tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2009年

このミステリーがすごい!』にも作品がランクインされていた光原百合さんの訃報が伝えられました。

優しく、やわらかく、どこかファンタジー的な雰囲気を漂わせつつ、しかしだからこそ、時折、すっ、と切り込んでくるような心理的描写。その融合が非常に魅力的な、そんな作家さんだったなぁ、と個人的には感じます。

私は『十八の夏』と『最後の願い』がとても好きで、特に『十八の夏』は何だろう、ほんと夏が来るたびに思い出す、そしてこのタイトルを口ずさんでしまう、それくらいの作品です。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

はい。

てなことで、ここからはいつも通りのテンションで参りましょうか。

年末恒例『このミステリーがすごい!』の歴史を個人的に振り返っているシリーズ記事、今回は2009年度の振り返りでございます。

いやぁ、毎回、書いていますけど実に順調。とうとう次回で2010年代に突入ではないですか!我ながらびっくりだわ。

 

てなことでまずはいつものごとく、その年に何があったを振り返っていきましょうか。

2009年。今から13年前ですから・・・私は27歳ですか。まだアニメや声優さんにははまっていない頃でしたが、調べてみたら2009年は『けいおん!』のアニメが放送された、大ヒットを記録したとのことで。

あー・・・なーんとなくだけど、記憶が頭の片隅にあるような、ないような・・・。キャラソンがめちゃくちゃヒットチャートを賑わしていたんじゃなかったっけか?

あれから13年。その『けいおん!』に出演されていた声優さん、今でもばりっばり現役で、人気を維持しながら活躍されていらっしゃいますから、いや凄いですよね。

 

それから村上春樹さんの『1Q84』が刊行され大ヒットしたのもこの年とのことで。当時、書店に勤めていた私も、なーんとなくだけどやはり、そのブームみたいなのは覚えているようないないような(どっち)。

村上作品、皆さんは読まれたことはありますか?私は『スプートニクの恋人』だけ読んだことがありますが、この1冊でも痛感したくらいに、ただただ相性が悪かったこととしか印象にありません・・・すいません(土下座)

なんだろ・・・普段、私が好んで読んでいる作品とはあまりにも違いすぎるし、こー、水。水を飲んでいるみたいな感覚しかなくて『同じ村上でも、私は村上龍さんの方が好きよ!』と再認識した次第です・・・どんな感想(再びの土下座)

 

またこの年は、45回衆議院選挙にて民主党が圧勝。結果として政権交代が実現された年でもあります。

満を持しての民主党政権!国民の期待を背負っての政権交代!と相成ったわけですが・・・その結果が、何と言うか、それ以降の『他に支持する政党もないし、結局は自民党だわな』と言う諦めにつながっているような気がするのは、何とも皮肉ですな。

 

はい。てなことで振り返りはこのあたりにして、ここからは2009年の『このミステリーがすごい!』を、私が読んだ作品に限ってですが振り返ってまいります。

ja.wikipedia.org

はい。と言うことでいつものようにリンクです。こちらをご覧になりながら記事を読んでいただくと、よりわかりやすいかと思います。

 

この年の1位に輝いたのは伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』でこざいました。本作品は堺雅人さん主演で映画化もされましたね。こちらの作品は私も読んでいますので、後ほど、語ることにいたしましょう。

 

それ以外、読んだことがある作品は、2位の柳広司さんの『ジョーカー・ゲーム』、それから4位、湊かなえさんの『告白』ですね。更に6位の道尾秀介さん『カラスの親指』に10位、同じく道尾さんの『ラットマン』以上ですかね。

9位の舞城王太郎さんの『ディスコ探偵水曜日』は、どうだったかなぁ・・・読んだ気もするし、見るからに圧倒的なボリュームに恐れをなして手を伸ばさなかった記憶もあるんだよなぁ・・・。

ってかこの年も、やはり読書感想文の記録が残ってない。確実に読んだ本の読書感想文が記録として残ってないから、多分、ノートに書いたままなんだろうなぁ。

まいった(でーん)

 

はい。まぁ、ぼちぼち記憶を手繰り寄せながら語っていきます。

ではでは。早速10位と6位、共に道尾さんの作品である『ラットマン』と『カラスの親指』から語っていきましょうか。

 

まずは『ラットマン』から。こちらのタイトルは『見る、聞くと言った行動は、その前後の刺激や出来事によって、その結果が大きく変わることがある』と言う現象を意味する言葉だそうです。そんな言葉がタイトルにつけられているわけですから、当然、本作品にもこの言葉の意味するところが重要な役割を果たしています。

マチュアロックバンドのギタリスト、姫川。彼はある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇します。それをきっかけにバンドメンバーの知られざる素顔が明らかになっていき、さらには姫川自身が秘めてきた過去のある出来事、その記憶も強く揺さぶられていく、と言うのが簡単なあらすじです。

本作で描かれている事件は2つ。そのどちらもに姫川は関係しているのですが、当然、関わっているのは彼だけではないと言うのがポイント。そこに先ほど書いたタイトル『ラットマン』の意味する現象が発生していくわけですから、もうミスリードに次ぐミスリード。それが次から次へと収束して、張り巡らされていた伏線が回収されていく終盤は圧巻の一言です。そしてまた、そこに道尾作品らしい、何とも言えない人間の感情、ありとあらゆる感情が描かれているのも魅力的なんですよねぇ~。

 

『ラットマン』が陰鬱な雰囲気が印象的な作品であるのに対し、6位にランクインした『カラスの親指』は明るい筆致で、テンポよく進んでいく物語と言う印象があります。なお本作品は阿部寛さん主演で映画化されています。

タケとテツ。様々な事情によって真っ当な人生、そのレールから落ちてしまった2人は、現在はコンビを組み、詐欺を生業としていた。そんな2人の生活に、ある日、ひょんなことから1人の少女が加わることに。更に仔猫のトサカ、まひろの姉のやひろ、やひろの恋人、貫太郎も登場し、2人だった生活は一気に5人と1匹の賑やかなものになる。貧しくも楽しい生活は、しかし長くは続かなかった、と言うのがあらすじです。

この後、5人は、自分たちを騙し、そして現在の生活を脅かした男に復讐を行うことになるのですが・・・道尾作品ですからね、ただの復讐劇で終わるはずがありません。

ふふ。

5人が力を合わせ復讐を果たそうとする。そのチームプレーは思わず『頑張れ!成功しますように!』と応援したくなるほど。だけどそれもどこかコミカルに、ユーモアたっぷりに描かれているのが心地いい。そしてだからこそ、その復讐劇の裏側にあった真実、ある人物の強い思い、願いが明かされた時には、何とも言えない切なさや熱いものがこみ上げてくるのです。

 

続いては4位にランクインした湊さんの『告白』です。こちらは湊さんのデビュー作。大ヒットを記録し、松たか子さん主演で映画化もされましたね。

物語は全6章から成ります。主人公は森口悠子と言う中学の女性教師です。3学期の終業式の日、彼女が、担当しているクラスの生徒たちの前で、自分が間もなく教師を辞めると口にすることから物語は始まります。

数か月前、彼女は最愛の娘をプールで亡くしていました。生徒たちは口々に、教師を辞めることと娘の死が関係しているのかを問います。生徒たちからの質問に対して、森口はある宣告をし去っていく、と言うのが第1章。そしてその宣告を受けての、様々な人物の物語がその後の章で展開されていく、という構成です。

 

強烈。故に私は楽しく、面白く読みました。すごい好き。こう言う、もう、救いようのないダークな作品、めちゃくちゃ好きです。『後味が悪すぎる』と言う感想も見かけるのですが、正直、この手の作品で後味が良かったら面白くもなんともないだろう、と私は思うのであります。

端的に言えば、森口の、1人の教師の、1人の女性の、1人の母親の、そして1人の人間の復讐物語なんです。でもそこに、10代の少年、少女たち、その少年、少女を取り巻く大人たちと言った、様々な人間たちの思惑が、実に生々しく、暴くようにして描かれていくものだから、物語に一層の幅や深みが生まれていて、そこにずぶずぶとはまり込んでいく。そんな作品なのです。少年少女の、その危うい幼稚さと、それを覆すような狡猾さ、ずるさ、それが入り乱れた非常にアンバランスな姿の描き方も、めちゃくちゃ生々しかったなぁ、と記憶しています。

森口と、そして彼女が愛したある男性と。その2人の、教育者としての在り方と、それ以前の、人としての在り方、その対比みたいなものも考えさせられます。そう言う意味では、主人公を教師にしたのもうまいなぁ、と。

なお映画に関しては、私、見ていないのですが・・・どうやらとても良い出来のようですね。見た方の感想を見る限りではありますが。ちょっと見てみたくなったなぁ。

 

そして2位は柳さんの大ヒットシリーズ、その第1弾である『ジョーカー・ゲーム』でございます!こちらは映画化、アニメ化されています。

物語の始まりは昭和12年。誰もその素性も経歴も知らぬ結城中佐。底知れぬ頭脳と冷酷な言動から『魔王』の異名をとる彼の発案で設立されたのが、スパイ養成学校『D機関』。互いの素性も、正体も知らぬままスパイとして活躍すべく、様々な訓練を受ける訓練生たちの姿を描いた連作集でございます。

 

いやぁぁぁぁぁ~、これもめちゃくちゃ、めっちゃくちゃ面白かった!そしてめちゃくちゃかっこよかった!結城中佐は勿論のこと、激動の時代、そして誰が敵で誰が味方なのか、その判別すら危うい状況下の中、それでも必死に戦い、生きようとするスパイ訓練生たちの姿も、もうめちゃくちゃクールで、熱くて、スタイリッシュなのに泥臭くて、胸に訴えてくるものが多々あって、ただただかっこよかったのです!

そして物語がまたこれ、面白いんだわさ!なんだろ。小説だからこその『騙し』がそこかしこに埋め込まれている。そして最後の最後になってその埋め込まれていた『騙し』の存在、正体に気が付いて『そう言うことだったのかよおぉぉぉ!』と声を上げるしかない、そんな構成になっているのです。なのでもう、物語の最初から最後の瞬間まで気が抜けない、そんな緊迫感と、だけど騙される楽しみに満ち満ちた作品ばかりなのですよ。なんて豪華!

時代の流れ、圧倒的な流れに翻弄されそうになりながら、それでもスパイとして、否、1人の人間として、まっとうに、正直に、正しくあろうとする。そんな訓練生たちの姿は、いっそ清々しさすら感じさせるほど。そして『魔王』と恐れられながらも、決してそうした一面だけではない、確かな人間味を感じさせるような結城中佐が、彼らにかける言葉もまた、あの時代背景を考えると一層の重みを感じさせるのであります。

 

そして・・・こちら、先ほども書きましたがアニメにもなっています。で、このアニメの出来が、個人的にはめちゃくちゃ良かったので、少しご紹介しておきます。

アニメだから当然、声優さんによる声がそこにはあります。そうすると小説では『実はあの時、あそこにいたのはスパイ訓練生の彼だったのですよ!』と言う仕掛けも、アニメでは仕掛けとしては薄れてしまっているのですよ。声がついていて、喋っているわけですから。別人に成りすましていても、その声で『あっ』って察せられてしまう。

なんですけど、にもかかわらず仕掛けとしての魅力と言うか、『声は似ているけれど、話し方とか、その声が発する雰囲気は、訓練生の時とある人物に成りすましている時とはまったくの別物』と言う、アニメだからこその魅力がそこにはあったんですよね。これがもう、ほんと『『ジョーカー・ゲーム』のアニメとして、最高であること証』のように、私には思えてならないのです。

監督は野村和也さん、制作はProduction I.G、シリーズ構成、脚本は岸本卓さん、キャラクター原案は三輪士郎さんって、なんだこの、今振り返っても私得しかないメンツは。

声優陣も結城中佐役の堀内賢雄さんをはじめ、関智一さん、下野紘さん、木村良平さん、中井和哉さん、櫻井孝宏さんに梶裕貴さん、福山潤さんなどなど、もう『よくこのメンツを揃えたなぁ』としか思えない方々が出演されていらっしゃいます。

そして私の推し、細谷佳正さんも出演されていらっしゃったのですが・・・CV細谷さんの訓練生が登場するのが『XX(ダブルクロス)』と言うのが、なんかもう、個人的には『わかってる・・・制作陣、CV細谷さんの意味、超分かってる』としか思えませんでした。ありがとうございます。

 

映画は知りません(ちーん)。が、結城中佐が伊勢谷友介さんと言う時点で『ソウジャナイ』としか突っ込みようがないよね!

そして本作品。2015年に刊行された『ラスト・ワルツ』から、今に至るまで最新作が刊行されていないのですが・・・あーん、早く続きが読みたいわ。

 

さぁ、そして!

やってまいりました、2009年度、栄冠の1位に輝いたのは伊坂さんの『ゴールデンスランバー』でございます。

舞台は現代。しかし本物の現代と異なっているのは、本作の現代では首相公選制が存在すると言う点です。首相公選制、すなわち首相が国民投票によって決定されると言う制度ですね。

その結果、国民から圧倒的な支持を得て首相に選ばれた金田貞義。その金田の凱旋パレードが仙台市では晴れ晴れしく行われていました。

元宅配業者で本作の主人公、青柳。彼は数年前、暴漢に襲われていたアイドルを救ったことから、地元ではその顔、その名前を知らない人はいないほどの有名人でした。その青柳は、数年ぶりに大学時代の親友、森田から呼び出されます。

どこか様子のおかしい森田。そのことを訝しむ青柳に森田は『お前、オズワルドにされるぞ』と告げます。まったく意味の分からない森田の言葉に首を傾げる青柳でしたが、直後、どこからともなく出現したドローンが爆発し、金田が死亡。更に森田も、乗り込んだ自動車ごと爆発されてしまいます。

それとほぼ同時に、街中では金田暗殺の犯人として青柳の顔写真などが大々的に出回り始め、青柳は何らかの存在が、マスコミなどを意のままに操ることができるほどの権力を持った何らかの存在が、自分を金田暗殺犯にでっち上げようとしていることを思い知り逃亡することになる、と言うのがおおまかなあらすじです。

ちなみに、ご存じの方は多いかと思いますが。私は知らなんだ(ちーん)。森田の言葉に出てくる『オズワルド』とは、ケネディ暗殺のだと言われている、だけれど真実のところはわからない男性のことです。

 

なんでしょ。この『ゴールデンスランバー』までの伊坂作品と言うと、どこか寓話的な雰囲気のある作品が多かったように個人的には思います。

で、この『ゴールデンスランバー』に関しては、その寓話的な面が薄れた。薄れたんだけれども、薄れたからこそ、より一層、その作品の意図みたいなものが、こー、具体的に読者の前に現れると言うか。そんな感じを抱く作品だと思うんです。うん。

うーん・・・なかなか言葉にするのが難しいのですが(いつものこと)。それまでの伊坂作品、そこにあった浮遊感とかファンタジーな雰囲気。そう言ったものが少し影を潜めて、代わりに現実と陸続きの、何かしらのリアリティさ、あるいは切迫感みたいなもの。それが強く出ている作品という感じが、私は強くしたと言いますか。うん。

 

なので読む前『それまでの伊坂作品』を期待していた私は、いざ、本作を読み始めてみたら『むむ・・・これは『それまでの伊坂作品』とはちょっと違うぞ。毛色が違うぞ。雰囲気もだいぶ違うぞ』と感じたのをすごく覚えています。

そう言った意味では初期伊坂作品の中でも、ひとつのターニングポイント的な位置づけにある、そんな作品なのではないかなぁ。本作品の後には『モダンタイムス』や『あるキング』とか『SOSの猿』などを発表されていらっしゃいますしね。はい。

 

ですから、と言うわけでもないのですが。『それまでの伊坂作品』が好きだった私にとっては、本作品は『面白かったのは面白かったけどなぁ・・・うん』と言う、何とも非常に失礼な感想が第一にきた作品です。

『面白かったのは面白かったけど・・・なんかこー、伊坂先生じゃなくても描ける作品のような気もするよねぇ』とも思ったのですが。

でもやっぱり、寓話的でないが故に、寓話的になっている、本質的な部分が姿を見せそうで見せない、そんな感じは伊坂作品だからこそなのかなぁ、と今になって思う(遅)

ただ割とネガティブなことを書いてきましたが、なんでしょ。こー、作家としての伊坂さんの物語を生み出す力、いろんな意味で『面白い』物語を生み出す力。そしてそこに読み手を巻き込んでいく力みたいなものは、本作品でも健在です。なので未読の方は、ぜひとも、私の感想など無視して読まれてみて下さいね。

 

はい。そんなこんなで以上、2009年度の振り返りでございました。

てなことで次回は2010年ですか。ぐふふ、いよいよ2010年代だ。嬉しいな。

よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!