tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~1998年

はい。

年末恒例『このミステリーがすごい!』の30年余りの歴史を振り返っているシリーズ記事、今回は1998年でございます。

毎回、書いてますけど、実に順調にお送りできているのが、自分でも信じられない(笑)

もう少しで2000年に到達するじゃないか!

 

てなことで毎回恒例、その年に何があったかをさらりと振り返りましょうか。

1998年、何があったのか、調べてみますと・・・長野オリンピックだ!懐かしい!

いやこれは、多分、私と同世代の方にとっては、非常に色濃い思い出として刻まれているのではないでしょうか?

何と言っても男子団体、ラージヒル団体。原田雅彦さんの2本目の大ジャンプ。当時、多分、テレビで視聴していたんじゃなかったかなぁ?1本目のジャンプが振るわなくて『さぁ、2本目はどうなる!?』ともう、日本中の視線が注がれていた中での、あの大ジャンプ。そしてチームジャパンとしても見事な大逆転、金メダル。

いやぁ~、懐かしいなぁ・・・。

 

あとは・・・5月にhideさんが亡くなられたニュースと言うのも、個人的には印象深いです。と言うのもですね。

当時、クラスにいた男の子がhideさんのこと、めちゃくちゃ好きで。

で、その子とは親しかったわけでも、友だちだったわけでも何でもないんです。ええ。ただこの子、どう言うわけか、修学旅行がスキー教室も兼ねてたんですよ。

で、スキーなんてしたくもないし、運動神経の欠片もない私は泣きながらスキーをやっていて、でも当然、うまく滑れなくて転びまくるわけです。尻もちついて、自重で雪に沈んで、ひとりでは起き上がれないと言う無様をさらしまくっていたわけです(笑)

その時に何故か、彼が『大丈夫ですか?』と手を差し伸べてきてくれてですね。『あ、ど、どうも』と私はその手を借りて、どうにか立ち上がれたわけなんですけど。

 

そう言う経緯があって、彼のことはめちゃくちゃ覚えているのです。彼がhideさんのことを好きだったと言うことも。

で、当時、hideさんは自死だったんじゃないか、と言う憶測が報道された時、その子が友達に対して『hideは人の命を何より大切に思い、重んじている人だった。そんな彼が自殺なんてするわけがない』と吐き捨てるように言っていたのが、強烈に、それこそ今でもはっきりとその光景を思い出せるくらいに覚えています。

なのでそう言う経緯もあって、何年たってもhideさんの死と言うのは、私にとってはいろいろな思いを想起させる出来事です。『ピンクスパイダー』、好きだなぁ・・・。

 

はい。てなことで長くなってしまいましたが、本題に入りましょう!

本日もこちらのリンクをご覧になりながら、記事を読んで頂くとわかりやすいかと思います。

ja.wikipedia.org

てなことで、1998年、この年のランキング1位に輝いたのは・・・桐野夏生さんの『OUT』でございました!読んだ!なのでこちらは後程、改めてじっくり振り返るといたしまして。

それ以外にベスト10にランクインした作品の中で、私が読んだことがあるのは・・・まず10位、大沢在昌さんの『氷舞 新宿鮫VI』ですね。

それから4位、京極夏彦さんの『絡新婦の理』・・・あれ?以上ですか?馳星周さんの『鎮魂歌 不夜城II』読んだような記憶があるのですが、読書感想文に記録が残ってないんだよなぁ、あれ、おかしいな?

でも憶測で語るわけにもいかないのでやむを得ない。本日は『OUT』『氷舞 新宿鮫VI』『絡新婦の理』この3作品についていろいろと語ってまいります!

 

ではでは、まずは10位にランクインした『氷舞 新宿鮫VI』でございます!『新宿鮫』もシリーズとして何作品もランクインしておりますが、こちらは6作目ですね。

元CIAのアメリカ人が、西新宿のホテルで殺害された。事件の鍵を握るのは、平手組の前岡。その前岡を鮫島は追うが、そこに公安警察からの横やりが入る。その背後には、元公安秘密刑事、立花の存在があった。それでも事件の真相を追い続ける鮫島は、捜査の過程で孤独な女性、杉田江見里に出会い、心惹かれていくのだが・・・と言うのが、本作品の簡単なあらすじです。

 

何でしょ。個人的に2作目の『毒猿』から5作目の『炎蛹』まで、こー、展開として派手と言うか、アクションシーンどーん!みたいな、映像としてとても映えそうな、そんな物語だったように記憶しているんです。

で、勿論『氷舞』もシリーズの魅力であるアクションシーンと言うのはあるんですけど、個人的にはそれ以上に登場人物たちの姿。ひとりの人間としての姿。もっと言えば、どれだけ心を通わせても、どれだけ体を重ねても、人は結局のところはひとりであり孤独であると言う、その姿。

それがものすごく描かれていた、そんな作品だと感じました。孤独であるが故、どうしようもなく悲しい。孤独であるが故、どうしようもなく切ない。だけど孤独であるが故、その姿は途方もなく気高く、美しい。ひとり、ひとりとして、自分が信じた、望んだ道を、各々が進んでいく。その姿に、めちゃくちゃ心惹かれた、そんな作品だったように記憶しているのですが・・・違ったらすいません(土下座)

ただいずれにしても『新宿鮫』シリーズの面白さは折り紙付き。なので言うまでもなく、こちらの作品も面白かったのは確かです。今作品単体で読んで頂いても、まぁ、うん、わからないことはないとは思うのですが、やはりシリーズ順に、鮫島の奮闘を積み重ねて読んで頂いた方が、より正しく面白さを味わうことができますので、ぜひぜひ、未読の方は読まれてみて下さいね。

 

そしてお次は京極さんの『絡新婦の理』です。冴えない作家の関口巽、古書屋兼陰陽師中禅寺秋彦、刑事の木場修太郎、美貌の天上天下唯我独尊探偵(笑)榎木津礼次郎などが登場し、様々な事件の謎を解明する百鬼夜行シリーズ、その5作目でございます。

ちょっとした凶器になりそうなくらい(物騒なたとえよ)に分厚いことで有名なこのシリーズですが、本作品『絡新婦の理』は、その中でも特に1、2位を争う分厚さだったように記憶しているのですが・・・違ったかな?

でも以前から書いている通り、私の中では前回の記事で紹介した『鉄鼠の檻』か『絡新婦の理』が、現状ではトップを争うほどに好きな作品です。なのでむしろ、この分厚さもご褒美でしかなかったと言う(笑)

 

さて、これまでの作品では、主役と言うか、事件に巻き込まれ、陰鬱な表情を更に陰鬱にさせ、京極堂に泣きついていたのは(言い方(笑))関口ですが、本作品に限っては、関口の出番はほとんどありません。

代わりに本作品で大きな役割を果たすのは、『狂骨の夢』で登場した釣り堀屋の伊佐間一成と骨董屋を営む今川雅純の2人。そうです!戦時中、共に榎さん、榎木津礼次郎ですね、その榎さんの部下であり、その縁切れず、未だ榎さんに振り回されているおっとりコンビでございます!好き(どーん)

 

聖ベルナール女学院に存在する秘密サークル『蜘蛛の僕』、その正体は『蜘蛛の悪魔』を崇拝し、冒涜のために売春を行う生徒の集まりだった。ある生徒は、自らの売春の秘密が露呈しそうになったのを機に、邪魔者に呪いをかける。するとその相手は本当に死んでしまった。これを機に、他の女学生もそれぞれが憎し、邪魔だと思う相手に呪いをかけ、結果として呪いをかけられた相手は殺されてしまう。

女学生のひとり、美由紀は悪魔などいない、そう言い張っていた。しかし彼女を売春組織の一員だと思い込んだ学園の理事長、織作是亮はそれをネタに、彼女に金を要求する。それを知ったある少女は、是亮に呪いをかける。

伊佐間と今川は、骨董品の鑑定のため旧家、織作家を訪れていた。ところがその矢先、是亮が何者かによって絞殺されると言う事件が発生し、2人は織作家に拘留されてしまう。

連続殺人犯『目潰し魔』を追う刑事の木場は、捜査の過程で友人の川島が、何らかの手掛かりを握っているのでは、と推測する。しかし川島は『蜘蛛に聞け』と言う言葉を残して失踪。手がかりを追って木場がたどり着いたのは、織作家だった。

そして弁護士の増岡。彼は聖ベルナール女学院での不祥事を相談するため、榎木津の元を訪れていた。しかし榎木津は不在で、代わりに助手の益田が人探しの依頼を受けていた。2人は連れ立って中禅寺の元を訪れる。

『目潰し魔』『織作家』と言う共通項が、互いの目的の中にあるのを不思議がる増田と益岡に、中禅寺は 『不思議なものか』と述べ『その偶然はすでに、誰かの張った蜘蛛の巣の上に乗っていないか?』とも述べるのだった、と言うのが簡単なあらすじです。

 

あー・・・こうやってあらすじを書いているだけでも、もう、本作品を読んでいた時の、あの途方もない高揚感が思い出されて幸せになってきました・・・悦。

へたくそなあらすじを読んで頂いてもお分かりの通り、聖ベルナール女学院での呪いの事件、織作家での事件、木場が追う『目潰し魔』の事件と、今回は3つの事件が発生します。

最初はバラバラだったそれが徐々に絡み合って、最後はひとつに収束していく、その流れが本当に美しく、スリリングで圧巻なのです。

その裏で『偶然』に見せかけ、様々な人間の動きを封じるような、誘うような蜘蛛の糸を張り巡らせていたのは誰なのか・・・そのあたりが明かされる終盤は、もう面白過ぎて面白過ぎて、どうにかなりそうかと思うくらい(笑)。あれだけのページ数の物語が、あれよあれよという間に残りわずかになっていく、その快感を是非とも、皆さんも味わって下さい!

そして本作品でも、美貌の探偵、天上天下唯我独尊、彼の前に敵なし!な榎さんは、天衣無縫の大活躍を見せていますので、そのあたりもご注目!

 

はい。そしてそして98年度のランキングで1位を獲得したのは、桐野さんの『OUT』でございました!

東京郊外にある弁当製造工場。そこで深夜パートに励む4人の主婦たちは、それぞれが様々な事情を抱えていた。雅子は亭主がリストラされ、家庭崩壊の危機に陥っており、ヨシエは認知症の姑の介護。邦子はカードローンや街金で重ねた借金による多重債務、そして弥生は、ギャンブル狂いの夫から苛烈な暴力を受けている。

そんなある日、弥生は、マイホーム購入の頭金に貯金していたお金を、夫がバカラ賭博に使い果たしてしまったことを知る。それに激高した弥生は発作的に夫を殺害。それを知った雅子は、弥生の窮地を救うため、ヨシエと邦子を引き込んで夫の死体を解体、証拠隠滅を図ろうとする。しかし邦子が、その一部を公園に捨ててしまったことで露見してしまう。

更に事件に陰に雅子たちの存在を疑う、地下カジノのオーナーや街金のチンピラの出現により、雅子たちの日々は少しずつ『日常』から逸脱していく、と言うのが簡単なあらすじです。

映画化、ドラマ化された作品なので、もしかしたらそちらの方をご覧になられて『知ってる!』と言う方もいらっしゃるかもしれませんね。2004年にはアメリカ探偵作家クラブが授与するエドガー賞、その最優秀作品賞にもノミネートされたことで、大きな話題になりました。

 

バブル崩壊後、社会的な不景気にあえぐ日本を舞台に、その影響をまともに受け、暗澹たる日々を送る女性たち。パートタイムで働くその女性たちが犯罪に手を染め、じょじょに日常から逸脱していく姿。そんな姿を描いた本作品は、今でこそ珍しくはありませんが、発売された当時は非常に珍しい、と評されていたように記憶しています。

 

なんでしょ。やっぱり、この作品の女性たちの姿も、私にはめちゃくちゃ美しく見えたんです。そして一抹の羨望すら感じもしました。

全然、美しくないんですよ。様々な事情に縛められ、その重さに圧し潰されてしまった方が楽なのに、そうならない。だから生きていくしかなくて、仕方なく生きていて、それでも全然、希望なんて、その欠片すら見えないような日々を生きていて。

なんですけれど、ひとつの罪を契機として、そしてそれを隠蔽しようとしたがために、彼女たちはどんどん、どんどんと沼、罪の沼にはまっていくのです。

そうして、その沼に沈んだ挙句、ある登場人物が見せた姿が、私にはもう、途方もなく美しく見えたのです。はい。

やっぱり孤独なんです。その姿と言うのは。圧倒的に孤独で、絶望的にひとり。なんですけれど、だからこそ、その魂、腹の据わり具合と言うのが、たとえ開き直りだとしても、私には途方もなく美しく、そして羨ましく見え、思えたのです。

 

出口のない絶望的な日々。ひとつの罪。そこから更に深くなる絶望。しかしその果て、何もかもを奪われた挙句、女性、否、女ひとり、自分の人生を自分で切り開いていく、歩んでいくしかない、そう腹をくくった姿と言うのが、たまらなく悲しく、それ故に美しいな、と。

その覚悟の決めよう、腹のくくりようは、私には決してできないことだな、と。

 

堕ちて、堕ちて、堕ちた末に、自由を手に入れた。何もかもを失って、自分の足で、自分の人生を生きていく術を獲得した。

その姿の、なんと美しいことよ。

 

そしてまた、何と言うのか。

決して一筋縄ではいかない男と女の愛憎。それが描かれているのも、またこれ憎い。暗澹として、酷く絶望的な物語なのに、そのことで胸がぎゅっ、となるような、どうしようもない男と女の性、情念のようなものを感じさせられるんだよなぁ~。

 

いやなんだろ。個人的にはこの作品、ノワール作品だなぁ、と思う。

女たちのノワール。そしてそこに立ちはだかる男たちのノワール

真っ黒しかない世界。だけどラストのラスト、本性剥き出しの世界を生き抜いた者だけに差し込む一筋の光。それが美しい、途方もなく悲しく美しいノワール作品。

でも、女性たちの抱える様々な事情、その生々しさや、罪に手を染めていく、どんどん深みにはまっていくスリリングさ、そこに姿を現す男たちの存在感などなど、エンタメ作品としての面白さが存分なのも、本作品の魅力です。

ぜひぜひ、読まれたことがない方は読んでみて下さい!

また映画、ドラマ、小説、いずれも結末が異なっているので、興味がありましたらそのあたりも比較されてみると面白いかと思います。

 

はい。てなことで本日は1998年のランキングを振り返ってまいりました。

次回は1999年!わお、ノストラダムスの大予言の年だ!懐かしい。

ノストラダムスの大予言?なんじゃそりゃ?』と思われた方は、ぜひぜひ、次回の記事もお付き合い下さい。ふふふふふ。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!