tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~2004年

そんな具合で『このミステリーがすごい!』の歴史を振り返るシリーズ記事、今回は2004年をお送りいたします。

まずは恒例、その年をちょろっと振り返っていきましょうか。

 

2004年。私が大学を卒業した年ですね。

卒業したからと言って就職したわけでもなく、そのまま、当時、アルバイトしていたスーパーのレジを続け、それを辞めてからもアルバイトで書店員として働いて。

結局、2019年になるまで、ろくにフルタイムで働かなかったわけですから、大したもんですよ、はは。

 

はい。そんな2004年はどんな年だったか見ていきますと。

あぁ、この年の年末でしたか。スマトラ島でM9.3の巨大地震が発生。津波などにより14か国で22万人以上の死者が出たとのことで・・・。

いやぁ、あのー、あれだ。

9.11のテロ事件の時もそうでしたが、やっぱ映像で見た記憶と言うのは、本当に、実に鮮明に刻み込まれているもんですね。

このスマトラ島での巨大地震に関しても、あの凄まじい威力の津波の映像は、瞼を閉じてもその裏側に再生されるくらいにくっきりと記憶にあるもんなぁ。

津波と言うか、なんかもう、もはや水が勢いよくぶつかってくる、そんな感じだったもんなぁ。

この地震津波の恐ろしさを、特に海外の方が知った。そのことが後に地震が起きた際にも、津波を恐れての早期避難につながったわけですから、いや、ほんと、当時のあのインパクト、衝撃たるや凄まじかったもんなぁ・・・。

でもまさか、まさか、その数年後に日本でも大津波が起きるなんて、津波に人が、車が、街が飲み込まれ流されていく、そんな映像がリアルタイムで放送される日が来るなんてことは、誰も予想すらしていなかったはずだよなぁ・・・。

 

自然、怖い。

 

はい。そんな具合で振り返りはここまでにいたしまして。

早速『このミステリーがすごい!』2004年のベスト10作品の中から、私が読んだ作品のみではありますが振り返り、やんややんやと語ってまいりましょう。

いつものようにリンクを貼り付けておくので、そちらを確認しながら記事を読んで頂くと、よりわかりやすいかと思います。

ja.wikipedia.org

はい。てなことでこの年、栄光の1位に輝いたのは歌野晶午さんによる『葉桜の季節に君を想うということ』でございました。こちらは私、読んだ作品ですので、後々、いろいろと語ることにしまして。

 

ではこの年のベスト10ランクイン作品、他に私が読んでいる作品を挙げていきますと。

まずは10位、垣根涼介さんの『ワイルド・ソウル』、それから8位の石持浅海さん『月の扉』、そして6位、伊坂幸太郎さん『陽気なギャングは地球を回す』、更に5位の桐野夏生さん『グロテスク』です。

続けて4位、横山秀夫さんの『第三の時効』、3位、伊坂さんの『重力ピエロ』、そして2位の福井晴敏さんの『終戦のローレライ』と言うことで・・・。

なんとベスト10、10作品中8作品を読んでおります!ひゃつはー。

これは語るの、長くなりそうだぞ!

ってなことで、早速1冊ずつ、手短に語ってまいりましょうか。

 

手短に(フラグ)

 

まずは10位の『ワイルド・ソウル』です。1961年、日本政府の募集でブラジルの地へと渡った衛藤。しかし用意されていた入植地は密林で、劣悪な環境だった。長い放浪生活の果て、どうにか身を立てることができた衛藤が久しぶりに入植地に戻ると、そこにはかつての仲間の息子であるケイが1人、残っていた。そして時は流れ、ケイとその仲間たちは日本政府に対して復讐を実行することになる、と言うのが簡単なあらすじです。

非常に重く、また苦しさを感じさせるテーマを題材にした作品なのですが、それでも、そうした一面を描きつつ、どこかからりとした、熱く、激しい作品に仕上がっているのが、本作品の大きな魅力です。登場する人物が非常に魅力的で、何と言うか彼らの言動、物語を読んでいて気持ちがいいと言うのが、その大きな理由だと思います。まさしくザ・エンタメと呼ぶにふさわしい、そんな作品と言う印象があります。

 

続いて8位『月の扉』ですね。乗客240名を乗せた飛行機がハイジャックされた。犯行グループは3名。その要求は警察署に拘留されている彼らの『師匠』を空港まで連れてくること。ところが完全密室のはずの飛行機、そのトイレで乗客の1人が死体となって発見されたことで、事態は思わぬ展開へと転がりだす。

本格推理×少し変わった設定でお馴染みの(そうなの?(笑))石持さんの作品の中でも、群を抜いて私は本作品が好きです。密室ミステリの緊迫感に、どこか幻想的な雰囲気が融合していて、とても美しい作品、美しいミステリと言った印象があります。また『師匠』と呼ばれる人物の造形も、実に良いんだよなぁ~。石持作品の入門としてもうってつけの1冊だと思います。

 

6位は『陽気なギャングは地球を回す』です。おおっ、この年は伊坂さんの作品、2作品ランクインしているのですね。氏がブレイクした年とも言えるわけだ。

嘘を見抜く名人、天才的な腕前を持つスリ、演説の達人、正確な体内時計を持つ女性。4人の天才たちは、これまで完璧に銀行強盗を果たしてきた。しかし今回は、強奪した現金を逃走中に、あろうことかそれを同じく逃走中であった現金輸送車襲撃犯に奪われてしまう。そこから次々と思わぬ事態が4人を襲い・・・と言うのが簡単なあらすじ。

いやぁ~。とにかく面白い。本当に面白い。4人の『天才』たちのキャラクター造形も、彼ら、彼女らが繰り広げる会話も、そしてそれらが伏線となってどんどん、どんどんと転がって、最後には見事に収束する物語も、もう本当に面白いの一言!ちなみに私は、絶対に現実にいたらうっといことこの上ないだろうけど、でも、その何とも言えない色気がたまらない!響野が好きです!彼が何の『天才』なのかは、ぜひ、物語でお確かめ下さいね。

 

5位は桐野さんの『グロテスク』ですね。実際に起きた『東電OL殺人事件』に想を得た作品です。名門女子高を舞台に、そこに在籍する様々な女子高生の姿を描き、そして物語は、その女子高を卒業し、社会人となった彼女たちの姿を描きます。

圧倒的な筆力で描かれる『女性』たちの姿。あるいは心。その筆致はまさしく『グロテスク』と言っても差支えがないほどなのですが、だからこその生々しさがあり、それ故にどうしようもない悲しさをも滲ませているのです。

名門女子高。エリートOL。社会的に見れば、十分すぎるほど恵まれた肩書を持っていたはずの彼女らが、だけど本当に欲したものは何だったのか。否、そもそも彼女らは何かを欲していたのか。彼女らが持っていた肩書は、本当に恵まれた、価値のあるようなものだったのか。

『生身の私を愛して欲しい』そんな悲鳴が聞こえてくるような作品です。そしてやっぱり本作品でも、徹底的な生き様を見せつける桐野作品の女性は、やっぱり私は好きだなぁ。

 

4位は『第三の時効』です。前年度『半落ち』で1位に輝いた横山さんも、2004年度は2作品がランクインしていますね。そして個人的にはこの『第三の時効』が、私が読んだ横山さんの作品の中ではいちばん好きです!

こちらはジャンルとしては警察小説になるのかな。連作短編集で全6編の物語からなっています。舞台はF県警捜査第一課強行犯係。一係、二係、三係の班長を中心に据えた物語が展開されていく、と言う内容です。

個性豊かな刑事たち、その中でも三班の班長を務める朽木、楠見、村瀬の個性の違いは突出しており、彼らの信念や捜査手段が時にぶつかり合い、激しく、静かに火花を散らし合うと言うのがひとつの魅力となっています。しかし刑事である以上、もはや事件を喰うことで生きてきたその生き様は、鈍色に輝いており、そこから漏れ出ている色気が、何ともたまらないのであります!たまらん!

また1編1編の物語も短編とは思えないほどの濃密さであり、最後には必ず、種々様々な驚きが用意されているのもさすがの一言。

短編集でありながら、しかし長編小説並みの充足感とインパクトを残してくれる、まさに珠玉の作品だと思います。

 

さぁ、ここからはいよいよベスト3にまいります!

 

まず3位は『重力ピエロ』でございます。先ほども書きましたが、伊坂さんが大ブレイクされるきっかけとなった作品、そう言っても過言ではない、まさしく初期の伊坂作品の中でも代表的な1冊だと言えるでしょう。

仙台の街で起きる連続放火事件。その現場近くには必ず、奇妙なグラフィティアートが残されていた。泉水と春、2人の兄弟は事件に興味を持ち、誰に頼まれたわけでもないのに、その謎解きに乗り出す。

 

『春が二階から落ちてきた』。本作の開始を告げるこの一行を、こうやって打ってみただけでも、そして声に出して呟いてみただけでも、もう、初めてこの作品を読んだ時の、そして読み終わった時のいろーんな感情がこみ上げてくるような。

とにかくもう、何と言うか、この物語の存在自体が、そこに描かれているすべてが、これまでに描かれていたことがないようなそれで、本当に衝撃的でした。衝撃的で、でもそのどれもがたまらなく愛おしく、愛おしいからこその切なさがこみ上げてくる。

 

なんでしょうね。前々から書いているんですけど。伊坂作品に共通する、行動理由と言うのは、人によっては非常に嫌悪感や『それは間違っているよ!』と言う感情を抱かれるものかもしれません。

でも私は、それを支持する。だからこそ、この『重力ピエロ』にしても、あるいは、後のランキングに登場する数多くの作品を『絶対に受け入れられない!』と言う人とは、多分、一生、仲良くなれないだろうな、と思います。

ま、私なんかと仲良くしたい人なんていないだろうけど!

 

愛おしい家族の物語。父親と母親と、その2人からまっすぐな愛情を受けて育ち、大人になった、子どものような純粋さとまっすぐさを持った兄と弟の、愛に満ちた物語です。あとこちら映画化もされているのですが、そちらも実によくできているので、よろしければ見てみて下さいね。

 

続いて2位は福井さんの『終戦のローレライ』ですね。こちらは『亡国のイージス』と並んで、初期の福井さんの代表作として挙げられる方も多いのではないでしょうか。

太平洋戦争が終わりを迎える1945年8月。『あるべき終戦の形』を日本にもたらすべく画策する、大佐の浅倉。その命を受けて困難な任務にあたる戦利潜水艦、伊507。この伊507には、ナチス・ドイツが開発した特殊音響兵装、通所『ローレライシステム』が搭載されていた。そして伊507の搭乗員たちは、この『ローレライシステム』を巡る戦いに巻き込まれていく、と言うのが簡単なあらすじです。

 

いやぁ~・・・面白かったなぁ、本作品も。『亡国のイージス』よりも更にスケールアップした物語。その中で繰り広げられるのは、様々な事情や思いを抱えた、国も年齢も異なる人間たちの生き様そのもの。

それが『ローレライシステム』の思わぬ正体や、伊507が担った任務、浅倉大佐がもたらそうとしている『あるべき終戦の形』、そうした謎と絡み合って、ぐいぐいとこちら側、読者を物語の世界へと引きずり込んでくれるのです。

 

こう言う言い方はよくないのかもしれませんが。それでも、今、まさしく奪われようとしている多くの命。それを救うために、守るために、それは間違っていると証明するために、男たちが自分の命をもってして『戦う』、己の方法で『戦う』、その姿と言うのは、やはり胸を熱くさせるものがあります。アクションシーンも満載で、そこもまた良いんですよ!

更に『あるべき終戦の形』を実現させようとした浅倉大佐、彼をそこまで駆り立てた出来事など。『戦争』の圧倒的な虚しさと言うのは、今の時代、悲しいかな一層、強く感じられるものなのではないでしょうか。

 

そうしたメッセージ性の強い作品ではありますが、そうした部分を抜きにしても、一大エンタメ作品として非常に楽しめる作品です!なお本作品も映画化されていますが・・・フリッツお兄ちゃんの設定が改変されている時点で、私としてはアウトです!許すまじ(笑)

 

さぁ、そして激戦制してこの年の1位に輝いたのは『葉桜の季節に君を想うということ』でございます!そうか。この作品は『このミステリーがすごい!』だけでなく、2004年度のありとあらゆるミステリー賞を総なめした、まさしく2004年のミステリーを代表する一冊とも言える、そんな作品なのですね。

わーかーるー。

 

フィットネスクラブで汗を流すのが日課の成瀬将虎、通称・トラ。自称・何でもやってやろう屋の彼は、ある日、後輩の芹澤から、芹澤が秘かに思いを寄せる久高愛子の相談に乗って欲しいと頼まれる。

ひき逃げに遭い亡くなった身内が悪徳商法業者・蓬莱倶楽部による保険金詐欺に巻き込まれていた、その証拠をつかんで欲しいと言うのが、愛子の相談の内容だった。白金台の高級住宅地に住み、幼い頃からお嬢様だった愛子は、その家柄もあって、この相談を警察に持ちかけることすらできないでいたのだった。

同じころ、将虎は地下鉄に飛び込もうとしていた麻宮さくらと言う女性を助ける。そしてそれがきっかけで、2人はデートを重ね、じょじょにその距離を縮めていく。

保険金詐欺事件の真相と将虎の恋。その2つが交差し、やがて明らかになる真実とは。

 

まさしく『一撃必殺』と言う言葉がぴったりな、会心のミステリー作品だと思います。そしてその『一撃必殺』を食らわせるために、読み返せば『ああっ!』とわかるのに、読んでいる時にはそれほど違和感を抱かない、まさしく見事な塩梅で伏線が張り巡らされているのも、この作品のお見事なところ。

しっかりと読者を騙すための、驚かせるための準備がされていて、だけど読者はそれに気が付かない。そして少なくとも私は、見事に騙されて、見事に驚かされて、いっそ清々しさすら味わった作品。そう言う意味ではミステリーとして、とても美しい作品だとも、私は思っています。

 

またそう言うミステリー的な部分を抜きにしても、この作品が描いてるメッセージのようなもの。そこもまた、胸を実に熱くさせてくれるのです。

未読の方には、できれば余分な情報抜きにして、まっさらな状態で本作品を読んで頂きたいので多くを語るのは避けますが。

何と言うか『人生を生きる』『人の一生』、そうしたことをしみじみと、ひしひしと、幾何の悲しさや切なさをはらみつつ、だけどきらきらと感じさせる、そんな作品でもあると思います。

 

ちなみに本作品と言えば『実写化不可能な作品』という意見も多く耳目にする作品だとも思うのですが・・・あー、確かにな。わかる気がする。わかる気がする。

ってかもう『実写化不可能』って時点で、既にネタバレの雰囲気を漂わせちゃっているのが、この作品の凄いところだと思います。

どうしてなんですかね?どうして実写化、できないんでしょうかね?

ふふ(笑)

 

はい。

てなことで本日は2004年の『このミステリーがすごい!』を振り返ってまいりました。

次回は2005年。よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!