tsuzuketainekosanの日記

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『機龍警察 白骨街道』の感想~ほのかなネタバレも添えて

『ネタバレ』ってどこまでがネタバレになるんですかね?

たとえばミステリ小説の感想なんかで『犯人は〇〇でしたよ!』って書くのは、明らかなネタバレであると言うのは、馬鹿な私でもわかります。はい。

じゃあたとえば『〇〇が〇〇に対して『〇〇』と言った、このシーンがめちゃくちゃ印象に残った』とか『〇〇の変貌っぷりは笑うしかなかった』とか言うのは、これネタバレになるんですかね?

 

と言うことで月村了衛さんの『機龍警察』、そのシリーズ最新作『白骨街道』を少し前に読了したので、その感想をぶちまける記事です。

そして私の中で『どこからが明確なネタバレで、どこからがそうではないのか』と言うのがいまいちはっきりとわからなかったので、タイトルに『ほのかなネタバレも添えて』と書きました。

なので何と言うか『私はまだ読んでない!だから一切、余計な情報は仕入れたくない!』と言う方は、そっとこの画面を閉じてくださった方がよろしいかと思います。お願いいたします。

 

あと『白骨街道』を読んだ方にしかわからない感想文となっています。

これを読んだ方がひとりでも『機龍警察』に興味を持って下されば、と言う願いもありますが、まぁ、『機龍警察』シリーズ全体については、いつか必ず、紹介記事を書きたいと思っておりますので、よろしければそちらもお付き合い下さい。

 

てなことで感想です。

物語の終盤も終盤で、ユーリが夏川さんと由起谷さんのコンビに、言葉を託すじゃないですか。城木さんに伝えて欲しいと言う言葉を。

その言葉を見た瞬間、大げさじゃなくて『心が震える』と言う感触を実感しました。そしてその時のユーリの、まっすぐで澄み切った青の双眸、それがまざまざと目に見えたような、そんな感覚も。

 

そしてこの言葉、このやり取りとの後の姿さんが、とある人物の親族のもとを訪れる流れ。そこからの一連の流れ。

これがもう、演出として、構成としてたまらなく憎いし、たまらなくやるせなかった。

その人物、これはまぁ、今回の事件の黒幕の1人なんですが、その人の心底からの思いが、どちらであったのかはわからない。永遠の謎のままです。

ただそれでも、それでも彼の純粋な理想が、願いが、思いが守られるような、そんな世界であってほしい、と祈るように思ったし、だけど世界は、彼が、彼だけでない、この物語の中で奮闘している人物たちが生きる、身を置く、ありとあらゆる意味を持つ『世界』は、そんな純粋な理想や願いをあざ笑い、いともたやすく汚すほどの残酷なものであるというのも、十分すぎるくらいに感じられて、ただただやるせなかった。

 

理想に燃えていたその人物が、だけど世界の現実に触れ。

それでも、どうにか理想を、願いを守り続けようと奮闘していて、だけど『世界』の現実に、繰り返される現実に、あるいは『世界』からの誘惑に、それをも捨ててしまうような、自分の、実は心の奥底にあった声に、一切を支配されてしまったのだとしたら、と考えると、切なくてたまりませんでした。

 

ユーリが城木さんに伝えて欲しいと託した言葉。

そして姿さんが触れた、ある青年の、純粋すぎる理想、願い。

それらが置かれている『世界』の底なし沼のような、汚泥のように絡みついてくる私利私欲に満ちた有様を思い、だけどこの終章に名付けられたタイトルが『人間道』であること、そのことに、少しだけ救いがあったような。

 

『世界』は変わらない。

ただそれでも、少しでも『世界』を良くするために、そのために、奮闘する人間たちの姿がそこにはある。

『人間道』をまっとうに、まっすぐに、向かい風の中でも突き進もうとする人の姿がある。そこにどうしようもなく、胸を揺さぶられる。

あー、熱い。たまんない。

 

はい。てなことで面白かったです。何て言うんでしょ。

シリーズものに関しては『本作がシリーズ最高傑作』と言う惹句がよく利用されたりするじゃないですか。

で、個人的に今回の『白骨街道』は『最高傑作』だと思ったんです。うん。

でも今までの作品、1作品目から始まって『自爆条項』『暗黒市場』『未亡旅団』『火宅』『狼眼殺手』も全部、『最高傑作』なんですよ。

なんだろ。ほんと、どの作品もめちゃくちゃ面白くて、そしてどの作品も前作の『最高傑作』を更新していく、でもどの作品も『最高傑作』であることに変わりはない。

非常に矛盾したことを言ってるのは百も承知なんですけど(笑)でもほんと、今回の『白骨街道』を読み終えて、しみじみ、そんなことを感じました。はい。

 

なんだろうなぁ・・・前作『狼眼殺手』が、こー、それまでアクセル力いっぱい踏み込んだ状態で驀進していた物語が、急にぱたん、とブレーキ踏んで、急停車した。そしてがくん、と一段と深みに落ちた、という印象があったんです。物語、シリーズとして。

 

で、今回は急停車して深みに落ちた状態から、再度、アクセルを思いっきり踏み込んだ。踏み込んで、驀進した物語の果てに待ち受けていたのは、深みも深み、もはや深淵に近いような、そして身動き一つとれないようなそこであった。

そこにはわずかな光も届かないけれど、でも絶望するにはまだ早い。何より絶望している場合ではない、そんな気持ちのありどころが改めて強く示された、そんな印象も抱いた物語だったように思います。はい。

 

ってか毎回、思うんですけど・・・短い。

いや単行本400ページオーバーで、冷静に考えれば決して短くはないんですけど(笑)

でも短い。『早く先へ進みたい!読み進めたい!』と言う面白さに突き動かされる焦燥にも似た気持ちと、でも『嫌だ。読み終えたくない!読み終えたら次の作品が出るまで、また待たなきゃならないじゃないか!』と言うページを繰る指を押しとどめたくなるような変な自制心が働きそうになると言う、相反する感情が私の中でせめぎあうんですよねぇ・・・。

 

読み終えた時の、あの心地よい疲労感すら存在する満足感と、『終わってしまった・・・終わって、しまった・・・』と言う絶望感にも似た寂しさと言ったら・・・どうしてくれるんだい!

 

はい。

 

てなことで、いや、本当に面白かったです。

なんでしょ、個人的には、前回『狼眼殺手』で機甲兵装戦が描かれていなかった、アクションシーンがほとんど描かれていなかった。そのタメを『これでもかっ!』と晴らすかの如くの、機甲兵装戦、そしてアクションシーンのオンパレードが、もうたまりませんでした。

かっこいいんだよ・・・もうその壮絶さとか、臨場感とか、迫力とか。緊迫感とか、寺汗握るそれらの一切が、本当に文章で描写されているのに、ありありと想像できる、頭の中で描けると言うか。

 

そんな機甲兵装戦に関して言えば・・・うふふ。チャイニーズマフィアのあの方が、よもやよもや、そんな人物だったとはね。うふふ。

いや、でも、彼の戦いに見惚れると言うか、その圧倒的な強さにただただ美しさすら感じ、見惚れるしかないような姿さんの気持ちと言うのは、個人的にはめちゃくちゃ理解できるような気がします。

 

彼の強さ、そしてその登場の仕方などに関しては、アマゾンレビューの中には批判的な意見も見られましたね。まぁ、わからないでもないのですが。

個人的には『お約束』だと思いました。そして創作物における『お約束』は使い方次第。それをどう生かすか、どう描くか、どう使うか。

『お約束』だからこそ、一歩、間違えると陳腐な演出にすらなってしまうけれど、この辺りはさすがの一言。この作品、さらにこのシリーズにおいては、その『お約束』すら、ドラマチックで、かつその展開を受けての展開であったり、登場人物の心情の深堀などがされているから、本当に意味ある『お約束』なんですよねぇ。うん。

 

あとライザ、強い。

かっこいい。美しい。もうほんと、サバンナを獲物を仕留めるために疾走する豹を思わせるような、そんな壮絶な強靭さと孤独な美しさがたまらんわ。

 

そしてそして・・・姿さん、ユーリ、ライザに続く4人目として・・・重要な新キャラクターも登場いたしましたね。まさか、まさかの展開。

いや、でも・・・好き(好き)

この方の本格的な活躍・・・でも今作品でも、だいぶ派手にご活躍されていたように思うのですが(笑)は、とにもかくにも次作以降と言うことで・・・あー・・・楽しみが過ぎる。

 

とにもかくにもアクションシーンたっぷりな本作だったわけですが、もちろん、それだけではなく、ミステリ的な要素、そして重厚な人間ドラマもたっぷりと描かれていました。

ミステリ的な要素、途中で起きた殺人の謎解きの真相は・・・あー、これは本当に衝撃的と言うか、胸を突かれたような思いがしたと言うか。

 

ってか奇しくも、少し前にニュースで話題になっていた(そしてオリンピック開始とともに、すっかり報道されなくなったように思うのですが)ミャンマーでのクーデターやロビンギャ迫害の問題。

それがこの作品では生々しい筆致で描かれているのですが、このあたりのことを無知も無知、ほとんど何も知らない自分の無知さ加減を本当に恥ずかしく思いました。

また勝手に『え?でも日本ってそんなに関係してないんじゃないの』と思っていたのですが・・・そんなことはなかったんですね。

後に新聞で、これも偶然、このあたりの問題と日本との関りを取り上げた記事が掲載されていたので読んだのですが・・・あー・・・なんかもう、ほんと、この作品で書かれていた通りのことが、現実でも繰り広げられていたのだなぁ・・・。

なー・・・なんだろ。なんか『民族浄化』って、すごい言葉ですよね。恐ろしさすら通り越して、おぞましさすら感じる言葉と言うか。

『民族』を『浄化』する。『浄化』ですよ、『浄化』。

ただその『民族』であること、それであることに生まれたと言うだけで、『浄化』される、迫害される恐れがある、否、現実としてそうされている人がいる。

その恐怖や悔しさや悲しみや、何より虚しさや怒りはいかばかりだろう、とあの犯行を行った人間の心中に、ちょっと涙が出そうな思いがしました。はい。

 

そしてそして・・・城木さん。ふふ。たまらん。もう頭もよくて、仕事もできて、イケメンで、人望もあるいい男が、こんなにも苦しんでいるのがたまらん(鬼か)

いや、でもきっと毬絵さんも同じような気持ちのはずだよ!(一緒にするな)

 

あー、毬絵さんのあのラストの変貌にも、やはり疑問の声などがレビューでは見られましたが・・・毬絵さんが城木さんに対して『自分も同じ』と言うような言葉を、口にしましたよね。そこがすべてなんじゃないかなぁ、と。

一族の中、家の中、その中でしか生きられないことのしがらみ。その中で圧倒的な孤独があった。

 

それが彼女を変化させた。

ただ彼女にしたら、城木さんが自分と同じところまで堕ちてきてくれることを、どこかで期待していたんじゃないのかなぁ、と言う気もするんですよね。

期待もしていた。でも同時、やっぱり利用できるものは利用する、その気持ちもあった。

しがらみにがんじがらめにされて、誰からも正しく認められなかった。『か弱い女性』『一族の中だからこそ生きていけている女性』、そうしたものを押し付けられ、それを受け入れるしかなかった自分が、唯一、勝てるかもしれない相手。それが、毬絵さんにとっては城木さんだった。

彼女の本心はわかりません。が、いずれにしても、城木さんに対してのあの意味ありげな態度も、そしてそれを覆すラストの豹変も、彼女にしてみればただただ、城木さん相手に自分が勝者だと見せつけるような、そんなものだったんじゃないかなぁ、と。

 

まぁ、いずれにしても毬絵さんは『敵』だとわかった。

そうである以上、きっと先の物語でも登場するはずでしょうから、いやいや、再び、城木さんと相対する日が楽しみでならないなぁ。

 

城木さんは、この先、どう歩んでいくのか。

夏川さんと由起谷さんから、ユーリから託された言葉を聞いた時、何を思うだろうかなぁ。なんだろ、ユーリが託したあの言葉。ある意味、今の城木さんにとっては、めちゃくちゃ、こー、ねー、しんどいよなぁ。

城木さんのことだから、決して、道を踏み外すようなことはしない、できない、とは勝手に思ってます。

でもだからこそ、進む道の険しさ、そして城木さん自身の満身創痍さを思うと・・・。

うふふ、たまらんね(鬼め)

・・・冗談はさておき。ねー、なんかほんと、苦しいなぁ。苦しいけれど、でもめちゃくちゃ偉そうなことを言うと、それでも、城木さんの人生は、城木さんが歩み、作っていくしかないんだよなぁ・・・。

どうなんだろ。この城木さんに対しては、彼とともに『気遣いの双璧』である桂さんが、何らかの役割を果たしたりするのかなぁ・・・と言う期待もあったりするのですが・・・ってかほんと、この2人、幸せになればいいのに。

 

一方、城木さんの相方である宮近さんにも、今作品では大きな転機が訪れてましたね。

ねー。宮近さんと言えば、私の中ではその活躍っぷりはシリーズ1作目がピーク、この1作目のラストであんなことになってからは(笑)どこかその存在自体が、立ち回り自体が、非常に親近感もあって面白い存在、どこかほっとさせるような存在だったのですが・・・。

 

いや、今作、あのシーン。奥さんがいつも用意してくれているハンカチを手に、情けなさ、そして意地を覚えるあのシーンは、めちゃくちゃかっこよかったし、こちらも読んでいて、ぐっ、とくるものがありました。

捨てられない出世への思い。また家族への思い。今後への不安。一方で、正しいことをなしたい、なさなければと言う思う。

なんだろうなぁ、宮近さんのこう言う感情って、多分、いちばん、読者の多くの人の共感を得やすい感情だと思います。

だからほんと、今作での宮近さんのあのシーンにぐっ、と来たのは、きっと私だけではないはずだ。

 

またそれぞれが、それぞれに形の違う『家』『家族』と言うものの存在、その大きさを突き付けられているのだろうな、と言うのもまたこれ、面白いですよねぇ。

頑張れ!(うふふふふ(笑))

 

はい。あとは仁礼さんの活躍、今回も凄かったですよねぇ。

凄いのに、めちゃくちゃ凄いことで、彼にしかできないことなのに、それをそうと感じさせないのが、仁礼さんの魅力だわ(笑)

でも仁礼さんだけじゃなくて、ほんと、このシリーズに登場する人物って魅力的なんですよねぇ。しっかりと個性が確立されていて、個々が、たとえ出番が少なくても強烈な存在感を放っていると言うか。うん。

 

妖気を感じながら、だけど敗北を喫してしまった仁礼さん。そのリベンジが描かれるのかどうかも、今後の楽しみのひとつですね。

 

はい。

と言うことで長々と感想を書いてまいりましたが・・・ほーんとに面白かったです。

なんだろ、ほんと先ほども書きましたが、毎度、毎度『最高傑作』を更新していく、その在り方と言うのは、シリーズ作品としては驚異的なあり方だと思います。

そして物語が進むにつれ、謎が少しずつ明らかになっていくような、でもますます深度を、暗さを増していくような、その緊迫感のありようも、お見事の一言。

 

あー・・・次にシリーズ新作が読めるのは、いつになるのかしら・・・。

前作『狼眼殺手』から今回の『白骨街道』までは4年の月日が流れていましたね。ただこちらは雑誌で連載されていたので、そのことを考えると、まぁ、雑誌で読んでいた人にとっては、それほどのブランクは感じられなかったかもしれませんが。

 

いや、でも正直、シリーズもので4年なんて、待たされた内に入りませんよね。

ね?

何ならタイトルだけ独り歩きして、10年以上、待たされているシリーズ最新作だってありますしね。

 

月村先生、毎年、結構な数の作品を発表されていらっしゃいますし、雑誌連載などもされているはずだから・・・。

 

いい。待てる内は、いつまででも待つ(どーん)

ただお願いなので、私が生きている内に、そしてできれば世の中が平穏、平和な内にシリーズラストまで発表されて、それを読めるようにしてください。

お願いします(土下座)

 

てなことで、いつか絶対『機龍警察』シリーズ紹介記事を書くぞ、と改めて思いつつ。

本日の記事はここまででございます。

読んで下さりありがとうございました!