はいはい。今日から4勤後半戦。元気に働くぞー!
げふんげふん。
1が付く日なので本来であれば読書感想文をお送りする日です。
が。
本を読めていません。いや、読めてはいるし読んではいるのですが。
読み始めたのが遅かったせいか、うかうかしていたら間に合いませんでした。おっふ。
てなことで本日はタイトルにも書きました、鮎川哲也賞の歴代受賞者さんを見ていこうかなと思います。
鮎川哲也賞ってどんな賞?
こんな賞ですよ。
はい。成程、今初めて知ったのですが、元々は『鮎川哲也と十三番目の椅子』の、その最終巻である『十三番目の椅子』を公募したのが始まりなんですね。
見事、その『十三番目の椅子』を受賞されたのが今邑彩さん。
今邑さんの死去から、もう10年以上の月日が流れているのか・・・早いなぁ。そしてつくづくその若すぎる死が残念でならない。ご存命でいらっしゃったなら、どんな作品を私たちに読ませてくれていたのかと思うと、ただただ残念だし悔しいのです。
で、その後、鮎川哲也賞として新たに生まれ変わったわけですが。
その第1回目を受賞されたのは芦部拓さん。個人的には『折り目正しい、古き良き推理小説を書かれる方』と言うイメージがあります。
鮎川哲也賞に限らず、ありとあらゆる賞ものって、大賞を受賞された方は勿論なのですが、惜しくも次点止まりだった方。あるいは候補には選ばれたものの、受賞はならなかった方。そう言う方のお名前も要注目だと思うのです。
『大賞受賞者さんより、次点の方、候補止まりだった方の方が大活躍される』
これ、割と賞ものあるあるではないでしょうか。
その点で見ていくと初回に関しては、おお、佳作に選ばれたのが二階堂黎人さん。候補となっていたのが伊井圭さん、西澤保彦さんとミステリー畑で活躍されている方ばかりですね。
第2回からの結果に関しても、大賞受賞者は勿論のこと、佳作受賞者、候補に選ばれた方の中からも、活躍されている方は大勢いらっしゃる。
第2回の候補者の中、篠田真由美さんは懐かしいなぁ。私が高校、大学生の頃だったかかな。著書の『建築探偵 桜井恭介の事件簿』、めちゃくちゃ女性ミステリーファンの方々の間でブームになっていた記憶があります。
『読もう、読もう、いつか読みたい』
そう思い続けて、気が付けば20年近くの月日が流れましたことよ。
おっふ。
あとやはり佳作、候補止まりだった方の中には、この賞の受賞はならなかった。
しかしその後、別の賞レースで見事に大賞に輝かれた方もいらっしゃいますね。
やっぱり賞の傾向と言うか、その賞が求めている作品の雰囲気であったり、ミステリーとしての在り方だったり。そう言うのって存在していますよね。端的に言えば相性の問題です。
それで見ていくと・・・すべての方を調べたわけではないので、単純『あ、この方は間違いないぞ』という記憶のみで判断できたのが、鏑木蓮さんですかね。
第16回の鮎川哲也賞の候補作に選出されている。これが2006年度の話で、同じ年度の第52回の江戸川乱歩賞の大賞に鏑木さんは輝かれています。
『東京ダモイ』読んだなぁ。
昔、私は父に京都の舞鶴に連れて行ってもらっていたんです。舞鶴地方隊、海自があるから、軍艦が係留している。それをよく見に連れて行ってもらっていたんです。
で、ここには引揚記念館もあって、そこにも訪れていた。いたんですけど、正直、不勉強なものだから、ここの記念館で説明されている出来事だったりが、何が何だかよくわからなかった。
でもこの『東京ダモイ』を読んだ後に、この記念館に訪れた時には『あぁ、そう言うことだったのか』と。
説明されていることだったり、あるいは過去、確かにあった出来事だったり。そう言うのがめちゃくちゃ理解できて、かつ作品の登場人物を通してとても生々しく、その悲しみ、苦痛、辛さみたいなのが感じられたのを、今でもはっきりと覚えています。
あと第20回の候補作に選出されている川瀬七緒さんも、第57回の江戸川乱歩賞の大賞に輝かれていますね。
てなことでここ最近、2010年代にまでジャンプして鮎川哲也賞受賞者を見ていくと。
2009年度、第19回に受賞されたのは相沢沙呼さん。マジックをたしなまれるご本人のその知識とミステリの魅力が融合した『午前零時のサンドリヨン』で受賞を果たされました。
相沢さんと言えば、個人的には『城塚翡翠シリーズ』が印象としては強いのですが。
本作品、ドラマ化されたのですが、やはりと言うべきかこちらに関しても、ドラマ制作サイドと相沢さんの間でトラブルがあったことが明らかにされていますね。
なんだかなぁ。ほんと、こう言う話題に触れるにつれ『ほんとになぁ。なんだかなぁ。ドラマ制作サイドは、他人様の褌を借りて土俵の上に立っていることを忘れてるんじゃなかろうか』と言う、なんとも言えない気持ちにさせられます。
ねー。
そして第22回、鮎川哲也賞を受賞されたのは青崎有吾さんです!同賞史上初の平成生まれの方が受賞されたと言うのは、当時も結構、話題になっていた気がします。
当時の選考委員であった芦部さんの言葉通り。青崎さんの作品って、正々堂々とミステリーに取り組んでいる。実に端正に、丁寧に、ロジカルな推理を描き切っている。だからめちゃくちゃ読みごたえがあるし、なおかつ、登場人物たちが本当に魅力的。なので、その登場人物たちの躍動感に引っ張られる形で、すいすいと読めちゃうのですよ。
さ、そして青崎さんと言えば。
『地雷グリコ』にて1週間で3つの文学賞を受賞すると言う快挙を成し遂げられたわけですが。
『地雷グリコ』、直木賞の候補作にも選出されました!凄い!おめでとうございます!
ここ数年の候補入り常連である一穂ミチさん、柚木麻子さん、SNSで作品を投稿されている麻布競馬場さん、数々の文学賞の候補にも選ばれている岩井圭也さんと、ノミネートされている作家さんはいずれも実力、勢いある方々ばかりですが。
ここまで来たら青崎さん、『地雷グリコ』で4冠達成なって欲しいです!
で。
話を鮎川哲也賞受賞者さんに戻していきますと。
第26回の受賞者、市川憂人さんのダイナミックさと繊細さが融合した本格ロジックも好きなのですが『ダイナミックさ』で言えば、その翌年。
第27回に受賞作として選出された今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』は、まさにダイナミックもダイナミック。選考委員だった北村薫さんが『野球を観に行ったと思ったら、いきなり闘牛になるようなものです』と選評された本作品。
その通りですね。ええ。その通りですわ。
それでも本作品の素晴らしい点、受賞作に選出されたのも頷けるのは、そうした設定のダイナミックさ、奇抜がしっかりとミステリー、そのトリックであったりロジックに生かされていたところだと、個人的には思うのです。
あともうひとつ、これも個人的な意見なのですが、設定のダイナミックさ、奇抜さ、それによる狂乱が繰り広げられている一方で、その中で描かれた犯人の動機。何故、殺人を犯したのか、と言うその動機が、極めて古典的。語弊ある言い方ではありますが、手垢ベッタベタのそれであったこと。でもだからこそ実に人間的で、有無を言わさずこちらの胸を打ってくるようなそれであったと言うのも、実に構成として、作品としてうまかったなぁ、と。
あれで動機まで、何と言うか変化球だったら、多分、読者としても『もうお腹いっぱい』になっちゃっていたような気がします。
変化球の中、最後に投げ込まれてきたのがストレートだったからこそ、そこも生きたし、それまでの変化球も生きたと言うか。はい。
ちなみに。今月末にはこの『屍人荘の殺人』でも大活躍(意味深)している明智恭介が主人公の作品も刊行されますね。
私は以前から『もし『屍人荘の殺人』がアニメ化されたら、明智のCVは絶対、伊東健人さん。伊東さん以外はありえない!』とわめいている人間なのですが。
見てよ、この明智のビジュアル。どうあがいても『CV伊東健人』でしょ!?
帯の『探偵というものは、なかなかに難しい』と言うのが、明智の台詞なのかどうかはわかんないですが、これももう、私の中では完全に伊東さんのお声で再生されました。
ちなみに。この今村さんが鮎川哲也賞に輝かれた時の佳作。
一本木透さんの『だから殺せなかった』も読んだのですが、めちゃくちゃ完成度の高いヒューマンミステリーでした。
ただなんだろ。やっぱり『屍人荘の殺人』と比較すると『きっちりとした枠に収まった、ザ・優等生!先生も、親御さんの手も煩わせない、めちゃくちゃ良い子』と言う印象を覚えた作品で。
それ故に『先生!あいつ、サッカーするって言ってるのに、サーカスの玉乗り用の玉を持ってきました!』と言うほどの個性の強さを見せた『屍人荘の殺人』の前には、佳作止まりだったのかなぁ、とも思ったのであります。
はい。
そして本年度に鮎川哲也賞を受賞されたのは山口未桜さん。
調べてみたら医師として働きながら小説を書かれている方のこと。おおっ、凄い。
なので受賞作である『禁忌の子』も医療×本格×ミステリーとのことで。
10月に作品が刊行された際の評判が、今からとても楽しみですね。
そんな具合で本日は歴代鮎川哲也受賞者さんをつらつらと見てまいりました。
今村さんの『屍人荘の殺人』の受賞には、この手の賞においては、いかに自分の個性の出しどころ、その焦点を絞り込むかの重要性。
あれやこれやと詰め込むのではなく、一点だけ途方もなく強い個性を輝かせておいて、その他の部分はしっかりと、ある種の基本を忠実に守る。
そのバランスがめちゃくちゃ大事なんだろうなぁ、と改めて感じさせられた次第です。
全然、ジャンルが違う作品なのでアレなのですが。
第24回の電撃小説大賞の銀賞に輝いた、瘤久保慎司さんの『錆喰いビスコ』にも、何か同じような感想と言うか感触を抱いたのを、今、ふと思い出しました。
あの作品も『キノコっ!』と言う強烈な個性を一点に据えながらも、話の展開であったり、キャラクターの造形、世界観は、極めてオーソドックスと言う印象を、個人的には受けたもんなぁ。
ではでは。本日の記事はここまでです。
読んで下さりありがとうございました。