tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

読書感想文の日だ

はい。

そんな具合で21日、末尾に1が付く日なので私の読書感想文が放流される日です。

大変。もう、本当に大変。

感想がどんどん長くなってきていて、どうしよう(知らんがな)

 

と言うことで本日分、とりあえず書いていきますが。

さてはて、どこまで長くなってしまうのか(汗)

では早速、スタートです。

 

馳星周『雪月夜』・・・根室という場所を地図で調べてみて、驚いた。目と鼻の先に北方領土があり、まさに日本とロシアの国境。『私のとち狂った脳が作り上げた物語』と馳さんは仰っていたけれど、けれど、この作品内に書かれていた事は近からず遠からずなのだろう。日本でありながら、日本ではない土地。日本の食卓の一端を担いながら、度々、政治的問題に暮らしを左右されてきた土地。そして、寒さと雪に支配される土地。思っている以上に私たちは、『生れ落ちた土地』の呪縛を受けているのかもしれない、と幸司には思ったけれど、その幸司が、おれはおれだからおれなのだ。こうなのだ、と顧みるシーンは強烈だった。逃げる男と女。それを追う男と女たち。互いの目的はただ金、それだけ。それだけ話なのに、どうしてだろう。馳星周の手にかかると、圧倒的な哲学書に成り代わってしまう。『板一枚下は地獄』。この世は、退屈か残酷か、ただそれのみ。すべての呪縛を振り払い、甘ったれた夢など叶うはずはなく、残酷に徹し切れなかったものにはただ、死。それでも、醜く、醜く生き続けた末、繰り広げられる欲望むき出しの光景は、なんと清々しく滑稽で、どこか美しい事か。それは、ちょうど、人と国との欲望に振り回される極寒の地。その雪夜に浮かび上がる月のように。

 

横山秀夫第三の時効』・・・はぁはぁはぁ・・・もう、たまらんかったですよ。男気むんむん・・・その濃さが、もう、たまらんかったですよ!まずは、登場人物。三人の班長、その部下。皆が皆かっこよすぎで、もう、興奮のあまり荒い息吐き出しまくりでした。事件を喰ってきた三人も、それぞれの部下も、腹黒くて、一癖も二癖もあって、腹に一物どころか、二物、三物(こんな言葉はない(笑)抱えていて、もう、たまらん。事件に対する執念、執着、貪欲さ、故に見せるそれぞれの黒い熱情のようなものが、もう、もう・・・もうもうもうっ!また、ミステリ的な部分も、短編集とは思えないほどの満足感でございましたよ!短編集でありながら、色んなものが詰め込まれていて、でも、そのどれもが散り散りになっていない。圧倒的な密度、濃度をもってして描かれていて、すごいなぁ~、の一言。もう、どの話も、本当に、心の底から面白いっ!と膝を打ってしまいたくなるようなものばかり。たまらんなぁ・・・もう、たまらん。たまらんの一言ですよ!

 

殊能将之黒い仏』・・・わぁっ!なんだこれはっ!すごいぞ!超絶技巧、なんて煽り文句が書かれてあったから、それなりの覚悟と期待はしていたけれど・・・ま、まさか、こうくるとはっ!アリバイを解くところなんて、まさしく、本格の流れそのままで、この先、じゃあ一体、どうなるのかと思ったら・・・す、すごいわ。アントニオが、蜘蛛の石丸を倒した辺りから、『え?これ、SFアドベンチャー?』みたいな感じだったけど。いやー・・・もう、笑うしかないよね。笑っちゃったよ。かくして、何も知らない平和な名探偵と、全てを知っている悲惨な過去を背負った優秀な助手は物語から退場し、後に残されたのは、全人類の存亡をかけた戦いっ!って・・・そっちの方がきになるやんっ!いや、でも、こういうの、決して嫌いじゃないです。さすがは、殊能先生。面白かったです。いいな。こういうの、人に紹介したいよね。できれば、ミステリというジャンルを読んだことのない人に。『ミステリと呼ばれるジャンルでは、これもアリなんですよ』って具合に、紹介したいなぁ~。

 

伊坂幸太郎『オー!ファーザー』・・・あー・・・もう、たまりませんでしたよ。伊坂第一期最終作品。まさに、その通り。遊び心に溢れた、けれど物事の核心をついた愛しい言葉たちの数々。どこかずれた、でも、とびっきりに魅力的な登場人物(しかも、なんてたって父親なのに四人!お母さんもステキ!かっこよすぎ)小さな謎、大きな謎が次から次へとやって来るストーリー。そして、ありえない意表をつくような展開に次ぐ展開。あぁ、なんだか、久し振りに伊坂幸太郎という作家さんの魅力を味わい尽くしたような気がします。いいなぁ、父親たち。もう、最高だよ。皆好き。誰一人、欠けても嫌だ。由紀夫は、この四人の父親と、一人の母親から生まれた子なんだと、本と、何度も何度も思ったよ。そして、本当に、本当に、四人の父親から、絶え間なく愛されてきたんだなっていうのが。四人にとっては、由紀夫は、自分が愛した女性との間に生まれてきた『息子』なんだって思っているのが、何の疑いもなしに、四人が四人とも一途にそう思っているのが、もう、ひしひしと伝わってきた。いいな。本とに。重要なのは、遺伝子でもなんでもなくて、相手の事を思う気持ち、ただそれだけなのだと、『重力ピエロ』にも流れていた、伊坂第一期に通じていたメッセージを、ひしひしと感じた。また、それに対しての由紀夫の心境の変化、頼りない、いい加減と思っていた父親たちに頼りかける心。それから、父親たちの存在の大きさ、頼りがいを認識するところ。でも、それを正直には認めないところ、照れくさい感じとか、ちょっと反抗しちゃう感じとかが、とってもリアリティがあってよかった。お葬式のシーンとかは、まさに、そのとおり。それを感じれる人間に、そんなふうに感じられるような人間に、由紀夫は成長していっている、ってことなんだろうな。切なくて、きっとどうしようもなく、悲しいとかそういう言葉では片付けられないような瞬間まで、きっと、由紀夫と家族は、たくさんの思い出を作り上げていくんだろうな。いいな。もう、最強だ。本当に、もうおかしくって、微笑ましくて、いじらしくって、目移りしちゃうほど父親たちがかっこよくてでも子供っぽいところが超かわいい!葵さんに口説かれたい、微笑まれたい!悟は、私のドンピシャだ、好きだ!勲には、私も抱かれて電線逃亡をしたいっ!最強の愛に満ちていて、でも、ちょっと切なくもさせられた、まさに伊坂エンタの最骨頂!あぁ、本当に、至福の読書タイムでございました!本とに、素敵な小説だったよ!まさに、こう叫ばずにはいられないよ。オー!ファーザー!私も由紀夫になりたい!

 

近藤史恵『エデン』・・・、続編です。楽しみにしてたんですけどねぇ・・・うーん・・・・。前作ほどの衝撃、感動はなかったかな。前作は、物語の根幹となるべくテーマ、そして主人公君の思い、ロードレースという競技に欠かせないもの、その全てが、タイトルに集約されていて、だから、本当に真相が明かされた瞬間は、言いようがない程の力を感じたし、ちょっとニュアンスは違うけれど、感動も覚えたのですよ。でも、今回は・・・うーん・・・わからなくはないし、心打たれなかったか、と言われればそんなことはない、と答えられます。だけど、期待が高かっただけに、『え?これだけ?』とあっさりした感がして、そのまま、終わっちゃった気が。うーん、つくづく、期待が高かったな、としか言えません。でも、たとえば、前作の事件を『美しくも陰惨な呪い』と表したチカの成長、活躍は楽しめたし、ロードレースを取り囲む環境、ひいては、どのスポーツにとっても宿命と言えるような問題とかは考えさせられました。過酷なレース、フランスの自然の美しさ、そう言ったものも味わえたように思うし、何より、ニコラが良かったです!彼が、おそらくは最愛の友人を失った事、その影響は図りかねないけれど、でも、きっと、彼は戻ってくる。そうまでしてしまったほどに、きっと、彼は、自転車というものを、レースというものを愛しているだろうから。その淡い希望と、チカの思い。どんな事があっても、楽園である事は変わりなく、だからこそ、自分たちはその楽園を走り続けるのだ、という思いが相まったラストは、余韻たっぷりで、切なくてよかったです。ですね、これは、前作のようにミステリ色を期待するよりも、青春モノとして読んだ方がよかったかも。

 

道尾秀介『光媒の花』・・・デビュー作の、愛情と勢いで突っ走ったような作品で好きになって、その後の、右か左か、真ん中はない!みたいなふり幅の大きい、けれど、どれも確実に面白い作品が出版されるたびに驚きと感動を覚え、そして読了した今作。道尾先生曰く、『この作品を書けただけでも、作家になれてよかったと思います』という事は、多分、今の道尾先生がいちばん、書きたい世界、書きたい作品というのが、この世界であり、作品なのだろう。静謐で、陰鬱で、この世界を覆っている薄い膜、その膜の下に蠢いている淡い希望、光、なにより市井の人々の営みを、こと細やかに描いた作品たち。私たちの生きている世界は、ただひとつしかなく、それそのものが形を、姿を変えることは決してないのだと、それらはすべて、そこを生きるあなた方の手にあるのだと、最後には、切なく、やさしく訴えかけてくるような作品。誰しもが、傷つきながら、嘘をつきながら、秘密の思いを抱えながら、それでも、時に寄り添うように、労わるように、誰かと関りながら、世界を生きていく―それが『生きている』という事なのだと教えてくれるような作品。本当に静かな静かな物語の数々。今までの道尾先生が書いてきたすべてが詰め込まれたようなこの作品は、もしかしたら、道尾先生の今後の作品に向けてのターニングポイントなのかもしれない。うむ、しかし、昔からのファンとしては、やはり、アクの強い道尾先生も望みたい。真備シリーズもまた書いていただきたい。道尾先生の進化を見た反面、そんな一抹の寂しさも覚えた私でございました。

 

東野圭吾『新参者』・・・もう、悔しいんだけど。別に、今更、私ごときがこんな事言わなくても、或いは、別に、今更、『去年のこのミス一位っ!』なんて言わなくても、だって、東野圭吾じゃないですか!実力、人気ともに、もう、何をか況やじゃないですか。なのに、なんで、この人は、こういう面白くて、ほろり、とくるような作品を、さらりと書いちゃうかなぁ・・・。もう、面白かったですよ。しかも、胸に詰まるような部分もあって、えい、もう言う事なしですよっ!はい。ひとつの事件を柱にしながらの、短編連作集。だけど、その事件の謎が明らかにされるのは、後編の二話ほど。物語の大部分を占めるのは、事件には直接的に関係のない『嘘』に関しての謎。だけど、この『嘘』ってのがいいんですよ。誰かが誰かの事を思っている、だからこその嘘。誰かが誰かの事を思っている、その証でもある、密やかな嘘。優しくて、いとしくて、可愛らしくて、温かな嘘。それを、加賀刑事が、白日の下に晒し出すのではなく、あくまでも優しく、憎いくらいの気遣いでもってして明らかにしていく。くぅ・・・もう、たまらんですよ。で、当然ですが、柱となっていた事件の謎は解明されるのです。だけど、そこでも、やっぱり、重要視されるのは、事件の核心部分に隠されていた『嘘』。けれど、それは、今までのそれとは異なって、『誰かが誰かの事を思っている』という仮面を被っている『嘘』。いけないことをいけないと言う事ができない、見て見ぬふりをすることで貫き通されてきた『嘘』なんですね。それを暴くのは、加賀刑事ではないのですが、また、その人選が・・・憎い。心憎すぎる。読者は、『嘘』を通して、人情と、どうしようもない人間の弱さと、それでも、己の行為に悔いを持つことができる人間の素晴らしさを感じることができる。なんなんだ、これは(笑)。もう、本当に、でき過ぎです。憎い。こんなにも、私の心をがっちりととらえて、しかも、毎回、期待を裏切らない東野圭吾が、憎いっ!(笑)。ドラマ化、楽しみです。阿部さん、ぴったりかも!

 

高村薫レディ・ジョーカー(文庫版)』・・・三度目(笑)。なんだけど、もう、とにかく、三度目とは思えないほどの圧倒的な引力。面白い、と言ってもその言葉ではまるで足りないくらいに、とにかく面白かった。なんなんだろう?本当に、もう、私にとっては何度読もうとも、決して超える事ができない圧倒的な壁のような物語です。うん。なんなんだろ?本当に、もう、この事件は何だったんだろうという空しさが、最後に、圧倒的に押し寄せてきて言葉を失うと言うか。一応の解決は見たものの、多分、根っこの根っこでは何も変ってないんだという事に、絶望と空虚と怖れを感じるしかないというか。また、それらを描く筆力ったら容赦がないというか。こんな小娘の私にすら、一人前のような絶望すら感じさせるようなものと言うか。それでも、それらに立ち向かっていく人たちの、なんかもう、そういう生き方しかできない、否、足掻く事しかできないような生き方、姿って言うのが、胸を熱くさせるというか。組織の中で生きていくしかない人間の、それでも個々としての、壊れかけの心の機微のようなものが、もう、ぶわっ、と押し寄せてきて言葉を失うと言うか。何なんですかね?この作品は(どーん)。なんか、もうミステリとか、社会派ミステリとか、そんなのを超えちゃってるような気がする。これだけの物語があり、これだけの事件が起き、これだけの人が、ほとんど形のないようなものに命を奪われたにもかかわらず、どの登場人物に心を投影しても、何ひとつ、満足がないというか。そこにはただ、悲しいくらい、ただ立ち竦むしかない人の心が一個、あるだけというか。空しさ、空虚の極致を見せられたような心境で、もう、悲しいとかそういうの超越しちゃってます。ラスト、久保さんが見た光景、自然のそれと、物井さんたち人間の姿の対比って言うのが、もう鮮やか過ぎて。うん。あと、ハードカバー版と違って、物井さんと久保さんの会話がなかったから、なおの事、物井さんの悪鬼のような面、或いは、その心中の暗さってのが伝わってきた。もう、言葉を失うしかない。ねぇ・・・本とに。すごいね。もう。なんか、この物語を読むことができて良かったと、ひしひし思う。ってか、いちばん胸にきたのは、十八年も思い続けてきた義理兄ちゃんの健気さと、その事に気がついて涙した合田さんの姿だったりする。組織に、身を削られるような生き方しかできない二人にとって、本と、互いの存在はどれだけのものだったのだろう。ってか、こんな事件が起こって、死にかけなけりゃ気づく事ができなかったって、なんて皮肉なんだろう。どうなんですかね?なんか、今なら、太陽と馬(略し過ぎ)、読めそうな気がする。うむ。とにもかくにも、まさに唯一無二の圧倒的な物語。あー、面白かったです。

 

佐々木譲『制服捜査』・・・後半に進むにつれ、ぐいぐい、面白味が増していったように思います。川久保さん。・・・何か、微妙に、とんでもないことして、とんでもないこと言っちゃってる辺りが良かった。駐在勤務って、私、立場的には偉い人がする者だろうって思ってたけど、違うんですね。しかも、直接の捜査権はないと言う事で。それって、どうなんだろ。そんなので、いいんだろうか?何と言っても最後の『仮装祭』が面白かったですね。田舎町ならではの、因習ともとれるような行動が、ひとりの少女の、救えたかもしれない命を奪っていた。駐在よりも、何よりも、その地元の有力者たちが、いちばんの権力、力を持っているという事は、こんな世の中になってもなお、やっぱり、田舎じゃありうることだと思う。そういう事の、なんて言うんだろ、憎々しさとか、馬鹿馬鹿しさとかをひしひし感じたし、またそういう人たちの、犯罪者並みに怖ろしい、『地域のため』と嘯きながらの『自分のため』に働いている頭の中を、嫌と言うほどに思い知らされた。ほんと、くだらないよね。たまったもんじゃないよね。最低だよね。だからこそ、最後、犯人を見つけた時の竹内さんの反応ってのは、昔、自分がなすべき事をなさなかった、なせなかった後悔からきているものなんだろうな、と感慨深いものがありました。忌むべきは、犯罪者。しかし、同時、その裏側にあるもうひとつの、『地域』という狭い土壌に根付いてしまっている、汚い利権の存在も思い知らされる、まさに異色の警察小説でございました。

 

綾辻行人時計館の殺人』・・・館モノ、と言う事でずーっと敬遠していたのですが。・・・あれ?これ、面白くね?(どーん)。『曰くありげな館』『助けを呼べない状況』『次々と起こる殺人事件』て、絶対に巻き込まれたくない状況だけど、それが故に、『ミステリ』の王道だと思う。それだけで、ミステリファンとしては、ワクワクしてしまいます事よ!そして、その期待が裏切られないとなればいう事なしなのですが。館シリーズは二作品しか読んでいないのですが、ええ、もう、裏切られない事、自信満々に言えますよ!な綾辻先生の作品なのでございます。『ミステリ』王道の設定の中に、きちんとした『ミステリ』としての筋が通っている。そしてなおかつ、『あっ!』と口をあんぐりしてしまうような驚きがある。うーん、すごい。そりゃ、これだけの分厚さにもかかわらず、あっと言う間に読めてしまうはずだよ。そんなこんなで、今作も、まさしく『時計館』だからこそのトリック、その緻密さに脱帽。すごい。なんか、もう、そのご苦労を思うと、ただただ、頭が下がる思いです。うーん、お見事。だからこその、有無を言わせぬ説得力。あとは、劇的な『館』の最後。ぞくっ、と来ましたよ。狂った時を、娘のためだけに刻み続け、そしてなおかつ、こんな計画を立てていた古峨の、真っ暗な思い、執念にも怨念にも似た愛情に、ぞくりですよ。そして、この館を設計した中村青司にも。或いは、それは、『館』そのものにも。幻想的な詩に秘められていた、怖ろしいほどの呪縛。うーん、あのラストは、ラストの衝撃度ベストテンに入るな。うんうん。あとは、時間に関する、鹿谷さんの短い考察。成程、の一言でございました。だからこその『時計館』であり、だからこその『この事件』『このトリック』。お見事です。

 

綾辻行人人形館の殺人』・・・人形館、ときたから、日本人形とか、はたまたビスクドールが並んでいるのかと推測していたら・・・おぅ、そうきたか。それは、怖いぞ、不気味だぞ。と言う事で、館シリーズ二作目。舞台が京都、しかも、出てくる人数も少なめ。一人称による語り口。どこか館シリーズらしからぬ、静けさに満ちた作品だな、と思っていたら・・・成程なぁ・・・この結末のためのこういう舞台であり、こういう語り口であり、こういう雰囲気だったのか、と納得。賛否両論、色々あるようですが個人的に言えば許容範囲です。真相を読んでいると、悲しくて哀しくて切なくてしかたなかった。ただただ、飛龍想一という人物の、脆弱な魂、繊細な魂が行き着いたこの事件の真相が、哀しくて、切なくて仕方なかった。なんか、彼、他人とは思えないからなぁ・・・。彼が、多分、精神病院に収容されたその様を語っている時の語り口が、またどうしようもなく、自分の現状を理解できていないようで、それこそ、たった一人、取り残されてしまった子供のようで、本当に、悲しくて、気の毒でならなかった。哀切。そうだ、この言葉がいちばんピッタリくるようなミステリだったように思います。そして、今回は、中村青司の建物ではなかった。それもまた、なんだかやるせないよなぁ・・・。うーん。そんなこんなで、まさしく、たくさんのレビューにあるよう、これは異色の作品、館シリーズでありながらそうではないような作品なんでしょうね。うんうん。個人的には、今回も面白く、そして、京都の地に降る時雨のような、静かな哀切をひしひしと感じた一冊でございました。

 

稲見一良『猟犬探偵』・・・『ハードボイルドとファンタジーの融合』と作者紹介のところに書かれてあって、『成程!そういう事だよ!』とようやく、何かを手に入れたような感触。その通りだよね。だから、『ハードボイルド』の徹底的な厳しさがありながらも、『ファンタジー』の優しさ、或いは、現実離れしたような光景がある。だから、読みやすいし、何より、読んでいても哀しいだけの気分にはならない(まぁ、今作に限って言えば、『悪役と鳩』は例外、まさしくハードボイルドのような気がするのですが。でも、降り始めた粉雪は、せめてもの慰め、優しさのように私には感じられた)。そうだなぁ・・・どれも好き。『トカチン・カラチン』、こんな話を『現時離れしすぎだよ』と批判するような奴とは、絶対に口も効きたくない(笑)。すごくない?もう、ラスト、鮮やかな一言に鳥肌ぶわーっ!ですよ。憎い!この展開に、このラスト一言は憎すぎる!お見事!それで、果たしてこの二人はどうなったのかな?と気になりつつ読めば、お次の『ギターと猟犬』で明かされた結末に、ほっと一息。そして、流しの艶歌師と犬の組み合わせ、果たしてどうなるの?と思っていたら、こちらも、とっても優しい結末で。こんな家族、男の理想じゃないですか?(笑)。そして、この中ではいちばん好きな『サイド・キック』。『サイド・キックを持った男は幸せだ』―くぅ・・・・憎い、憎すぎる!渋すぎる!もう、身悶えするような渋さですよ!だけど、それは、男に限った事じゃないですよ。女だってそう。人間、皆そう。『サイド・キック』を持っていれば、人は、道を違わず、どんな状態であれ生きていける。その事を教えてもらったような、そして、まさしくこの言葉に相応しいような、壮大な壮大な物語。確かに、連れ戻されたわんこのことは気になるけど、でも、それでも、人間と馬。広い大地で、のーんびり、幸せに暮らして欲しいなぁ。ふぅ、本とに涙が出たよ。そして、『悪役と鳩』。痛快な物語で、さぁ、この物語も万事うまく行って・・・・と思っていたら。うー・・・・悲しいなぁ。これは、やるせないぞ。でも、そこにもまた、稲見先生、『ハードボイルド』の厳しさを見たような気がします。切ないな。本とに。そんなこんなで、今回も、物語の素晴らしさ、そして、真の優しさ、豊かさを味あわせてもらいました!稲見先生、最高っ!

 

綾辻行人十角館の殺人』・・・。デビュー作か。いいなぁ。言うまでもなく面白かったし、本と、本格ミステリへの愛を、登場人物の名前からして、ひしひしと感じた。あ、あと、奥様への愛も(笑)。本当に、王道中の王道ミステリだと思う。設定から、事件の起こり方から、その動機まで。そして、その解決法まで。こんなにも面白くて、そしてわかりやすくて、一刻も早く先を読みたいミステリも、『ミステリとしてのミステリ』も、本と、ここんとこなかったなぁ。いやー、面白かった。ラストもまた、憎いじゃないですか。多分、彼、その小瓶の存在なんて忘れてたんじゃないのかな?奇跡のようにして、自らの前に姿を見せたその小瓶に、彼は、何を思っただろう。千織ちゃんの姿も声も、見えず聞こえなくなってしまった彼は、だからこそ、島田さんに、その小瓶を託すことを決めたのかもしれない。自らが為した行為の、どうしようもない空しさから、救って欲しいような思いがあったんだろうか。でも、島田さんは、多分、彼を警察に突き出すようなことはしないだろうしなぁ。一言で言えば『派手』な事件の果てに待ち受けていた、静寂なラスト。だからこそ、心に問いかける何かがあり、秀逸な余韻をもたらしてくれるのでありました。いやー、面白かった!というわけで、次は、平面図見ただけで頭混乱!の『迷路館』行ってきます!

 

綾辻行人迷路館の殺人』・・・いやはや、今回も面白かった(完敗)。いや、でも、出血で女性、と当てられたのはすごくね?進歩じゃね?(笑)。はい。惜しかった(くぅ)。そうだなぁ・・・うーん。正直言って、読み終えた直後は、何か釈然としなかったというか、ちょっとフェアじゃねぇぞ、とか詭弁じゃねぇか?とか思ったんですけど、でも、読み返して、例の部分で、『くぅ・・・・』と完全、男だと、作者の思い通りに思い込んでいた自分があって、歯噛み(笑)。だよなぁ・・・この書き方は、確かに危ういけど、断定はしてないもんなぁ・・・くぅ・・・くぅ・・・くぅっ!(悔しい)。そういう訳で、やっぱり、結局、今回も、『やられました(どーん)』と言った具合です。すごいね。本と。『時計館』の時にも感じたけど、この緻密さと言うか、綿密さはスゴイ。ミステリ作家なんだから当たり前といわれればそれまでだけど、本当に、どんな頭の作りになってるのかと、ひしひし思う。すごい。お見事。この労力に、本当に敬意を表したい。あぁ、そして。シリーズであるにもかかわらず、その順序を無視して読んできたのでありますが、今の今まで、その弊害はなかったのでありますが・・・ああっ!(がくり)。今回、その弊害に遭ってしまいました。うー・・・ここは、騙されたかったなぁ。ちくしょぅっ(笑)。あぁ・・・きっと、騙されていたなら、私は、そこの部分に感激していたに違いない(がくり)。まぁ、こればっかは仕方ない。はい。そんなこんなで。今回も、面白かったです!そうですね、私も、『迷路館』は嫌かな。なんせか、方向音痴だから(汗)。しっかし、本と、この館の設計、綾辻先生自らされたんだろうか?もう、そこからしてスゴイ!まさしく綾辻行人が作り上げた、凝りに凝ったミステリの大世界!大迷路!

 

はい。おめでとう。無事、1万文字、オーバー(白目)

う、ううっ・・・これでも、自分で読み返して無駄だと思ったところ、カットしたのよ・。でもあかん、長い。

長すぎる。

 

と言うことで、ここからさらに長くなっていきますことよ。

うふふ。もう笑うしかない(涙)

まぁ、あの、ほんと、ぼちぼちと続けていきたいと思います。はい。

 

あ、でも、どうにか2010年の読書感想文も、次回で終了できそうかな。

残っているのがあと10冊。当然のようにしてめちゃめちゃ長い読書感想文になっているけど、もうここまできたらこの10冊は次回で放出してしまいたいと思います。はい。

 

と言うことで、今回はここまでです。

読んで下さった方、ありがとうございます。