tsuzuketainekosanの日記

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『このミステリーがすごい!』を振り返ろう~1989年

はい。

と言うことで『このミステリーがすごい』の歴史を振り返るシリーズ、2回目でございます。

今回は1989年ですね。

 

てなことで、こちらのウィキペディアを参考に、記事を読んでいただくとわかりやすいかと思います。

ja.wikipedia.org

ちなみに1989年の次は1990年なわけですが『このミステリーがすごい』では、この次の回から、『表記の前年のベスト』が選考対象となりました。そのため1990年度版と言うのは存在しておりません。永久欠番扱いらしいです。成程。

 

てなことで1989年。昭和が数日で終わり、新たな元号、平成が始まった年ですね。

あれだ。ミステリーファンにとっては横山秀夫さんの作品『64』でおなじみの年かもしれないですな。おなじみ、ってのもちょっと変な言い方ですが。

昭和天皇崩御されたわけですが、いや、なんか幼心ながら『なんかとんでもないことが起きたんだなぁ~』と思っていたのを、今でもはっきりと記憶しています。

何と言うか、テレビから数日間、色と言う色が消えていた、すべての番組がモノクロに支配されていた、そんな印象が残っています。

またベルリンの壁が崩壊、冷戦の終結と言った出来事もこの年に発生したとのこと。昔はそれらの出来事、なんのことやらさっぱりでしたが、曲がりなりにも最低限の知識を得られた今だと『ほー、いろいろ激動した年だったんだなぁ』と感じますね。

 

はい。

 

ではでは、そんな年のベスト10、その中から私が読んだ作品について、振り返っていきたいと思います。

この年、1位を獲得したのは原尞さんの『私が殺した少女』でございました。私立探偵・沢崎を主人公とするシリーズの2作品目にして、第102回の直木賞受賞作品でもあります。

このシリーズ、私は読んだことがないのですが、その後も『このミス』では度々、ランクインしていている、人気、そして長きにわたり支持されているシリーズでもあります。2019年度版の『このミス』では、実に30年ぶり!に『それまでの明日』で1位を獲得されているんですから・・・いやぁ、凄い。凄いわ。

 

依頼人が面会にしてきた場所は、目白にある依頼人の自宅だった。ブルーバードを走らせ、沢崎はその邸宅へと向かうも、じょじょに彼は、自身が思いもしていなかったような誘拐事件に巻き込まれていることを知る、と言うのが本作のあらすじ。

ハードボイルド作品であり、同時に緻密なストーリー展開とサスペンスの魅力にも溢れた作品とのことで・・・いつか、読んでみたいなぁ~。

 

てなことで、この年、ベスト10にランクインした作品の中で私が読んだことがあるのは・・・まず5位にランクインした岡嶋二人さんの『クラインの壺』、それから8位の山口雅也さんの『生ける屍の死』、そして10位、折原一さんの『倒錯のロンド』ですね。

2位にランクインしている北村薫さんの『空飛ぶ馬』も、読んだような気がするんですけど、いまいち自信がございません・・・どうだったかなぁ・・・。

 

てなことでまずは折原さんの『倒錯のロンド』からです。なんと!今知ったのですが折原さん、中島敦さんが伯父とのことで・・・え?すごくない!?

折原作品と言えば叙述トリックが登場することでおなじみ、そのことから折原さん自身も作家としては『叙述トリックの使い手』と呼ばれることもあるとのことですが、こちらの作品もやはりそのトリックがさく裂しています。

 

受賞間違いなし、これで作家への道が開ける。そう自負した推理小説新人賞応募作品が、何者かに盗まれてしまった。そこから始まる『原作者』と『盗作者』の、まさしくロンドのような、緊迫感溢れるやり取り。様々な思惑を抱えた登場人物たちが行きつく、事件の結末とは・・・と言うのが、簡単なあらすじです。

 

正直、どんなトリックだったとか、どんな話だったとかは覚えていない(汗)、いないんですけど、とにかく『やられた!騙された!そうだったか!』とラスト、にやり、としたのは確かです。はい。

あれなんだよ。折原作品、他にも何作か読んでいますけど、結局、私、叙述トリックが好きなんだよなぁ~。単純だから、出された情報、ほいほい信じちゃって気持ちよく騙されると言う(笑)。なので私と同じように『私、単純!人に騙されることには自信がある!』と言う方は(笑)是非とも、折原さんの叙述トリック作品、手に取られてみて下さい。なお折原さんの作品は、この後も続々『このミス』にランクインしていますので、折原さんも『このミス』常連作家さんでございますね。

 

続く8位は・・・さぁ、来ましたよ!山口さんの『生ける屍の死』です。ミステリー界に、今もなお燦然と輝く氏のデビュー作と言っても過言ではないでしょう。

正直『8位』と言う結果を知った時には『え?低すぎへん?』と思ったのですが、何と言うか時代を先取りし過ぎていた、時代がこの作品に追い付いていなかったんだろうなぁ、と言う気がします。

それが証拠に本作品は、1998年の『このミス』内で行われたベスト・オブ・ベストで1位を獲得。更に2008年、20年間の作品の中からベストを選ぶ企画では2位を獲得、そして2018年の30年間の作品の中からベストを選ぶランキングでは、堂々の1位を獲得しています。

 

いわゆる特殊設定、死者がよみがえる、ゾンビミステリー(まとめすぎ)としては最近だと今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』が思い出されますけど・・・そんな作品が、今から30年以上前に登場していたんだぜ・・・すごくね?

 

物語の舞台は1900年代のアメリカ。

ふふ。ネタバレになっちゃうかもしれないんですけど、舞台が『日本』じゃなくて『アメリカ』ってところが、既に今から考えると、そうか、伏線だったんだよな、と言う気もします。ふふ。

その各地で、死者が墓地からよみがえると言う出来事が頻発します。とある州にて大規模な霊園を営んでいるバーリイコーン一族。その一族のパンク青年、グリンはお茶会の日、毒を誤飲し死亡しますが、すぐによみがえります。

霊園の支配人であるスマイリーは、死期が近い。ならば自分は、その遺産相続争いの巻き添えで、計画的に殺されたのではないか。そんな疑問を抱いたグリンは、死者であることを隠しながら、自分の死の真相を突き止めようと考えます。しかし新たな事件が発生、更に夜な夜な行動する殺戮者も霊園には出現。

肉体が腐り果ててしまう前に。そのタイムリミットと戦いながら、自分の死の、そして一連の出来事にグリンは挑む・・・と言うのが簡単なあらすじです。

 

5W1H、『いつ』『どこで』『だれが』『何を』『なぜ』『どのように』、その謎を解明するのがミステリの醍醐味と言うか、一般的な流れだと思います。で、作品によって、どこの部分に重きを置くか、それが変わってくるのもミステリーと言うジャンルの面白いところだと思うのですが。

今作品においては勿論『だれが』『どのように』と言った部分が丁寧に描かれているのは言うまでもないことなんですけれど、個人的には『なぜ』、すなわちWhyの部分にめちゃくちや重きが置かれている、そしてその部分がめちゃくちゃ衝撃的であったのが、とても印象に残っています。

 

そりゃそうですよね。だって、死んだ人がよみがえるんですよ?あれやこれやと計画を張り巡らせて殺人を犯して命を奪っても、結局、そいつ、ひょっこりとよみがえってくるんですよ。

頑張って殺した価値、ないじゃないですか!

ですよね。うん。だけど殺人は繰り返される。なんでそこまでして、犯人は殺人を犯すのか、犯したいのか、犯さずにはいられないのか。

 

多くは語るまい。とにかく衝撃だったそのWhy、まだ未読の方は、是非ともご自身の目でご確認ください。

ヒントは・・・冒頭にも書きましたが、舞台がアメリカだと言うこと。日本とは、当たり前たけれど、何もかもが違うと言うこと。

宗教(ぼそっ)

 

またラストが哀切極まりないんですよ。それまでの死者と生者の狂乱のような物語が解決しての、静謐なラストで。『あぁ、物語は終わったんだな。そして終わりを迎えるんだな』と言うのを、本当に感じさせるんです。そしてその静謐さが胸にひたひたと迫ってくると同時、映像としてもありありと頭の中で想像できて、それは、美しさすら漂わせていて。

どうか、どうか、今度こそ安らかな死を、と祈らずにはいられない。

そんなラストなのです。

 

そして5位にランクインした岡嶋さんの『クラインの壺』ですね。今更ながら『クラインの壺』ってなんだ、と思って調べてみたら、表裏の区別も境界も持たない2次元曲線の一種とのことです。

 

なんのこっちゃい!

ja.wikipedia.org

詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。

・・・本作中でも『クラインの壺』に関しての説明、あったかな。思い出せない。

 

てなことで、簡単なあらすじを。

主人公、上杉がゲームブックシナリオに応募した作品が、バーチャルリアリティシステム『クライン2』によるゲームの原作に採用された。それを機に、上杉は、テストプレイヤーとしてそのゲームに参加することに。そこで上杉は、原作のストーリーを知らない立場からゲームに参加したアルバイト、高石梨紗と知り合います。

原作者の上杉であってもゲーム攻略は難易度が高く、ゲーム内で何度も死を迎えてしまいます。ゲーム初心者の高石は、ゲーム内で捕まってしまい、拷問を受けることも何度もある、と口にします。

そんなある日、その高石が突然、テストプレイヤーを辞め、疾走してしまいます。更に上杉は、一度だけ会ったことのある開発者、百瀬から『戻れなくなる前に引き返せ』と言う警告をゲーム内で受けるのですが・・・。

 

そうか。バーチャルリアリティVRですね。これ、今の時代ならなーんにも珍しいことはない、むしろもう当たり前と言うか、使い古されている感すらある設定ですけど、ここの作品が発表されたの、30年以上前のことですよ。

そりゃあ、もう、それだけでも驚くわな。『なんのこっちゃい!』と当時の読者の方の多くは、思われたのではないでしょうか。いや『そんなことないわ!バカにしすぎ!』と怒られるかもしれませんが、でもほんと、まだまだVRが一般的でなかったその時代に、それを設定に取り組み、ミステリーとして描いた作品が生み出されていたのが、本当に凄い。

 

てなことで・・・そうだなぁ。ネタバレになってしまうかもしれないのですが、VRがもう一般的になり過ぎている現代にこの作品を読むと、ラストはそれほど目新しくもない、恐怖も感じにくいかもしれないなぁ、と思います。はい。

ま、あの、身も蓋もない言い方をすると、想像通りのラスト、と言いますか。はい。

 

いや、でも、私ですらこのラストは予想できた、と言うか、流れ的にそう言う予感がぷんぷんしているわけなんですよ。はい。

なんですけど、もうめちゃくちゃ怖かったです。

詳しくは書けないけど、先ほど紹介した『クラインの壺』の正体。

表と裏の区別がない。境界も持たない。表をたどっているつもりが、裏になっていて、でもそれは実は表で、いやそもそも表と裏ってなんだっけ、みたいな。

自分が生きている、立っている、この『世界』は果たして、本当に『現実』のものなのか。 『本物』なのか。いやそもそも『現実』ってなんだ、『本物』ってなんだ、みたいな、そう言う堂々めぐり、考え出すと延々と沼にはまってしまいそうな、じわじわと呼吸が苦しくなってくるような、そんな恐怖、それを私はラストに感じました。

 

30年以上も前に書かれた、ミステリーとしては勿論のこと、SF作品としても抜群の面白さを持っている作品。ぜひぜひ、未読の方は手に取られてみて下さい。

なお作者、岡嶋二人さんは、前回の記事でも書きましたが、井上泉さん(現在は井上夢人さん)と德山諄一さんによるコンビのペンネームですが、本作品の刊行を最後に、コンビは解消されています。

 

てなことで、異常が1989年度版の振り返りでございました。冒頭にも書きましたが、永久欠番となった1990年度版を飛ばして、お次は1991年度版です。

引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです。

 

ではでは。本日の記事はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!