tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

1の付く日は~読書感想文大放出だよ。8月も終わりか。

はいや!試験、終わったぞ。

これ書いている時点ではまだ終わってないけど(ネタバレ)。

どうですかね?未来の私よ。どうにか、合格できそうな感じですかね?

とにかく合格できてれば、それでいいんです。点数がギリギリであろうが、くだらないケアレスミスをしていようが、とにもかくにも合格さえしてくれていれば、それでいいんです。はい。

個人的には本当に『刀剣乱舞』の期間限定鍛刀で、日光一文字と鬼丸国綱、両方を出迎えたことで運を使い果たした、使い果たしてしまった、と思い込んでるので、その影響が試験日に出てきていないかどうかだけが、めちゃめちゃ不安です(汗)

 

まぁ、その辺りは、明日、書きましょうかね。

 

そんな具合で本日で8月も終了!

明日からは9月ですって!早い!

 

今日は1が付く日なので恒例の読書感想文、大放出の日です。

今日から2012年の読書感想文に突入します。

 

長いよ(ちーん)

 

ではでは。早速、スタートでございます!

 

真梨幸子『殺人鬼フジコの衝動』・・・フジコの転落っぷりが…絵に描いたようで面白かった。叔母さんが、業って言葉、使ってたじゃないですか。あんたが母親に似るのは業だ、って。フジコみたいな生き方ってのは、結局、業なのかもしれない、ってしんみりと感じました。彼女の選択やら、考え方やらが悪いんだ、っていう人もいるかもしれないけど、でも、彼女がそういう選択肢を選ぶのも、そういう考え方しかできないのも彼女一人に原因があるのかと言われればそれは違うだろうし、彼女の境遇と言うか環境にそれがあったのだとすれば、まして幼い頃のそれが多大な影響を与えているのは言うまでもなく、だったらどうしようもなく、それこそ業じゃないんだろうか、と。そんなことを思って、でも、とにかく殺して殺して殺しまくるフジコの姿には、本と、笑いが止まりませんでした。いいぞ、フジコ。がんばれ、フジコ、と。誰にも支えて、助けてもらえないのなら、自分で道を作っていく。人を、邪魔者を殺して切り拓いていく。かっこいいじゃないですか。悪いことは、ばれなければそれでいい。ばれなければ悪いことは悪いことじゃない。その通り。そしてそして、それが最もたる児童虐待という犯罪が、ラストのどんでん返しに、そしてどうしようもない悲しみに関わってくるとは。いやぁ、驚いた。まさかそんな真相が待っていたなんて。コサカさんとフジコ。相容れないようなふたりが、実は同じような境遇にあり、同じような業にさらされており、もしかしたら、互いに支えあい、救いあえるかもしれなかったなんて。なんて悲しくて、なんて皮肉。その悲しみもさることながら、そしてまた、フジコを養ってきた叔母さんと、娘の死の真相を暴くために、とフジコに付きまとっていたコサカさんの母親が犯人かもしれなかったとは。結局、彼女たちはどこまで行っても操り人形でしかなく、監視下に置かれていただけでしかなく、そう思うと、フジコの生き様が、コサカさんの死が、余計に悲しいものに思えてならない。タイトルの『フジコ』は、そう思うと、男やら、美やら、虚栄心やら欲望やら、或いは、女性ゆえの社会的な弱さやら、そしてまた業に振り回され、落ちていく『女』に置き換えてもいいのかもしれないな、と思った次第。フジコの暴走っぷりの小気味よさが、やがては切なさと悲しさにつながっていくミステリでした。面白かったです!

 

東野圭吾『魔球』・・・舞台設定の時代が現代だったらこうはいかなかった、というか、そない無茶な、と突っ込みどころ満載だったでしょうが。昭和三十年代。俗に言う、日本が一番元気だったころの話。なのでその頃のノスタルジィも相まって、実に切ない話に仕上がっていたように思います。『兄貴は、いつも一人だった』の勇樹君の言葉が、もう、鳥肌もの。悲しくて、でも真実で、だからこそなおのこと悲しみがこみ上げてきて、そしてそれでも、最後の最後に武志君が勇樹君に物を頼んだ、というその事実がまた切なくて悲しくて。勇樹君と武志君は紛れもなく兄弟で、だからこそ、この言葉だったんだろうな。あぁ。はい。野球。野球好きの片隅にいる人間としては、たとえば武志君の思いだったり、例えば芦原さんの思いだったり、たとえば開陽高校の野球部のメンバーの思いだったり、そういったもののひとつひとつがとても理解できた。野球に選ばれた武志君。野球を選んだ芦原さんと高校野球のメンバーたち。そこに存在する深い、深い溝。天才にしか見えない光景。けれど、天才でも避けることができなかった不幸。そして、その不幸の一端を嗅ぎ取り、せめてもの思いであがこうとした北岡君。そこに存在していたのは確かに友情であり、だけど、それ故に、それを許すことができなかった武志君の、やはり天才ゆえの孤独が悲しすぎる。ねぇ…本と。たくさんの野球小僧たちが存在していて、その中でプロに行って、名を残せるほどに活躍できる人なんてほんの一握り。たくさんの人は途中で夢を諦め、それができればまだ幸せな方で、中途半端に、中途半端なところで野球から離れることを余儀なくされる力なき人がいる。野球しかできなかった人が、野球しかなかった人が別の道を強いられる、その不幸、戸惑い。本当に、残酷な世界だよな。天才である武志君も、だから、その辺りを十分に分かっていたんだろうな。だから、せめてもの思いで、契約を急いでいた。投げられなくなった自分には何の価値もないことを承知していた。だから、自分のことはいい。自分の故障が隠しきれる間に、自分に価値があると認められている間に、家族に恩返しをしておきたかった。野球をその糧として彼は考え、だからこそ、どんな孤独にあっても続けてこられたのかもしれないと思うと、これまた…。あれだなぁ、東野先生、『鳥人計画』の時もそうだったけど、こうしてスポーツに選ばれた天才の孤独を描くの、うまいですな。なんか、凄く説得力がある気がする。はい。一人の少年の、その体と心に溜め込まれた孤独と一途さと矜持さ、どれもが不器用なそれらが生み出した悲しい事件。切ないですが、それでも、決して後味は悪くない青春ミステリでした。

 

岸田るり子『白椿はなぜ散った』・・・はい。そんなこんなで初めての作家さん。でも今思ったんだけど、確か、過去に一作手に取ったはず。でも結局読まないままだったはず。と言うことはやはり私との相性は悪く、それに気が付いていれば借りなかったはず、読まなかったはず。まぁ、今さらだけど。うーん、そうだなぁ。主人公君の執着心には共感できて、その髪の毛集めたり、その匂いで一人でやっちゃったりは共感できるんだけど。その後の行為が…そう来るか、と言う感じで。もうそこからは興ざめ一方。辛うじて殺人事件が起こってくれたので読み進めていったけれど、明かされた真相も…うーん、うーん…。まずさ、いくら彼女を苦しめるためだからってさ、そんな美貌の異父兄弟に誑かさせる、ってそんなん、嫉妬しない?遠回りすぎやしない?私なら、冷や冷やするし、本人に直接あたった方がわかりやすいと思うし、なんか直接的だと思うんだけどなぁ。むぅ。でもまぁ、これもそれも主人公君の純真さ、一途さ故、ということにしておいて、まぁ、最終的にはそこが彼女の自殺の原因、そして異父兄弟が切れる原因なんですけど。うーん…そこも、なんか、わかりにくかったというか。いや、まぁ、ものすごく陰惨なことですけどね。性悪だわ、と突っ込みたくなるんですけど。なーんか。そこに主人公が気が付く、ってのも都合よすぎだし、そもそもあんな阿呆な計画を実行した時点で主人公君はなんか取り返しのつかないことをしてしまった、的発言をしていたわけだし、性悪なら性悪でとことんそのままで狂ったままで突っ走ってほしかったなぁ、と言う気がすごくするし。むぅ。主人公の中途半端さがすごく腹が立つ。…あぁ、そうか、それはそれでいいのか。これはそういう作品なのか(ちーん)。だとすればやっぱり、私の毛色には合わなかった、の一言に尽きるでしょうね。はい。京都、フランスの一部を舞台にして、後半はそこが行ったり来たりするので、なんか、下手な二時間ドラマをのんべんだらりと見ているような気分でした。やっぱさ、突っ走らなきゃ面白くないぜ。フジコを見習え、フジコを(笑)。あぁ、そうか。ここが男と女の違いか。潔く命を絶った万里枝こそ、突っ走った人間で、この物語の主人公なんだな、と思うとちょっと溜飲下った気も。

 

折原一『異人たちの館』・・・どこかで読んだことがあるはずの作家さん。でも、その時も確か、相性が悪いだなんだの騒いでいた気がする…。物語は面白かったです。特に、所々で姿が見え隠れする異人さんには、その正体に想像がつきつつも不気味だったし、でも、子供たちの歪んだ欲望をかなえる存在としていいなぁ、と思ったり。単純に、この奇妙な物語がどこに行きつくのか、とか。面白かったんですけど、どんでん返しと言うか、やられたっ!みたいなのを期待していた身としては、なんか、あっさりと終っちゃったんで残念だったなぁ、と。うーん…これでいいんでしょうか。よくわかりませんが。ただ、あれか。これは、母親と男の子供の物語。どちらも子離れ、親離れができない双方の物語として読めば、なかなか頷けるところもあり。淳ちゃんの自伝を依頼した妙子ママの溺愛が、或いはこの形が、そっくりそのままゴーストライターのまま死んだ、かもしれない、最後の最後まで報われなかった潤一さんの思いを晴らしてやろうと奮闘する葵ママの愛情に形を変えた、みたいな。はい。

 

・森晶麿『黒猫の遊歩、あるいは美学談義』・・・封印し、秘めてきたはずの思いをせめてもの形で成就させるために奇妙奇天烈な地図を書いた学者。自らの思いを成就させるために、別人間と同化してしまい、それ故に自らの命を絶った学生。互いにしか分かり合えない方法で音楽を奏で、それにすべての思いを託した男女たち…って、何これ、と普通なら突っ込んでしまいたくなるほどに地味も地味な事件、とも呼べないような事件のオンパレードなんですが、どうしてなかなか、面白く読みごたえがありました。地味は地味、だけどそこに奇妙な味わいがあり、何より、そうまでして思いを、例えば伝えようだとか、例えば自分の中から消滅させようだとか、そう言った人間のどうしようもなさが、一見するとそんなふうには見えないけれどでも確かな執念が描かれていて好感が持てたというか。出てくる人たちが皆、いわゆる賢い人たちだからこそ、その不器用さが際立って、なんだか、ちょっと悲しいような、だけど愛しいようなおかしさがこみ上げてくるような。そんなふうに思いました。決して、一般的な人間を描いているわけでも、一般的な事件を描いているわけでもないのに、どんな人間にも共通するような心の在り方を描いている。普通なら何の共感も面白味も覚えないような出来事を、だけど、丁寧に丁寧に描いていて、誰にでもあてはまるような気持ちを描いていた。だからこそ面白かったし、読みごたえがあったんだろうな、と。はい。だから本当に不思議な味わい。あと、黒猫のキャラクターだったり、薀蓄だったり、もっと嫌味を感じてもいいはずだろうに、少しもそれを感じなかったです。文章力によるところが大きいかもしれないなぁ。うまいよなぁ。うまい。静謐。硬質。ひやり、としていてでも、言葉の一つ一つが、心にぽとんぽとんと落ちてきて、確かな感触を残してくれる。個人的には大好きな文章です。黒猫と私。微妙な距離、関係。やーやー、でも、いいじゃないですか。何より、このふたりの立ち位置の贅沢なこと。社会的には何の役にも立たない自分の好きな分野のことでそれなりの地位を確立し、それを生活の糧として確立し、ああでもこうでもないとやり取りできるって、贅沢じゃないですか。羨ましいよ。願わくば、もう少し二人とも年を重ねていた方がもっと好感をもてたかなぁ、と。はい。どうなのかな。この二人での続編はあるんでしょうか?個人的には、次はもっと純粋な狂気に晒される黒猫を見たい。美しくなければ真実ではない、という彼に、美しくない真相を見てもらいたい、暴いてもらいたい…とも思うのですが、そうしちゃうとこの作品の持ち味もなくなっちゃうような気がするのですが。何はともあれ、そういうことを抜きにしても、ミステリ畑で長く活躍していただきたいと思えるような作家さんです!次作も期待大ですな。そして、アガサ・クリスティ賞なんて知らなかったよ…次の受賞作はぜひとも、その名に相応しいような、バリバリの本格ミステリをっ!と思うのですが…まぁ、何はともあれ、そちらも楽しみですな。

 

綾辻行人『奇面館の殺人』・・・六年ぶりだそうです。暗黒館をリアルタイムで読んでから、シリーズ全作を手に取るまで時間があり、なおかつそれが最近だったのでさほどその年月は感じなかったのですが。だからこそ、嬉しい限りの新作。京極先生にも見習ってほしいものだ(どーん)。はい。で、感想。…むぅ。ちと、期待しすぎたかな、と。十角館や迷路館などのハズラー的遊び心がさく裂している、とのことだったので相当に期待していたのですが。うん。それはわからないでもなかったけれど、いかんせん地味だったよね、今回。一人しか殺されてないし(笑)。てかまぁ、ここは仕方ないのだけれど。今回の犯人は殺すことは目的ではなかったのだから。殺意なしの犯行だったのだから。仕方ないのだけれど。その分、鹿谷さんの推理を楽しもう、ってことなんだろうけど、いつものようなスリル、ドキドキ感、スピード感が足りなかったかなぁ、と。そして何より肝心のネタが…最初、何の事だかわからなくて、読み返してそういうことかと納得し、しかし、これってちょっとアンフェアじゃない?と思ってしまった私にあてつけたかのような鹿谷さんと日向さんのやり取り(笑)。うーん…でも、そのためのこういう特殊な状況が作り出されたんだろうな。仮面によって顔を隠され、よって本名すらも明かされず、誰何が曖昧な状況。誰が殺され、そもそも殺されたのは本当に主人なのか、そして誰が殺したのか、しかしそもそもここにいるのは誰なのか。そう言った、ミステリで描かれるべき当たり前がまったく明かされない状況でのミステリ、というのは確かに前代未聞で、単純にすごいなぁ、と思った。あぁ…だからこそ、もっといつもの館シリーズのような、十角館のような、迷路館のような、そして誰もいなくなったになっちゃうんじゃないの!的スリルとドキドキ感を味わいたかったんですけどねぇ…。まぁ、仕方ないんですけど、犯人に殺意はなかったんだから(がっくり)。はい。しかしまぁ、これも中村青司の手がけた館だからこそ、の事件。他の館であったならそもそも事件は起こらず、犯人が首を切断する必要もなく、指を切断する必要もなく、そう思えばまぁ、これはこれでありなんだろうな、というかこれこそ館シリーズなんだろうな、と思えるのがすごいですな。中村青司が手がけた館があり、そこに人が集った瞬間から、まるで館に込められていた何かが解き放たれ、事件が起こる。それは必然であり、宿命。そして毎度、毎度、そこに引き寄せられる鹿谷さんと、館、更に中村青司の思いなどの行く先は…シリーズ最終となる次作できっと描かれるのでしょうね。楽しみ楽しみ。はい。そんな具合で。期待していたのとはちょっと違ったけれど、この特殊な設定、そしてこの館ならではの事件、この館ならではの犯行動機、或いは犯行心理などはさすがだなぁ、と思える一作でした!何より、こうして九作目を読めたことが最大の満足。ごちそうさまでした。

 

東野圭吾『片思い』・・・東野先生の作品は、テーマが必ずしもテーマだけでは終わってなくて、どの作品も必ず深く描かれていて、物語の謎解きなんかにもきっちりと関わっている。改めて、だけど今作でそのことをまざまざと感じさせられました。人気作家と言うか、少なくとも長い間にわたって、コンスタントに作品を発表し続けていける理由がわかるような気がします。はい。スポーツから機械から文系から理系まで。うーん、すごいね。はい。そんなこんなで今作は性同一性障害がテーマです。今でこそ市民権を得た言葉だけど、この作品が出た当時はまだまだ、だったんだろうな。難しいよなぁ。作中でいろんな人がいろんなことを言っていて、その中でも私はやっぱり、男だとか女だとか関係なくてこういう生き方なんだ、って言葉を支持したいと思う。だけど、思うんだけれども、やっぱりどこかではっきりとさせておかなきゃいけない部分があるのも事実で、そうするとやっぱり、男か、女か、みたいな話になっちゃうんだろうなぁ、と複雑な気持ちに。男と女と言うのはメビウスの輪。皆が皆、どちらの部分も持っていて、その割合の偏りがあるかないかの話、という中尾君の言葉から考えれば、この作品のタイトルは自分の中の男が自分の中の女を求める、或いは、自分の中の女が自分の中の男を求める、そうして傷つきながらもどうにかして自分らしく生きようとしてきた美月だったり嵯峨さんだったりのことを指しているのかもしれないなぁ、と思ったり。はい。難しいよなぁ、ほんと。別にこれに限った話じゃないけど、この話題でいえば、ずいぶんと差別意識?みたいなものは薄くなったように思うけど、一般的になったように思うけど、でもそれって本当なのかな?そうなったように見えるだけど、実際の所は何も変わってないんじゃないのかな、と思ったり。はい。そんな謎解き部分と、あとは各個人の友情がもたらす葛藤なんかも重かったなぁ。でも、そこまで良くも悪くも熱い友情なんて羨ましいですよ。早田君がそういう意味ではかっこよかったし、どこまでも優しすぎた中尾君は、けれど、一切の後悔なんてないのだろうからやっぱりかっこよかった。大人になって、それぞれの荷物を抱えながら、それぞれの道をそれぞれの方法で生きてきた。その道が交わった末の喜びや苦みなんかがとても丁寧に、共感できるように描かれていて物語に深みを与えていたように思います。うん。性同一性障害という一つのテーマ、そこから起こった事件を描きながらも、日一日一日を懸命に生きる人の姿を描いたミステリ。ラストも、切なくも希望が持てるそれでよかったです。

 

大沢在昌新宿鮫 毒猿』・・・読み始めは「あぁ、やっぱりこのシリーズは肌に合わないのか」と放棄しそうになりましたけど。奈美ちゃんと毒猿の逃避行が始まってからは俄然面白かった。そしてそこに日本、台湾のやくざと刑事が絡み合って怒涛の展開へ。いやぁ、面白かったよ。はい。奈美ちゃんと毒猿。いいなぁ。孤独な魂で惹かれあったのか。まったく二人の心中が描かれていないだけに想像が膨らむし、だからこそ切なかったし。日本社会に溶け込むことができなかった奈美ちゃん。それを思い知らされた時に、彼女の心は決まったのかもしれない。葉さんの拷問に壊れても決して屈しなかった彼女の壮絶な美しさのようなものが、葉さんの目を通して描かれていて胸を打ちました。何かを、毒猿に求めたわけでなく、だけど、毒猿にしか見いだせないものを彼女は見出した。孤独と言う共通項で結ばれたふたりの姿がただただ切なく、悲しく。そして毒猿。いやぁ、かっこよかった。最高にかっこよかった。孤独、孤独、孤独の塊のような人で、その男が過去に失った女と、今の女に唯一行動原理を揺さぶられる、と言う構図がこれまたたまらん。ラスト、鮫が毒猿の殺しを目の当たりにするんだけど、その描写が。もう、すっげぇ早いんだけどスローモーションのようで、一挙手一動作が見えないのに見えていて、その風を切るような風を巻き起こすかのような殺しは本当に壮絶で、美しく、芸術的で、なんか息を呑んだ。すごかった。まさしく人間兵器。なんだけど、兵器になりきれなかった男。死に魅入られ、死を与え続けてきた男。虫垂炎をあえて治療しようとしなかったことに、毒猿の人間の部分が表れているようで、だとしたらこの結末は、少なくとも彼にとっては安住の地、幸福な終わりなのではないのでしょうかね。いやぁ、かっこよかった。アクションシーンも最高。血が騒ぐ、騒ぐ。いいね。なんか、レオンよろしく、孤独な女と殺し屋と言う構図はいいな。最高だ。そして対する刑事ふたり。鮫の思いの一途さは、全国の警察官、というより公務員に聞かせてやりたいそれだったし、郭さん。最初は絶対悪訳だと思ってたんすけど。友人として、そして刑事として、毒猿を仕留めたかった。その思いは、人間として当然のものであり、刑事としての性のようなものでもあり、そしてまた男としての愚かさのようでもあり。あなたの背中、私が守る、なんて鮫に言った言葉、最高。かっこよすぎ。毒猿を目にすることなく死んでしまったその無念さ、いかばかりか、とも思うけど、鮫という同胞、そう、同胞に出会えたことが、その同胞が、そして自らの言葉を、思いを託すにふさわしい人間であったことが、そして死の瞬間にその同胞が託すべき位置にいてくれたことがせめてもの、唯一の、最大の救いであったと思うと、あぁ、よかったなぁ、と。そんなこんなで、何だかかっこいい人物だらけだったな。かっこよかった。新宿、歌舞伎町のざわっ、とした湿った熱気を感じる一方で、毒猿が放つ、乾ききった烈風に身を、心を切られるような、極上に引き締まったハードボイルド。いやぁ、面白かった。

 

・法月倫太郎『一の悲劇』・・・あとがきは先に読んじゃいけません。ちーん。はい。頼子のために、のアンチテーゼということで薄々、結末に予想がついてしまったゆえ。それでも、そこまで後味は悪くなく。頼子のために、のラストがもう大好きだったので、まぁ、そこは甘いぞ!と突っ込んでおきたい。でも、そう。この作品でも綸太郎はさほど活躍らしい活躍はしていなくて、探偵なんだけどほとんど出番もなくまるで傍観者、そして時折やって来てはそれこそ神がかり的な論理を語って事件の解決に多大な影響を与えていく神のような存在で、そういうことを踏まえたうえで、他者の視線にさらされなくてはならないという理由で描かれたのが頼子のためにだった、という法月先生のあとがきはなかなか興味深かったです。法月綸太郎という探偵は、まぁ探偵である前に作家さんなんですけど、なんか探偵の中でも最も無力感と対峙することを宿命づけられているような、そんな気が今はします。なかなかうまくは言えないけれど。神のような役割を与えられておきながら、無力感との対峙。まったくの逆説なんですけど、でも、案外、こういう言い方は正しいのかもしれない。はい。事件そのものは、まぁ、密室の謎は、そうか、そういうことだったのか、と。派手なトリックを期待したのですが、まぁ、そこがダイイングメッセージになっているということがミソなんでしょうな。むぅ。和美さんは、どんな気持ちだったのかね。なんか、多分、その夫を寝取ったうんぬんより、やっぱり、看護師として働いていた路子に子供があって、普通の幸せを手に入れている、そのことが許せなかったんだろうなぁ。子を亡くして、妹さんまで亡くして、それでも、その悲しみと苦しみのエネルギーが、他者を憎むというエネルギーに転嫁するという構図はすごくよく理解できた。きっとそうなった瞬間、和美さんの世界は一瞬で死んで、だけど一瞬で凄まじい生命力を得て爆発をして力を得たんだろうな。なぁ。ただ一人、茂君だけがその大人の都合に振り回され命を奪われたのだという現実、事実だけがやりきれない。

 

貫井徳郎『慟哭』・・・お久しぶりの貫井先生。これがデビュー作だそうで。すごいね。デビュー作にしてこの完成度。そしてタイトルの妙。と言うか、松本=佐伯と言うのが明かされ、丘本さんによって謎解きが進められていき、そこで、はた、と真実、事件が二つならば、もう一つの事件の方は、と気がついて、そしてそれに対する回答を得た時の、あのどうしようもない感情と言ったら。寂寞、嘆き、空虚、懊悩、怒り、どの言葉でも足りなくて、それらの言葉すべてをひっくるめても何かが足りないようなあの読後感こそ、慟哭。佐伯さんが娘さんの死体を前に覚えた、最後の人間らしい感情だったんだろうな、と。うん。松本=佐伯、というミスリードもお見事だな、と思ったけど、個人的にはこの救いようのない結末、時間軸にわけると事件は二つあって、その内のひとつはまだ何も、何も解決していないのだという、こっちの方がやられたなぁ、と言う感じで。ミスリードに騙されたその爽快感とか楽しみなんかが、一気にぶち壊されるようなこのミスリード、結末はお見事。たまりません。はい。事件を追う刑事さん視線の物語と、宗教にのめりこんでいく彼との物語なのですが、どちらも緊迫感があってすいすいと読み進めていけました。特に宗教の方は。なーるほどなぁー。わかるなぁ、この、宗教に傾いて、のめりこんでいくその経緯。その、彼の心が曲がりなりにも救いを得て、だけどそこから少しずつ、少しずつ狂信的になっていき、やがては宗教団体からも距離を置き、ただただ、願いを叶えたい一心で少女を手にかけていく様というのが、もう痛々しい。宗教にのめりこんでいくだけなら、何ら問題はないと思うんですよ、個人的には。あの時点では彼は誰にも迷惑をかけていなかったし、そこに彼なりの救いがあったのだとすればそれはむしろお安いと思うのだし。それでもそれだけでは済まなかった。多分、それは彼だけじゃなくて、彼と同じ立場に置かれたならほとんどの人がそうなってしまうんだろうなぁ。それがまた、どうしようもなく理不尽な現実故というのが、どうしようもなく辛く、苦しく、重い。彼のしたことは間違っていて、犯罪で、でも、元を辿ればその犯罪こそが最も憎むべきものであり、だとすれば一体どうすればよかったんだ、と彼が叫んだ時、一体何人の人が彼の目をまっすぐに見つめ、自分の言葉で答えられるだろうかなぁ。なぁ。後はその宗教団体というのが、経済的にうまく儲かるようなシステムに、法律自体もそうなっているという話が非常に興味深かったです。あいよ。そんな具合で、人のどうしようもない慟哭を、まさに救いようのない筆致で書き上げた驚きのデビュー作。読みごたえたっぷりで面白かったです。

 

大沢在昌新宿鮫 屍蘭』・・・調子に乗って三作目も読んでみた。面白かった。そんなこんなで『今度の敵は、女』というキャッチフレーズをつけたくなるような作品でした。いいね。強力な毒を仕込んだ編み棒で人を殺す、それがまるで必殺仕事人みたいで面白かったし、それをやってのけるのがふみ枝さんという本当に冴えない、ごくごく普通のそこらへんにいるようなおばちゃんだったっていうのが最高。綾香のために、どんどんと人を殺していく様がこれまた痛快。彼女に振り回され、やがては命すら奪われていく男たちが滑稽で憐れ。綾香に、ここまで彼女がすべてを捧げた理由ってのがちょっとわかりにくいかな、とも思ったんですけど、或いはそれは、看護師と言う職に就いてきて人間の死と生を見続けてきた彼女だからこそ、なのかもしれない。鮫と同じように職が人となり、けれど鮫とは正反対の方向に彼女の、その看護師としての人の部分が目覚めてしまったのかもしれない…とか思うんすけど、実際はそんなもんじゃないだろうな。多分、女だからですよ。だから綾香の澄んだ瞳に惹かれた。そしてあかねの悪意を見抜いた。なんかわかるなぁ。綾香のために、ひたすら人を殺し続けたふみ枝が、だけど最後にはまるで親に見放された子供のように見えた。うろたえ、どうしていいのかわからないままただ途方に暮れるしかない子供のように。綾香に裏切られた、と感づいた時のふみ枝さんの気持ちを思うとただただ切なく、それでも綾香を最後まで守り続けようと、求め続けたふみ枝さんの愛は、陳腐な言い方だけど母親みたいだったなぁ。綾香さん。よかった。美しさとか、気高さとかがバンバン伝わってきた。綾香が、あかねの病室に蘭を送り続けた、ってのがもう、それこそ本当に凄まじい仕返しだな、と。生でも死でもない状態のあかねに、これでもかと言うほどに美しい蘭の花を。ぞくぞくする。そこに込められた綾香の思いにぞくぞくします。正反対でありながら、暗く、強い絆で結ばれていた女がふたり。たまりませんでしたな。前作の毒猿とは異なる、だけど人物設定としては強烈な魅力は引き継いだような素敵な悪役でした。そしてそれに対峙した鮫。かっこよかったなぁ。惚れた。てか、外見描写から想像するに、かなり私のイメージとは異なるものでびっくりしました。…今更かい。すんません。てか、幸せ者だよなぁ。うん。こんな天職以上の天職に就くことができ、いろんな軋轢があるものの、決して容易くはないものの、桃井さんや村上さんをはじめとする同志にも恵まれ、晶という相棒であり恋人もいる。愛すべき街があり、戦う理由があり、正義を信じることができ、それを全うしようと強靭な意志を持って生きることができる。うらやましいよ。かっこいいよ。そして幸せ者だよ、あんた(どーん)。そんな具合で、ふみ枝さんの使用する毒とか、堕胎と美容ビジネスとを結びつけた辺りとかも、そのアイディアはさすがとしか言いようがなく、興奮しっぱなしの面白さでした。おぉ、どんどんアクセルかかって来たぞ、新宿鮫

 

島田荘司有栖川有栖ほか『Mystery Seller』・・・アンソロジーの醍醐味と言えば、知らない作家さんと出会えること。その作家さんの作品が自分の好みに合うか否かは運次第なのですが。そんな期待も込めて購入してみました、な本作。全部で八作。『え?八作もあった?』って思った今の段階で、なんか、アレなような気も(苦笑)。と言うことで、全八作。個人的な好みのランキングで行ってみよう。①島田作品…いやぁ。まさか、まさか。読み始めから中盤までは『おいおい、これミステリなのか?大丈夫なのか』とミステリ界の大御所に不安になり、更に謎らしい謎が提示されたところで、『ま、まさか!球根の行先ひとつで終わらせるつもりっ!?』と唖然としたものの。やぁ・・・やられた。荒唐無稽、んなわけあるかい、と突っ込まれてもいい。こういう壮大な、夢みたいな終わり方は大好きだ。これでビョンホンの時間が返ってくるわけでも、無残な思い出が消え去るわけでも、お姉さんの幸福が取り戻されるわけでもない。それでも、咲き乱れる黄泉の花、真っ赤な真っ赤な曼珠沙華の壮絶なまでの美しさは、彼らの壮絶な過去を読み終えてきた読者の胸に、そして彼らの胸に、微かな救いを、光をもたらしてくれた。戦に、暴力に走る人間の愚かさ、悲惨さが際立つ作品だからこそ、どんな状況下にあっても大地に降り、その地に芽生え、生きる植物の力強さ、健気さに胸を打たれる作品でした。やぁ、やられた。②米澤作品…うまいよな、この人は。なんてか、作品そのものもなんだけど、文章そのものが巧いというか。うん。短編、長編問わず読ませる力に長けている、と言いますか。はい。そしてまた、この結末と言ったら。たまらんな。たまらん。私も夕子にぶたれたい。美しいよ。夕子だから許されるんだよ。有無をも言わせぬ、静かで、仄暗い圧力に満ちた作品、とでも言いますか。この人ならでは、だと思う。血の因果、女の因果。たまらんな。ほんと。③長江作品…映像作家さんらしい、臨場感に満ちた作品ですぐ物語に引き込まれました。だから、登場人物ふたりの関係が徐々に明かされることで満ちてくる緊迫感にも、手に汗握ると言いますか。本を読んでるのに、映像を見ているように手で目を覆いたくなるような。そしてミステリ的な仕掛けも二転、三転として面白かったです。でも、個人的にはラストがなぁ。まぁ、あの終わり方しかなかった気もするんですけど、なんか、せっかくの緊迫感が勿体なかったなぁ、って気も。でも、面白かったです。④我孫子作品…ラストの一発逆転はさすが。そしてまた、女性刑事であり息子を持つ母親でもある主人公の、じっとりとした不安の恐怖が、じんわりと伝わってるのも面白かったです。ただいかんせん、ちと短すぎたかなぁ、と。いや、まぁ、適量だったと言えば適量なんですけど。あとあと、夏紀くんが女の子をぶつシーンで興奮したんすけど、そこで同じように興奮した私は変態ですかね。⑤有栖川作品…シリーズ読者だからこそ、と言いますか。謎解き云々より、あのメンバーがだらだらとしている、あの雰囲気が読めただけで満足と言いますか。アリス、いい先輩に恵まれたね。私も、あんたたちみたいな大学生活を送ってみたかったよ、と自虐交じりのほっこり気分。⑥竹本作品…特定のコマーシャルにどうしようもない恐怖を覚える、ってとっかかりは面白くて、その場所に漂っている独特の雰囲気も伝わってきて、結構期待したのですが。まぁ、今後、命を狙われる可能性に付きまとわれている、ということを考えれば怖いけど。個人的好みに鑑みれば、一言、地味。⑦麻耶作品…御守り探しばっかりやってたからいい加減殴ってやろうかと思ったら、タイトルズバリ『失くした御守』だった。がっくり。この人らしい、読者をバカにしたような肩すかし、肩すかし。腹が立つ気ももはやわいてこなかったよ、という。主人公君たちもなーんか、好きになれなかったし。⑧北川作品…文章そのものがダメ。受け付けない。淡々としすぎ。言った、言った、が多すぎ。登場人物も誰も好きになれなかった。自分の知識をひけらかしているような、嫌な書き方も鼻についたし、なんか、文句しか出てこない作品でした。あーれー。そんなこんなで、4対4で好き嫌いが分かれましたね。満足は満足でしたが、やっぱり、そうそう『放課後探偵団』みたいな、どの作品も好き!って言えるのを期待していたからなぁ。そこら辺がちと残念。

 

道尾秀介『鬼の足音』・・・あしおと、のあし、の字が本当は違うんですが。はい。やぁ、やっぱうまいよなぁ、としみじみ思う。ミステリ、というカテゴリに括りつけておくつもりはないけれど、やっぱりこの人には、こっちの世界にも足を突っ込んでいてほしいものだ、としみじみ思います。はい。そんなこんなの短編集。ミステリ的な騙し、驚きを最後に据えつつ、全編に漂っているのはホラー的なひやり、とした質感。ひたひたと、静かに胸に迫ってくる様々なぞわり、とした空気。たまらないなぁ。文章が本当に巧いからね。もう、すいすい読めちゃう。うん。色々な話がありましたが『冬の鬼』が一番好き。純愛、と言ってあげたい。だけど遡る形式で明かされていた日記の、その最初を読み返すと、この人の意地の悪さと言うか、作家としての実力みたいなものを感じると同時に、どうしようもなく悲しくなる。光を奪い、世界を閉ざし、そうまでしてようやく手に入れた幸福に忍び寄る鬼の声。囁くようなそれはきっと、彼女の幸福に、小さな小さな罅を入れていくんでしょうね。そうして…。『ケモノ』『箱詰めの文字』のラストに待っていた、あっ、と驚くような、世界が反転するような仕掛けも好き。特に『ケモノ』は彼の身の上にどうしようもなく同情。だからこそ、『そうだ!まだやり直せるよ!』と希望を持ち、だけど彼が今回の件は何にもならなかった、と気が付いたところでは『そうだよね。わかるよ、その虚無感』とがっくり苦笑し、そしてラストの真相には『!』。感情ジェットコースター。孤独、ただ冷たく重いそれだけが彼の傍にある、あのラストの冷え冷えとした空気がたまらない。『箱詰めの文字』はもう、この、狂った感じがたまらない。『悪意の顔』もなぁ…この人、本と、どんな人物書かせても巧いんだけど、特に子供、理不尽な環境に傷つき、だけど助けてもらえず、ただ弱々しく震えるしかない子供、或いは、せめてもの反撃を小さな心で必死に企んでいる子供を描くと、もう、胸が詰まる、それくらいに巧いなぁ、と。この話も本と、最初は『僕』に共感して、でもその内、S君の抱えていたものにも共感して。そしてまた、キャンパスを振るう女性の孤独にも、どうしようもなく共感を覚え。ファンタジー的な設定でありながら、でも、そこで描かれてあったのは孤独。どうしようもない孤独に耐えられなくなった人の、小さな心の、悲しみ、寂寞。人間の内にあり、普段は鳴りを潜めている鬼が顔を出し、やがて人の皮を破り、発露する、その一番の理由は、人間であるが故の孤独であり、寂寞なのかもしれないな、と。ある者はその鬼に食われ、ある者はその鬼に魅了され、ある者はその鬼と手を取り合い、ある者はその鬼に惑わされ、傷つけられ、ある者はその鬼に怯え。そんな様々な人たちの姿を描いた、傑作短編集でした。

 

大沢在昌新宿鮫 無間人形』・・・調子よく四作目。直木賞受賞作。ですが、個人的に言えば前作、前前作の方が数倍面白かった、と言う感じなのですが、まぁ、それは仕方ないかな、と。鮫が対峙する事件の種類によって、この物語のスピード感とか質感ってかなり変わってくると思うので。で、今回は薬。『今度の敵は、薬』。前作と同じようにキャッチフレーズを作ってみた。はい。薬。本と、鮫の言う通り。憎むべき存在。本人だけが廃人になるならそれは構わないけれど、そうじゃなくって、何の罪もない人がその狂気に巻き込まれる可能性がある。或いは、そうして落ちてきたお金によって、法に抵触する団体が潤い、またそれが新たな被害者を生むかもしれない。進がアイスキャンディに依存しきって、幻覚を見、体調も狂ってしまって、凶事を起こしてしまうまでの、あの一連の流れはすごく、その気持ち悪さみたいなものが伝わってきて、まったく今日もはないけど、本と、薬物は怖いんだと思い知った。てか、実際に、ニュースなんかでもバンバン捕まってるもんなぁ。年齢も、性別も、職業も問わず、いい意味で平等、無差別。それが薬物に手を染めた犯罪者に共通していることで、だからこそ、一層、身近な犯罪なんだろうなぁ、と怖くなる。そんな薬物犯罪に対峙する鮫。鮫はもちろんのことだけど、苦悩する麻薬取締官、塔下さんと、あっと驚くスパイだった石渡さんがかっこよかったです。立場の違いがあり、組織同士の軋轢があり、それぞれの思惑がある彼らの、だけど胸の内にあるのは、薬物犯罪を撲滅したい。それによる二次被害を防ぎたいという気持ちであること、それだけは共通しているのだということを信じたいし、少なくとも彼ら三人の間ではそれが信じられるような気がしました。で、『今度の敵は、薬』、なんて書いたけど、その裏、『今度の敵は、土地』って気もした。土地と言うか、家と言うか。うん。香川家という、巨大な家、権力、力に守られていた昇、進兄弟。けれど、そんなものを微塵も恐れない平瀬の存在を前にして昇が敗れ去ったのはあまりにもあっけなかったし、それだけ、昇の力は借り物の力なのだったと思い知らされたような。てか、平瀬、すごくね(どーん)。本当に怖いのは、こいつだと思う。彼らが、或いは、耕二くんを弄んでいた、否、きっと本気だったに違いない景子さんが逃れたかったのは、香川家の力、権力、土地。けれど同時、その力を、権力を、土地を背負わなければどうしようもなく無力な自分というものを彼ら、彼女らは知っていたんじゃないのかな。どうしようもなく無力な自分を知っていたんじゃないのかな、とも思うと切ないなぁ。『無間人形』ってタイトルが、薬物による無間地獄に落ちていく、無力化されていく進を表現していると同時、香川家という力、権力に落ちていく彼ら兄妹を表しているように思えて。うん。そんな具合で、前半はじれったいぐらいののろのろスピードでしたが、後半に向かっての物語の収束度、加速度、そしてクライマックスの迫力はさすが、と思わせてくれる一冊でした。…この日、夢にドンパチ血しぶきヤクザ映画も真っ青だぜ!な映像を見たのは、きっと今作の影響に違いない(どーん)。と言うことで、今作以上に地味だという、次作も楽しみ。

 

はい。そんな具合でとりあえず、今回はこの辺りまでということにしておこう。

 

長いな。ほんと、もう少し、簡潔にまとめる、と言うことを意識して書いておくべきだったな、自分、と今更ながらに思います、ぐへへへへ。

 

作品としては『新宿鮫』が登場しているのですが、2作目から登場していると言うことは、どこかで1作目を読んでいたのでしょうか。私、その感想、書いていましたか?読んだ記憶はあるのだが・・・感想をアップしたきおくが、あまりないぞ。

 

本と大丈夫か、私の記憶能力よ・・・。

 

はい。ではでは。次は9月11日に、2012年の読書感想文の続きを大放出する予定でございますので、よろしければおつきあいくださいね。

 

本日はここまでです。読んで下さりありがとうございました!