tsuzuketainekosanの日記

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読書感想文をお送りしますよ!~『学校の怪談』

はい。1が付く日にお送りしている読書感想文ですが、7月ラストの31日は休みでした。

なので少し遅れて本日、お送りします読書感想文です。

本日から8月。早いなあ~。

 

以前は1が付く日が休みでも、律儀に読書感想文をお送りしていたのですが。ストックを稼ぎたい結果、それをやめたら精神的にずいぶん楽になりました(笑)。

こだわるのは決して悪いことではないですが、大してこだわる必要もないところにストレスを感じるくらいなら、柔軟に対応すること、変えていくことも重要なんだなぁ、と実感している今日この頃です。はい。

 

てなことで。

本日、お送りするのは『学校の怪談』です。

と言っても、このタイトルの本はめちゃくちゃあるので、もう少し詳しく紹介いたしますと。

集英社文庫から発売されている、短編アンソロジー。五十音順に、織守きょうやさん、櫛木理宇さん、清水朔さん、瀬川貴次さん、松澤くれはさん、渡辺優さんの6名の作家さんが手掛けた『学校』を舞台にした様々な形の『怪談』が収録されています。

 

はい。

 

この手のアンソロジーの何が面白いかと言うと、ひとつには同じテーマでも、作家さんによって登場人物や物語の雰囲気などが大きく異なる点が挙げられると思います。

で、こちらのアンソロジーもそうなのですが。

登場人物に関して言えば、6作品中2作品が、小学生の男の子を主人公にした作品。6作品中3作品が女子中学生と女子高生を主人公にした作品だったのですね。残り1作品の主人公はまた後程、ご紹介いたしますが。

これが個人的にはめちゃくちゃ面白くて。つまりどの作家さんも、男子中学生、または男子高校生を主人公にはしていらっしゃらないんです。

面白くないですか!?なんでだろ?

しかも男子小学生を主人公にした作品は、怪談でありながら、どこか少年の冒険譚的な味わいもある物語。そして女子中学生、女子高生を主人公にした作品は、いずれも『あの年代』特有の、女子ならではの人間関係の難しさと『怖さ』を絡めた物語であった、と言うのもまたこれ面白い。

 

ってことはなんだ。

男子中学生や男子高校生と言うのは、作家さんにとっては『怪談』とは相性の悪い、そんなイメージがあったりするのかしら?

あるいはそこにある人間関係の難しさと『怪談』を絡めるのは難しい、そんな感じだったのかしら?

 

いずれにしても、いやいや。

これはめちゃくちゃ個人的には面白く、それ故、『どうしてなんだろう!?』の思いを前向きに探ってみたくなる気づきでした。はい。

 

そんな具合で全6作品。個人的に面白い、怖いと感じたのは、収録順に渡辺優さんの『Mさん』、松澤くれはさんの『軍服』、櫛木理宇さんの『庵主の耳石』、そして織守きょうやさんの『旧校舎のキサコさん』でございました。

この内、櫛木さんの『庵主の耳石』を除いた3作品は、すべて女子中学生、女子高生を主人公に据えている作品です。

 

つまり残り2作品、瀬川貴次さんの『いつもと違う通学路』と清水朔さんの『七番目の七不思議』は小学生の男の子を主人公に据えた作品です。

そして『小学生男児!』と言う響きからイメージできるような、とても元気で、冒険譚的な味わいもある作品、だけど怖さもしっかりある、そんな作品に仕上がっているように感じました。

今回、感想は省略させていただきますが、面白くないと言うことは決してなく、読んでいて遠い昔、それこそ自分が小学生の時だった頃の記憶が呼び起こされるような。そんな懐かしさも感じるようなお話になっています。はい。

 

では。残り4作品の感想を少しずつ。

まずは渡辺さんの『Mさん』です。トイレの鏡に映ると言う『Mさん』は、痩せたい女子学生の味方。主人公の『わたし』は、同じグループの萌愛から太っている扱いを受けたことから『Mさん』に会いに行くことにするのだが、と言うお話です。

思春期の、女子特有のグループ内派閥、その中で少しでもはみ出さないように、下に見られないように気を使う『わたし』の、その繊細な心が手に取るように感じられて、もう読んでいて辛かった・・・。そして容姿、太っている、痩せていると言うのも、この年代の女子にとっては、とても重要なことのように思えますもんね。もともと、神経をとがらせていた、ひりひりするような生活を送っていた『わたし』が、より一層、神経を尖らせいくのも、ただただ切なかったし痛々しかった。

『痩せたい』と言う少女の願いを見事に掬い取るかのような『Mさん』の怪談。そこにすがりついた『わたし』のその後の変貌は、物語を読んでのお楽しみ、なのですが。

しんどい。このラストはしんどい。なんかもう、いろんな意味でしんどい。でも嫌いじゃない私は鬼か(ちーん)

 

次は松澤さんの『軍服』です。舞台は女子高演劇部。来るべき公演に向けて練習に励む部員たち。公演の演目は恋に落ち晴れて夫婦になったものの、戦火に引き裂かれ、やがてはそれぞれが亡くなってしまう男女の物語だった。妻を想いながら南方の島で戦死した男性を演じることになった舞衣子は、衣装である軍服を身にまとい練習を重ねる。しかし舞衣子は、その軍服に言い知れぬ圧迫感を抱きはじめる、と言うお話。

演劇、演じることに対して非常に熱意、プロ意識と言っても過言ではないほどの気持ちを持っているのが舞衣子と言う少女です。その彼女が衣装である軍服に、言い知れぬ恐怖、違和感を抱き始める。そして実際に、様々な不可解な出来事が起こり始めるのですが、彼女の演劇に対する熱意、意識の高さが、逆に彼女自身を苦しめてしまっているようになっているのが、読んでいてめちゃくちゃ切なかった。

それでも物語の終盤。命の危機を感じたことで、ようやく彼女は解放されたかのように見えたのですが・・・そこで放たれた、ある部員からの一言が・・・あぁ・・・。

そりゃないよ、とも思うのですが、この言葉を放った彼女からしてみれば、演じることに対して熱い気持ち、高い技術を持っている舞衣子に対しての気持ち、期待があったからこそ、出てきた言葉なんだろうなぁ。それを思うと、なおのことやるせない。うぅ。

そしてそこからのラストは、もう舞衣子の見た光景、舞衣子の前に広がっていたであろう光景がまざまざと見えるような。そんな壮絶なラストで、ただただ言葉を失います。

 

お次は櫛木さんの作品を飛ばして、織守さんの『旧校舎のキサコさん』です。瑞稀が通う学校には『旧校舎のキサコさん』と呼ばれる会談がある・・・らしい。それを確認することを、同じグループの女子生徒からやんわりと命じられた瑞稀は、仕方なく、旧校舎の女子トイレに1人で向かうことに。そしてそこで瑞稀は、1人の少女と出会うのだが、と言うお話です。

こちらも女子中学生のグループ、そのヒエラルキーのようなものが描かれていて、ちょっと胸が苦しくなるような思いがしました。主人公の瑞稀は、1人でいることが苦ではない少女。にもかかわらず、同じグループの少女たちは、彼女を1人はしてくれない。何かにつけてはいじったり、使い走りのようなことを命じてくる。そう言うことも経験だ、と思って瑞稀は受け入れている、と言うのが何と言うか、個人的にはとても好ましかったし、でも彼女の、微妙な心理状態を表しているようにも感じられました。

そんな瑞稀が旧校舎で出会った少女。その正体が明かされること以上に、理由、彼女がそうなった経緯、理由、そこがこの作品の最大の魅力だな、と思います。何と言うか、織守さんらしい作品だなぁ、と。

悪意と呼ぶにはあまりにも大それた、ほんの小さな悪戯心、出来心。何も考えずに進んだ選択肢の先に、こんなにも、こんなにも大きな孤独と理不尽が待ち受けていようとは。なんて悲しく、なんて恐ろしいことなのか。こうやって『学校の怪談』は誕生するのかと思うと、もう胸が塞がれるような思いがしました。そこにはどれだけ、声にならない声が存在しているのだろう、と。

物語のラスト、『つまんないの』と呟いたその声の一切が、胸にぽつ、と落ちてくるようで、本当にやるせなかったです。

 

はい。

 

そして櫛木さんの『庵主の耳石』です。全6作品の中で唯一、こちらの作品だけが主人公が学生ではなく大人でした。

成美の目下の悩みは、中学生の娘、凛香がいじめにあっていることだった。ある日、いけないことだとはわかりつつ、凛香の部屋に足を踏み入れてしまった成美は、机の引き出しの中にひとつの石を見つける。そしてその石を手にした瞬間、成美は教育実習生だった頃の思い出を思い出していた、と言うのがあらすじです。

教育実習生だった頃のから、成美の記憶は更にさかのぼっていきます。その中で明かされるのは、その石が成美にもたらしたものです。その石と出会ってしまったことで、成美は様々なものを失った。けれど彼女自身も思っている通り、失った結果、得たものもあった。

その彼女が、愛しているはずの娘に対して放った一言の強烈さは、しかし何故でしょうか。私には必ずしも、必ずしも石の存在のせいだけとは言えない部分もあったりするのではないかなぁ、と言う気持ちも湧き上がってきたのですが。ちょっと深読みし過ぎかな、と言う感は否めないんだけれど。

失い、だけど得られた自身と比較して、人間関係に失敗してしまった娘に対しての優越感みたいなものが、もしかしたらそこにはあったんじゃないだろうか。あるいはそれを石に見透かされ、言の葉が紡ぎ出されたんじゃないだろうか、と言う感じがしなくもない。まさしく人間の暗い愉悦、悪意を叩きつけるようなラストは、櫛木さんらしい作品としか言いようがありませんでした。

こういうラストも嫌いじゃないんだよなぁ・・・何故か私も、成美と同じように、唇の端が上がっていました。

 

何だろうなぁ。

再三にはなりますが、やはり個人的には女子学生×怪談と言う組み合わせの作品が多かった、逆に男子中学生または男子高校生を主役にした作品が1つもなかったと言うのは、本当に驚きでした。

6名も作家さんがいて、それぞれ個性豊かな物語を執筆されているのに。ねぇ。

なんだろうかなぁ。

こー、やっぱり女子学生特有の、あの人間関係の繊細な複雑さみたいなものは、怪談、怪異、正体不明の恐怖と相性が良いからなのかなぁ?

確かに相性の良さみたいなのものは感じたけれど、でも男子中学生や男子高校生の人間関係にも、きっと複雑さ、繊細さ、難しさはあると思うんですよね。はい。

あるいは『学校の怪談』だからこそ、不登校になった男子生徒の、『学校』から離れたからこそ見えてくる『学校』の別の姿。そこに生まれた怖さみたいなものを描く、と言うのもありだったのではないでしょうかな、と思ったり。

 

いや、なんか文句みたいになってしまいましたが(汗)

しかし全6話、それぞれに色の違う『怖さ』があって、そしてそれぞれに違った面白さがあって、短編集、アンソロジーの魅力を存分に堪能できた1冊でございましたよ。

短編集と言うことで非常に読みやすいので『長い作品は苦手なんだよなぁ~』と言う方にもおススメしたい作品です!

 

はい。と言うことで本日は集英社文庫から発売されているアンソロジー学校の怪談』の感想をお送りいたしました。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!