tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1が付く日なので読書感想文放出しますよ~本が読めるありがたさ

はい。と言うことで本日は3月11日、末尾に1が付く日なので読書感想文と言う名の、ただの文章の塊を無責任に放出したいと思います。

 

そして本日は東日本大震災から10年目でございますね。

そうか、もう10年経過したのか・・・いやー、なんか、振り返ってみると確かに長かったな、と言う気はする。だけどそれでも、そうか、もう10年経過したのか、と言う気持ちは拭えないと言うか何と言うか。

 

日本は地震大国である以上、またいつ、どこで、東日本大震災級の地震、大規模地震が起きても不思議ではないわけで。また地震だけではない、様々な自然災害が多発している昨今の情勢などを考えると、ほんと、読書できることのありがたみと言うのをつくづく痛感しますね。はい。

 

と言うわけで、そんな感謝をかみしめつつ、早速、放出でございます。

 

折原一『倒錯のロンド』・・・遠い昔に一度、手にして、ほっぽり出した記憶がある。と言うことで、再読してみたら、面白かったよ!「書く書く詐欺」の主人公のダメダメっぷりに何度、突っ込みを入れ、友人君の人の好さに『ほんと、良い奴!もしかしてこいつ、主人公君のことが好きなんじゃね?』と邪推し、そしてそこから盗作した側とされた側のやり取りが、それこそロンドのように追いかけ、追いつき、追い越しと目まぐるしく変わる様が描かれていて、ハラハラドキドキ、読みごたえたっぷりでした。と言うわけで、ネタとしては『同一人物だと思っていた人物がそうじゃなかった。そして時系列も現在じゃなかった』ということです。驚きとしては五つ星で一つ星。実は微妙に知っていたんだよなー。はい。あと、あまりに懲りすぎていてよくわからなかったから(ちーん)。そう。今作、まさしくレビューにもあったけれど『小説としては面白いけれど、ミステリとしてはそれほど面白くない』と言う評がぴったりだと思うの。うん。ラスト付近、乱歩賞受賞が叶わなかった作者自身の心情とか、もうメタ的な展開も面白いし、その、もう自分が何者なのかわからなくなっていく、その境界の危うさみたいなものの描かれ方もじゅうぶんだったと思うし、何よりほんと、盗作された(と、実は思い込んでいただけなんだけど)側と、盗作した側のロンドのような展開、心理戦が面白くて、ずいずいと読んで行けたからなぁ。うん。ミステリ部分がなくても楽しく読める作品なんじゃなかろうか、と言うのが個人的な感想です。はいよ。せっかくなので、倒錯シリーズ、読んでみるかな。うい。そんなこんな。もっと気持ちよく騙されたいよぉぉぉぉぉぉ!

 

西澤保彦『神のロジック 人間のロジック』・・・これも遠い昔、手に取って投げ捨てた気がする。再読。トリックは『主人公たちは実はおじいちゃん、おばあちゃんだった』、で、驚きとしては五つ星の内、二つ半。正直、続きがもっとあると思って中途半端なところで止めてしまったよ…あとがきがあんなにあるんだったら、一気に読了するんだったよ…そこが悔やまれてならない。はい。序盤の、アメリカのハイスクールテレビドラマを見ているようなノリから一転、少しずつ、不穏な空気が流れ込んできて、そして殺人事件が起きてからはまさに怒涛の展開。そして真相が明かされてからのラスト。なぁ…ラストは切なかった。何だろう、幼い頃はわからなかった母親の気持ちが、そして、自分が幼いからと思い込まされていたが故に分からないと思い込んでいたことが、実は自分が既に幾年もの月日を刻んでいたと言うことを突きつけられた瞬間に、どうしようもないほどに理解できたのだと思うと、本当に切ない。やるせない。ステラのファンタジーが最初は何なのかわからなかった。ただ、このままでいいじゃない、この6人でいいじゃないと言った彼女の言葉の、その切実さが気になっていたけれど、そうか、その言葉の裏側には自分たちが本当は老いていると言うこと、そしてそれ故に、家族からも見捨てられた身であると言うこと、そしてその真実が僅かでも明かされようとする、その気配すら許さない、恐れる、彼女の思いがあったんだな。なんか、わかるな。その、真実を突きつけられることよりも、真実が明かされようとしていること、自分の中でそれを感じとってしまっていること、それくらいにその気配が強くなってしまっていることに対するどうしようもない不安感、恐れと言うのは、なんかすごくわかる。そしてどうにかして、それを排除したい、一切、感じたことすら、見たことすら忘れてしまいたいと、強く、願うように思う気持ちはすごくわかる。わかる。楽園。彼女にとって、そして彼女だけでなく、6人にとって、学園は楽園だったんだろうな。なぁー…。読了して、そして序盤の学園生活を思い出し、その楽しさを思い返すと、なおさらそのことが強く感じられて、ラストがどうしようもなく切ない。後は、トリックの肝となるような、物事に対する認識についての話も興味深かったです。絶対的な神のロジックが存在していても、それを絶対的なものではないと認識できる、認識してしまうのが人間のマジックなんだろうなぁ、と感じると人間の認識なんて、本当に脆いものなのかもなぁ、と感じました。ミステリだって、一種の思い込みによって騙す部分もあるからなぁ。はい。そんな具合で、分厚いハードカバーに読み切れるかどうか不安でしたが、とても面白く、サクサクと読むことができました。

 

櫛木理宇チェインドッグ』・・・いったん休憩。ネット上で評判が高いので手にとって見ました。はい。うっかりBL(笑)。いや、でも面白かったです。大和の魅力的なこと。そして他人とは思えない、雅也が、大和にどんどんと引き込まれていく感じが他人事とは思えませんでした。何だろうな。大和の『君の好きなようにしたらいいよ』ってセリフは、そう言った相手に主導権を握らせているようで、その実、主導権をがっちり握っているのは大和側なんだと思った。何と言うか、この言葉を言わせてしまっている時点で、実はそう言って誰かに背中を押して欲しい人間なんだと言う弱みを相手に見せている、晒していることであって、大和はそのことを理解していて、そこをつくことで、巧みに相手に入り込んでいるんだろうな。うん。その辺りが、ひしひしと感じられた。あとはそう言われることで、自分が認められている、と感じてしまうんだろうな。そしてそのことで、大和に対してある種の借りのようなものを覚えてしまうと言うか。うーん、巧みな交渉術を見た気がした。それから、犯罪者の生まれ育ってきた環境と、犯してきた蛮行の関連性のようなものも考えさせられた。全く関係がないとは言い切れず、けれど、ひとりが言っていたように、そうであっても罪を犯さず、必死になって努力して生きている人もいる。普通の生活を手にして、生きている人もいる。そう言った両極端の、だけど真実を前にすると、どうするべきなのか、と考え込んでしまう。大和の場合は、どうなんだろう。最終的に雅也が感じた、その空白感と言うか、希薄さと言うか、そう言ったものは、何だかもう、生まれつきのものなんじゃないかとすら感じてしまう。嘘、嘘、全てが空っぽ。言葉も嘘なら、多分、大和自身、生きていることに対しても真実味を感じることができないんじゃないだろうか、とか。そんなふうに感じてしまう。そしてまた、誰かによって完膚なきまでに傷つけらた、恐怖や苦痛、屈辱を植え付けられた人の心中を思うと、本当にやりきれない。命が助けられたこと、そのことは本当に喜ぶべきことだと思う。けれど、だからこそ、そこから先、生きていかなければならない、どこまでも罪を犯した人間のことが記憶にあると言う過酷さを思うと、言葉を失う。うーん、重いな。けれどそんな過酷さを無かったことにするかのような、ラストの大和の微笑みったら。あぁ。できれば雅也にはここから、まっさかさまの絶望地獄、ラストは死刑前の大和に身も心も奪いつくされてしまうと言う展開を希望している私は悪魔です(どーん)。

 

折原一『倒錯の死角』・・・『殺された娘の無念を晴らすために母親が娘のふりをしていた』で、驚きとしては五つ星の二つ星。時系列が過去だった、膨大な文章を書きうつしていた、と言うのは前作の倒錯と似ていると感じたりですが、ただ、物語としてはこちらの方が面白かったと感じました。面白かった、と言うより色々、感じ入るところが多かったとでも言うべきかな。倒錯と言うのは、著者の解釈では狂気となっています。正直、今作も一瞬、何やってんだ、と笑ってしまうような登場人物たちの行動なんですけど。だけど実は、こういう行動に走ってしまうような、狂気と自分が同化してしまい、現実とそうでないことの区別がつかなくなってしまうようなことは、往々にしてあることなんじゃないかな、と。珍しいことでも何でもなく、ふっ、と簡単に、誰しもが踏み外してしまうことのあり得る世界なんじゃないかな、と。今作でそれを感じたのは、娘を奪われた無念と悲しみを晴らすために、娘になりきると言う暴挙に出て、またその娘と同じ年頃の幸せな姿を許せないがために、自らも犯罪者になってしまう母親の姿が描かれていたからで、何と言うか、そうなってしまった原因はこの母親にも、そして娘にも(まぁ、不倫にうつつ抜かした点は責められる点かもしれないけれど)ないわけで、そう思うとその理不尽さ、そしてその姿を通じてその悲しさが描かれていたから、こう感じたわけです。人は、多分、多かれ少なかれ、ちょっとしたきっかけひとつで、この母親のように、あるいは主人公のようになる可能性があるんだと思った。うむ。日常、現実と非日常、虚像、想像、そう言ったことの境界の淡さのようなものを感じさせるラストも秀逸でした。後、ハードカバーだったんですけど、表紙の絵が時代を感じさせて面白かったです(笑)。はい。そんなこんなで、倒錯シリーズはあと一作あるのか。

 

・夏樹静子『天使が消えていく』・・・初めて手に取った作家さんだと言うのに、同時に訃報にも接することになってしまい、何と言うか悲しい偶然。ご冥福をお祈りいたします。読んだことはなかったけれど、女性ミステリ作家さんとしてそのお名前だけは存じていましたので。はい。で、・・・あれ?なんか、例のサイトで『どんでん返しが』とおすすめされていたから読んでみたのですが。…あれ?(笑)。まぁ、どんでん返しがなかったとは言わない。言わないけれど。…うーん。普通の人だと、これを母親の深い愛として受け入れることができるのかなぁー。書評でも評判が高かったから、そうなのかもしれないなー。うーん。うーん。うーん…まぁ、わからなくはない。わからなくはないけど、ごめんねー、私には無理だわ。受け入れられなかった。まぁ、理由は察して。はい。と言うことで、その一言に尽きる作品となってしまいました。うーん。読み方を間違えたと言うのがひとつ。そして、私には、この手の作品は合わなかったと言うのがひとつ。以上!

 

倉知淳『過ぎ行く風は緑色』・・・と言うことで溜めたな、読書感想文。だいぶ前に読んだ本ですよ。はい。個人によって分かれると思うんだけどな。うーん…もう少しページ数、減らせたと思うんよ。どう考えても余分なページあったと思うし。あと、猫丸先輩の性格を表すと言う意味では効果的だったと思うんだけど、やっぱりほぼ1ページ、まるまる「」で埋めるのはどうかと思うのよ。うん。その点がどうしても受け入れられず、途中で読むのが嫌になり、どうにか読み終えたけど、どうなんだろうねその読み方は、と言うツッコミを自分で入れちゃったよ。はい。難しいな、ページ数とか会話シーンの入れ方は。まぁ、ページ数に関してはそれで出版されている以上、必要なページ数だったと言うことなんだろうけど。「」に関しては、やっぱどうしても手抜き感が否めないんだよなぁ、個人的には。はい。そんなこんな(投げやり)。

 

東野圭吾『十字屋敷のピエロ』・・・これもまただいぶ前だからなぁ。何となくしか覚えていない。熊本地震と、いつ、地震が起こるかわからない恐怖と理不尽さに、この辺りの記憶は吹き飛ばされた!はい。でも、そう。東野圭吾はやっぱり上手いなぁ、と感じたのは覚えている。というか、やっぱり読ませる工夫がされているなぁ、と。読みやすいんだよな。無駄がないし、かと言って不足している感じもしないし。でも読み終えた後に、作品をもとに残しておきたいと言うタイプの作家さんではないんですよ。確実に読んでいる間は楽しいし、読みやすいし、読み終えた後も最低限の満足感はあると言うか。だからこそ、これだけ人気があるんだろうし、その理由もわかるな、といつも感じるのであります。はい。なんだ、この感想(苦笑)。

 

浦賀和宏『眠りの牢獄』・・・この作者さんも久しぶりに手に取った感じが。でも何でしょ。ここのところ読んでいた本が『騙す』ことを念頭に置いていた本(として紹介されていた本)だったので、何と言うか、でもその割には騙されなかったぞと言う気もしていて不満だったのですが、この作品には気持ちよく騙されました。『そうだよ!こういうので良いんだよ!こういうのを求めていたんだよ!』と。しかも男だと思っていたら女の子だった。同性愛だった、百合まっしぐらだった、と言うベタなネタに騙されたので笑っちゃうわ、ははは。はい。いや、何だ。絡みのシーンでおかしいなとは思ったんですよ。『あれ、入れないの?』って。でも、そううことだったのね。入れるものがなかった、ってことなのね。はい。非常に短いページ数だったけれど、でも、読み終えた後の満足感、騙された!と言う気持ちよさは、『過ぎ行く風は』の何倍も感じることができました。良かった。こういうので良いんだよ。こういうので。シンプル、無駄のない削ぎ落された、と言う言葉がぴったりの作品だったと思います。眠りの牢獄、このタイトルの意味をしみじみと感じさせる、切ないけれど、決して不幸ではない、悲劇でもない、淡い希望を感じさせるようなラストも個人的には好きです。胸に余韻が残るようで。はい。そして「犬の牢獄」へと続きます。と言うわけで、時系列ばらばらの読書感想文。片付けた!

 

佐々木譲『犬の掟』・・・うっかりBL…。はい。何かと互いが互いを思い出すタイミングが重なり合ってるって、これ、もう、波多野と松本、両思いじゃん(どーん)。女の子と付き合うのが面倒くさいとか、何となくそれ臭いなとは思っていたけど。まさか、その通りだったとは。はい。そんな話では決してないと思うんですけどね。はい。何と言うか、ボケたね、私。確実にボケたね。だめだ。難しい話が頭に入りにくくなってきている。それを痛感した。登場人物が多く、複雑に絡み合ってるともう駄目だ。区別がつかない。やばい(どーん)。はい。そう。複雑に絡み合う話で、それが波多野側と松本側から少しずつ、解かれていく様が面白かったんですけど…なんか、ここまで複雑に引っ張っておいて、この真相は、まぁ、個人的には嫌いじゃないんだけと肩透かし感が否めないと言うか。でも、まぁ、波多野の危うさとかは、最初から伏線のようにして描かれていたしな。何と言うか、まぁ、納得できないと言うものではないんだけど、ここまで引っ張っといてそうだったか、と言う気がしなくもなく。はい。と言うか、そうか、冒頭のシーンはそんなに重大な意味があったんだな。どうりで長いと感じたはずだ。はい。…まぁ、でも、ごめん。頭が腐った三十路女には、とにかくうっかりBLにしか感じられなかったよ…。波多野が生き残って、松本と共に生きていく薄い本、早よ…。松本に優しく癒される薄い本、早よ。

 

吉田修一『怒り』・・・読んでなかったわけではなく、他にも読んだ本はあるはずなんだが、いかんせん色々あり過ぎて覚えていない。とりあえず覚えている本だけ書く。はい。映画化になるとのことで読んでみた。決して同性愛カップルが出てくるから読んでみよと思ったわけではない、決して(どーん)。何だろうな。まずやっぱり、多くの人の感想にもあった通り、「怒り」と言うタイトルが、どうしてもピンとこなかったかな。ただ、何故、若夫婦が殺されたのか、その謎はついぞ明かされないままで、一方、泉ちゃんに関しても、何故、幼馴染があのような行為に至ったのか、その真相は多分、明かされないままだったはずで。その、置き去りにされたと言う悲しみが、空しさが、やがては怒りにつながっていくのかもしれないな、と感じたりしました。この物語の主要人物が皆そうで、愛した人、受け入れた人を信じきれない、だけど、向こうも真相を教えてくれない、その置き去りにされているような悲しさ、空しさがどうしようもなく悲しかった。それは、たとえ怒りにつながっていく感情だとしても、それとは対極にあるような感情にも思えて、だからもしかしたら、作者は「怒り」と銘打った作品の中で、本当はその対極にある感情を描きたかったのかな、とも思ったりしました。月並みの感想だけで、人と人がわかり合うってどう言うことなんだろうね。なして人は、その人のことをもっと知りいと思うんだろうね。それを知って、何を思うんだろうね。そうやって言って結局、刑事さんのように、同性愛カップルのように関係が壊れてしまうこともあるのに、それでもどうして、人は、人のことを知りたいと、時には躍起になってしまうだろうね。それは、私には素晴らしいこととは思えない。やっぱりそれは、どうしようもなく悲しいことだとしか思えない。うん。読了当時は色々、思ったんだけど、いかんせん色々あり過ぎたし、時間が経過しすぎた。ただ、それでも思い返しても色々と考えることがある、心に残っている作品です。映画、見にいこ。

 

五條瑛『スパイは楽園に戯れる』・・・こういう時に、長く生きてこられたことの価値と言うか、重みのようなものをひしひしと感じます。何と14年ぶりのシリーズ続刊です。くはー…。タイトルだけが独り歩きしているなかで、国際情勢は目まぐるしく変化していった。さぁ、その中で果たしてどのような道を選んだのか、と言う期待と共に読み進めていきました。成程な、そう来たかと言うのが率直な感想です。アメリカの優位性が揺らがされた中、それでも唯一、唯我独尊、世界の王様は俺たちだぜ!と言わんばかりに歩み続けているアジアの国、北朝鮮。変わる、変わると言われ続けながらも、相変わらず目に見える、良い変化がないあの国は、国際小説にとっては魅力的な題材なのかもしれないな。はい。ただ、やはりスパイ小説と言うよりは、人間ドラマに重きが置かれていたかな、という気も無きにしも非ず。色々、伏線は存在してけれど、それらすべてが回収されていないことを考えると、この先のシリーズ展開をお楽しみにと言うことなのだろうかな。はい。自らの存在が、自らが愛する国の障壁になることを避けるために、自らの命を絶つ。若き政治家の一本気な決意が、ただただ重い。はい。そして本当にお久しぶりの面々。こちらは相も変わらずで安心でした。葉山、可愛いよ、葉山。早くエディか坂下あたりに犯されろ。エディのブラック上司っぷりも相変わらずでした。坂下、会いたかったよ、坂下。アメリカと言う国に対するあらゆる側面が揺らぎに揺らぎ切ったのに、少しも変わっていない坂下に会えただけでも、この作品を読んだ価値はあるって言うもんですよ。情報の海を、溺れるように、揺蕩うように泳ぐスパイたち。国際情勢が揺らぎに揺らいでも、その情報の海の中に隠されているかもしれないたったひとつの真実を見つけ出す、その徒労と快楽に魅入られてしまっているスパイたちの姿が、滑稽で、哀れで、けれどどうしようもなく羨ましく、私には見える。さぁ、次に続刊を読めるのはいつになるんだろうか。

 

・伊岡瞬『代償』・・・何か評判になってたから読んでみたら、ドラマ化されるんだって。成程。はい。物語の真相ってどうだったっけ?とあらすじ書く内職で慌てて、読み返した程度。察して。ただ、あれね。普通、圭輔のような目に遭ったら、憎しみと恨み、辛みに、達也のような人間になっていてもおかしくないと思うんだ。でも、彼はそうではなく、自分の人生を歩むべく、努力をした。憎しみではなく、それを被疑者を弁護すると言う方法に昇華させた。なんか、優しい人なんだろうなぁ、と思う半面、こうやって生きていくことこそ、自分の人生を歩むためには必要なことなんだろうな、としみじみ感じた。憎しみや恨み、辛みを与えてきた人間のことだけを考え、そのためだけに囚われ、生きていくことは、それは、ただ一度の人生を、その憎々しい人間のために捧げているようなものだもんな。うん。はい。後は寿人ですね。うっかりBLだよ!・・・いえ、なんでもありません。はい。達也のような人間は、本と、どうすればいいんだろうね。ねー。ほんと、なんかもう、問答無用で死刑にしても良いと思うんだけどな。これ、絶対、出所した後にはまた圭輔にたかってくるに違いないよ。うん。圭輔は、よくできた人間だ。ただ個人的には、むしろ、闇に囚われた圭輔が、寿人の存在に心を悩まされながらも、達也を闇に葬るためにもがき、あがくような物語が読みたかったです(ちーん)。ちなみに、ドラマでは「危険な賭けに出る」と言う煽り文句が書かれてましたけど・・・そんな物語だったっけ?

 

櫛木理宇『寄居虫女』・・・いやぁ、引き込まれた。だいたいあらすじは知っていたけれど、引き込まれた。そうか、小説内で声の描写を描くと、こんなにも想像力が膨らまされ、そしてその人物に対しての興味が高まるんだ、と今まで一体、何冊の本を読んできたんだ、と突っ込みたくなるような感慨すら覚えました。はい。葉月の、真っ白塗りに濃いアイメイク、そして真っ赤な口紅と言う形相も、気味が悪いのに、怖いのに、それ故、目が離せないと言う心理状態に陥って、ぐいぐい、物語の世界に引き込まれていきました。はい。何と言うか、登場人物の誰しもに感情移入できて、だからもう、痛々しいと言うか、だけど、その登場人物たちが必死にかぶっていた仮面が少しずつ、葉月たちによって剥がされていくのが、心地よくもあり。琴美なんて、もう、まんま私じゃん…。彼女がいちばんに葉月と出会い、その頭の良さゆえに、自分でも気がつかない内に葉月を自分より下に見ていて、憐れんでいて、けれどそれこそが葉月の作戦で、そうやって人の心に忍び込んでいくんだな、と思うと、もう見事な手練手管としか言いようがないと言うか。睡眠時間を削るとか、成程、たしかにそれなら暴力的な態度をとらなくても、高圧的な態度を見せなくても、その人の判断力や反抗心をそいでいくにはじゅうぶんだよなぁ、と思ったり。はい。自分より強い、上だ、と感じた人間の人を自分の家に招き入れようなんて思わない。招き入れて、助けてあげる、って思いが生まれている時点で、それは、その人のことを自分より下に見ている証で、その心理を葉月はうまく利用しているんだろうな。しかし、その葉月もまた、葉月と言う貝殻に入った偽物だった。美海が、父親と不倫相手の間の子どもという、偽物の貝殻に入って、演技を強いられていたように。殺されたはずの少女が葉月だった、と言うのは意外でした。そっちだったか、と。はい。安らぎを求めてかぶっていた貝殻が砕かれ、美海たちは、今後はどのように生きていくのだろうな、とか、どのように彼女と母親は向き合ってくんだろうな、とか思うと、色々、感慨深い物があります。あとこれ、美海が葉月を逆転して、母親をも制圧して、家をのっとっていくってのも面白かったかもしれないな、と思った私は性格が歪んでますかね。はーい。

 

・安東能明『広域捜査』・・・書き忘れてた。あのシリーズの続編だと知っていたら、多分、買わなかったよ。迷った末に購入したけどさ。さ。はい。まぁ、はい。察して。何だろう。私が、いわゆる警察小説に求めるものとは真逆のものが描かれているのが、このシリーズだと思うの。なんかそれが小説らしからぬいやらしさと言うか、生々しさがあって、もう、腹が立つと言うよりほかないと言うか。察して(どーん)。

 

長岡弘樹『群青のタンディズム』・・・で、警察小説と言えばこの人も、今やその代表格のひとりと言っても過言ではないような気が。ただこの人の場合、何だろ、妙に読みにくい、難しいと言うか、読み手の想像力を試すような文体もあってか、個人的には高村薫を彷彿とさせるんだよな。いやらしいし、生々しいんだけど、その陰がとても魅力的な描かれていると言うか。どこか、その陰が淫靡さすら感じさせるような気が個人的にはするのです。はい。あとなんだろう。デビュー作?の短編集では、人を救うべき消防士の蛮行が許せなかったけれど、警察官と言うクソみたいな職業に就いた人間の、そのクソみたいな人間性がモノトーン調で描かれているのも好き。と言うことで、本作、結果から言うと好き。と言うか、短編集のはずなのに、ものすごい厚みを感じた。事実、作中では約20年以上の時が流れていると思うんだけど、その早急さを感じさせなかったと言うか。あぁ、きっとここに至るまで実に様々なことがふたりの間にはあったんだろうな、と言うのを自然に感じさせる作りになっていたように思う。はい。薫の義父を史香は殺した。耕二はそれを知っていて、彼女に自首させるべく、彼女の点数を稼ぐために、彼女に尽力した、と言うネタでいいんですよね?うーん、遠回りすぎ!はい。でも、嫌いじゃない。と言うか、この人、独特の男女関係描くの、上手いなあ、と思う。成程な。耕二が、史香に対して『道を誤った』と言うシーンがあって、最後まで読んでいなかった時でも、その台詞はとても胸に響いた。一度、歩み始めた道を修正するのは、それを人は無責任に推奨し、励ますけれど、決して容易なことではない。だからこそ、あちらの道に進んでいれば、と思わずにはいられない。その重みを感じさせる台詞で、だから胸にずっしりときた。でも、ラストまで読んでネタを知った今、耕二はどんな思いでそれを口にしたのか。そして史香は、どんな思いでそれを聞いていたのか。文字通り、人としての道を誤った彼女は、警察官してどんな思いで歩んできたのか。そして耕二の思いを、企みを知っていたのか、知らずにいたのか。道を誤った史香の、その歩みを、まっとうな手段で正すことができなかった耕二もまた、最初にとるべき道を誤ったのではないか、と思うと暗澹たる気持ちになるな。でも、こういう気持ち、嫌いじゃない。はい。二人の関係は、何だったんだろうな。それは、やっぱり愛でも友情でもなく、共犯と言う言葉がいちばん、この結末を迎えてしまった今となってはしっくりするような気がするよ。はい。短編集とは思えぬ読みごたえで、著者の作品の中では今のところ、いちばん好きです。

 

はい。と言うことで本日はこの辺で終了しておきましょうかね。

この中だと、櫛木理宇さんが初登場なのかしら?あれ?以前の読書感想文にも登場されていました?あんまりよく覚えていないのですが(汗)

櫛木作品に感じる、個人的な魅力としてはやはり、人間のダーク、ともすれば狂気さすら感じさせるような感情、その描写にあると思います。

そしてまた、理不尽にもその感情に巻き込まれてしまった人の、切実な、悲痛な、痛々しさすら感じさせるほどの感情、その描写と言うのも、読者の胸を深く穿つようで。

そう言えば最近、櫛木さんの作品、読んでいないなぁ。また何かしらの作品を読んでみたいなぁ、と思った今回の読書感想文でございました。はい。

 

あと吉田修一さんの『怒り』は映画を見に行ったのですが、素晴らしかったです。

広瀬すずさんの演技が素晴らしかったし、ゲイカップルを演じた綾野剛さんと妻夫木聡さんの、あの不器用な関係性、生き方と言うのも号泣した。ってか、綾野さんの、あの役の透明性は度肝抜かれた。

そして何より、すべてを持って行った森山未來さんの圧倒的な存在感、日常を侵食し、破壊していく人間性の破綻っぷりと言うのが、もうすさまじかったです。

 

そんなこんなで本日の記事はここまででございます。

読んで下さりありがとうございました!