tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~1995年

4勤2ターン目突入!

頑張れ!ここを乗り切ったら、犬の世話をしなきゃならないから早起きしなきゃならないけど、3連休だぞ!それ以降もしばらくは4連勤、ないぞ!

頑張るんだ、私!

 

はい。

 

このミステリーがすごい!』30余年の歴史を個人的に振り返ると言う、このシリーズ記事。順調に書くことができていますね、良いことだ。

てなことで1989年から始まりましたこの記事も、1995年までやってきました。

 

ではでは。毎回恒例、1995年に何があったのかを、まずは見ていきましょう。

あいやー・・・そうか、この年は年明け早々に阪神淡路大震災が発生したんだな。そして3月には地下鉄サリン事件が発生・・・わずか2か月間で、こんなにも大きな、衝撃的な出来事が発生していたのが1995年なんですね・・・。

どちらの出来事も、テレビのニュースなどの映像で鮮明に覚えているなぁ。

 

あとアレだ。最近、仕事先の大学生さんと話していて『阪神淡路大震災とか地下鉄サリン事件とか、もしかして生まれる前の出来事?』って聞いたら『そうですね』って答えられて、結構な衝撃を受けたのも覚えているぞ。

まぁ、当然のことなんですけれどね。そうかそうか・・・年を取るって、こう言うことなんだなぁ、と身に染みて実感した記憶があります(遠い目)

 

またこの年には映画『セブン』も公開されていますね。

いや、なんか阪神淡路大震災地下鉄サリン事件→そして『セブン』と言う並びが、自分でもどうなのよ、と思わざるを得ないのですが(汗)

何と言うか、ええ、あの後味の救われようのなさが、しかし私は嫌いではない映画です。大声でおススメはできませんけど。

 

はい。いや、なんかほんと、自分でも『どうしてこんな暗い話題ばっかりとりあげた!』と思うんですけど・・・なんか冒頭から暗くなっちゃったよ。

 

いかんいかん。気を取り直してまいりましょう!

ja.wikipedia.org

はい。いつものようにリンクを貼り付けておくので、1995年のランキング結果を見ながら記事を読んで頂くとわかりやすいかと。

 

ではでは。この年の『このミステリーがすごい!』で1位に輝いたのは山口雅也さんの『ミステリーズ』でございました!山口さんの作品は、1990年代前半にはめちゃくちゃランクインしていましたが、満を持してこの作品で初の1位獲得となったわけですね。

で、ベスト10にランクインしている作品の中で、私が読んだ作品と言うのは・・・まずは同率7位にランクインしている作品のひとつ、京極夏彦さんの『姑獲鳥の夏』ですね。それから5位の稲見一良さん『猟犬探偵』。そして4位の花村萬月さんの『笑う山崎』と3位、髙村薫さんの『照柿』、1位の山口さんの『ミステリーズ』も読んでおりました。

 

ではではリズムよく、振り返ってまいりましょう。

まず『姑獲鳥の夏』です。京極さんが手掛けられている大人気シリーズのひとつ、百鬼夜行シリーズの記念すべき1作品目にして、その仕掛けから非常に大きな話題にもなった作品でございます。

冴えない小説家の関口巽は、古くからの友人である中禅寺秋彦に、奇怪な噂について尋ねる。産婦人科を営む久遠寺家、その次女が20ヵ月もの間、身籠ったままでいると言う噂だった。中禅寺はその噂を耳にしても驚く様子は見せず、それどころか『この世には不思議なことなど何もないのだよ』とすら口にする。

古書屋でありながら、同時に拝み屋としての顔も持つ中禅寺ー京極堂が挑む、久遠寺家隠された闇とは。そして20ヵ月もの間、身籠っている妊婦に隠された謎とは、と言うのが、本作の簡単なあらすじです。

 

いやー・・・もう初めて読んだ時の衝撃ったら、今でもまざまざと思い出せるわ。京極堂が繰り広げるありとあらゆる含蓄、それらすべてが伏線になっていると言う点。知識欲を大いに刺激されると言う点。そして個性豊かなキャラクターたちが実に魅力的な点。物語の先が全く読めず、ぐいぐい、作品の、物語の世界へと引きずり込まれていくと言う点。

あの凶器のような分厚さゆえ(笑)最初は『読了できるかな』と不安になりましたが、いやいや、あっと言う間に読了できましたことよ。そしてその後、既刊のシリーズ作品をずぶずぶ、読み進めていったと言う(笑)

まだ本シリーズを読んだことがないと言う方が、心底、心底っ羨ましいわ!新作『鵺の礎』はどうなっているのでしょうか!?生きている間に読みたいよ!

 

続いては、稲見さんの『猟犬探偵』です。稲見さんの作品の素晴らしさは、ここ数回のこのシリーズ記事において熱弁してきたので、ある程度は伝わっていると・・・し、信じたいのですが(汗)

失踪した猟犬を探し出すことを専門にしている探偵、竜門。彼が相棒の猟犬、ジョーと共に、様々な事件を解明していく、と言うのが本作のあらすじです。前回、紹介した『セント・メリーのリボン』の続編にあたる作品です。

 

温かみ、美しさ、やさしさ、物語としての豊潤さ・・・そうしたファンタジー的な要素と、シビアさや厳しさ、不器用さなどのハードボイルド的な要素が奇跡的に融合しているのが、稲見作品の魅力だと、私は思っています。

で、本作品に収められている作品もそうなのですが『悪役と鳩』と言う作品に関しては、ハードボイルド的な味わいが強い、稲見さんの作品にしては少し珍しい読後感があって、それがまた作品をぐっ、と引き締めているような印象があります。

あととにかくこのシリーズ、犬とか馬とか、動物好きな方にとっては、なんかもう、たまらない作品になっていると言うのも大きな魅力なんですよねぇ。人間は勿論のこと、登場するそれらの命の体温をも、しっかり伝わってくる作品と言いますか。はい。

 

そして4位は花村さんの『笑う山崎』ですね。花村さんの作品は、とにかく暴力、血、ともすれば顔をそむけたくなるような残酷な描写も少なくないんです。なので万人に『これ、面白いよ!』とすすめるのは、なかなかためらわれるのですが、勿論、今作品も例外ではありません(汗)

冷酷無比なヤクザ、山崎を主人公とした連作短編集です。彼がマリーと言う、フィリピンの女性を妻にしたところから、暴力と血に彩られた、しかしどうしようもなく純粋で無垢な、それ故に常軌を逸した愛の物語が始まる、と言うのが簡単なあらすじです。

 

血と暴力、そして残酷、しごく身勝手な男の描写が溢れているのに、それでも、花村さんの作品を私が面白いと思うのは、そこに人間の、どうしようもない性、業にも近い何かがある、と思うからです。それは時に痛快に、そして時に物悲しく、胸に響くんだよなぁ~。そしてそれが、マシンガンを撃つかの如く、実に短くリズミカルな文章で描かれており、そこから花村さんの哲学、登場人物たちの身勝手極まりのない、だけど濃厚な哲学のようなものを感じるからです。

先ほども書きましたが、万人にはおすすめしにくい作品です。が、もし、暴力描写などが苦手でなければ、是非とも、読まれてみて下さい。

 

そして3位は髙村さんの『照柿』ですね。合田雄一郎を主人公としたシリーズ作、初期3部作の2作目にあたります。

ホステス殺害事件を追う合田は、線路への飛び込み事件の場に遭遇する。列車に轢かれ死んだ女、その女とホームで掴み合っていた男の妻、佐野美保子。合田は、その美保子にどうしようもなく心を惹かれてしまうのだが、美保子は合田の幼馴染、野田達夫と逢瀬を繰り返している仲だった。美保子の存在を軸に、嫉妬と猜疑心に揺れる男2人の、そして美保子の魂の彷徨を描いた作品、と言うのが本作のあらすじです。

 

初期の合田シリーズの魅力のひとつとして、私は『どうしようもない人間の、どうしようもない辛気臭い部分、それが徹底的に、炙り出すように描かれきっている』と言う点が挙げられると思うのです。

普通の作品、作家さんなら3行ほどで済ませる感情描写を、髙村さんは3ページかけて、徹底的に描かれている。天井から垂らされている鎖のチェーンが、じゃらじゃらと床に円を描いていくかの如く、一文が非常に長い文章で、その辛気臭い人間の心理状態が徹底的に描かれているわけですから、もう読んでいる身としては、ヘヴィ極まりない(笑)

なんですけど、それが、そのヘヴィさがクセになる。ずしん、ずしん、と腹の底に、髙村さんが描かれる描写が落ちて、溜まっていくようで、たまらないのです。うふふ。

 

で。辛気臭さのレベルで言えば、3部作の内、この『照柿』がMAXだと思います。もうね、ほんと、作中の季節は夏。地獄を思わせるような酷暑なんですけど、それに浮かされたかのように、現世を生きながら地獄に片足突っ込んでんじゃないのか、とツッコミ入れたくなるような(笑)精神状態の登場人物の心理状態の辛気臭さたるや・・・救いようがないレベルで、だけどそれがもうたまらん!それほど派手さがある物語でも、前作『マークスの山』のような疾走感があるわけでもないからこそ、一層、この辛気臭さが際立って感じられるのですよ、かっはー!(歓喜)

嫉妬と猜疑心にまみれた男2人と、全く何を考えているのかわからない女1人の、精神の迷宮。それに取り込まれ、とらわれる感覚を是非とも、味わって下さい。

 

なお。本作品もやはり単行本→講談社文庫→新潮社文庫と3段階、出版がされています。そしてやはり物語の根本に大きな変化はありませんが、結構、重要なセリフが消えていたり、読後感が違っていたり、形態によって抱く所感は大きく異なりますので、ぜひぜひ、全形態、読まれることをおすすめします!

 

栄えあるトップに輝いたのは山口さんの『ミステリーズ』、こちらは短編集でございますね。全10編、作品の雰囲気も、魅力も、味わいも、何もかもが異なる、非常に個性豊かな短編が10編も収録されている、と言うだけでも、もうたまらないじゃないですか!

加えてそこに、山口さんの作品らしい遊び心と含蓄、エスプリ、ぞっとするような、だけど自分にも当てはまるのかも、と思わせるような人間の本性のようなものが描かれていると言うのも最高なのです。

 

あれですね。冒頭にも書きましたが山口さんの1990年代前半、『このミステリーがすごい!』にランクインした作品を振り返ってみると、改めて、人間の心、そのダークな部分、純粋さも含んでいるが故のダークさのようなもの。それをユーモアを交えつつ、しかし時にはぞっとするような筆致で描かれていたなぁ、と感じましたな。はい。

あと何と言うか、映画で言ったら洋画、みたいな(どんなたとえ・・・(汗))。今作品の読書感想文の記録を見てみても『アメリカンテイスト』と言う感想を書いていたのですが、『生ける屍の死』にしても『キッド・ピストルズ』シリーズにしても、やっぱり舞台が日本ではない、登場人物も日本人ではないからか、なんかほんと、洋な雰囲気をぷんぷんと感じて、そこも凄く読んでいて新鮮な感じがするし、楽しいのです。

 

・・・尤も山口さんは、日本を舞台にした、日本人の登場人物の小説も多数、執筆されています。はい。

 

と言うことで本日は、激動の出来事が年明けに相次いだ1995年の『このミステリーがすごい!』を振り返ってまいりました。

てなことで次回は1996年ですね。いいぞ、本当のこのシリーズは順調に進んでいるぞ。よろしければ引き続き、お付き合い下さい。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!