tsuzuketainekosanの日記

アニメや声優さん、ゲーム、漫画、小説、お仕事とのことなどなど。好きなことを、好き勝手に、好きなように書いていくだけのブログです!ブログ名の『ねこさん』は愛猫の名前だよ!かわいいよ、ねこさん!

本日は1が付く日なので~読書感想文大放出だよ!

はい。そんなこんなで7月も本日で終了ですか。早いな。毎日、私は一体、何をして過ごしているんですかね・・・なんか、昨日のことすら思い出せない、そんな39歳の私です。大丈夫かよ、うふふ。

 

ああ、そして来月の今頃には、もう試験を終えているのか。と言うことは、試験まで残り1ヶ月を切ったわけだが・・・不安しかない(ちーん)。残り1ヶ月、がむちゃらに勉強しようと言う気はあるけれど、思ってるそばからゲームしたり、本読んだり、アニメ見たり、漫画読んだり、音楽聞いたりしているあたり、もはや救いようがないよね。

 

ってか勘違いするなよ。

悪いのは、そうしたコンテンツじゃなくて、勉強をしない私だからな!(どーん)

 

はい。まぁ、あの、本と、獅子座の自尊心にかけてがんばります(何度目)

 

ではでは。今回もくっそ長い読書感想文、大放出でございますよ~。

 

有栖川有栖『月光ゲーム』・・・デビュー作です。ねぇ。火村先生シリーズしか読んでなくて、江神さんシリーズはどうも食わず嫌いの気があったのですが。面白かった。というか。あれ。こうして有栖川作品を代表するシリーズを読んでみると。違いがあって面白いというか、凄く興味を引かれるというか。根底は本格ミステリ、なんだけどものすごく実は毛色が違ってたんだな、と凄く感じました。火村先生シリーズの方は変化球。こちらはストレート、と言った感じでしょうか。江神さんの世界では書けない、だけど有栖川先生が書きたい、それが火村先生シリーズに溢れている謎のような気がしました。有栖川先生の作風の広さに今更ながら気がつかされた、まさに同じ土台を持ちながらも正反対の二人の探偵が活躍するシリーズを読んで初めて、有栖川先生の魅力を知ることができるのではないかな、と思った今更(どーん)。はい。面白かったです。何てったって、ルビが多様に活躍する謎解きの文章を読んでいくたびに、『あぁ、成程。そうだったな』とか『あぁ、そういうことだったのかぁ』とか納得できる時間がたまらなく至福。たまらんですよ。まさにミステリの醍醐味。それに、青春小説の色合いが相まって面白くて切なくて、そして有栖川作品に共通している、突き放したような描写が時折入ることでボリュームある作品だったけどものすごく読みやすかったです。月光ゲームというタイトルも、ほんとふさわしかったように思う。江神さんは、若干、影薄くね?とか思ったんですけど、でもだからこそ、謎解きの部分やアリスを支える?部分では凄く存在感を放っていて。その、謎に対する対処の仕方も(まぁ、火村先生は仕事って部分もあるけれど)火村先生との違いなんかを考えると、色々興味深いな。はい。そんな具合で、あとがきの有栖川先生がデビューに至るまでの経緯も面白かったです。乱歩賞を受賞されていたら、火村先生は生まれていたかなぁ?ってか中学三年生で乱歩賞応募ってすごいよな。さてさて次は二作目孤島パズルです!

 

有栖川有栖『孤島パズル』・・・はい、二作目。面白かったです。というか、デビュー作と比べると格段に何もかもがうまくなっているなぁ、と偉そうに思えたくらいに面白かったし、読みやすかったです。そう。江神さんの謎解きのシーンで、或いは言葉で思ったんですけど。本格ミステリの、この論理的に謎を解いていく、というのはそうかもしれないし、けれど、そうじゃないかもしれない。犯行を犯した人間だけが本当の真実を知っているわけで、その人が、そうではない、と首を横に振ればそれはそうじゃなくなるじゃないですか。探偵というのは、時に、それを糾弾する、なんとしても罪を罪として認めさせるという人もいる。そうじゃないと首を横に振られても、そうなんだ、と論理的に徹底抗戦する探偵さんもいる。けれど江神さんはそうじゃない。そうじゃない、そうじゃない。そのことが痛いくらいに伝わってきて、礼子さんに、本当に父親の事を思うのならばあなたは首を横に振るべきなのだ、こんな紙一枚のような論理だけの推理を首を振って否定すべきなのだと、その言葉が本当に胸に突き刺さりました。探偵でありながら、それは探偵らしからぬ言葉なのかもしれないけれど、けれど、探偵は探偵でしかないというそのことを、その無力な存在であることを彼自身が理解していて、そしてまた痛感しているような。彼が何故、謎を解くのか。それは未だもってわからない。わからないけれど彼は、なんとかしたいのかもしれない。何かを何とかしたくて、だけどどうにもできない事は理解していて痛感していて、それでも、たとえば血塗られた犯罪をどうにかしたくて謎に立ち向かうのかもしれない。そんな事を思いました。そして新登場のマリアちゃん。彼女とアリスの関係や、そして彼女そのものの存在、江神さんの苦悩、あまりにも悲しすぎる礼子さんの最後やら、前作以上に青春ミステリとして読み応えを与えていて、なおかつ、哀切な余韻が胸に突き刺さるような作品だったと思います。鋭く、しかし、犯人の否定ひとつで風前の塵と化してしまう本格ミステリの、その諸刃の剣のような危うい魅力を、堪能したように思います。はい。

 

真保裕一『ボーダーライン』・・・舞台はアメリカ。登場人物はおろか、カタカナが乱舞する世界。いやぁ、面白かった。読み応えがあったし、エンタメな部分もきっちりで、素晴らしい作品、たくさんの人に読んでもらいたい、そして考えてもらいたい、或いは考えるのが必要なテーマを孕んだ作品だと思いました。この年のこのミスは所謂、人間の心を持たない人間が登場する作品が多数ランクインしていたのですが。ねぇ…本と。安田信吾という男の存在。それにどれだけの命が振り回されてきたのか、特に家族が、どれだけの思いを強いられてきたのかと思うと。そしてお父さんが、どれだけの思いで、愛しているから息子を殺す、殺さなければならないという決心を抱くに至ったのかを思うと、本と胸が詰まるような思いです。そしてまた、息子を前にした時のお父さんの涙を思うと、もう言葉がない。父を止めるためにこの地までやって来て、けれどそれが叶わなかった真由美さんの悲しみを思うと本当に言葉もない。ねぇ…本と。何なんだろう。最初からこんな人間が生まれてしまう。そう思うのが、悲しいかな、いちばん楽な、偉大なる諦めを含んだ結論のようにも思うけれど。あぁ、難しいなぁ。人を殺す、そこまではいかなくても、簡単に人を傷つける人間なんていくらでもいるからな。なぁー。あぁ、苦しい。物語の展開が、唯一の救いのようにも思えたかな。うん。強い決心を持ちながらも息子を撃てなかった父親。そして同じように、一人の人間を、天使のような面をした鬼畜のような人間を撃てなかった永岡。人としての、ぎりぎりのところで葛藤しながらも、人だからこそ、安田信吾を撃てなかったふたり。様々な価値観が存在するアメリカを舞台に、それでも、人種など関係なしに、ただ人として発砲することができなかったふたりの姿が、悲しくもあり、だけど、逞しいとも思う。うん。過去の過ちを胸に、人の親となる永岡さんが、話し合うことしか今はできない、と言っていたのも印象的だった。そしてまた、どうにか信吾と面会を、と望む姿も。言葉は通じない。けれど、言葉を、と望むような、願うような思いが本と、救いと言うか共感できるようで。あぁ…難しいなぁ。何か、こー、適当な言葉が見つからないけれど、本と。知恵熱が出てきそうだ(笑)。様々なテーマを、重厚ながらスピード感溢れる物語に巧みに織り込んだ作品だったと思います。本と、たくさんの人に読んで欲しいな。そしてたくさんの人に考えて欲しいな。ということで、このミス2000年度版ベストテン制覇っ!

 

有栖川有栖『双頭の悪魔』・・・読んじゃったら読む本がないよとわかりながらも読んじゃった。後半の残り二百ページほどはもう怒涛の如く、流れに身を任せるがまま。うーん、結構な分厚さなのですがそれを感じさせないほどに面白かったです。至福至福。はい。そんな具合でこりゃひょっとしたら壮大な叙述トリックが、とか派手なトリックが!?とか胸をドキドキさせたのですがやっぱりそこは有栖川先生でした。地味なほどに本格。論理だけが物を言う物語、その解決。成程ね、と感動しきり。交換殺人なんてなんか思い浮かんでも良さそうなものだったのにまったくだったなぁ。やられた。「双頭の悪魔」のタイトルにふさわしい真犯人が、最後の最後に暴かれる、それがたった一言というのもすごくぞくっ、ときた。たった一言がその正体を暴いた。逆を言えばその一言がなければ暴かれなかったのかもしれないと思うと、なおのこと、あの一言の重み、致命的な過失が私の胸にすらすとん、と刺さったかのような。はい。物語の舞台もよかったな。だからこそ、この長さを長さと感じずに読み終えることができたのかもしれない。芸術家たちが住まうコミュニティ。そこに憧れを感じずにはおれず、だからこそ、そこが少しずつ、少しずつ拒んできた『外界』に立ち向かわずにはいられない、その滅びの美のようなものが、それこそ調香家が作り上げた香りのように、馥郁たる香りのように伝わってきて。あぁ、そう思うとその調香家が悪魔だったと言うのも、ものすごく意味深。で、その『地上の楽園』のような場所、そこに固執した人間の様とは正反対に、少しずつ少しずつ現実に対峙しようとするマリアちゃんの心境だったり、江神先輩の過去だったり『ありがとう』の一言だったりが、アリスたちの言動だったりが繊細ながらも確かな強さを感じさせて、青春小説としての味わいを充分にもたらしていて。沿うかぁ…江神先輩にはそんな事があったんだぁ、とかマリアちゃんの自分自身に対する痛烈な批判とか、江神先輩とアリスの間で揺れ動く思いとか。なんか、胸がきゅっ、とするようで。本と、ミステリでありながら青春小説だよね。江神先輩。成程な。彼が、学生であり続けるその理由が、少しわかったような気がする。あと、神だの運命だのそのものを信じていない火村先生との違いが明確な一言も胸に染みました。穏やかで柔らかで、やさしい人。やさしすぎる人。志度さん。そっかー…コンセント、抜けてくれてありがとう(笑)。彼の過去が火村先生の謎にも少しは繋がっているのかな、とか邪推したり(笑)。あぁ、長くなってしまいましたが。本格ミステリの新しい古典、という帯の惹句が頷ける、ロジカルが炸裂するミステリでありながら、ロジカルではない人間たち、特に若者たちの心、姿も瑞々しく描いた青春小説としても傑作な作品でした。面白かった!

 

道尾秀介カササギたちの四季』・・・祝!直木賞受賞。嬉しいね、古くから応援してきたファンとしては。はい。そんな受賞後第一作。ミステリでしたが、誰も死なない、誰も傷つかない、やさしい、やさしいミステリでしたね。できれば道尾先生にはまた、暗い、救いようのないようなミステリも書いて頂きたいですが。でも、今回のような作品もいいな。カササギと日暮くん、そして菜美ちゃん三人の関係がとっても柔らかくて、心がほっとできるような、こっちまでその仲間に入れて欲しくなるような、本当にとてもいい関係でその会話とかがとっても面白かったです。すべてがやさしさで繋がっているような。とても穏やかで、柔らかで、心地のいい関係。うん。そのほんわかした温かさが、物語を通してひしひしと伝わってきましたよ。カササギの推理に振り回されて、菜美ちゃんを落胆させてはなるまい!とひとり勝手に(笑・でも、きっとそうだよね。日暮くんは菜美ちゃんのために。そして多分、菜美ちゃんはカササギのために、日暮くんのために、なんだろうね。そういうところも、とってもいいな)奮闘している日暮くんも好き。そう。日暮くんが奮闘する、その理由が弱い、というような声もあったけれどでも、それで充分なんだと思う。だからこそなお、日暮くんの優しさが伝わってくるというか。運命や何かがどのように作用して、その結果が良いか悪いかなんては簡単には判断できない。けれど願わくば、それらすべてがすべてのひとに良いように働ければいいのにな、って日暮くんの思いはほんと、ぐっ、ときましたよ。いいな。こんなやさしいミステリのような社会で、日常であればいいのにな。そんな、まさしく切なくなるくらいにほっこりした優しさに満ちた一作でございました。

 

東野圭吾麒麟の翼』・・・最高傑作かどうかは首を傾げるところだけどやっぱり面白かったです。前二作を掛け合わせたような作品、とのことですがまさしくそう。加賀さん自身の、そして被害者や冤罪をかけられてしまった人の家族の絆。そして舞台となる人形町界隈の地を生かした事件の展開。なんて言うのかな。文章がうまいと言うか。作家さんに対してそれを言うか、って話なんですけど。でも、そんな感情描写があるわけでなし、ごちゃごちゃ書き込みがあるわけでなし、それでもきっちり、登場人物の感情やその場の空気が伝わってくるというか。たくさんの人達の機微が縦糸、横糸のように絡まっている様が、そしてそれらが紡ぎ出して出来上がった一枚の大きな絵のような事件の全貌が、終焉が読み終わって目の前に差し出されたようで。うまいなぁ、と思う。勉強になるなぁ。はい。誰かが誰かを思ってる。それを証明するかのように事件に真摯に対峙する加賀さんの姿が頼もしかった。小説の世界だけではなく現実でも、ひとつの事件でたくさんの人の心が耐えがたい苦痛を負ったり、傷を負ったり、或いはマスコミなんかによって弄ばれたりしているのだと思う。父親を信じようと心に決めた悠人然り、冬樹を信じ抜いた香織ちゃん然り、その心の苦痛たるや、誰も信じてくれない、その孤独感たるや凄まじいものだったと思う。だからこそ、事件は癌のようだと言い、ただひとつの真実を求めるために事件に向き合う加賀さんの姿は、現実にもこんな刑事さんがいてくれれば、と思わずにはいられなかったです。何がいちばん悲しいって、勿論、信じようと心に決めた人が罪を犯していた、その事も悲しいけれど、満足に、充分になされるべき事もなされないまま、流れで、雰囲気でそうだと決め付けられてしまって、はい終わり、となってしまうのが一番怖いし、一番悲しい。そんなことをしみじみ感じさせられました。そして、悲しいかなその思いが言葉として交わる事はなかったけれど、父親もまた息子を信じた。息子だけでなく若い子どもたちを信じようとした。この事件に関しての悠人たち、青柳さん、杉野くんの気持ちはすべてどれもが理解できたなぁ。うん。これでいいのかな、よくない、でも真実を明らかにするのは怖い。悠人くんが思った通り、もし、の思いは禁じえなくてそれがやるせないのだけれど、でも、その事に気がつけた事こそ、青柳さんの最後の願いが、祈りが通じた証だと思う。麒麟の翼。成程ね。憎いね。タイトルまで憎いね(笑)。一度この目で現物を見てみたいな、と思いました。はい。そんなこんなで謎解きと人情が絶妙に絡み合った、まさしく国民作家、東野圭吾の魅力満載の一作でございました!よし、こうなったら加賀さん作品全部読んでやろーっと。

 

・法月倫太郎『法月倫太郎の新冒険』・・・初めてじゃないんだよね。読んでいるはずなんだけどここには記録されていない(ちーん)。しらみつぶしの時計。読んだはずなのに(ぽけー)。はい。そんなんで本格派であっても、どうかなぁ?合うかなぁ?と心配していたけれど、読めました。短編なのでどうしても物語性よりも事件の詳細やら推理の詳細やらが重視されているので、後半は辛かったけど…と言うか、別にそんなに慌てて読もうとしなくてもいいんだけど。はい。でも作者さんの本格に対する執念、パズラーに徹しようとしたその心意気のようなものはひしひしと感じられました。短編でこれだけの知恵と工夫を盛り込むって、凄く難しい事だと思うし、凄く贅沢な事だとも思う。どの作品も面白かったですが、個人的には「世界の神秘を」と「身投げ女のブルース」が好きです。前作は超常現象のあまりに幼稚な仕掛けに笑いが止まらず(ご苦労様、教授)、けれどその裏に隠されていたたくさんの人間たちの欲望に冷やりとしたものを感じつつ、そしてそれをばっさり、切り捨てるような一言を放った綸太郎の一言にすっきりしたし。「世界の神秘を解く男」なんて本と、皮肉以外でもなんでもないこのタイトルもまた絶妙!もう一作の方は私の大好きなパターンですね。事件を推理し、読者を導いている人間が実は犯人だったというパターン。よく似た女、というのが反則すれすれかもしれないとは作者さんのお言葉ですが、いやいや。それなのにひっかかっちゃった、というところに逆に葛城刑事の鹿島伸子に対する愛情を感じられたし、その反則すれすれのネタからここまで話を広げられたそのアイディアにも脱帽です。本格ミステリ、しかも短編でありながら人間の機微が描かれていた(と私は思った)物語性もあるのだったから読みやすかったのかな?と書きつつ、しかし、他の作品もそうだったし、何だかんだ言いつつ読み終えたし、「背信の交点」のあっと驚くような真相と余韻も好きだし、「現場から生中継」のドンデン返しも面白かったし、「リターンザギフト」も苦労したけど(笑)最後の余韻も好きだし…(苦笑)。短編だから読みやすく、けれど、ずっしりした読書感と満足感を味わえた一作でございました!

 

岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』・・・明かりがあってドキドキワクワクしながら本を読めることがこんなにもありがたい事なのだと、贅沢な事なのだと改めて気づかされた今日この頃。色々思うことはあるけれど私は私ができる事をやるしかないと思うし、やりたい事をやっておかなければと言う思いもあって、だから私はこれからも本を読み続けたいと思います。はい。そんなこんなでいつも通り感想です!いやぁ、面白かった!あんまり期待してなかったんだけど(ちーん(笑)。閉ざされた空間の中で、ただ延々と議論が繰り交わされるだけのお話なんですけど。でもその中にまるで自分もいるような緊迫感、圧迫感が伝わってきたし、登場人物がたった四人。その中に確実に咲子を(嫌な女だから呼び捨てです(笑)殺した犯人がいる、だけど、どう議論をしてもそれがわからない。その不可思議な状況に対する『どうなるの?じゃあ、犯人は誰なのっ!?』って思いがぐいぐい物語を読ませていって、意外すぎる結末にわお!と驚きでした。成程ね…延髄直撃だったか。…あまりに運が悪すぎるというか、もはやそれは事故でしかないような気がすると言うかなんと言うかだけど。でも、本と、こりゃもう、とんでもない結末しかありえないんじゃないのか?と投げやりになっていた私でしたが、そんなことはなくきっちりまとまっていて、さすが、の一言でした。ラスト、雄一さんの鮎美に対する『ありがとう』の一言も効いてるな。読み終えた直後はちょっとこの言葉の意味が理解できなかったんですよ。でも考えてみると成程な、って。鮎美さんが自分の事を思ってくれていたから、言葉の端々からそれを感じることができ、だからこそ閉ざされていた謎の扉をこじ開ける事ができ真相を導き出す事ができ、閉ざされていた空間から生きて出る事ができた(…と信じたい、よね(汗)。だからこその『ありがとう』の一言だったんだなぁ。

 

山口雅也『生ける屍の死』・・・ずっと読みたかった本でした。図書館併合万歳!はい。そんなんで登場人物カタカナだし絶対途中で放棄だな、と思ったけど。いやいや面白かったです。七百ページ、およそ一週間で完読でございました。はい。そうだな。『死んだ人間が甦る』というミステリの首を絞めるような世界観の中で一体どんな解決が待っているのかと読み進めていったら、見事にその舞台を、その論理を生かした解決で成程、そういうことだったのかぁ、と感激仕切りでした。成程ね。『second death』の意味とか、モニカの論理とか本と、まさしく『死んだ人間が甦る』世界でなければ納得できないものだもんな。一度、殺さなければ、死ななければ自分の、モニカの本意は果されたのかどうかはわからない。だからこその『死んだ人間が甦る世界』であるにもかかわらずの殺人だったんだな。成程な。すごいね。よくこんな話が思いついたもんだよな。アイディアに脱帽。その、推理とか論理の細かさとかよりも、このアイディアそのものに本と感嘆。だからこその舞台がアメリカだったんだよな。ということで、描かれていた日米の死に対する、葬送に対する考え方の違いとか、そのものの違いとか凄く興味深く面白かったです。そうだよな。日本は火葬で、だからゾンビって概念があんまりないんだよな。海外は埋葬だから、そのまま死者が甦ってくるって言う概念も通用するんだよな。だからこそ今回のような物語が成立するんだよな。死者が死者のまま存在していると言うか。火葬されるかもしれない、と知った時のモニカさんの狂ったような焦燥も理解できるわ、って話ですよ。うん。この辺、やっぱ薀蓄と物語性がいいバランスで書かれていたから飽きずに読めたんだよな。はい。そして、自らも生きる屍となってしまったグリンとチェシャの最後。切なかったなぁ。哀切極まりなくて。でもグリンが語った最近ではない人間は性を手に入れ、個別化を手に入れ、他の個別と交わる事で命を生み出す代わりに死を手に入れた、ってところがすごく頷けた。生きて他者と交わりそして死ぬ。それこそが人間の姿なんだね。だとすれば、グリンの生も、決して、スマイリーが言ったような生を思う一瞬ではなかった。でも、それがあまりにも不運な形で途切れてしまったことがつくづく憐れで。北へ、北へと向かう冷たい風の中、徐々に薄らいでいくグリンの心が、せめて穏やかであることを願わずにはいられなかったよ。あと、これも欧米の考えだろうけど人間は土から生まれた。だから死ねば土に返り塵に化すという考えが、なんかすごく、死に対しての恐怖心を少し薄らげてくれたと言うか。うん。はい。とにもかくにもミステリ部分では勿論の事、欧米文化を通して描かれる『死』に、様々なことを考えた一冊でございました。面白かった!

 

東野圭吾『卒業 雪月花ゲーム』・・・記念すべき加賀刑事デビュー作。学生の加賀さん。冷静沈着でありながら学生らしく熱っぽいところを持ち合わせていたり、ちょっときざっぽいところがあるのが、刑事になっても変わっていなかったり、それでも年月を増した分大人になってる分もあるなぁ、と感じたり。結婚して欲しいですよ!どんだけ男らしいの。そしてどんだけ自信満々。いや、決してさとちゃんにそれを強いてないところがまたかっこいいじゃないですか!この男臭さも加賀さんの魅力であり、自分が口にする言葉には絶対の自信と信用を込めているところもちっとも変わってないなぁ。でも、さすがにこれは今の加賀さんは言わないだろうなぁ、とかにやにや。でもさとちゃんとのコンビはお似合いだと思う。ひっついて欲しかったような欲しくなかったような(笑)ですが、この先、彼女が出てくる事はあるのかなぁ?あぁ、でも、『卒業』だからな。ないんだろうな。うん。はい。そんな加賀さんのふてぶてしくも初々しい(笑)面を見られたのがファンとしては嬉しかったです。そして相変わらず、ストーリー性も謎解き性も兼ね備えた作品そのものも言わずもがな。東野先生のこのトリックのネタとかトリックそのものとか雪月花の論理とかまったくどこから沸いてくるんでしょう。何よりそれが一番の謎ですよ(笑)。怖ろしいくらいに贅沢ですよね、東野先生の作品と言うかそこに込められているものの数の多さと言ったら。本とに。もうむしろ鼻につくくらいと言うか(笑)。はい。培ってきた友情の行く末は、あまりに苦々しく沈痛で、そしてあまりにも悲しいものだった。『知っている』『信頼している』だから『知られているはず』『信頼されているはず』という友情を繋いでいた目に見えない糸。それは何て脆く、そして何て儚く、でも強固に存在を疑ってこなかった分、それが解けてしまっていたと知った時の衝撃はいかばかりか。それらを知り尽くしていて、だけど、若者たちの間に確かに存在していたその糸を守り通そうとしたかのような南沢先生の『真実というのは、いつの時もつまらないもの』と言う言葉が、笑顔が今思うと胸に染み入ります。誰が決定的に悪い―ということではなく。誰もが、自分の事を思っていて。大学という一種の楽園のような場所から、社会に飛び出さなければならない、自分で自分の肩書きを、位置を掴まなければならない時期だからこそ、自分の事しか、いつもなら自分以外の誰かの事を思えるかもしれないのにそれができなくて、自分の事しか考えられなくて。だから、私には、どの登場人物も決定的に悪い、とは言えない。自分の事を一番に考えてしまっていた、みんなの気持ちが理解できるから。悲しいボタンの掛け違いのようで。壊してこそ自分たちは『友情』から卒業できる、という加賀さんの思いが、読み終えた今なら重く胸に響いてきます。それぞれの『卒業』が描かれた後に、さとちゃんからの『卒業』も描かれたのがまた心憎く(本と、この辺の演出匙加減も見事すぎて鼻につく(笑)、けれどその清々しさが一種の救いのようにもなっているようで。胸が、きゅっ、と切なく痛みました。ある季節と友情の終わりを、瑞々しく書ききった青春ミステリの傑作でした!

 

東野圭吾『眠りの森』・・・シリーズ二作目。途中、あまりにもじれったかったのでどうなる事か思いましたが…。ラストの20ページが素晴らしかったですな。そしてラストにもびっくり。でもとても切なかった。このあと、一切、未緒ちゃんのことが出できていない事を思うと…きっと未緒ちゃんは身を引いたんだろうな。なぁ…切ないな。お似合いなだけに。バレエの世界ほど、美しさ、華麗さとは裏腹、踊り手に課せられる過酷さが半端ない世界もないのだと思う。元々、そんな風には思っていたけれど今作で改めてそれを突き付けられたような気が。その苛酷さの中で、けれど、人間だからこそ抑えきれることが出来なかった思いが今回の事件の根幹にはあるように思いました。踊り手でありながら、けれど、人間だった。その姿がバレエ界という、特殊に閉じられた世界と相まって、とても、前半はどこかミステリアスに。そして後半は、真相が明らかになるにつれ胸が痛くなるくらいに物悲しかった。亜希子さんが未緒ちゃんの言葉にあんな辛辣とも思えるような言葉を返したのも、全てを知った今ならとても理解できる。あと靖子さんの気持ちも。たまんないよなぁ。信じて、まさに身を粉にするようにしてここまで歩いてきたのに。…あまりに手ひどい裏切りだよね、本とに。いろんな人たちの思いが、それは単純だけれどとてもとても深い思いで、それが絡み合って起こった今回の事件。その切ない真相を、加賀さんと未緒ちゃんとの関係に重ね合わせて描いた、まさしく恋の物語でしたね。

 

山口雅也『ミステリーズ』・・・難しそうかなぁ、と不安でしたが。いやいや面白かったです。読んだことも見たこともないけれど、アメリカンテイストたっぷりの作品だったように思います。最後に、ぐっ!とひねりを利かせた皮肉たっぷりの作品が多くて読み終えてニヤリ、みたいな作品が多く、そしてまた山口先生らしく含蓄と論理的思考に満ちていて、しかも一作品当たりのページ数がちょうどいいくらいだったからお見事!と拍手喝采でした。以下少しずつ感想を。『密室症候群』…密室を今までにない角度から描いた不気味な作品。でも、ミステリ好きな人ってのは、何かしらこういった症候群の一員なのかもしれないな。『禍なるかな』…笑!この息詰まるような、しかしあまりにもつまらない(笑)笑いのゲームがどこに行きつくのか。ドキドキしながら読んでいったら…やられた!そりゃ笑っちゃうよな。ともすればただのユーモアミステリに、けれどきっちり「笑い」に関する論議が入っていたのはさすが。『いいニュース』…これが一番好き。まさか?まさか?と思ってたらそのまさかの展開でびっくりとともに大爆笑。こういう作品が書けるのが理想だなぁ。『音のかたち』…音に犯され支配されていく、その様が実にこっちにまで伝わってきました。ラストにはゾクリ。『解決ドミノ倒し』…あり得ない話の展開にどうなるのかと気になって仕方なかったけれど…ぱたり、と最後には倒されてしまいました。作品と、読み手との垣根をこうも軽々と越えてしまう。そういう意味では、この作品と『不在のお茶会』は、作品と私、作家と読み手である私との関係性をあまりにも真摯に考えている山口先生の思いの一端が垣間見えて切なさすら感じました。『あなたが目撃者です』…面白い構成だったけれど本当にテレビ番組を見ているような気分になりました。これもラストに゜ひねりが利いていて、思わずにやり、です。『私が犯人だ』…あぁなんて哀れな殺人者(笑)。山口先生の、ノンミステリな、こういったエスプリの利いた話をもっと読んでみたいな。『世界劇場の鼓動』…世界がこうなった、一切の説明がなくてでも、荒廃した世界の様子がおどろおどろしくもあり、また美しくもあり。喜び、哀しみ、怒りと表現された音楽の奏でる景色が、光景が、実に正確に描かれていて圧巻の一言。極上の、怖ろしくも悲しく美しい世界の終わりを描いた、ファンタジー。と、まさに極上の十篇。山口先生の真摯な稚気とミステリに対する愛憎に満ち満ちた傑作短編集でした!

 

岩井志麻子『ぼっけぇ、きょうてえ』・・・面白かった!文句なし!これはすごい。バトロワと一悶着あって心の中では、絶対に認めてやるものか!と意固地になっていたんですが(笑)。バトロワもすごいけど(当然)。とにかく描写がすごい。日本語で語られた、日本のあまりにも美しく、そして臭いすら漂ってきそうなほどに生々しい原風景。それがもう、ものすごくものすごくよく伝わってきて、怖ろしいくらいだった。特に『ぼっけえ』の中。そんな中にあって、ただ変わらなく青い空の青ってのが、もう鮮烈すぎるくらいに鮮烈で。あぁ、おそろしい。日本の、いわゆる田舎の原風景に、きれい、とか美しい、懐かしい、とかではなくて底知れぬ生々しさと脅威と、怖ろしさを感じたのは、それも読書で感じたのは初めてかもしれない。四篇の物語はすべて、そこで、地獄と地続きのような土地に生まれ、産み落とされ、生きることを余儀なくされ、ただただ生きるしかない人間たちの姿を描いたものばかり。もはや畜生同然に生きるしかない人間たちの、ギリギリの姿を描いたものばかり。だからどれもがどうしようもなく悲しく、空しい。土地に縛られ、自然に縛られ、そこに生きる畜生と化した人間たちに締めつけられ、それでも生きるしかない人間たちの悲しい姿。なのにそこに昼ドラのような要素が絡んでくるから、悲しいのに面白くてたまらない物語に仕上がっている。あぁ、その筆さばきたるやお見事の一言。『ぼっけえ』…あぁ、もう本当に凄まじい。凄惨。なのに美しく、そこはかとなく悲しい。国に帰って、荒涼とした故郷=地獄に立つ姉妹の姿が、或いは、地獄の阿鼻叫喚の中、嫣然と微笑む姉妹の姿が、もうまざまざと思い描くことができて言葉になりません。最後のおちにも、震えが止まりませんでした。まさしく日本の怪談。完璧。『密告函』…お咲の狂った美しさに、私もくらり、くらり。日常からの、少しの逸脱を試みた男が迎えたのは、あまりに怖ろしい顛末。コロリ患者の近くの川で、魚を捕獲している妻さんの姿は恐ろしくてたまらないのに、この結末たるや痛快すぎて面白い。あぁ、たまらない。『あまぞわい』…ユキと恵二郎が密会している場面は、あまりに甘美で叫んでしまいそうでした。ユキにはじゅうぶんに同情できたからだろうなぁ。そんなユキのために用意されていたのは、どこよりも暗く、どこよりも冷たく、どこよりも常世から遠いあまぞわい。ユミだけのその場所で、だけどそれでも、と願いたくなるのは甘いでしょうかね。甘いだろうなぁ(苦笑)。『依って件の如し』…もう、臭いが。臭いが。土の、牛の、汗の、糞の、腸の、垢の、血の、夜の、濃厚すぎる臭いが、臭いが。もうそれだけで酔ってしまいそうになるのに、この結末も、まさにどろどろの悪夢。祈りも救いも、希望もへったくれも、すべてが真っ黒の黒に塗りつぶされていく。あぁ、たまらん。全四篇。日本の怪談の凄まじさ、とくと味わいました!まさに、『ぼっけえ、きょうてえ』な作品でした!

 

東野圭吾『悪意』・・・面白かった。今のところ、加賀さんシリーズの中で一番だと思う。正直、「麒麟の翼」のシリーズ最高傑作という惹句はこの作品にこそあげるべきだと思う。成程ね。手記という、独白という少し変わった構成で物語が進められていったのは全て真相を隠し通すため。最後の最後、加賀さんによって明らかにされた悪意の正体。逆転に次ぐ逆転の物語の末にはっきりと見えてきたその正体、そして構成の巧みさ、上手さに思わず感嘆のため息ですよ。すごい。うまい。もうあざといくらいだよ。うーん、なんでこの作品がもっと高く評価されないのかな。地味っちゃ地味だし、確かにこういう構成の以上読者にとってはフェアじゃないかもしれないし、いろいろ突込みどころはあるかもしれないけれど。でもホント、簡単にいえば人の心が一番のミステリ、この言葉をそのまま形にしたような、まさしくミステリらしいミステリだと思う。あぁ、しかし、ほんとに、見事に騙された。私が知る日高さんは、野々口さんの手記、または誰かが語った言葉によるものでしかない。そしてまたそれは野々口さんにしても同様でだからこそ簡単に、冷酷で自分第一の日高さん、一方で情け深くそれ故に不幸な道へと追いやられてしまった哀れな野々口さんという構図が出来上がり、あっさりと信じてしまったもんなぁ。怖いなぁ。我ながら、人間なんて本と、人を見る目、人に抱く印象なんていい加減なものだよなぁ、とつくづく思った。そしてそのまま、野々口さんの手記によって明かされた日高さんのあまりにもむごい所業には、本と、背筋におぞけが走るほどに悪意を感じたんですけど。はは。けれどそれもまた、野々口さんが導いたものであって。だからこそ真相が明らかになった時には、全てを吹き飛ばされるほどの衝撃を覚えましたし、真の悪意の在りか、形、根深さを突き付けられたような気分でした。さらに付け加えて、最後の最後に部落差別を思わせるような記述があったのも強烈だった。悪意。どこか日常からは遠いところにあるような言葉にも思えるけれど、実はそんなことは全然ない。根拠も、さして理由もないところからそれはひょこっと生まれ、自らの胸の内で脈々と育ち、そして小さな拍子に爆発する。徹底的に他者を落としめ、傷つけ、軽蔑侮蔑しなければ気が済まないような衝動にも似た悪意は、その種は、実は誰もが心の中に持っているものなのだと思う。それがもっともな形で表れている差別が出てきたところで、そのことを思い知らされた気分です。ねぇ。その負のエネルギーたるや、凄まじいものだよね。凄まじく暗く、凄まじく深く、凄まじく歪んでいて、けれどその人の心は歪んだ満足感に満たされていっているのだから、そして時には自分の身の優越を思い安堵すらしているのだから、人間って怖い。すごい。怖ろしい。そんな人間の暗を、特殊な構成と巧みな筆さばきで描き切った傑作でした。いやぁ、読み応えたっぷり。

 

はい。と言うことで本日はここまでです。

驚け1万4千文字オーバー(でーん)

 

うむむ・・・まだまだこれは序の口だぞ(にっこり)

 

はい。本と、これからますます長くなっていくので、それを承知したうえでお付き合いいただければ幸いでございます・・・なんか本と、すんません(どーん)

 

ではでは。今回はここまでです。

読んで下さりありがとうございました!