tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日なので~読書感想文の日。ひとんち、って響き

なんか興奮するよね!

 

はい。てなことで1が付く日なので読書感想文をお送りいたします。

 

その前に。

少しだけ昨日の桜花賞の話題を。

仕事だったので番組、録画して見ましたことよ。

『うおぉぉぉっ!』と思わず声が出てしまいました。

いやぁ~、凄かったですよね!

あのラストのスターズオンアースとウォーターナビレラの接戦。なんか思わず、自分が真っ先にゴールに突っ込みたくなるような気持ちで、上体前のめりになってました。

あんな狭いところをうまく切り抜けて、そして抜け出して、最後の最後でトップを奪取!いやだって、正直、あんなところからトップに躍り出るなんて思えないじゃないですか!

いやぁ・・・先週の大阪杯と言う昨日の桜花賞と言い、終盤の接戦が本当に手に汗握る、ドキドキするようなレースでしたな。

スターズオンアース、そして川田将雅騎手、おめでとうございます!

いや・・・なんだ、競馬、面白いな(どーん)

来週は皐月賞。お仕事は・・・休みだといいなぁ~。

 

はい。

てなことで読書感想文に戻ります。

今回ご紹介するのは、タイトルにも書きましたが澤村伊智さんの『ひとんち』です。

短編集で全8篇の物語が収録されています。

 

ひとんち。

人の家、ってことです。

 

良いですよね。人様のお家。

昔から人様のお家を覗きたい欲があった私は、今でも『5千円払うので、どうかあなたのお家の中、私に見学させていただけませんか!?』と拝み倒したい衝動に駆られる時がありますが、それをしたが最後、末路は見えているのでどうにか、ぐっとこらえています。

でも覗きたい。人様のお家、見てみたい。

 

自分の家ではない、他人の家。

人の家は、最も身近にある自分の知らない世界とも言えるのではないでしょうか。

だからこうも心惹かれるものがある、と自分の欲望に正当そうな理由をつけているのですが(笑)ただし同時、知らない世界だからこそ、そこでは自分の常識が通用しないと言うこともあります。

 

冒頭に収録されている『ひとんち』はまさしく、そう言うお話です。

再会した友人の自宅、ひとんちにお邪魔した女性2人。まさしく憧れを絵に描いたような充実した友人の生活に、女性2人は様々な思いを抱きつつ、楽しい時間を過ごします。しかしその中、ふとした会話の流れがきっかけで、友人の家の、ひとんちの、とんでもなく恐ろしく、陰惨な事実を知ることになり・・・と言うあらすじです。

 

いやぁ・・・ぞわっ、です。明かされた事実には。と言うか、変な言い方ですけど、その事実自体が怖い、陰惨だと言うよりも、それを話す友人の語り口調、一切の疑いがないそれが、その声が、口調が、とても怖く、とても陰惨だと感じられました。

小説だから聞こえてくるはずもないその声が、その口調が、耳元で聞こえてくるようで。ぜひCV上田麗奈さんでお願いいたします!

あと登場する女性3人、それぞれ大人になり、社会的な立場が異なっているんですね。そのあたりの生々しさみたいなものも、さすがの一言でした。

 

で、冒頭が『ひとんち』なら、この短編集を締めくくるラストのお話のタイトルは、そうです『じふんち』でございます。

 

人のお家ではなく、自分のお家。

勿論、もろもろの事情があって『そうではないよ』と言う方もいらっしゃるとは思いますが、それでも多くの方にとって『じぶんち』は、自分が最もよく知る世界、最も自分にとってなじみのある世界だと言えるのではないでしょうか。

 

にもかかわらず、その『じぶんち』で、とんでもない出来事に巻き込まれ、それはそれは悲惨な目に遭ってしまう少年を描いているのが『じぶんち』です。

いやなんだ。怖かった。うん。収録されている8篇の物語の中でいちばん怖いと感じたし、いちばん悲しいと感じました。またその怖さの種類みたいなものが、他の作品のそれとはちょっと異なっていると言うのも、今作品のポイントかな、と。

 

修学旅行からじぶんちに帰宅した少年。ところが自宅には、父も母も弟もおらず・・・と言うのがあらすじなのですが、とにかくこの少年が、じぶんちの中にも関わらず家族を探し求める姿、じぶんちが自分の知らない世界になりつつあることに気がついていく姿、そしてあることから、更には友人からの電話である事実を知る姿と言うのは、もう胸がふさがれるような思いが。

途中、少年が家族に電話をかけて、父親と会話することに成功するのですが、そこでの会話が、もう読んでて辛かった(涙)

ラスト、事態は一応の結末を迎えるのですが・・・こんなの悲しすぎるよ・・・。

 

じぶんちは、自分の最もよく知る世界である、そのはずである。

しかしその世界ですら、何の絶対性もなく、ふとした瞬間にそれこそひとんちのように、全く自分の知らない世界、全く自分の常識が通用しない世界になることもある。

そんな『日常』の脆さを描いている作品です。

 

その他にはあるクラスで広がる悪夢、その顛末を描いた『夢の行き先』、孤独な少女と彼女を受け持つ担任の姿を描いた『闇の花園』。

更には街中に、そこかしこに存在している宣伝映像。そこに潜む悪夢のような映像に関係してしまった女性を描く『ありふれた映像』、酷い手荒れを起こしている青年の手、そこに秘められた驚愕の事実を描く『宮本くんの手』、謎の存在『シュマシラ』を巡って恐怖の出来事に巻き込まれる食玩コレクターの男性を描く『シュマシラ』、友人からある荷物を預かることになった男性が巻き込まれる、奇妙かつ恐ろしい出来事を描く『死神』、以上の6篇が収録されています。

 

いや、どれもそれぞれ毛色が違う物語でありつつ、実に面白かったです。

『夢の行き先』は悪夢がクラスメイト全員に、それこそ感染病のようにして広がっていく、という発想が、既に凄い。

『闇の花園』は中二病溢れる文章から始まります。そこから受ける印象、そして孤独な少女、母親の身勝手に振り回される気の毒な少女と言う印象も重なって、ある種の面白さ、痛々しさ、そして『早く!担任!彼女を助けてあげて!』と言う気持ちにさせられるんです。

ところがどっこい・・・それら全部を覆すような、超絶展開が待ち受けるラスト。いやでも、この作品もまた『こう言うことが絶対に起きないと、誰が言いきれる?』と言われているようでぞっとしないわ。

 

『ありふれた映像』は視覚にめちゃくちゃ訴えかけてくる作品です。文章で書かれているだけなのに、それがもう、まざまざと絵として想像できるもんだから怖い。

ラスト、主人公の女性がありふれた街中の映像の中に、ある映像を見るんです。その映像が、もうめっちゃ想像できて、最近では夜中トイレに行くたび、暗闇の廊下の中にその映像を思い描く自分がいます。

とんだドM。

 

『宮本くんの手』と『死神』は、なんでしょ。『そんなこと、あるはずないよ』『そんはず、あるわけがないでしょ』『そんなもん、ただの偶然だよ』と笑い飛ばしたくなるような作品、展開であるにも関わらず『いや・・・本当にそうなのか?』と、その思いが揺らがされるような作品でした。

ある存在やある現象とある出来事を結ぶ関係。いわゆる因果関係って言うのでしょうか?それはどう考えても『そんなはずないやろ~』と鼻で笑い飛ばしてもおかしくないレベルのもののはずなのに、『えっ?本当にそう?本当に『そんなはずないやろ~』って笑い飛ばせる?』と価値観が揺らがされるような物語、展開、ある種の信憑性すら感じさせるような仕上がりになっているのが、もうさすがなんですよねぇ・・・お見事でしかないわ。

だからこちらの作品もまた、日常、自分のよく知る世界、その脆さを描いた作品だと思いました。

 

『シュマシラ』は語弊ある言い方かもしれませんが、比嘉姉妹シリーズを彷彿とさせるような、そんなお話だったな、と思いました。

謎の存在『シュマシラ』、その正体を探る男性3人がとんでもない目に遭うんですけれど・・・その舞台がこれ、めちゃくちゃ恐ろしい。

いや、こんな動物園、もはや動物園じゃないし。でもどうなんだろ。これもまた、絶対にないとは言い切れませんよね。もしかしたら日本のどこかに、こう言う場所があるのかもしれない。そう言う想像が、本当に膨らんでいく、そう言うふうな物語になっていると言うのが、またこれうまいんだよなぁ~。

終盤、2人の男性が遭遇する出来事、その描写の臨場感、生々しさ、凄まじさ、恐ろしさ、そうしたものの描写は比嘉姉妹シリーズのそれを彷彿とさせるようで、いやいや、怖いのに面白く、面白いのに凄惨で、もうなんか『いやぁぁぁぁぁ!』となりました。

怖い。なのにうまい。そして面白い。

 

はい。全体を通して感じたのは、ひとつは澤村さんの作家としての多彩さみたいなものでした。収録されている8篇、本当にひとつひとつの作品の色が異なる、面白さが異なっている、味わいが異なっているのは凄いなぁ、と。

ほんと、澤村さんにはこれから先も、どんどん物語を生み出して頂きたいものです。

 

それから短編なんだけれど、登場人物たちの繰り広げる会話、そこから物語が広がっていく、そして広がった物語が終着を迎えると言う、物語の構成のうまさも相も変わらずお上手だよなぁ、と言うのも改めて感じました。

いや、プロの作家さん相手に本当に失礼な感想なのですが(すいません)

だからものすごく作品世界の中に、スムーズに誘われるような、そんな感覚があるんですよねぇ~。気が付いたら登場人物と共に、作品の中にいる、と言うか。

 

あとこれは本作品に限った話ではないのですが、変な言い方、普通に考えたら現実には起こりえない、あり得ない出来事なのに、そうとは思えない。

実は私がまだ経験していないだけで、こういう出来事は、私の世界、私の日常のそこかしこに隠れ潜んでいるだけなんじゃないか、そんなぞわり、としたリアリティさみたいなもの。それが全編に漂っているのが、そしてそれが作品を読むことでひしひしと伝わってくるのが、本当に魅力的なんですよねぇ・・・いやぁ、うまいわ。

 

てなことで、本日は澤村さんの短編集『ひとんち』をご紹介いたしました。

私のように人様のお家に対して並々ならぬ興味を抱いている方も、そうでない方も、そして澤村さんファンの方も、澤村さんの作品をまだ読んだことがないと言う方も、どなたでも楽しんで頂ける短編集ですので、ぜひぜひ読まれてみて下さい!

 

てなことで本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!