中で、どうにもクロハのキャラクターが浮いてしまっているような気がすると言うか、いまいち、掴みきれないと言うか。優等生刑事なのに、電脳空間に写真晒すとか、どうよ。苛烈なまでの男尊女卑社会で戦い抜いている彼女なら、もっと振り切って、ことごとく言い返す、無口で戦い抜く、あるいは逆に泣き叫ぶ、そんなキャラクターにしても良かったんじゃなかろうか、と思う。なんか、かっこいい女性キャラクターを作り上げようと試行錯誤している内に、物語、終わっちゃいました、と言う印象がぬぐえませんでした。むぅ。『ストロベリーナイト』のように、タカハシとクロハの、何とも言えない関係なんかを描いても良かったんじゃなかろうか。はい。ただひとつ。『鼓動』が、純粋に人を殺したいと言う衝動を持っている、それを押し殺すことの恐怖云々と言うあたりは、考えさせられました。『人を殺したいと思っている。だから人を殺した』と言う犯罪者が増えているけれど、結局、『それ、異常だよ』で終わってしまっているような気がして、でもそれが、私たちの、たとえば『いい音楽を聞きたい』とか『面白い本を読みたい』と言う欲望と何ら変わりないものだとしたら、それは恐ろしいけれど、異常でも何でもないわけで。だったらもっと専門的に、その欲望を持つ者に向き合うことを考えなければならないんじゃなかろうか、と思ったけれど、多分ここは、さほど本筋とは関係がないはず(ちーん)。はい。そんなこんなで、一応、シリーズ出ているけど…それほど、読みたくはないかなあ。気が向いて、どうしても読みたくなった時は読んでみたい、私にとってはその程度の印象しか残りませんでした。まぁ、好き嫌いもあるからね。うん。ここに来てやっぱ、文体とか文章の癖とかは、非常に大きなものがあるなぁ、と感じる今日この頃。

 

・深緑野分『オーブランの少女』・・・と言うことで、読んでみた。成程。粒ぞろい、割と良作揃っていて、面白かったです。だけどその中でも、やっぱり『オーブラン』は神かがり的と言うか、デビュー作にしてこれじゃ、ハードル高いよな、と梓崎先生を思い出すくらいの素晴らしさであることを再実感しました。うん。凄いわ。悲惨な物語であり、陰惨な物語であり、にもかかわらず、それが美しいのは、筆者の描写力ときちんと構築された世界観、そしてすべてを隠し、生き抜いてきた少女の姿故か。それとも美しい盛りに、あまりにも身勝手な、けれどあまりにも深い優しさとも言える理由で手折られた少女たちの姿がそうであったからか。恋も知らず、汚いことも知らず、さしたる苦悩も知らぬまま、無残に殺されていった少女たちの姿が悲しく、切なく、それでも表紙に描かれていたように美しいのは、どういうことなの。うん。これは紛うことなく傑作ですわ。はい。作者さんの作品、一片通り読んでみて気がついたことは、この作者さんはやっぱり、外国を舞台にした方がよりその筆力を活かすことができる作者さんだと言うこと。勿論、国内を舞台にした作品も悪くはなかったけど、見知った国内である分、どうしてもこの人の筆力による表現を不要なものだと感じてしまう気がする。その点、外国だと知らないからこそ、この人の筆力、描写力が存分に活かされて、凄く想像力がかき立つような気持ちを覚えました。『氷の皇国』なんてほんと、吟遊詩人まで出てきた暁にゃ、ロマンシングサガの世界に迷い込んでしまったかのような気持ちになったもんなあ。はい。で、『オーブラン』の次に良いな、と感じたのもこの作品でした。ラストで、3つ目のお墓が埋まったシーンで色々と思う老婆の姿には、孤独と気高さと、移ろいゆく時の流れを見せつけられたような気になった。凄いな。この作品と『オーブラン』には、少女たちが生き抜くって姿が共通して描かれているように思う。生きるだけではなく、生き抜く。最後まで、何があっても、どんなことがあっても、生き抜く。生き抜いて、そして死ぬ。その苛酷さは想像しても容易に想像できてしまうくらいに過酷で、私ならきっと逃げ出す。けれど、少女たちは、生き抜こうとし、生き抜き、生き抜いていく。それはあまりにも不器用で、愚直で、そんなふうにしか生き抜くことを許されていない運命を呪うことも可能だろうに、けれど少女たちは、それをしない。その逞しさと気高さが、やっばりあまりにも美しく、そしてあまりにも悲しい。あぁ、そうか、少女たちは知っているんだ。その運命を呪ったところで、何者も自分たちを助けてくれないことを。生き抜くことの苛烈さ、理不尽な運命、それから自分たちを救ってくれるのはただ、死の存在だけだと言うことを。死なない。死にたくはない。だから救われない。だったら、生き抜くしかない。そのシンプルかつ強靭な精神構造を持った、持たざるを得なかった少女たちの姿が、私には酷く羨ましい。できればこの作者さんには、この路線を貫いてほしいなぁ、と思うのでありました。はい。

 

初野晴『ノーマ・ジーン』・・・ きっと終末が来た方が、幸福なのだろうな、と思う。誰かの存在を知ると言うこと、それに触れると言うことは、自分以外の弱みを持つと言うこと。自分の中に芽生える、様々な思いとの対峙を余儀なくされると言うこと。それが幸福なことなのか、そうでないことなのかは、私にはわからない。それでも、それは決して、誰かに触れて自分の弱みに直面することは、決して悪いことでは、咎められるべきことではないはずだと思う。はい。こちらも初野先生お得意の世界観と言うか、物語と言うか。限りなく人に近いペットとか、そのペットの有効活用先として、死刑執行の場が選ばれるとか、現実にも起こりそうだもんなぁ。うん。ミステリと言うより、その中で紡がれていく生活の、小さなやり取りを描いた物語で、あぁ、珠玉、って言葉がぴったりだぁ、と思いながら読んでいました。少しずつ、少しずつ、ノーマ・ジーンとの距離が縮まっていく様とか、静の中で起こる感情の変化とかがすごく手に取るように伝わってきた。もう、どうしようもないくらいにどうしようもない世界。なのに、何かを期待してしまっている自分。けれど、やっぱりどうしようもない自分。どうすることもできない自分。そんな変化は、誰にでもあてはまる物なんだろうな。うん。はい。物語の結末は描かれていない。けれどやっぱり、このまま、終末を迎えてしまった方が幸福なんじゃないだろうか、と私は思う。その時にもきっと、静とノーマ・ジーンはいつものようにポツリ、ポツリと言葉を交わしているのだろう。

 

市井豊『人魚と金魚鉢』・・・梅ちゃんとは、美味しいお酒が飲めそうだ…。はい。楽しかった。こんな学生生活を送ってみたかったと、心の底から思うよ。なんだろう。凄く心地いい。読んでいてとにかく面白いんだけど(某テレビドラマにもなった人気シリーズなんか、目じゃないと思うの。あんなわざとらしいのなんて、比じゃないと思うの。あぁ、このシリーズ、もっと多くの人に読んでもらいたいなぁ)、それだけじゃなくて、なんだかとってもほっとする。これは、聴き屋こと柏木君の考えによるところが大きいんだろうなあ。『人と人との距離を大切にしたいと考えている。互いのすべてを知ることが親しさではない。相手を尊重し、一線を弁えることも、親しさのありかただと思う』。だからなんだろうな。だから、心地良いんだろうな。柏木君は、この考えのもとに、多分、無意識のうちにその人にとって最も心地よい距離を掴むことができているんだろうな。だから、そんな彼目線で綴られる物語だから、優しくて、心地良い。あと、川瀬、川瀬、川瀬(どーん)。以下、一言ずつ。『青鬼の涙』…もっとお祖父ちゃんを知っておけば、話しておけば良かったと言う後悔が、だけどとても優しく胸に伝わってくる。交わした言葉が少なかったとしても、もう二度と、言葉を交わすことができないとしても、こうして確かに伝わった思いがあると言うのは、とても幸福なことだと、だけど切ないことだと私は思うよ。幼い頃の懐かしい記憶が呼び起こされるような作品で、素敵な作品。あと、東、可愛いよ、東(ちーん)。立夏ちゃん共々、また出てきてほしいな、柏木弟妹。『恋の仮病』…ラストの凛とした、花の咲くような微笑みが目に浮かんでくるようで、これもまた、素敵な作品。柏木君だからこそ、つい、見逃してしまった真相。それを解明したのが川瀬って言うのも、何とも憎いじゃないか!ねぇ、梅ちゃん(うっとり)。『迷い子と』…そしてその柏木君が、距離感をつかみ損ねたことを反省し、きちんと、小さな子供の、震える心に向き合った作品。いいなぁ、と思う。その優しさが、聴き屋としてのあるいは柏木君と言う人間としての優しさが、とても好き。まったりしていて、でも押しつけがましくない優しさが、とても心地よい。そうだよ、良介君、君の『怖い』と思うその心は、感受性は、いつかきっと、君を支える大きな武器になってくれるよ。そして、その良介君に母性本能をかきたてられる所か、絞り切ってしまっている周囲の女性の腐れっぷりが、もうツボ。何なんだ、この濃すぎるキャラクターたちは(笑)。『愚者は春に隠れる』…もう、笑った、笑った。川瀬が可愛すぎる。先輩が不憫なのに可愛すぎる。おしっこ。おしっこ(笑)。柏木君と手錠でつながれて、手まで繋いでいるのに、まったくラブコメの波動がないって、一体どういうことなのよ(笑)。泣きボクロ台無しのスナイパー先輩に踏みつけられたい、罵られたい。罰ゲームポエマー芹沢くんの詩を、心行くまで堪能してみたい。朗らかな春の一日、そこで繰り広げられる、とびっきりに贅沢な楽しい時間。あぁ、本当に楽しかった。そして川瀬、可愛いよ、川瀬(どーん)。『人魚と金魚鉢』…浦口くんの気持ちを知っている先生だからこその、なんとも大胆な犯行。でも、浦口くんの本当の実力を知っていて、期待しているからこそ、金魚鉢から人魚を、広い世界へと旅立たせるための手段だったんだろうな。真相を知り、そして広い世界へと、自分の演奏で勝負していくに違いない浦口くんの姿が、えづきながらも優雅に演奏する姿が(笑)目に浮かぶよ。はい。そんなこんなで。うっかり前作、読んだけど中古で買っちゃったよ。てか、前作の感想も梅ちゃんに呼びかけていて、草。いいなぁ。このシリーズ、長く続いてほしいなぁ。それと共に、市井さんには、他の作品も書いていただきたいな、と思う。キャラクター造形はじゅうぶんにできる方だと思うし、何より、文章が巧い。風景描写はすごく的確に伝わってくるし、読みやすい。小説らしい文章を書くことができる作家さんだと思います。うむ。そんなこんなで、本と、もっとたくさんの人に読まれて欲しいシリーズです。そしてうっかり、スカイエマさんのキャラデザのままでアニメ化して欲しいです…実写化は止めて。あぁ、そして、最後に。梅ちゃん…私は、柏木君×川瀬だと思うんだ。川瀬はきっと、ツンデレ受けだと思うんだ。柏木君は、おかん攻めだと思うんだ。あぁ、梅ちゃんと語り合いたいっ!そして先輩に幸あれっ!(笑)。

 

今邑彩『少女A』『ルームメイト』・・・二冊続けて読んだ。まず『少女A』の感想から。成程ね。時系列に騙されていたのね、と。はい。ほっとしたと言う、犯人さんの気持ちが、とてもよく理解できた。都会の女性に憧れて、何もかもを抑えつけ、誰しもが羨むような都会の女性になった。けれど、過去を消し去ることはできない。輝けば輝くほど、その過去は、暗い穴となって彼女を追ってきたのではないだろうかな。そして彼女は、その過去があったゆえにきっと、全ての輝きを輝きとしとらえることができなくなってしまっていた。切ないなぁ。でも、だからこそ、ほっとしたと言う彼女の気持ちが、言葉が、せめてもの救いのような気がする。養父による忌むべき性的虐待。そして偶然なのか、この子供に対する虐待が次の『ルームメイト』でも描かれていて、ちょっと驚いた。こちらは、割と早い段階で多重人格と言うキーワードが出されていて、『いやいやぁ、まさかそのままそのネタで行くわけじゃないよね』と思ってたら、まさかそのネタで突っ走ったから驚き桃の木山椒の木。でも、もう一人の多重人格者が誰か、と言うところは、非常に物語を牽引する謎だったし、それが明かされた時の驚きは、おおっ、って感じでした。個人的には、工藤君が怪しいと睨んでいたのですが、まさか、春海ちゃんだったとはね…。成程。…ただ、あれ。途中の工藤君の石語りは、やっぱり何の伏線でもなかったんだね。…いらなくね?(ちーん)。はい。多重人格のところも興味深かったけれど、多重人格者と犯罪と司法が、なにひとつ、アメリカでも不十分なままだと言うのが考えさせられました。なぁ。なんかなあ。複雑だもんなぁ。はい。あと、作者自らが封印しようか迷ったと言う隠し玉的エピローグですが、私は大好物でした、ありがとうございました。工藤君、自分の善意で自分の首が絞められるような結末になったら面白いのに、と思った私は最低です(ちーん)。はい。今邑彩さん、やっぱり、亡くなられてたんだよなぁ。なんか、映画化されたのがつい最近だからご存命のような気がしていたんですが。いい意味で、誰でも簡単に読めるような、そしてミステリの驚きに満ちた作品を書かれる作家さんだから、もしご存命だったらどんな作品を描かれていたかなぁ、と思うと、今更ながらとても残念です。

 

はい。と言うわけで本日の読書感想文放出はここまででございます。

 

そして・・・おおっ、次の読書感想文には、いよいよ、あのシリーズが登場するのか・・・と言うことで、あのシリーズと言うのが何なのかは、21日の記事にて彰らかになりますので、よろしければお付き合い下さい。

 

ではでは。

読んで下さりありがとうございました!